リアルが忙しい→なかなか書けない→また忙しくなる
のコンボを食らっちゃいました。(言い訳ですけどね)
これからはちゃんと、活動報告に遅れる旨を書くことにします。
更新履歴
2015.11.14:サブタイトル変更
「お、幼馴染だと!」
昼食を取りながら、一夏は今朝宣戦布告してきた凰鈴音の事を箒に話す。
それを聞いた箒が聞いてないぞと言わんばかりに食ってかかるが、とうの鈴は余裕の表情で一夏の隣でラーメンを啜っている。
シンとセシリアは少し離れたところで昼食を取りつつ、話を聞いている。
「そうか、箒とはちょうど入れ違いだったっけ。
篠ノ之箒、前に話しただろ。箒はファースト幼馴染で、お前はセカンド幼馴染だ」
ファーストと言われて表情を和らげる箒に、鈴はラーメンを置いて箒の顔を見る。
一瞬不機嫌になるも、すぐに治して箒に挨拶する。
「ふーん、そうなんだ。初めまして、これからよろしくね」
「ああ、こちらこそ」
互いに含みのある笑顔で挨拶を交わす。
「そう言えばアンタ、1組の代表になったんだって。
良かったら私がISの練習見てあげようか。そ、その、私がつきっきりで……」
「そりゃあ助かる」
何故か最後は小声になっていたが、鈴が一夏に提案する。
ISに乗って日が浅い一夏にとって、代表候補生である鈴に見てもらえるのはありがたかった。
最後の小声は当然一夏は聞いていない。
「大丈夫だ、既に練習相手はいるし、敵に教えを乞うつもりもない」
鈴の言葉を全て聞いていた箒は、一夏とは逆にはっきりと拒否を示す。
その言葉にムッとして箒を見る鈴に、箒はキツイ目で返す。
今のやり取りで互いに理解した。
ただの幼馴染ではない、こいつは恋敵であると――
(一夏との付き合いは私の方が長い、それを後から出てきて……)
(彼女が噂の箒って子ね。それにしても……なんてデカさなの、聞いてないわよ!
けど、私たちは既に将来を誓い合った仲なんだから、諦めなさいよね)
火花を散らす箒と鈴を見ていた女子達は
(え、なになに、これっていわゆる修羅場!?)
(薄々思ってたけど、やっぱり篠ノ之さんって織斑君の事……)
(わぁ、オリムー。モテモテだぁー)
などなど、当事者に聞こえないように小声ではあるが、盛り上がっている。
ちなみにシンとセシリアは、巻き込まれるのはごめんだと傍観を決め込み
(一夏……ストレスで禿るなよ)
(お取込み中のようですので、挨拶は後ほどにしておきましょう)
と、シンは知り合いの様に前髪が後退していかないか一夏を心配し、セシリアは状況が落ち着いてから鈴に挨拶しようと考えていた。
彼女たちはまだ睨み合っていて、緊迫した空気が漂う。
そんな空気の中一夏は「まさか鈴が代表候補生とはな。弾が知ったら驚くだろうなー」と、残りの昼食を食べながらのんきに呟いていた。
そうこうしている内にチャイムが鳴り、皆急いで昼食を片付ける。
ここでようやく膠着状態が解け、箒から目を離した鈴が一夏を指さす。
「確かにクラス対抗戦では敵同士……なら、それまで手の内は隠させてもらうわ。
いいわね、一夏! 私と当たるまで負けるんじゃないわよ!
それと、練習が終わったころに行くから、時間空けといてよね」
早継ぎにそう言うと、鈴は食器を持って退席した。
――――――――――
「……」
放課後のアリーナで、箒はIS―打鉄―を無言で展開する。
そこには一切の無駄がなく、代表候補生には及ばないが、IS学園に入るまで本物のISを触ったことのない者にしては、展開時間が早かった。
「箒さん、もしかしてISの搭乗経験がおありですの?」
「……」
こなれた感じでISを展開する箒を見て、セシリアは疑問を口にする。
しかし、相も変わらず箒は無言で……ふくれていた。
「箒、いくら今日は一夏がいな「べ、別に一夏がいないからとか、一夏とあいつが会ってるからとか、そう言うわけではない!」お、おう」
「まあまあ箒さん。落ち着いてくださいな」
シンの言葉を遮るように、箒は顔が赤くなりながら早口で指摘を否定する。
自分の発言で盛大に墓穴を掘っているが、シンとセシリアは昼の出来事から分かりきっている事なので、それ以上何も言わなかった。
「シン! セシリア! 今日は一夏がいない分、私を鍛えてくれ!
クラス対抗戦が終われば、学年別トーナメントがある。
私も一夏に負けてられないからな! さあ、早く始めよう!」
先ほどの発言で墓穴を掘ったのに気付いたのか、箒はさらに顔を赤くして捲し立てる。
箒の言葉に促され、シンたちは訓練を開始する。
……
…………
「――以上で今度のクラス対抗戦の説明を終わる。
専用機持ち以外は必ず期限までに使用するISを申請する事。
質問があれば各自受け付ける。では解散!」
シンたちが訓練している時、クラス代表たちは1つの教室に集められ、織斑先生から今週末のクラス対抗戦についての説明を受けていた。
ちなみに対戦相手は、本番直前に抽選で決めるそうだ。
本日午後の授業で、クラス代表は集まるように通達された。
クラス代表――つまり一夏と鈴もここにいる。
(ど、どうしよう。思いっきり練習終わったらって言ったのに……いや、これはチャンスよ。
今ならあの幼馴染もいない事だし、話したい事はたくさんあるんだから)
そう思いさっそく一夏に声をかけようと彼の方を見るが、普段は学年やクラスが違うため会う事の出来ないISの男性操縦者の1人(つまり一夏)と話をしようと、他のクラスの代表に囲まれていた。
すぐに教室を出て行ったのは教師陣と一部の生徒だけで、集まったクラス代表のほとんどが一夏の周りに集まって色々と話しかけている状態だ。
出鼻を挫かれてしまった鈴は、遠くからこの波が引くのを待つことにした。
話しかけるのはそれからでも遅くはないはずだと、自分に言い聞かせて。
すると、教室の隅で波に乗らず一夏を軽く睨むように見ている生徒が目に入った。
(一夏、あの子に何したのよ。眼鏡の下から睨まれてるじゃない)
鈴がそのまま眺めていると、不意に彼女と目が合う。
彼女は鈴の視線に気づくやいなや、そそくさと教室から出て行った。
鈴は不思議に思ったものの、特に気にはしなかった。
しばらくすると波は引き、くたびれた様子の一夏に声をかける。
一夏から離れたクラス代表たちは次々と教室から出て行き、最後に残ったのは鈴と一夏の2人だけだった。
「へー、一夏ってば人気者だね」
「よせよ鈴。みんな珍しがってるだけだって」
沈みかけた夕日が窓から入り、全体がオレンジに染まった放課後の教室。
そんな場所に今ここに居るのは鈴と一夏だけ……
この凰鈴音、この機を逃すような甘い女ではない!
「やっと、二人きりになれたね。
ねえ一夏、覚えてる? あの約束……」
小学生のころにした約束、彼は今でも覚えていてくれてるだろうか……
「ああ覚えてるさ。あの時もちょうどこんな夕方だったな」
時間が経っているため少し不安だったが、一夏の言葉を聞いて安心する。
そしてそんな一夏言葉を聞いて、鈴と一夏は互いに向かい合ったまま昔の事を思い出していた。
――
――――
夕日に照らされる鈴の顔には、凛々しさとどこか儚げなさを持っていた。
あの時とは違う鈴の顔が綺麗で……俺は一瞬この顔をずっと見たいとさえ思った。
月日が経てば人は変わる。
それでも全てが変わったわけではなく、鈴の活発な所は相変わらずだ。
(箒もそうだったけど、やっぱり久しぶりだと少し変わるよな。
自分じゃ分らないけど、あいつらから見れば俺もどこか変わってるんだろうな)
あの日と今で、あの約束も変わるのだろうか……
鈴の家は中華料理屋を営んでいたので、よく食べに行っていた。
そして当時の鈴は料理を始めたばかりで、お世辞にも上手とは言えるほどではなかった。
それでもめげずに料理の練習をしていて、俺も料理をするので一緒になって練習したものだ。
そんなある日の放課後、ちょうど今の様に夕日の差し込む教室で鈴は俺に言った。
「料理が上手になったら、毎日私の酢豚……食べてくれる?」
料理ができるようになったら、お礼として酢豚を食べさせてあげるという約束。
その約束は未だに果されていない。
中学生になり、十分上手と言えるレベルの中華料理を作れるようになった鈴に、そろそろ食べたいと言ったが、まだ早いと言われてしまった。
これはつまり、俺とと鈴の間にどこまで行けば”料理が上手”と言えるのかという認識が食い違っていたという事だろう。
鈴はまだ自分の料理の腕に満足していない。
となれば鈴の料理の目標は、親父さんではないか?
鈴に料理を教えていたのは親父さんだ。鈴はいずれ父を超えるつもりなのだろう。
そう考えればあの約束も
「将来中華料理屋を継いだ時、お礼に毎日酢豚を奢ってあげる」
という意味で鈴は言っていたのだろう。
そんな鈴が中国の代表候補生になり、なぜISに乗る事になったのかは分からない。
もしかしたらそこには深い事情があるのかもしれない。
それが何なのか俺には分からない。
それでも、もしもの時は俺がお前を守ってやる。
だからいつか、約束通り酢豚を食わせてくれよな。
――
――――
「いつか毎日飯を奢ってくれるって約束」
「ハァ!?」
さっきまでの真面目な顔はどこへやら……鈴の素っ頓狂な声が夕方の教室に響き渡った。
毎日飯を奢ってくれるとはこういう意味だったのか!(錯乱)
なぜ一夏がそういう認識になったのか強引に解釈してみました。