更新履歴
2015.05.17:加筆
2015.11.14:サブタイトル変更
2月になりようやく第3世代型ISインパルスが完成した。
完成と言っても本家のシルエットに当たるパッケージはまだ完成していないので、インパルスの素体だけだが……それでも拡張領域に武器を入れているのでそれなりに戦える。
元のままではハイパーセンサー等といったISの一部機能が使えないので、インパルスに再構築した際に男性操縦時用の補助装置を搭載した。
この補助装置はIS以外の兵器に使用されている物なので、性能面ではISには及ばない。
それでも本来ISが持っている機能は一通り揃えてある。
PICの制御が難しいため、シン以外にはとても使いこなせないと思われがちだが、PIC以外はそれなりの技術があれば使いこなせる。
PICを使用しない――つまり飛行を諦めて陸戦に徹すれば軍人なら使いこなせるだろう。
歩兵用のパワードスーツと考えれば、現行兵器と同等のセンサーと現行兵器に耐え得るエネルギーシールドを搭載し、さらには手持ちサイズのビーム兵器も搭載可能。
それでいて重量を気にせず武器を搭載でき、稼働時間も長いという超性能である。
ISコアが個数限定であるため、この性能でも貴重性に見合わないが……。
――――――――――
シンはインパルスの待機形態であるカードを手に持って眺めている。
形状は四角で、中央に半球の突起があり、それを押すことでインパルスが展開される。
今日はついにラウラとの再戦だ。稼働試験はすでに済ませてある。
「シン、準備ができ次第始めるぞ」
主任からのアナウンスは入ったので、ISを展開する。
インパルスそのものの全身装甲だが、顔だけは覆われていない。
MSを参考にして作られたので一般的なISとは異なる構造をしている。
それはISの手足がパイロットの長さと同じ事だろう。
ISはパイロットの行動を先読みして機体の手足を動かしている。
これによりISはかなり高い追従性を誇っている。
だがインパルスにはその機能はないので、パイロットの動きをトレースして長い手足を稼働させるよりは、パイロットの動きそのもので直接動いた方が速いからだ。
世界最大のパワードスーツ製造会社である自社の技術をふんだんに使いたいというのもあるが。
パイロットの動きそのものが機体の動きになるので、IS以上にパイロットの身体能力に依存する。
本体の固定武装はなく、拡張領域に入っている武器と最初から出してある武器がある。
最初から装着している武装は、腰の裏側にビームライフル、腰の両側にビームサーベル、左手にインパルスと同型の物理シールド、両足側部に高周波ナイフ。
そして拡張領域には予備のライフルとシールドの他に、マシンガン、狙撃銃、大型実体剣がある。
<<戦闘開始>>
「シン・アスカ、インパルス行きます!」
戦闘開始の合図とともに出撃する。反対側のピットからはラウラが出てくる。
互いに目が合うも、前回とは反対に今度はシンが先に攻撃する。
シンが放ったビームライフルを避けつつラウラはワイヤーを射出する。
今度は最初から6本全てで攻撃にかかる。
シンはライフルを左手に持ち替え、右手にビームサーベルを持つ。
「この前みたいにはいかないからな」
前の機体で避けれて、インパルスで避けられない道理はない。
シンはワイヤーを避けつつビームサーベルとライフルで切断していく。
ラウラはワイヤーを継ぎ足しつつ接近する。それに答えるようにシンも接近する。
挨拶代りのレールカノンを避けると、ビームサーベルとプラズマ手刀が激突する。
「この程度で勝てるとは思ってないさ」
数秒の鍔迫り合いの後、両者は反発するように武器を引く。
「だからこそ、出し惜しみはしない!」
ラウラは叫ぶと同時に、弾かれていない左手を突き出す。
シンは左手のライフルで牽制し、右手のサーベルを構えなおす。
ラウラは一切の回避行動をとらず、ビームをバリアで受け止めてシンの動きを止める。
「体が動かない。これがAICって奴か」
AIC――対象の慣性を停止させる事ができるとは聞いてはいたが、止められるのは銃弾程度で、まさか機体ごと止めれるほど強力な物だとはシンは思っていなかった。
だからこそ接近戦を挑んだのだが、それは失敗だった。
「もらった!」
間髪入れずにラウラはレールカノンを動けないシンに向けて放つ。
砲弾が爆発した反動でAICが解除され、シンは後方へ吹き飛ぶ。
だがシンは後方へ吹き飛びながら勢いを殺し、自らの意思で飛行する。
「とっさに拡張領域からシールドを展開して直撃を避けたか……」
たしかに直撃は避けた……だが機体のエネルギーはかなり削られてしまった。
シンはサーベルをしまい、マシンガンを出す。
今度は不用意に近づくことはしないで距離を取って戦う。
(やはりAICを警戒して近づいてこないか。
もう一度こちらから接近したところであいつは乗ってこないだろうし……)
ラウラは前回と同様にワイヤーにレールカノンを織り交ぜて攻撃してくるが、今度はワイヤーを切れるため、攻撃密度は下がっている。
そのためシンの攻撃頻度もそれなりにあり、ワイヤー操作とAICに集中力を振り分けているが、少しずつ被弾が積み重なっていく。
十数分の攻防で、互いにエネルギーは残り少ない状態になっていた。
だが今はシンが攻撃をして、ラウラがそれを避ける図式に逆転している。
ラウラのワイヤーは既に無くなっており、レールカノンの弾も尽きている。
だがシンもAICに止められないビームライフルを多用しているため、最初の被弾と合わせてエネルギーがかなり減っている。
(このままだとこっちが先にエネルギー切れだ。
マシンガンの弾もそろそろ無くなるし、この状況でスナイパーライフルは使えない。
ならAICをどうにかして接近戦を仕掛けるしかない)
シンはマシンガンをしまい、アロンダイトをベースに作った大型実体剣を取り出す。
だがこのまま一直線に接近してもAICで止められるだけなので……
「せええええい!」
掛け声とともに投げ槍の要領で剣をラウラに向けて投げ飛ばす。
剣に仕込んだPICを使って加速をつけ、剣は銃弾のように飛んで行く。
シンは足からナイフを取り出して接近する。
避けるにしろAICで受け止めるにしろ、その後にAICを使う暇を与えず倒す算段だ。
ラウラはAICで剣を受け止めた。
間髪を入れずにシンが横に回ってナイフで攻撃する。
「AICは使わせない!」
シンのナイフによる猛攻に、ラウラはプラズマ手刀で応戦する。
しかし、インパルスに比べてレーゲンの腕は長かった。
そのためIS1機分も離れていない距離では小回りの利くインパルスが有利だった。
シンの攻撃に次第に追い詰められていくラウラ。
(くっ! 避けれない……それなら!)
エネルギーは少ないとはいえまだ残っている……一撃なら直撃しても大丈夫だと判断したラウラは、防御を捨てシンに攻撃する。
互いに攻撃が直撃し大きく仰け反る。
この攻撃で両者のエネルギー残量は1桁になる。
これはつまり先に攻撃を当てた方が勝者となる。
「「はああああ!」」
互いに声を上げ、崩れた姿勢から右手を相手に打ち込む。
<<戦闘終了>>
戦闘終了のコールがかかる。
しばらくの静寂の中、先に声を発したのはラウラだった。
「私の負け……か」
ラウラの拳はシールドで受け流され、シンのナイフがレーゲンに刺さっていた。
負けた事は悔しいが、試合そのものに後悔はない。
「ふっ、いい試合だった。だが、次は負けん」
「ああ、俺だって負ける気はないからな」
自然と互いに手が伸び、両者は機体越しに固い握手を交わす。
この模擬戦から数日後……あるニュースが報道され、世界を震撼させる。
世界の流れは大きく変わり、シン達もまたその流れの中へと踏み込んで行く。
戦闘場面のテンポはこんなんですが大丈夫かな?