ようやくIS本編に突入です。
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2015.11.14:サブタイトル変更
第07話 IS学園入学
女……女、女、女……
右を見ても、左を見ても……どこを見ても女……
女 女 女 女 女 女 女 女 女 女 女 女
女 女 女 女 女 女 女 女 女 女 女 女 …… 男!
女性しかいないこの空間の中で、自分以外の男性を見つけて狂喜する。
ここに男がいるという事は、彼も俺と同じ境遇なのだろう。
女性の中に男が1人という地獄の空間で3年間過ごす事にならなくて良かった。
俺こと織斑一夏がなぜこんな事になっているのかというと……
高校受験の会場で迷子になり、展示してあったISに触れたら起動した。
知っての通りISは女性にしか動かすことはできない。
それを男である俺が動かしてしまい、現場は大パニック! 俺も大パニック!
その後、世界中にこの事がニュースとして流れたり、政府に保護されたり、気付けばここ、IS学園に入学する事になってしまった。
適性試験とか言っていきなり教員と戦わされたり、寮の部屋はあるけど入学手続きがまだ終わってないから入れないとか、いろいろゴタゴタした日々が過ぎ、今日からIS学園での生活が始まる。
最初は不安しかなかったが、箒もいるみたいだし同じ境遇の男もいるという事でなんとかやっていけそうだと思った。
……
…………
ごめん、やっぱ無理。女子の視線がきつい。
今自分が座っている場所にも問題がある。
最前列の教壇の目の前……教室中のほぼ全ての席から見る事ができる。
もう1人いる男の席は窓際最後列……誰もが憧れるベストポジション。
お願いします。変わってください。
しばらくすると緑髪の教師が入ってくる。教壇に立ち自己紹介を始める。
「皆さん、入学おめでとうございます。私は副担任の山田真耶です」
その後簡単にIS学園について説明をするも、生徒の反応はない。
それもそのはず、生徒は皆2人しかいない男が気になってしょうがないのだ。
とはいえHR中なので一応は教師の方を見ている――つまり俺を見ている。
窓際にいる箒に助けを求めて視線を送るが無視されてしまった。
「それでは、出席番号順に自己紹介してください」
じ、自己紹介……まずい、どうしよう。何を喋ればいいんだよ。
普通の学校なら普通に自己紹介すればいいが、ここでは存在そのものが全員に注目されている。
下手なことは言えない。
「では次はアスカ君ですね」
その言葉と同時に皆勢いよく後ろを向いたので、俺もつられて後ろを向く。
どうやら俺よりももう1人の男の方が、出席番号が早いようだ。
(良かった。俺よりも先に自己紹介してくれて……)
よく見ると彼も女子の視線に威圧され、どう自己紹介すればいいか迷っているようだ。
「シン・アスカです。ドイツから来ました。
日本に来て日が浅いので、日本について色々と教えてくれると助かります」
シンの自己紹介が終わると、教室内に歓喜の声が響く。
「キャー、外国人だ!」「赤目がかっこいい」「いじめてください!」
そんな女子たちの奇声など、今の俺には耳に入ってこなかった。
シンの自己紹介は普通だったが、俺の自己紹介の参考にはならなかった。
(どうしよう……俺日本生まれの日本育ちだから同じこと言えねえ)
「織斑君、織斑一夏君!」
「あ、はい」
気付けば自分の番になっていた。
考えはまとまっていないが、山田先生に催促されて自己紹介を始める。
「お、織斑一夏です。よろしくお願いします。
……
…………以上です」
皆がずっこける音が聞こえるが俺はこれで打ち切ろうとする。
しかし次の瞬間、俺の頭は盛大にはたかれて乾いた音が教室に響く。
「痛てっ! あ、千冬姉」
「自己紹介もまともにできんのか。それと織斑先生と呼べ」
そこには出席簿を持った俺の姉、織斑千冬がいた。
「私がこのクラスを担当する織斑千冬だ。
私の仕事はお前たちを使い物になるようにすることだ。
できない者はできるようになるまで指導してやる。
逆らってもいいが私のいう事はよく聞け!」
彼女の自己紹介と共に教室はまた歓喜に包まれる。
「「キャアーーー」」
「本物だ、本物のブリュンヒルデだ!」「あなたに憧れてIS学園に来ました!」
「私もはたいてください!」「…………(返事がない失神しているようだ)」
千冬姉も呆れていたが、一喝してHRを進める。
こうして俺の……IS学園での生活が始まった。
――――――――――
(な、なんだ……この居心地の悪さは)
シン・アスカは女性の視線に耐えていた。
教室の外には男性IS操縦者を見ようと他のクラスや学年の生徒がたくさん集まっている。
周りの視線に威圧され、彼はただ黙って席に座っていることしかできなかった。
そんな中もう1人の男、織斑一夏がこっちに来た。
彼もこのプレッシャーに耐えきれなかったのだろう。
「よう、俺は織斑一夏。数少ない男同士、これからよろしくな」
「ああ、俺はシン・アスカだ。よろしくな」
そう言うと自然と互いに手が伸び、固い握手を交わす。
互いに言いたいことは理解している。
この地獄の空間を共に乗り切るためには仲間の存在が不可欠だ。
そんな中、黒髪のポニーテールの女性が声をかけてくる。
「すまない、一夏少しいいか?」
「あ、ああいいぜ。じゃあシン、また後でな。」
そういって一夏は声をかけてきた女性と教室を出ていく。
あの様子からすると2人は知り合いなのだろう。
今度は俺に金髪の女性が話しかけてくる。
「あなたが2人目の男性操縦者のシン・アスカさんですね。
わたくしはイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットですわ」
「確か入試主席で、今年入った2人の代表候補生の内の1人だったな」
「そう、そのエリートであるわたくしとお話しできるだけでも光栄でしてよ」
「最初の成績に胡坐かいて、卒業までに後ろから追い抜かれないようにな」
アカデミーでもこういう奴はいたな……エリートを自称して努力を怠り、最終的に下から追い上げてきた奴らに抜かれて赤服になれなかった奴。
「入試で唯一教官を倒したわたくしに、あなたが追いつけはしませんわ。
ですが、他のクラスにいる候補生なら可能性はありますわね。
一応忠告として受け取っておきましょう」
「教官なら俺も勝ったぞ」
「な、なんですって。わたくしだけと聞いてましたのに」
「まあ、俺は特別枠で後から入ったからな……」
隠蔽工作は上手くいっているので元々はIS学園に入るつもりはなかったのだが、織斑一夏の一件から、彼がISに適応した理由を調べるために急遽入学する事になった。
表向きは2人目のIS適正者……ただし、インパルスしか動かせない不完全な適正者という事になっていて、世間への公表は卒業までしないように手を打ってある。
シンは一夏と違い、所属がはっきりとしているためこのような事が出来た。
「そういう事でしたか、ではあなたもISの操縦には自信がおありのようですね」
「まあな。少なくともあんたには負けないかな」
「そこまで言うとはなかなかの自信のようですわね。
そう言うあなたには一度、わたくしの実力で完膚なきまでに負かして差し上げますわ。
うふふ、その日が来るのを楽しみにしていてください」
そろそろ休み時間が終わるためか、セシリアは自分の席に戻っていった。
チャイムが鳴り、次の授業が始まる。
授業内容はISの基礎知識だ、この学園に入る生徒なら既に知っている内容でしかない。
途中一夏が必読参考書を読まずに古い電話帳と間違えて捨てたことが発覚し、織斑先生からお叱りを受けた以外は順調に授業が進んでいく。
一夏はずっと頭を抱えていたが……。
そして授業が終わる10分前に織斑先生がクラス代表について話をする。
「さて、今からクラス代表を決める。
クラス代表は再来週に行われるクラス対抗戦にでたり会議や委員会に出たりする。
決まると1年の間変更はしないからそのつもりで。
自薦他薦は問わない。誰かいないか」
「織斑先生、もし候補者が複数の場合はどうなさるのですか?」
セシリアが立ち上がり、質問をする。
「じゃんけんでも投票でも、本人同士が納得するならどんな決め方でもいいぞ。
で、お前は立候補するのか?」
その言葉を聞いてセシリアは確信する。
これを機に先ほどの宣言を実行するべきだと。
「ええ、わたくしが立候補しますわ。
そして、シンさんをクラス代表に推薦しますわ」
その言葉にシンは驚き、一夏はとりあえず自分が候補にされなくて安心している。
クラスの皆も、立候補しておいてシンを推薦するセシリアの意図が分からなかった。
「代表はやはりクラスで最も実力がある者が務めるべきです。
いい機会ですからあなたにわたくしの実力を教えて差し上げます。
ですからあなたにISでの勝負を申し込みます!」
正直クラス代表になる気はないが、イギリスの第3世代型IS相手にインパルスの稼働データも取れるし、なによりここまで言われたら受けないわけにはいかなかった。
「ああ良いぜ。その勝負受けてやるよ」
「良いだろう、アリーナを使ってクラス代表を決める。異論はないな」
織斑先生はそう言って2人に確認を取る。
2人に異論はなかったが、ある生徒が慌てて進言する。
「異議あり! 織斑君も推薦します」
「そ、そうだよね。せっかくだし織斑君が代表やっても良いかも」
「うむ。なら織斑、アスカ、オルコットの3人で良いな」
「ちょっと待ってくれ。俺は勝負するなんて……」
このままシンとセシリアで代表を決めるものだと思っていた一夏は、突然名前が上がり慌てて辞退しようとする。
「このような選出手段になった以上、男のあなたがわたくしに勝てないのは明白です。
ですから、負ける前に辞退するのも仕方の無い事ですわ。
あ、シンさんは辞退しないでくださいね。わたくしの実力を直接お見せできなくなるので」
セシリアの発言で、辞退する気は失せた。
シンに勝負を挑んだのだって、男は女に勝てないと見せつけるためだろう。
ISが使えない男は弱いと女性は言う、ならISの使える男は?
「そこまで言われたら、はいそうですかって引き下がるわけにはいかないな。
良いぜ、俺もやってやるよ。男の意地って奴を見せてやるよ」
「ではあなたにも教えて差し上げましょう。
このわたくしの、セシリア・オルコットの実力を」
「よし、話はまとまったな。では来週に第3アリーナでクラス代表を決める」
こうして来週クラス代表を決める勝負が行われることになった。
今だから言える……実はヒロイン未定だったりする。
さすがにそろそろ決めてフラグを立てていかないと……。