実況パワフルプロ野球 聖ジャスミン学園if   作:大津

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第45話 憧れ

「聖ジャスミン学園…か」

 

女子だらけのチームで部員は9人…野球部としては明らかにイロモノの部類に入るチームだが夏の予選で決勝まで勝ち上がってくるだけの実力はあるようだ。

 

「ま、ここの地区自体レベルが高いとは言えないがな」

 

この地区は昔から西京高校の一強で、いわば西京が楽に甲子園に行くために他のチームが存在している様なものだった。

しかし、その西京は()()()()()()()()()

 

随分とつまらない展開になったものだ。

スター選手のいないチームのまぐれ勝ちで商品価値のあるチームが早々に退場とはな。

 

男は無精髭を触りながらそう吐き捨てた。

彼の仕事場であるデスクには週刊誌が乱雑に積まれ、仕事をするにも卓上をかき分け作業する場所を確保しなければいけない有様となっている。

しかしデスクにぽつんと置かれた自身の仕事道具であろう一眼レフカメラには手入れが行き届いていた。

散らかったデスクなりに置き場所が定められているのか、カメラが置かれた辺りには物が置かれておらず、ぽっかりと机の地肌が剥き出しになっている。

男の顔には深いシワがいくつも刻まれ、目の下には大きなクマを作っていて一見して不健康な生活を送っていることがわかる。

そんな近づきづらい雰囲気を醸し出している男はカメラを手に取ると撮影した写真を画面に映しニヤリと笑った。

 

しかし、こいつにはそれなりに興味をそそられる。

チームのキャプテンであり、投打に渡ってのチームの中心。

 

「瀬尾…光輝、か。

ふふふ…はははははっ!」

 

 

 

 

「すごいよ〜!

次勝てば甲子園だよ、甲子園っ!」

 

三ツ沢監督が飛び跳ねんばかりの勢いで喜びを表す。

 

「どうしたんですか、突然?」

 

恋々高校との試合で勝利を収めてから数日。

甲子園出場を目前としたところで俺たちの周りも騒がしくなってきた。

 

「瀬尾君、昨日のテレビ見てないの?

聖ジャスミン学園野球部が特集されてたんだよ〜!」

「えっ、そうなんですかっ!?」

「その評判を聞いてか、ほむらの家のバッティングセンターにもお客さんが殺到してるッス!

ほむら、ちょっとしたヒーロー扱いッスよ!」

 

川星さんは鼻息荒くそう言うと「ふんす!」と誇らしげに胸を張った。

彼女の実家はバッティングセンターを経営しており、俺たちも訪れた事があったがそれ程賑わっている印象はなかった。

それがそうも人気になったのだから、聖ジャスミンが注目を集めているというのもあながち間違いではないのだろう。

 

「よかったね、川星さん!」

「…でもいい事ばかりじゃないッスよ。

周りも騒がしくなったし」

 

ほむらですらこの環境の変化なんッスから、エースのヒロやスター性のある雅ちゃんの周りがどれだけ騒がしくなるか心配ッス…。

 

川星さんがぽつりと呟いた言葉に俺も同調する。

 

「確かに。

応援してもらえるのはいい事だけど、それがみんなの迷惑になっちゃうっていうのは嫌だもんね」

「…?

他人事じゃないッスよ?

自分には関係ないみたいな口ぶりッスね?」

「えっ、いや、俺もみんなの事を心配して言ったんだけど…

そんな風に聞こえたかな?」

「そうじゃなくて…。

瀬尾君、自分には影響がないと思ってないッスか?

聖ジャスミンに注目が集まるって事はつまり……」

 

『あ、いた!瀬尾君だぁ〜!!』

 

その時、俺の名前を呼ぶ声が飛び込んできた。

聞き覚えのない声のする方へ振り返ると、

 

『キャー!』

『すご〜い、本物だぁ〜!』

『私達、瀬尾君のファンなんです〜!』

 

と他校の女子生徒と思われる集団が駆け寄ってきた。

 

「…えっ?

ファン?俺の?」

『そうだよ〜!

今、瀬尾君すっごく人気なんだから〜!』

 

「そ、そうなんだ。ありがとう」

 

思いもよらぬ言葉に目を白黒させる事しか出来ない。

川星さんが言っていた『他人事ではない』というのはこの事か!

しかし、黄色い声援を貰えるというのは新鮮だ。

まるでスターにでもなった気分になる。

 

と、その時。

どこからか刺すような視線を感じハッと振り返る。

だが視界に入った川星さんは視線どころかこちらを見てすらおらず、若干引きつった表情を浮かべて明後日の方向を向いていた。

どこを見ているんだ?

そう思い川星さんの視線の先に顔を向けると、そこには。

 

止まる事のない涙を隠すそぶりもなく、ただただこちらを見て泣き続ける矢部君がいた。

 

「や、矢部君…」

「いいんでやんす。

いいんでやんすよ、瀬尾君。

オイラは瀬尾君に沢山のものを貰ったでやんす。

感謝こそすれ、羨むなんてとんでもないでやんすよ」

 

矢部君…。

ならばどうしてそんなにも歯を食いしばっているんだい?

熱い涙を流しすぎてメガネのレンズが白く曇っているじゃないか。

 

と、そこに、

 

「矢部、男の嫉妬は見苦しいわよ。

嫉妬しているのがあんたなら尚更、ね」

 

ハァーとため息をつきながら小鷹さんと太刀川さんが揃って現れた。

そしてこちらに視線を向けると小鷹さんが、

 

「まあ、デレデレと表情を緩ませてる『誰かさん』よりはマシだと思うけどね」

 

とニッコリとしているのに背筋がゾクッとするような笑みを浮かべた。

 

「それにあなたたちもいつまでそうしているつもり?

私たち、これから練習するところなんだけど」

 

同時に、女子生徒たちに対し静かにそう諭した。

普段の野球部のみんなの前で見せる姿に比べれば穏やかな対応ではあるが普通の女子生徒には十分怖かったようで、彼女たちは『し、失礼しまーす』といそいそとその場を離れていった。

 

「こ、怖いでやんす…」

「こ、怖いッスね…」

 

「何か言った?」

『ギロリ!』

ビークワイエットの意が込められた視線を向けられ矢部君と川星さんは固まり下を向く。

その横を小鷹さんは「さぁ〜練習よ、練習!」と言って颯爽と歩いていった。

 

「瀬尾君…浮かれすぎだよ」

その後ろについて歩く太刀川さんからは静かなトーンでの注意が入った。

 

…そんなに浮かれていただろうか?

 

「う〜ん…」

俺が顎に手をやりながら悩んでいると矢部君が、

「『触らぬ神に祟りなし』でやんすよ、クワバラクワバラ」

と震えながら小走りでグラウンドに向かっていく。

 

…よし、まずは練習に集中しよう。

 

「今日は打撃練習からか」

……デッドボールをぶつけられなければいいのだけれど。

 

 

「痛たた…」

 

練習終わり、ボールが直撃した左脇腹をさすりながら遠い目をして呟く。

 

「まさか本当にぶつけられるとは…」

 

「だからゴメンって言ってるじゃない!ねぇ、ヒロ?」

「うん…ごめんね、瀬尾君」

 

小鷹さんは半ば怒ったように同意を求め、太刀川さんは弱々しくそれに答えた。

 

「いや、練習中に起きた事だし不可抗力だから別に責めている訳じゃないんだけど…」

 

俺としてはぶつけられた直前に構えられていたミットの位置がえらく身体に近かった事の方が引っかかっているのだが…。

まあ、実戦に近い練習が出来たというところを落とし所にしておこう。

 

そんな事を話しながら帰り道を歩いていると、突然見知らぬ男性から声を掛けられた。

 

「どうもこんにちは。

君、瀬尾光輝君だよね?」

 

「はい、そうですけど…。

どちら様ですか?」

 

無精髭に目の下のクマが特徴的な男性は、見た目の印象とは異なる、わざとらしい程の笑顔で話を続けた。

 

「いやぁ、申し遅れました。

私、ライターをしております、大畠(おおはた) 耕一(こういち)と申します」

「ライターさんですか…」

「ええ、一応そういった肩書きでやらせて貰ってるんですよ、はい」

 

そうやって大畠さんと会話を続けていると、小鷹さんが俺の制服の袖を掴みぐいっと引き寄せる。

 

「ちょっと大丈夫なの?

あの人、見るからに怪しいわよ?」

 

この言葉に太刀川さんもコクコクと首を縦に振って同意する。

 

「ははは…。

私もこんな人相なもので、そう思われるのも無理ないですね」

 

どうやら小鷹さんの言葉が聞こえてしまっていたようだ。

「あ、いや、そんなつもりは…」

と、何とかその場を取り繕おうとしたが大畠さんはそれを遮るように、

 

「まあ、今日はご挨拶までという事で。

私、聖ジャスミン野球部、そして瀬尾君には注目させて貰ってるんでね。

是非あと1勝、甲子園目指して頑張って下さい」

 

大畠さんは「また話を聞かせて貰えると助かります」と去り際に話すとその場を後にした。

 

「……胡散臭いおっさんね〜!

ライターとは言っても絶対フリーでしょ。

ゴシップを週刊誌に売って日銭を稼いでるタイプよ、アレ」

「ははは……」

 

まあ、応援してくれているようだし問題はないだろう。

ただ取材結果が記事になった際にうちの野球部、特に女子選手がどういった表現をされるかが心配ではあるが。

 

うーん……。

 

「…ねえ、瀬尾君?」

「ん、どうしたの太刀川さん?」

「あ…、いや…、えっと…。

そう!瀬尾君、取材の受け答えが手慣れてるなと思って!

前にも取材された事あるのかなって」

「ああ、まあ…何回かはあったかも」

「へえっ!そうなんだ!スゴイなあ…」

「でも中学時代の話だからね。

取材も猪狩が1人で受けるはずだったのに、あいつが俺を強引に引っ張ってきてさ。

「彼の事も記事にしておくといいですよ」って無理矢理取材に加えられたんだ。

記者さんも困ってたよ」

 

「でもその記者もラッキーだったんじゃない?」

懐かしい思い出話に花を咲かせていると、そう言って小鷹さんが不敵な笑みを浮かべた。

 

「考えてもみなさいよ。

私達が甲子園に出たら「聖ジャスミンの瀬尾って選手、昔から目をつけてたんだよ〜」って周りに自慢出来るってもんじゃない」

 

小鷹さんは小物臭漂う架空の記者のモノマネを交えながらそう言った。

だけど、その場合…

 

「甲子園に行ってまず注目されるのは太刀川さんと小鷹さんだと思うよ?」

 

だって…

 

「『話題の美女バッテリー』なんていかにも人気が出そうじゃない?」

 

 

いやいや!美女って…っ!

ダメダメ、ニヤつくな私!

落ち着いて、余裕を持たなきゃ…。

 

「瀬尾〜!

何よあんた、私達の事そんな風に思ってたの〜?

ヤラシイわね〜」

 

私は瀬尾をそうやってからかう。

そして、「ねえ、ヒロ?」と同意を求めるためにヒロの方に顔を向ける。

するとヒロは未だに動揺したままアワアワと答えた。

 

「い、いや、タカは綺麗だと思うけど、あたしは別に美女なんかじゃないよ。

うん…そう、全然!」

「そうかな…。

あまり女の子の外見についてあれこれ言うのはよくないと思うけど、俺は2人とも美人だと思うけどな」

 

「なっ…!!」

これは照れる…っ!この天然タラシめ!

ヒロも何だか満更でもなさそうだし…。

 

「野球部のみんなもそうだけど、俺の周りにいる女子はみんなかわいい子ばっかりだよ?

それを考えると俺と矢部君はかなりの役得なのかもしれないね」

 

そう言った後、瀬尾は何の気なしに「ははは」と笑っている。

『みんな』という言葉が若干マイルドにしているものの、それでもなかなかの破壊力である。

 

私は、おそらく上気して赤らんでいるであろう頬を指先に髪を巻きつけ引き寄せて隠した。

だがショートヘアのヒロはそういった工夫をする事も叶わず、赤く染まった顔に手を添えて何とか誤魔化す事しか出来ない。

…が、その手までが鮮やかに染まっており、顔色との差がほぼなかったためそれはあまり意味を持たなかった。

 

って…うん?

 

「あ…じゃあ俺はここで。また明日ね」

 

瀬尾は私たちと別れ自宅への向かって十字路を曲がっていく。

 

ここでやっと落ち着きを取り戻してきたのか、ヒロは手で顔を扇ぎながら口を尖らせ「ふぅーっ」と息を吐いた。

 

「ちょっとヒロ、アンタ照れ過ぎよ?

いくら慣れてないにしたって」

「…やっぱり?

あはは、恥ずかしいな…」

 

ヒロは頬をぽりぽりと掻きながら笑う。

 

「ホントよー」

初々しい様子の相棒をそうやってからかっていると、

 

「でもそう言うタカも赤かったよね、顔。

しかもそれを何とか誤魔化そうとしてたじゃない」

 

と、返す刀でバッサリと切り返された。

 

「…な、な、なぁあっ!?」

 

バレてたのっ!?

何で、私の偽装は完璧だったはずなのに!

 

「あたしが分からない訳ないじゃない。

長い付き合いなんだから」

 

……。

こればっかりは私の負けだ。

考えてみれば当たり前の事だった。

私に分かってヒロに分からないはずはない…か。

 

「でも瀬尾君には気付かれてないみたいだったから、そこは安心だね」

 

「せ、瀬尾ね!

あいつ意外と鈍いのよね、あはは…」

 

話の論点が瀬尾の事に移った。

ヒロは私を追い詰めはしたが致命傷までは与えなかったのだ。

ありがとう、さすが私の恋女房!

…って、女房役なのは本来私の方か。

 

「私達の事を変におだててうやむやにしてたけど、やっぱりあいつ浮かれてるんじゃないの?」

 

瀬尾には悪いけど責任は全部被って貰うわ!

あとはヒロが「そうだね」と言えば…。

 

「そうかな?

あたしはそうは思わないけど」

 

私のもくろみはあっさりと外れる。

やはり思い通りにはいかないものだ。

…それが心の底から思っていない事なら尚更。

 

ヒロは続ける。

 

「瀬尾君はあたし達みんなの事を心配してる様に見えた。

多分、女子選手だからっていう理由で見世物にされるんじゃないかって心配してたんだよ」

 

…またあいつはそうやって他人の心配ばかりして。

まあ、瀬尾らしいと言えばらしいけれど。

 

「ナメられたものね?

あいつはまだ私達がそんな事で潰れるとでも思ってるのかしら?」

「もぉ…またタカはそんな言い方して…。

瀬尾君はあたし達の事を思いやってくれてるんだよ?」

「…わかってるわ。冗談よ、冗談。そんな怒んないでよ」

「怒ってる訳じゃないけどさ…」

 

これ以上つつくと本気で怒りそうだ。

ヒロは怒ると結構怖い。

ほどほどにしておいた方がよさそうだ。

 

それにしても…。

 

「アンタいっつも瀬尾の味方よね?」

 

ボソッと言ったこの一言でヒロの様子がガラッと変わった。

 

「そ、そ、そ、そうかな!?

そんな事ないと思うけど!?」

「……『そ』が多いわよ。

えらく動揺してるわね?」

 

私はヒロの肩に手を置いた。

投手の商売道具にあまり乱暴な事は出来ないので『ガシッ』とは掴めないためそっとではあるが。

そして聞いた。

 

「何か、特別な感情でも抱いてるんじゃないの?」

「と、特別な感情って?」

「それは…アレよアレ!

その、つまり……」

「つまり?」

「〜〜っ!

つまり!ヒロが瀬尾にホの字なんじゃないかって事よ!」

 

「……ホの字?」

 

しまった!この言い方はあまりにも年寄り臭かった!

下手すれば意味どころかニュアンスすら伝わっていないかもしれない。

 

「う〜ん…タカが何を言いたいのかはよくわからないけど…」

 

やはりか…。

 

「う〜ん…言い方が難しいな。

あたしにとって瀬尾君は特別と言うより…」

「言うより?」

「憧れ…かな?」

 

…いや、それそのものズバリじゃない?

私、親友の恋心というとんでもないパンドラの箱を開けてしまったんじゃ…!?

 

「野球をやりたいってあたしの望みを叶えてくれて、公式戦に出たいって願いを叶えてくれた。

そして…甲子園に行きたい、甲子園のマウンドに立ちたいって夢まであと一歩の所まであたしを連れてきてくれた。

だから瀬尾君はあたしの憧れ…つまりはヒーローなんだよ!」

 

「ヒーロー…」

この子、こんなにも瀬尾の事を想って…!?

 

「そう!

あたし子供の頃ヒーローになりたくてさ!」

 

……うん?

 

「でも現実にはそんなのいないじゃない?

でもそこに瀬尾君が現れてあたしを助けてくれたんだ。

ヒーローって本当にいるんだと思ってさ!

あたしもこんな風になりたいなって」

 

「いやだからってエースの座を譲る気はないよ、むしろ勝つ!」

…と鼻息を荒くするヒロ。

私は戸惑いながらも尋ねる。

 

「あの…それって瀬尾の事を男としては見てないって事?」

「?

いや、男の子はスゴイなーって思うよ。

球は速いし打球は飛ぶし。

でも負けてらんないよね!」

 

ああ、これ惚れた腫れたじゃないわ。

健全なライバル関係だわ。

 

「ふふっ」

おかしくて私は顔をほころばせた。

 

そして、キョトンとしているヒロに言った。

 

「なら見せてやりましょう。

瀬尾に、

『どうだ!これが私達の実力だ!まいったか!!』

…って言わせるぐらいのピッチングを。

私も協力するわ」

 

「…うん!」

そうやって頷くヒロの表情はいつの間にか、マウンドの上で見せるそれになっていた。

 

 

 

 

改めて考えると。

あれがきっかけだったのだと思う。

この想いを自覚したのは。

 

きっと彼女は彼に想いを寄せている。

それは彼の話をしている時の表情を見ていればすぐにわかる。

 

あの時の「憧れ」という言葉。

憧れというのは1つの大きな感情ではなく、様々なものが入り混じって形成された想いだ。

花開く前の蕾のようなもので、種が蒔かれてからの時間の蓄積であり、それと同時に咲くまでの準備段階に他ならない。

 

そして咲いてしまえば、もう戻れない。

咲いてしまえばその花なりに、目一杯咲き誇るしかないのだ。

 

そう。

憧れの中の内訳。

何が一番多くを占めるのか。

それに気づいてしまえば。

 

「自覚せざるを得ないじゃない」

 

彼の事を話す貴女を見て。

彼の事を話す自分に向ける、その目を見て。

改めて思うのだ。

 

 

本当に気の合う相棒だと。

そしてまさかここまで気が合うのか、とも。

 

だから誤魔化したって分かるのだ。

だって。

 

 

「あたしに分からない訳ないじゃない。

長い付き合いなんだから」

 

 

タカ、あたしもきっと同じ気持ちだよ。

 

だけど、だからこそ。

あたしのそばに野球があってよかった。

そうじゃなければこの気持ちをどうすればいいのか、わからないところだったよ。

 

でもあたしには野球があるから。

本当なら迷いの種になる筈のこの気持ちを、力に変える事が出来る。

 

タカ、瀬尾君。

次の試合、絶対勝とうね。

勝って、そして一緒に。

 

「甲子園に行こう」


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