何かやろうかと思ったけど、気付いたら過ぎてたし、ネタも思い浮かばなかった……
そしてなによりも、何かやれるほど本編が進んでなかった。
そして早くもサブタイの二字熟語縛りに無理が出てきた。(サブタイ書き直そうかな……)
更新履歴
2015.11.14:サブタイトル変更
薄暗い鉄の部屋の中、柱に縛り付けられている少年と、それを他人事のように見つめる私がいる。
彼は確かに今まで苦楽を共に乗り越えてきた仲間の1人だという事は分かるのに、目隠しされているわけでも間に遮蔽物があるわけでも、ましては見えないほど部屋が暗いわけでもなく、彼の顔をはっきりと視覚で認識しているのに、私は彼がどんな顔でどんな表情をしているのか分からない。
この異常な状況や感覚も、今の私には違和感はなく正常異常を判断しようとも思わなかった。
そして後ろから1人の研究員が私に近づいてくる。
当たり前のように見ているはずの顔が分からないが、私に違和感はない。
するとその研究員は、私に拳銃を渡してきた。
その意味は単純――彼を撃ち殺せという事だ。
「そんな、どうしてだよ……おいやめろ、〇%△×」
何の疑問も抵抗もなく、拳銃を受け取る私に彼が叫ぶ。
確かに私の名前を言ったと認識したはずだというのに、そこだけ何て言っていたのか分からない。
「…………」
ただ言われるがままに拳銃を構える。
今の私はただの人形、命令に何の疑問も持つことなく実行する。
「〇%△×、聞こえてんだろ? なあ、何とか言ってくれよ」
無表情に仲間に銃を向ける私、ただ見ているだけの研究員……この中で正常な感覚を持っているのは縛り付けられている彼だけだった。
だがこの状況ではそれが逆転し、正常であることが異常になる。
「…………」
――そして私は引き金を引く。
1発、2発、3発……発砲音が部屋に響く。
そこに一切の戸惑いはなく、私は淡々と彼に銃弾を撃ち込み続ける。
「ちくしょう、なんでだよ……なんで、こんな事に……」
撃たれながら漏れる彼の無念の言葉――その問いに答える者は当然いなかった。
そして最後の1発が眉間を貫く。
アドヴァンスドのおかげかまだ生きていたようだが、彼はもう呻き声しか出せなかった。
その声も次第に小さくなっていき、しばらくすると不気味な静寂に戻っていった。
「これで出来損ないは後1人……」
弾を撃ち尽くした拳銃を渡すと、研究員は受け取りながら私にこう言った。
そしてなぜか彼女の口元だけが鮮明に認識できた。
どんな顔かは相変わらず分からないが、その釣り上った口から笑っているのが分かる。
その顔が非常に不快で、かつ恐怖を覚え、一刻も早くここから離れようと焦燥する。
しかし体は動かない。それどころか思考は相変わらずこの状況に疑問を持たない。
感情と思考の剥離が、より一層焦りを生み恐怖を増幅させる。
(早く、早く! ここから……こいつから離れなければ)
そう念じて体をがむしゃらに動かそうとすると、今度は動く事ができた。
……
…………
気付けば先ほどの光景が無くなり、布団から勢いよく体を起こす。
外から聞こえる雨の音に、先ほどの息苦しさから出る呼吸音が重なる。
「ハァハァ」
呼吸を整えながら辺りを見回す。
同室のデュノアはいないようだが、確かに寮の自室だった。
(私は、私は出来損ないなどでは……)
ただの夢であればどんなに良かったことか……
今にでもそんな言葉が出そうなほど、嫌になるほど現実味を帯びた夢だった。
この嫌な感覚と寝汗を落とすために、ラウラは起床してシャワーを浴びる。
そして着替えが終わった頃には、夢の内容を思い出せなくなっていた。
――――――――――
「2週間後に行われる学年別トーナメントについてだが――」
織斑先生が今度の学校行事についての説明をしている。
今の僕はその言葉が耳に入ってこず、配布プリントを眺めながらため息をついている。
転入してから1週間、自分の想像を超えた事が次々と起きている。
まずは一夏以外の男性操縦者がいた事、でもそれ以上に驚いたのが寮の部屋がボーデヴィッヒさんと同室だった事だ。
なんでも1年生の部屋はもう全部屋に2人ずつ入っていて空きが無いからだそうだ。
そして彼女は男である僕と同室になっても気にも留めないばかりか、追い打ちをかけるように毎日全裸で寝ている。
僕は彼女をどうこうする気など微塵も起きないからいいのだが、男性と同室でもお構いなく全裸で寝るというのは、女の子として危機感が無くて心配になる。
でも、本当に悩んでいるのは彼女の事ではなく僕自身のこと。
彼女の事を言い訳にして、今まで考える事から逃げてきた。
それは僕がIS学園に来た本当の理由、それを果たすべきかどうかについて……
「なあ、シャルルは誰と組む?」
気付いたら織斑先生の話が終わっており、ボーっとしている僕に一夏が話しかけてきた。
周りを見ると、どうやら今度のトーナメントで誰と組むかで盛り上がっているようだ。
「ラウラさん。貴女が転校してきてくれた事をこれほど嬉しく思った事はありませんわ」
「奇遇だな、セシリア・オルコット。私もだ」
教室の一角から聞こえてきた声が気になって、僕と一夏はそちらに目を向ける。
そこでは2人が睨み合いながら対峙している。
僕が知る限りでは特別仲が悪いようには見えなかったのだが、最近何かあったのだろうか?
「2人の間に何かあったの?」
「俺に聞くなよ……2人は何か知ってるか?」
「「知るわけないだろ」」
一夏がシンと篠ノ之さんにも聞いてみたけど、誰も心当たりはなかった。
でもこのままにしておくわけにもいかなから、シンが止めに行くことになった。
一応僕らも後ろからついていくことにした。
「ラウラ、セシリア。喧嘩なら余所でやってくれ。
それと、ペアがまだ決まってないならどっちか俺と組んでくれないか」
シンの言葉を聞いて流石に恥ずかしくなったのか、2人は睨み合いをやめてシンの方を向く。
逆にクラス中がシンからペアに誘われた2人に対して羨ましさを爆発させることになったのだが、シンも含めて僕らは気にしないことにした。
「おっと、わたくしとしたことが失礼いたしました。
ですが、シンさんと組むわけにはいきません。私はシャルルさんと組みますから」
「お前と組んだらトーナメントで戦えないだろ。
ペアはそうだな……おい織斑一夏、私と組め」
「え、えっと……よろしくね、オルコットさん」
いきなり僕の方に話を振ってきたのは驚いたけど、断る理由もないから承諾した。
「え、俺!? シンじゃなくて、本当に俺でいいのか?」
「何度も言わせるな。ペアを組んだらトーナメントでシンと戦えないだろ」
ボーデヴィッヒさんはシンとセシリアと戦いたいから一夏と組みたいらしい。
結局一夏は自分がシンと組むという発想に至る事はなく、彼女の申し出を受けた。
「箒、俺と……」
「すまない。私は鈴と組むことになっている」
「はい」
篠ノ之さんは鈴さんと前々から組むことが決まっていたらしく、シンだけペアができなかった。
そしてそうこうしていると、山田先生が教室に戻ってきた。
「すいません。先ほど言うのを忘れてました。
アスカ君とデュノア君は今から職員室に来てください」
クラスの皆に何事かといった表情で見られながら、僕らは山田先生と教室を後にする。
――――――――――
放課後、アリーナの整備室でアスカ君を見つけた。
あの時の私の言葉を覚えていたのか、今回は隣の場所でモニターと格闘していた。
(いた。よし、今日こそちゃんと)
あの時助けてもらった事を改まってお礼をするために、手作りのクッキーを持ってきた。
だが、生まれてこの方異性にプレゼントなど上げた事のない私は、どう渡していいのか分からずにすごく緊張している。
しかも彼は集中しているのか凄い速さでキーを叩いていて、話しかけていいのか迷ってしまう。
「ふう。翼のエネルギー調整は済んだし、一息入れるか」
そうこうしているうちに作業がひと段落して席を立つ。
出口には私がいるので隠れるわけにもいかず、彼と鉢合わせしてしまった。
「お、簪も機体の整備か?」
「えっと、今日は違う。あの時の事、改めてちゃんとお礼をしにきた」
とっさの事で本来の目的も口に出てしまったため、こうなったらもう勢いで言ってしまおう。
「あの日、助けてくれてありがとう。
貴方が助けてくれなかったら、機体だけじゃすまなかった。
それとこれ、クッキー……私が焼いたの、良かったらどうぞ」
ちょっと恥ずかしいけど、焼いてきたクッキーを彼に差し出す。
彼はそれを受け取ると、軽く持ち上げて私に見せる。
「簪に怪我が無くてよかったよ。それと、クッキーありがとうな。
それにしてもこれ、結構焼いたな。大変だったろ?」
「お、男の子だからいっぱい食べると思って……その、多かったかな?」
「俺はそんなに食う方じゃないからな。あ、だったら簪も一緒に食べようぜ」
「うん、分かった」
多いと言われた時はちょっと焦ったけど、こうして一緒に食べられるのなら悪くないと思った。
そして私たちは近くの自販機で飲み物を買い、休憩室でクッキーを食べる事にした。
彼がクッキーをおいしいと言ってくれたことで、今日1日の緊張が全て吹き飛んだ。
……
…………
「そういえば、一夏に宣戦布告したんだって?」
突然の発言に思わず声が出そうになる。
事故の事や彼へのお礼で悩んでいたこともあり、今の今まですっかり忘れていた。
そして冷静に考えると逆恨みである理由を、織斑君の友人であるアスカ君に言いたくはなかった。
「う、うん。織斑君の白式にちょっと思う所があって……。
本当は専用機で戦いたかったけど、それも無理なんだよね。
あの事故で機体の両足は修復不能で、パーツの取り寄せは間に合わないから」
「そうか」
濁して伝えようとして余計なことまで言ってしまったのか、気まずさから会話が止まる。
普段ならこうなっても気にしないのに、どうやって切り出そうかと考えている自分がいる。
そこでふと思い浮かんだことを彼に尋ねてみる。
「ねえ、トーナメント、誰と組むの?」
「俺? 俺はまだ決まってないけど」
1組の専用機持ちの誰かと組むと思っていただけに、彼の言葉を聞いてからはすぐだった。
他人との関わりは面倒だと思う私だけれども、なぜか彼とはもっと話していたいと思った。
彼のことをもっと知りたいし、私の事も知ってほしいから。
なら、もう少し彼と一緒に居てもいいよね。
「じゃあ、私と組んでくれる?」
「いいぜ。よろしくな、簪」
「うん、よろしくね……シン君」
この気持ちは何だろうか?
よくは分からない感情が湧いているけど、不思議と嫌な感じはしなかった。
もしかしたらシン君が、私のヒーローなのかもしれない。
「なあ簪……女装ってどうやってやるんだ?」
「え?」
私の……ヒーロー?
夢の中の感覚を表現するのは難しいですね。
そして今回決定したペアは、シン&簪、一夏&ラウラ、シャル&セシリア、箒&鈴です。
皆さんの予想は当たったでしょうか?
次回からようやく学年別トーナメント開始です……
が、9月に資格試験があるため更新速度はしばらく遅くなりそうです。
申し訳ありません。