紅い翼と白い鎧【IS】   作:ディスティレーション

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クラス対抗戦です。
龍咆が変換できなくて辛いです。

更新履歴
2015.11.14:サブタイトル変更


第12話 クラス代表戦

――

――――

 

「料理が上手になったら、毎日私の酢豚……食べてくれる?」

 

日本には「毎日味噌汁を作ってくれ」という、口説き文句がある。

今作れるのは中華料理だけなので味噌汁の代わりに酢豚を、作るのは私なので相手に食べて欲しいと変換し、出てきたのがさっきの言葉だった。

 

この約束もあり、私は一層料理の練習に力を入れた。

そのかいもあり、中学生になった頃には料理ができると周りに言えるぐらいにはなった。

 

そんな私の料理の上達ぶりを見て言った一夏の言葉には、本当に驚かされた。

 

「なあ鈴。あの時の約束なんだけどさ……そろそろ良いんじゃないか?」

 

まさかこのタイミングで!?

 

確かに料理が上手になったらとは言ったが、私たちはまだ中学生だ。

当然結婚なんてまだ早いのは言うまでもない。そんなの一夏にも分かってるはずだ。

それでも言ったという事は、もうすぐにでも私の料理を”毎日食べたい”ということだろう。

この一夏の告白が嬉しすぎて、その時の私は頭の中がゴッチャになっていたのは、今でも鮮明に思い出せる。

 

「なななな、いきなり何言ってるのよ一夏!

気持ちは嬉しいけど……まだ早すぎるでしょ!」

 

「そ、そうか……でもいつか食わせてくれよな」

 

「も、もちろんよ。その時は毎日腕によりをかけて作ってあげるからね」

 

それからしばらくして……両親が離婚した。

私は母と一緒に、生まれ故郷である中国に帰る事になった。

 

あの時はまさか、こんな場所で再会するとは思わなかった。

そもそも男である一夏がISを動かせるなんて、想像できるわけがない。

でも、そのおかげで再会できた。

 

今度は離れないからね……一夏。

 

――

――――

 

「いつか毎日飯を奢ってくれるって約束」

 

「ハァ!?」

 

一夏の予想外の言葉に鈴は思わず声を上げる。

まさか約束の意味を履き違えられているとは思わなかった。

 

「最低! 女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて。

男の風上にもおけない奴。犬に噛まれて死ね!」

 

「なに言ってんだよ。ちゃんと覚えてただろ!」

 

声を荒げる鈴に反論する一夏。

教室には2人しかいないとはいえ、言い争いは続く。

 

「約束の意味が違うのよ」

 

「じゃあ本当はどう言う意味なんだよ」

 

「そ、それは……言えるわけないでしょ」

 

一夏に詰め寄っていた鈴だったが、本当の意味を言えずに後ずさる。

さらに恥ずかしさのあまり顔を伏せ、声も小さくなっていた。

 

「言ってくれなきゃ分かんないだろ」

 

一夏も一生懸命自分の間違いを正そうとしているのだが、それが鈴に追い打ちをかける。

 

(そんなの直接言えないからああ言ったのに……なんで気付いてくれないのよ)

 

この再会を機にいっそ言ってしまうという考えも浮かんだが、ここまで問答を続けてあっさり答えるというのも癪だった。

 

しばらくの沈黙の後、負けず嫌いな性格ゆえの「気付いてくれるまで言うもんか」と言う意地と、「これを機に言ってしまえ」と言う葛藤の末鈴が下したのは、とある提案だった。

 

「ああっもう。ほんとアンタってば相変わらずなんだから。

じゃあ、今度のクラス対抗戦でアンタが勝ったら教えてあげる。

私が勝ったら1日私に付き合ってもらうから。いいわね」

 

(負けたら潔く言おう、そして勝ったら付き合ってもらってそこで言おう)

 

鈴の心は決まった。

昔から変わらず素直ではないが、強引に理由をつけて、そこではっきりと言うと決めた。

 

「ああ、それでいいぜ」

 

そんな鈴の決意も知らぬまま、一夏はこの提案を受ける。

 

夕日が沈み、暗くなった教室を出た2人は決戦の準備へと赴く。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

そしてむかえたクラス対抗戦、一夏と鈴は初戦で当たる事になった。

両者は既に機体を纏っており、アリーナの上空で対峙している。

 

≪戦闘開始≫

 

「さあ、行くわよ!」

 

すかさず鈴は背中の双天牙月を手に取り、白式に向かっていく。

 

「ああ、かかってこい」

 

一夏も雪片を構えて甲龍を迎撃しようとするが、白式から警告が出る。

 

≪警告 非固定浮遊部位にエネルギー反応≫

 

ハイパーセンサーを通して、甲龍の非固定浮遊部位にエネルギーが集まっているのが見て取れる。

それを見た一夏は即座にフルスロットルで甲龍の後ろに回り込むように飛ぶ。

それにより鈴の持つ青龍刀は豪快に空を切る。

 

「よし、これなら!」

 

鈴が青龍刀を大振りで振り抜いたことでできた隙を一夏は狙う。

非固定浮遊部位はこちらを向いていない。あれが砲口なら後ろは狙えないはずだ。

 

(悪いな、鈴。 零落白夜で、一気に決めさせてもらう)

 

一夏は零落白夜を発動し、雪片を……

 

 

 

 

 

……振り下ろせなかった。

 

「グアッ」

 

凄まじい衝撃が不意に押し寄せ、機体が――身体が軋む。

鈴の真後ろから距離を詰めていたはずなのに、気付けば距離が離されている。

 

「その程度で、私に勝てるわけないでしょ」

 

ブレーキをかけ衝撃を殺した一夏が目にしたのは、余裕の表情でこちらに機体を向ける鈴だった。

 

 

 

「なんだ、何が起きた!?」

 

後ろを取ったはずの一夏が何かに弾かれ、吹き飛ばされた――

何が起きたのか分からず、観客席で試合を見ていた箒はとっさに声が出た。

それは箒だけでなく、観客席のいたるところから湧き上っている。

 

「衝撃砲か……」

 

「ええ、空間に圧力をかけて、それを撃ちだす兵器ですわね」

 

箒の疑問に答えるようにシンとセシリアは呟く。

相手に搭載されている武器に不安を感じつつも、箒は一夏の勝利を願う。

 

(一夏……いや、大丈夫だ。一夏なら勝てるはずだ)

 

(後ろには砲口は見当たらない……攻撃時に展開するのか?)

 

(もしあれが第3世代兵器なだとすれば、ただの衝撃砲ではないはず。

後ろに撃てたのも第3世代兵器としての機能でしょうか……)

 

後ろに撃てる衝撃砲にそれぞれ思考を巡らせながら、3人は試合に目を向ける。

アリーナではちょうど、体勢を立て直した一夏が再度鈴に挑みかかっている所だった。

 

 

 

試合は近づいては離れ、近づいては離れを繰り返している。

一夏としては接近戦に持ち込みたいのだが、衝撃砲を警戒していて、鈴が使おうとすればすぐに距離を取っている。

 

しばらくそれを繰り返していると、痺れを切らした鈴が衝撃砲を連射する。

その猛攻の前に一夏は近づけず、ただ逃げる事しかできなかった。

 

「ほらほら! 何よ一夏、この程度なの!」

 

「んなわけないだろ!」

 

鈴の煽りに答えはしたものの、連射される衝撃砲の前では接近できない。

ハイパーセンサーでエネルギー反応と空間の歪みを見る事で衝撃砲を避ける事はできるが、そのためには完全に後手に回らざるを得ない。

 

このままでは攻撃できない。

 

どうする、どうすればいい? このまま逃げ続けたってやられるだけだぞ。

 

(しっかりしろ。俺は千冬姉と同じ武器を使ってるんだぞ)

 

自分を奮い立たせ、鈴に勝つための作戦を考える。

零落白夜が決まればおそらく一撃……まだ瞬時加速も使っていない。

 

「ふーん。良く避けるじゃない。この龍咆、砲身も砲弾も見えないのが特長なのに。

でも、逃げてばっかじゃあ、私に勝てないわよ!」

 

鈴は攻撃を続けながら、一夏に話しかける。

 

「ああ、分かってるさ。だから、今度はこっちから行くぞ」

 

(前にも撃てる。後ろにも撃てる……なら下からならどうだ!)

 

一夏は急降下し、地面すれすれで方向転換し鈴の真下へ潜り込む。

衝撃砲の撃てない真下から瞬時加速で奇襲をかけるのが一夏の作戦だった……

 

 

 

「残念! 下にも撃てるのよ!」

 

だが一夏の考えは外れ、左右の非固定浮遊部位から真下に向かって衝撃砲が放たれる。

 

衝撃波はアリーナの地面を抉り、一面に砂が舞い上がる。

観客席からは一夏を心配する声が上がっているが、鈴はハイパーセンサーにより一夏が衝撃砲を避けたのを見ている。

おそらく砂に紛れて奇襲を仕掛けるのだろうが、来ると分かっていれば対処はできる。

 

アリーナの中には障害物は何もない。つまり隠れる場所は砂塵の中しかない。

そしてハイパーセンサーの視野をもってすれば、どこから出てこようとも感知できる。

鈴はいつでも衝撃砲を撃てるようにし、高度を上げて飛び出してくる一夏を警戒する。

 

 

 

しばらくすると、砂塵の中から這い上がってくる影が見える。

 

「来た、真正面!」

 

砂塵の中央から雪片を構えた白式が飛び出してくる。

まさか堂々と真正面から来るとは思わなかったが、それが一夏らしいと思いながら、鈴はすかさず準備していた衝撃砲で迎え撃つ。

 

「うおおおおおおおお!」

 

だが一夏は機体を後ろにそらして衝撃砲を避け、瞬時加速で突っ込む。

避けられるとは思わなかったのか、鈴の動きが一瞬止まる。

一夏はそのまま速度を落とさず懐へ飛び込み、零落白夜を発動する。

 

(や、ヤバイ)

 

エネルギーは十分残っている。受け止めてから反撃する余力はある。

だがこの攻撃を受けてはならないと、脳が全力で警鐘を鳴らしている。

鈴はこの直感に従い、とっさに衝撃砲を撃つ。

 

(当たらなくいい。反動で距離を……)

 

衝撃砲を撃った瞬間、振り下ろされた雪片が甲龍のエネルギーシールドに当たる。

ほぼ密着状態のため衝撃砲は外れるが、雪片が振り抜かれる前に反動による離脱に成功する。

 

だが、離脱には成功したものの甲龍のエネルギーはかなり削られてしまった。

 

(ちょっと、何よこれ!?

なんで掠っただけでこんなにエネルギー持ってかれるのよ!)

 

たった一度の攻撃で、甲龍のエネルギーは3桁を切っていた。

もしあのままバリアで受け止めていたら、あれで勝負がついていただろう。

 

(だからって、まだ負けたわけじゃないのよ!)

 

一夏を見れば振り抜いた雪片を構えなおしながら追撃しようとしている。

それに呼応して鈴は双天牙月を構え、スラスターを全開にする。

 

 

 

 

 

だが、再度2人がぶつかる事はなかった。

 

≪警告 上空より未確認機体が接近中≫

 

 

 

 

 

警告の直後、アリーナの天井をビームが貫き、黒い巨体が落ちてきた。

 

突然の出来事に一夏と鈴は、ただ黙って巨体を見つめるだけだった。

 

 

 




龍咆は不可視の砲身・砲弾&射角無制限と単体でも何気に強力な武装だと思うけど、これを生かすならやっぱり砲身が見える通常射撃武器は必須だと思う。
これがあれば通常武器で牽制して見えない衝撃砲で狙い撃ったりと、戦いの幅も広がるし、砲身の視認性を生かして相手を揺さぶるテクニカルな戦いができる機体になると思うんだ……

鈴の性格(=戦闘スタイル)にはまったく合わないけどな!

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