紅い翼と白い鎧【IS】   作:ディスティレーション

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Wiki見てたら千冬さんの身長166cmてあってビックリしました。
一夏(172cm)より背が高いイメージだったので、シン(168cm)とほぼ同じなのは意外でした。
あ、ここのシンは原作終了から結構時間が経過しているので、身長は一夏とほぼ同じくらいです。



第28話 銀の福音Ⅰ

実験中のISが暴走し太平洋を横断している。

この機体を洋上で確保するために、臨海学校中のIS学園に協力が要請された。

この要請を受け、実習は中止され生徒は旅館の部屋で待機することになった。

その中でシン、一夏、セシリア、鈴、ラウラ、シャル、簪は専用機持ちということで先生たちのいる臨時管制室に集まっていた。

 

「緊急事態ではあるが、専用機を持ったお前たちにやってもらうことがある」

 

「この島の防衛や周辺の海上封鎖の手伝いですか?」

 

織斑先生の発言に緊張から息をのむ者が多い中、シンが率先して発言をする。

専用機持ちとは言え学生に担当させる役割というのはたかが知れているため、皆の緊張を解すための質問だった。

しかし、返ってきたのは予想外の答えだった。

 

「いや、ターゲットと交戦して確保してもらう」

 

「教官方にもISはあるはずです。なぜ我々が?」

 

「それについては私から……まずはこのデータを見てください」

 

ラウラとしては軍人である以上、自分が交戦すること自体は問題ではないが、他の者は代表候補生とはいえ学生という立場であり、交戦する教師陣の援護をすることはあっても最初から直接交戦させることは合理的ではないため理由を問う。

そして、その質問に答えるために山田先生がターゲットの情報を見せる。

 

「無人機だって!?」「これインパルスより速いぞ」「ハァ!? 何このふざけた数値」

「う、嘘ですわよね?」「想像以上だ」「ラファールじゃ無理だよ」「よくこんなISを……」

 

そこに記されたシルバリオ・ゴスペル(銀の福音)というISの圧倒的なスペックに全員が驚愕する。

アメリカ・イスラエル共同で開発した第3世代型ISであり、広域殲滅を主眼に置いた機体である。

武装はメインスラスターに組み込まれた広域殲滅用の特殊射撃兵装一つだけだが、36の砲口から高密度に圧縮されたエネルギー弾を発射できるため圧倒的な制圧能力を誇る。

だが、この機体の最大の特徴は何といっても無人機として開発されたことだろう。

そのため有人による制限を考慮する必要がなくなり、性能を極限まで高めた大型のメインスラスターと両手両足に補助ブースターを搭載することで、現行機をはるかに上回る機動力を得ている。

この現行機を凌駕した機体性能は、最強の第3世代型ISと言っても過言ではない程のものだった。

 

しかし、現在の無人機の技術ではこの機体をフルスペックで動かすことはできず、今回の開発の目的も人間の代替となりえる無人機技術の発展がメインであった。

それがどういうわけか暴走してしまった。

このスペックの機体を止めるのに第2世代型ISでは圧倒的に力不足であるため、第3世代型ISに対抗してもらうしかなかった。

さらになぜIS学園が対応しなければならないのかと言うと、銀の福音の武装の性質上、戦闘時に流れ弾が確実に発生してしまうため被害を最小限に抑えるために洋上で対応しなければならない。

だが各国の軍は洋上への展開が間に合わず、どうしても上陸時に迎撃する形になってしまうため、たまたま近くにいるIS学園に頼んだというわけである。

 

「教員たちのISではターゲットに太刀打ちできません。

そのためどうしても第3世代型を持つあなたたちの力が必要なんです」

 

「作戦としては織斑・アスカ・オルコットが先行し、足止めをして後続を待つ。

合流後は全員で相手をしながら、織斑の零落白夜で落としてもらうつもりだったが……」

 

「事情は分かりました。

ですが訓練を受けていない者が第3世代型ISで出撃をしても本来の実力が発揮できず、作戦に支障が出ると思われます」

 

事情は理解したが山田先生と織斑先生の案にラウラは異議を唱える。

機体性能を考えれば、このような結論になるのは分かるのだが、一歩間違えば大惨事になりかねないこの状況で、スポーツとしてISを動かしてきた彼らを矢面に立たせるには不安が大きすぎる。

 

「ならボーデヴィッヒ、お前から見て作戦に連れて行けるのは誰だ」

 

「私とシン……それとセシリアです。

シンは軍用機との訓練経験があり、他の者は私の知る限り訓練を受けていません。

ですがその中でもセシリアは状況判断能力の高さから可能と判断しました」

 

シンについては本当はCEでの経験からだが、それをこの場で言うことではないため、ドイツにいるときに訓練経験があることにした。

実際に軍用機相手にインパルスの稼働テストをしているため嘘ではないが、1回しかしてない上にあくまで稼働テストだったため、もしこれがシンでなければラウラは選ばなかっただろう。

 

「待ってラウラさん……更識家の一員として私も訓練は受けてる。

専用機はまだ素体しか完成してないけど、私も行けます」

 

軍人のラウラ、訓練経験のあるシンと簪、この状況でも普段通りに動けると判断されたセシリアであれば、先ほどラウラの言った懸念は起きないだろうと織斑先生も思った。

 

「よし、良いだろう。アスカ、オルコットお前たちはどうだ」

 

「俺はいつでも行けます」

 

「わたくしもですわ」

 

本人たちの了承も得られたため、この4人を中心にした作戦を考える。

当初の予定より減った人数は教員で穴埋めしたとしても、機体性能に不安が残る。

 

「待ってくれ千冬姉、俺も行く! 俺の零落白夜ならそいつを倒せるんだろ!?」

 

「そう熱くなるな。お前にはお前でやってもらうことがある」

 

「でも、あいつをどっかの国に上陸させたら被害が広がるんだろ!?

それなのにここで黙って見てろって言うのかよ」

 

「ちょっと一夏、落ち着いて」

 

「そうよ、この島の防衛とか、海上封鎖とか私達にも仕事はあるんだから。

そりゃあ、私だって行ける事なら行きたいけどさ……」

 

銀の福音による被害を事前に防ぐため、一夏は自分もと名乗りを上げる。

せっかく白式と零落白夜という力があるのに、それを守るために振るえないのが嫌だった。

だが今回はスポーツという範疇を超えた出来事のため、シンは一夏に留まるように説得する。

 

「一夏、今回の相手は今までとは違うんだ。

気持ちは分かるが今回は俺たちに任せてくれないか?」

 

「分かった……でも、何かあったらすぐ駆けつけるからな」

 

一夏は完全には納得しなかったが、これ以上言っても自分の意見は通らないし、何より仲間が任せろといったのだから信頼することにした。

一夏が黙ったところで織斑先生が部隊編成を告げた。

 

「では、私・ボーデヴィッヒ・アスカ・オルコット・更識でターゲットと交戦する。

そして海上封鎖はISを持った教師が行い、凰・デュノア・織斑でここの防衛を行う。

山田先生はそれらを統括する通信管制を頼む……何か質問は?」

 

「教官、ISの編成はどうしますか?

今回は敵が敵だけに、可能な限り第3世代型を前に出したいのですが……」

 

「1対1なら私は打鉄でも負ける気はしない……

が、それはあくまで相手が私との勝負を真っ向から受けた場合だ。

逃げに徹されると捕まえるのは不可能だ。

ボーデヴィッヒ、何か案はあるか?」

 

「はい、教官が白式、簪が甲龍、一夏に打鉄、鈴に弐式です」

 

ワンオフ・アビリティこそ使えなくなるものの、戦闘スタイルが同じ織斑先生であれば白式の装備が刀1本しかないことなどデメリットにはならない。

そして簪には未完成の機体を使わせるよりは、使用に特別な適性が必要ない甲龍で出撃してもらう方が作戦成功率は高くなるとラウラは考えた。

 

「なるほど、更識、織斑、凰、異議はあるか?」

 

「「いいえ!」」

 

「よし、では各自競技用のリミッターを解除して機体を交換し――」

 

「ちょっと待ったーー!!」

 

それぞれが作戦準備に取り掛かろうとしたとき、管制室に束が乱入してきた。

どうやら箒を無理やり連れてきたらしく、彼女の後ろで申し訳なさそうにこちらを見ている。

 

「わざわざそんなことしなくても、箒ちゃんが紅椿で出れば万事オッケーだって!」

 

「束、今までの話の流れで篠ノ之を向かわせると思っているのか?」

 

「えーいいじゃん。紅椿のスペックなら銀の福音に対抗できるって」

 

そう言うと束は紅椿のデータを千冬に見せた。

束謹製の第4世代型ISということで覚悟はしていたが、彼女の言う通り対抗できるだけの機体性能を有していた。

が、一夏たちをここに残すと決めた以上箒を前線へ出すわけにもいかなかった。

 

「なら篠ノ之には、織斑たちと共にここの防衛をして貰う。

篠ノ之も準備に取り掛かれ……束もそれでいいな」

 

とはいえ折角の戦力であるので、一夏たちと拠点防衛に当たってもらうことにした。

束としては不服だったがこれ以上は物理的に止められそうな気配がしたため、何も言わなかった。

 

 

 

……

 

 

 

…………

 

 

 

各自の準備が終わり、後は開始の合図を待つだけである。

一夏は教員用の打鉄に乗りながらエネルギー残量を眺めている。

今まで800だったものが競技用のリミッターを解除したことで10000と表示されている。

これはISの全エネルギーであり、今まではリミッターがかかっていたためエネルギーが0になっても実際には9200のエネルギーが残っていたからしばらくは普通に動くことができたが、これが0になれば完全に機体が停止してしまう。

PICも絶対防御も操縦者保護機能も全てが止まるため、戦場でこのエネルギーを全てなくしてしまえばあとは死を待つだけである。

 

「緊急事態ではあるが我々はあくまで協力者だ。いざというときは自分の命を優先しろ」

 

『時間です……織斑先生、アスカ君、オルコットさんは出発してください』

 

「よし、白式出るぞ」

 

全員を舞妓するような力強い声を残して織斑先生が出撃する。

 

「シン・アスカ、インパルス行きます」

 

それが当たり前であるかのような自然な振る舞いでシンが続く。

 

「セシリア・オルコット、ブルー・ティアーズ行きますわよ」

 

プレッシャーを物ともせず自信をもってセシリアも続く。

 

『では、後続のラウラさんと簪さんも出発してください』

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツェア・レーゲン出撃する」

 

この事態でも努めて冷静なラウラが出撃する。

 

「更識簪、甲龍で出ます」

 

機体が変わっても普段通りの動きで最後に簪が出撃する。

出撃した5人を見送りながら一夏たちも配置につき、いよいよ作戦が実行される。

 

 

 




一時的に別機体にのる展開っていいですよね。
シンもいつかはインパルス以外にも乗せてあげたいと思ってます。

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