実況パワフルプロ野球 聖ジャスミン学園if   作:大津

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第25話 彼女との学園祭

帝王との試合から数週が経った。

無名校の快進撃に沸いていた周囲の人たちもすっかり落ち着きを取り戻し、野球部にとっていつも通りの日々が過ぎていった。

 

それでも…

 

「あっ、野球部だ!」

「頑張ってね!」

 

放課後練習をしていると時折こんな声援をもらえるくらいには、聖ジャスミン学園内での野球部の評価は高くなっていた。

 

それなのに野球部の雰囲気は暗い。

 

帝王戦での衝撃的な敗北を喫してからずっとこの調子。

チームがどこかギクシャクしていると感じていたのは俺だけではないだろう。

 

…9回裏、4点をリードしていた場面。

俺は抑えとしてマウンドに立っていた。

だがその役目を果たせず、満塁ホームランを浴び、さらにランナーを出して降板。

そして、俺が作った満塁のピンチにマウンドに上がった太刀川さんが、サヨナラの満塁ホームランを打たれて試合は終わった。

 

だが彼女に敗戦の責任はない。

先発として試合を作り、マウンドを降りて外野に回った時点で、彼女の…少なくとも投手としての仕事は終わっていた。

合格点を十分に上回る内容で、だ。

それをぶち壊しにしたのが誰か。

試合に出ていた選手だけでなく、観客の目から見ても明らかだっただろう。

敗戦の責任は……俺にある。

 

そんな俺には、落ち込む権利も、悔しさに震える時間も与えられてはいない。

信頼される選手になるために、前に進まなければいけない。

 

そのためには、これをどうにかしないとな。

 

自らの右手を見つめながら、俺はそうつぶやいた。

 

 

「この季節がやって来たでやんすよー!!」

 

放課後の部室。

練習の準備をしていると、矢部君が唐突に声を上げた。

 

「どうしたの、急に大きな声を出して?」

 

俺が矢部君にそう質問すると、矢部君は不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふっふっふ…

瀬尾君はまだ気付いていないようでやんすね…!」

 

矢部君は壁に掛けてあるカレンダーを指差すと、テンション高く叫んだ。

 

「再来週、聖ジャスミンの学園祭があるんでやんすよ!

聖ジャスミンは女子が多数を占める元女子高。

見渡す限りの女の子たちが「きゃっきゃうふふ」と浮かれながら、一致団結して何かを作りあげるあの姿っ!!

流れる汗!

弾ける笑顔!

揺れるスカート、めくれるスカート!!

そして何より、並び立つ模擬店で出される女子手作りの食べ物の数々!

そんなチャンスが迫ってくれば、気分も開放的になるってもんでやんすよ〜!」

 

矢部君は顔を上気させながら、そうまくしたてた。

 

「そ、そんなに楽しみなんだ…」

「当たり前でやんす!

女子の手料理なんて滅多に食べられないでやんす!

腹一杯食べて、脳に刻み込むのでやんす!」

「へ、へぇ…」

 

脳に刻むのか…

矢部君の猟奇的な部分が垣間見えた気がする。

 

「あんたら、何の話してんのよ…?」

声の方を向くと、小鷹さんたちが呆れ顔で部屋に入って来ていた。

 

「まあ、気持ちが全くわからないわけではないけどね。

僕も何気に楽しみにしてるし」

腕を組んだ小鷹さんの後ろから小山君が顔を出し、そう言って微笑む。

 

「うちの学園祭ってすごいらしいしね。

お客さんもたくさん来るらしいよ?」

 

へぇ…

そういう話を聞くと、何だか俺も楽しみになってきたな。

 

「そんなみんなに朗報だよ〜!」

笑顔の監督が部室に入って来た。

そんな監督も帝王との試合の後は大きなショックを受けている様子だった。

 

 

「ごめんね、みんな。

「試合やれば何とかなる」なんて軽々しく言って。

…私、みんなのために何もできなかった。

本当に…頼りない監督でごめんなさい」

 

 

目頭に涙を溜めて、俺たちにそう謝った監督の姿が脳裏に焼きついて離れない。

もうあんな顔をさせたくない。

そんな思いが芽生えた瞬間だった。

 

「学園祭の期間は野球部の練習はなし!

思う存分楽しんできて!」

 

監督の声に俺は現実に引き戻された。

 

まわりを見渡すと、戸惑いの声が誰からともなく上がっていた。

 

「えっ、でも…」

「いいからいいから!

たまには休まないとパンクしちゃうよ?

休養日代わりだと思ってゆっくりしておいでよ!」

 

そっか、それなら…

みんなが口々にそう言うのを見て、ほっとしたように息をついた後、監督は小さな声でつぶやいた。

 

もうみんなを追い込んだりしないから…、と。

 

 

学園祭当日。

小山君が言っていた通り、多くの人で学園内が賑わっている。

 

「どうしようか、矢部君?」

「瀬尾君…悪いでやんすがオイラは行かなくてはならないのでやんす!

こうしてはいられないのでやんす〜!!」

 

矢部君は俊足を飛ばして走り抜けて行った。

…が、すぐに人波に飲み込まれていった。

まあ、ほどほどに頑張ってね…矢部君。

 

さて、俺はどうしようか。

ソフトボール部を兼任している小鷹さんと美藤さんは、ソフト部の模擬店の手伝い。

俺と矢部君以外のメンバーは、みんなで学園中を見て回るということだった。

 

面白そうだから、矢部君について行こうと思ったんだけど…

もう矢部君の姿は見当たらない。

 

…しょうがない、1人でぶらぶらと回ることにしよう。

そう思い歩き始めようとした、その時。

聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。

 

「お〜い!

光輝くーん!!」

 

振り返る俺の目に写ったのは、セーラー服のスカートとおさげ髪を揺らしてこちらに走って来る少女の姿。

 

「あれ、あおいちゃん!?

今日はどうしたの?」

「「どうしたの?」じゃないよ!

聖ジャスミンで学園祭があるっていうから覗きに来たんだよ!」

 

…ん?

頭にふと疑問が浮かんだ。

今日は平日。

普通なら他の学校に来れるはずがない。

 

「あおいちゃん、学校はどうしたの?

まさか…サボ…」

「ち、違うよっ!?

恋々でも学園祭があってさ…

今はその準備期間で学校が半分休みみたいなものだから、少し抜け出してこうして来てみたんだ!

ルール違反はしてないよ!」

「へぇ…」

「…それにしても、すごいよね。

話には聞いてたけど、うちの学園祭と比べたら規模が段違いだ」

 

そう言ってあおいちゃんは、ずらっと並んだ模擬店の数々に視線を移す。

確かにすごいよな…

 

「あっ、これ見てよ!」

 

あおいちゃんは、「ご自由にお持ちください」と書かれた学園祭のパンフレットを手に取り、広げる。

 

「演劇、バンドLIVE…吹奏楽部の演奏もあるって!

いろいろ見て回りたいけど…こうも人が多いと迷っちゃいそうだね…」

「校舎も大きいしね。

俺の友達も人の波に消えていったし」

「あ〜あ、この学校に詳しい人がエスコートしてくれたらいいのになー。

誰かいないかな〜?」

 

そう言ってあおいちゃんはこちらをチラリと見た。

この流れは…まあ、そういうことだろう。

 

「俺でよかったら、ご一緒しようか?」

「…うんっ!

よろしくね!」

 

俺の誘いに、にっこりと笑って頷くあおいちゃん。

この柔和な表情を見ていると、彼女がアンダースローからキレのあるシンカーを投げ込む軟投派投手だとはとても思えない。

 

「ねぇ、何やってるの?

早く行こうよー!!」

 

そんなことを考えていると、あおいちゃんにそう急かされる。

俺は早歩きで彼女に追いつき、隣に並んで、同じ歩幅で歩き出した。

 

 

「わあ…!

あれも美味しそうだねっ!!

光輝君、ちょっとこれ持っててくれる?」

 

彼女は食べかけの焼きそばの容器を俺に手渡すと、クレープの屋台の方に歩いて行く。

そして精算を済ませると駆け足でこちらに戻って来た。

 

「そ、それも食べるの?

あおいちゃん、以外とよく食べるんだね」

「まーね!

アスリートは体が資本だし、食が細いと大成できないよ?

……って実は模擬店巡るのが楽しみで、朝ご飯抜いてきたからお腹が空いてるだけなんだけどね」

 

そうやってあおいちゃんは少し照れたように微笑んだ。

 

……しばらくして、学園祭グルメを味わった俺たちはぶらぶらと歩き出した。

 

「大きな目的は達成しちゃったけど…

後はどうしようか?」

「じゃあ、もう少し足を延ばしてみる?

他にもいろいろやってそうだし…」

「うん、そうだね!」

 

校舎の中に入る。

すると教室で、部活動や各クラスによる催しが行われていた。

コスプレ喫茶にお化け屋敷…定番といえば定番のものが並ぶ。

 

「そういえば、あおいちゃんは恋々の学園祭で何かやったりするの?」

「う〜ん…

多分、ボクはクラスでやるカフェの手伝いをするくらいかな?

お皿を運んだりとか…

料理を実際に作るのは他の子だしね」

「やっぱり、投手が包丁を使ったり、ホットプレートみたいなやけどするかもしれない器具を扱うのは危ないもんね」

「ま、まあね!

ボクの代わりはいないわけだから、注意を払わないと!

でも、料理ができないわけじゃないからね?

ホントだよ!?」

 

あおいちゃんはそう言って、「アハハ…」と笑った。

どうしたんだろう?

別に疑っていたわけじゃないだけどな。

 

しばらく辺りを見て回っていると、客引きらしき男子生徒に声をかけられた。

 

「どうぞー、お気軽にご覧下さい!

あっ、そこのカップルのお二人もいかがですか?」

「!?」

「あ、いや…俺たちは…」

「ボ、ボクたち、カ、カップルとかじゃないし!

全然違うから、ね!?」

 

俺が男子生徒の言葉を訂正するより先に、あおいちゃんがより強い口調で否定し、こちらに同意を求めてくる。

まあ、全くその通りなのだが。

 

俺はあおいちゃんの問いに頷いた。

 

「ボクたち急いでるんで!」

そう言って足早にこの場を去って行く。

俺は男子生徒に軽くお辞儀をしてから彼女の後を追った。

 

「ま、まったく何言ってるんだろうね!?

ボクたちがカップルだなんて!」

 

俺の前を歩くあおいちゃんはこちらを見ないまま、困ったように笑った。

 

 

「そんな風に…

恋人同士に、見えるのかな」

 

 

彼女は何かをつぶやく。

しかし、歩きながら発せられた小さなつぶやきは俺の耳に届かない。

 

「えっ?

あおいちゃん、何か言って……?」

 

そんな俺の疑念。

それをかき消すような声が背後から響いた。

 

「ヒューヒュー!

お二人さん、お熱いね〜?」

 

「えっ!?」

「何だ?」

 

俺たちは声の方を振り返る。

そこにはある少女が立っていた。

2人の共通の知り合いでもある、あの少女が。

 

「私というものがありながらデートなんて、いいご身分ね〜?」

 

そう言っていたずらな笑みを浮かべる、その人物の名前は…

 

「た、橘さん!?」

 

そう、彼女だ。

 

 

「橘さんも来てたんだ。

急に声をかけられたからびっくりしたよ!」

「「来てたんだ」じゃないわよ!

私はあんたに会いに来たのよ、ダーリン♡」

「ダーリンって…

どういうことなの、橘さん!?」

「どういうことって…

聖ジャスミンとあかつきの練習試合の後に言ったでしょ?

あの言葉通りの意味ですよ、あおいさん?」

 

あの練習試合の後に橘さんが言った言葉。

 

 

「頑張ったご褒美よ!

あんた、私のフィアンセにしてあげる♡」

 

 

「そんなのキミが勝手に言ってるだけでしょ!?」

「えっ、それが何?

…この文武両道、才色兼備、しかも実家はお金持ち。

そんなパーフェクトなスペックを持っている、この超絶美少女みずきちゃんにフィアンセに選んでもらえるなんて、今すぐひざまずいて私の靴にキスをしてもお釣りが来るくらいに幸せなことよ?」

「なっ…!!」

 

いやいや、そんな関係じゃないから…

あおいちゃんも、そんな真面目に受けないで欲しい。

これじゃ本当に俺が橘さんの「ダーリン」みたいみたいじゃないか。

 

「でもでも!

2人は頻繁に会ってるわけじゃないでしょ!?

そんな情報、ボクが聞き集めた話の中になかったもん!」

「……って、俺の情報って裏でやり取りされてるのっ!?

何その情報網!?

怖っ!!」

 

そんな俺の驚きをスルーして話は進む。

本来なら突っ込みたいところだが、舌戦を繰り広げ続ける女子2人がそれを許さない。

 

「愛は会えない間に育まれるものよ?

それにたまに会うくらいの方が燃えるじゃない♡」

「燃えてるの!?

2人の愛は燃え上がってるの!?」

 

「いやいやいやいやっ!!」

 

あおいちゃんのあまりの剣幕に、俺はぶんぶんと首を横に振る。

 

「ま、冗談はさておき、本題に入りましょうか」

 

ドタバタと騒ぐ俺たちをよそに、橘さんは声のトーンを落としてそう言った。

彼女の顔を見ると、いつものいたずらな笑みは影を潜めている。

その真剣な眼差しは、こちらがドキリとさせられるほどだ。

 

「まずは…瀬尾先輩、地区大会お疲れ様」

「う、うん」

「帝王との試合は残念だったけど、聖ジャスミンの戦力を考えればあそこまで勝ち進んだだけでもすごいことよ。

胸を張っていいと思うわ」

 

橘さんの言葉に俺はかぶりを振る。

 

「でもあの試合、俺がへまをしなければこのチームはもっと上に行けたんだ。

俺、チームのみんなに助けられっぱなしで、大事な場面で力になれなかったから…」

「…何言ってるの?

あんたはチームの3番バッターでリリーフエース、そしてキャプテン。

でもそれだけ。

それだけのことで敗戦の全責任を背負わなきゃいけないの?

じゃあジャスミンが勝ち進んだとして、あんたは何回マウンドに立って、何回完璧に抑えなきゃいけないの?

何回の失敗が許されるの?」

「で、でもマウンドに上がる以上は役割を果たすことが求められるでしょ?

俺はそれができなかったってことだよ」

 

この返答に、橘さんは瞳を閉じた。

そして首を小さく横に振った。

 

「そうだけど、そういうことじゃないのよ…

あんたが完璧な仕事をすることで勝利がつかめる…それが前提、当たり前になっているチームの状況。

そして…それを受け入れてしまっている選手たちの意識こそが勝ち切れなかった原因じゃないの?」

「……」

「…お人好しの先輩が仲間を悪く言いたくないのはわかる。

でも、今の状況はチームにとっても、あんたにとってもプラスにはならない。

みんな不幸になるだけよ」

 

「そ、そんなこと…」

 

「そんなことないよっ!!」

 

俺よりも先に橘さんの言葉を否定する声が響く。

…声を上げたのは、あおいちゃんだった。

 

「確かにジャスミンのみんなは光輝君に頼りがちな部分があるかもしれない。

でも、力を借りながらだけど…支えられながらだけど!

みんな1人で立って、歩いて行けるように頑張ってるんだよ!

外から見てるだけの君じゃわからないかもしれないけど、同じような境遇のボクにはわかるんだ!!」

 

「……っ!?」

 

橘さんはあおいちゃんの剣幕に少し驚いたように体を固くする。

そして、しばらくの沈黙が訪れる。

橘さんはそれを破るように、「ふぅ…」と息を吐いた。

そして言葉を紡ぎ始める。

 

「それじゃあ、あおいさんは…」

「…何?

言いたいことがあるなら言ってみなよ!」

 

橘さんの視線が泳いでいる。

その目には迷いがあるように見て取れた。

しかし彼女は止まらない。

意を決したように話し始める。

 

「あおいさんは、羨ましいと思ったことはないんですか?

瀬尾先輩が聖ジャスミン学園ではなくて、恋々高校に入学していれば一緒に野球ができたのにって…

そう考えたこと…ないですか?」

 

「…え?」

それは…どういうことだ?

 

「……」

「先輩がもう一度野球をすることになったきっかけは、太刀川さんが1人で野球をやっていたから。

その姿があまりに悲しくて、辛そうだったから…つまりは同情したからです」

 

あおいちゃんがキッと橘さんを睨みつける。

 

「…誤解しないでくださいよ。

先輩が太刀川さんを助けようとしたことが間違っているとは言いません。

でも、あおいさん。

もしあおいさんが太刀川さんの立場だったら。

そこに先輩が居たならば、先輩はきっとあおいさんを助けようとしたはずなんですよ」

「……!!」

「誰だってよかった…同じことだったんだ。

困っている「彼女」の近くに先輩が居たら、優しい先輩はカワイソウな「彼女」に手を差し伸べてあげたでしょう…

だったら!

…だったら、私だっていいじゃない!」

 

橘さんは俺の方に向き直る。

そして、俺にこう告げた。

 

 

「私たちの…聖タチバナ高校の野球部に入ってくれませんか?」

 

 

「………えっ?」

「転校したら1年間は公式戦には出場できません。

でも先輩が試合に出られるようになる頃には…私たちがいます」

「ちょ…ちょっと待ってよ!

それは、一体どういう…?」

「理由は、先輩がこの話を真剣に考えてくれるならお話しします。

でも、悪い話じゃないと思いますよ?

私と他の何人かのメンバーは来年の春、聖タチバナに入ります。

全員、中学では名の知れた実力者です。

私たちとやる野球なら、先輩はもっと高みにいけます。

今の環境では経験できない、「仲間と切磋琢磨する日々」が過ごせます。

それも、あかつきとは違うベクトルの…「互いを信じ合う野球」の中で」

 

「そ、そんなことありえないよ!

大体そんな誘い、引き抜きと同じじゃないか!

許されるはずないよ!!」

 

あおいちゃんが放った否定の言葉。

それに橘さんは笑みを浮かべる。

 

「許されるんですよ。

2人とも知ってるでしょ?

私は…橘の家はすごいお金持ちなんですよ。

だから何でもできるし…何だって許される。

…許されてしまうんです」

 

そう、悲しげに笑って。

そして、もう話は終わったとばかりに、橘さんの顔はいつもの明るい表情へと戻った。

 

「この話は、先輩1人で決めてもらっても、聖ジャスミンのみなさんと相談してもらっても構いません。

でも、先輩は私に借りがあるでしょう?」

 

…あかつきとの練習試合のことだろう。

確かにあの試合は橘さんの協力がなければ実現しなかった。

でも、だからって…

 

「先輩、また会いましょう。

あの借りを返してくれることを期待してます。

私に対して少しでも感謝の気持ちがあるなら…」

 

それに続く言葉を、俺は忘れられない。

 

「私を助けてくださいね」

 

泣きそうなその顔が。

頭に残って離れないんだ。

 

 

こうして、大きな選択を突きつけられて、高校1年の学園祭は終わった。


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