紅い翼と白い鎧【IS】   作:ディスティレーション

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セシリア先生のIS講座は一夏君には早すぎたようです。

更新履歴
2015.11.14:サブタイトル変更



第10話 クラス代表

クラス代表が決まった翌日、1組はグランドでISの実習を行っていた。

整列している生徒の前で織斑先生が指示を出す。

 

「これより、ISの基本的な飛行操縦の実践をしてもらう。

織斑、アスカ、オルコット、ためしに飛んでみろ」

 

3人は列から抜け、それぞれISを展開して織斑先生の合図で同時に飛行を開始する。

地力の差が出たのか、白式がインパルスとブルー・ティアーズを追う形となった。

 

「遅い! スペック上の出力では、白式が最も速いはずだぞ」

 

ISに乗ったのが最近の人にしては綺麗な上昇と飛行ではあったが、織斑先生は激を飛ばす。

 

「よし、急降下から地面ギリギリで完全停止だ。やってみせろ」

 

「了解です。ではわたくしから行かせてもらいます」

 

織斑先生の指示を受け、まずはセシリアが急降下し地面すれすれで停止する。

その後にシンが続き、これも地面すれすれで停止に成功する。

 

「よし、俺も行くぜ!」

 

最後に一夏が急降下を開始する。

すぐに地面が近づき、制動をかけ勢いを殺す。

 

 

 

「あ……」

 

 

 

だが勢いを完全に殺すことができず、気付けば機体の足が地面に着いていた。

 

「誰が着地しろと言った」

 

「す、すいません」

 

「でも綺麗な着地でしたし、他の生徒の見本にはなったかと」

 

織斑先生の言葉に謝罪する一夏と、フォローを入れる山田先生。

事実一夏の着地は合格点級だった。

 

 

 

 

 

「やっぱまだ慣れないな、空飛ぶのって。

自分の前方に角錐を展開させるイメージとか分かんねえよ。

前から後ろに付き抜けるイメージでも普通に飛べるし……」

 

現在織斑先生たちは他の生徒の指導中であり、専用機持ちは休憩中だった。

そこで一夏が、教本に書いてある飛行時のイメージが分かりにくいと物申す。

 

「イメージは人それぞれですのでやりやすい方法で飛べばいいのですよ。

ちなみにただ前方に角錐を展開してもうまくは飛べませんわ。

この方法で飛ぶのでしたら、進行方向を軸として前方の一点を頂点に角錐を描きます。

この時底面は正方形であり、なおかつ軸に対して垂直になるようにすれば頂点から底面の辺への直線が力のベクトルとなるのですから、上下左右のベクトルは相殺され力の向きが進行方向の反対を向いた軸上になるので機体が直進しますわ。

ただ直進するだけでしたらこの方法では非常に面倒なのは事実ですが、この角錐を描くことは旋回時に意味があり、底面を傾ける事でベクトルが相殺されず、力の向きが軸から外れる事で機体が旋回するようになるのです。

これによって前進と旋回を1つのイメージの流れで行えるのが利点ですわ。

角錐なので曲がりたい方向と動かすべき辺のイメージが着きやすいというのもあり、教本ではこの方法を載せているのです。

これよりさらに細かい方向制御を考えるなら角錐ではなく円錐をイメージしてくださいな。

底面の傾きをより細かい方向でイメージするのは円のほうがやりやすいですから。

他の方法といたしましては――」

 

「セシリア……一夏聞いてないぞ」

 

セシリアの教本解説が難しかったのか、一夏は話に全くついてこれていない。

その後すぐに山田先生に呼ばれて飛行実習を再開した。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

放課後、シン、一夏、箒、セシリアはアリーナに来ていた。

残念な事に打鉄は借りれなかったので、箒は見学だが。

 

「まずは俺と近接戦の訓練で、次はセシリアと回避訓練な。

クラス対抗戦まで時間が無いからどんどん行くぞ」

 

「よし、来い!」

 

シンは盾をしまい、ビームサーベルを2本持って白式に接近する。

まずは零落白夜を使わずに接近戦を行う。

インパルスのサーベルを受け流しつつ、一夏は雪片を振るう。

 

そして彼らを余所に、空いているスペースを使ってセシリアは自身の訓練を始める。

撃破不可設定の敵機を表示させ、攻撃を避けながらスターライトとBTで表示したターゲットを撃ち抜く訓練だ。

これをBTの数を増やしながら行い、BT操作中に動けなくなる欠点を克服しようとする。

 

(2基までならなんとか実戦で使えるレベル……まだまだですわね)

 

とはいえ現在の自分のレベルを把握できただけでも意味はある。

セシリアの訓練が終わるころには一夏の方も締めに入っていた。

 

「こんのおおおお!」

 

一夏がイグニッションブーストでインパルスに接近して斬りかかる。

だがシンにあっさりと避けられ、後ろからサーベルが突きつけられる。

 

「そんな分かり易いタイミングで使ったって意味ないぞ」

 

シンからアドバイスをもらいつつ箒とセシリアの元へ降りていく。

ここで休憩しながら前半の訓練のおさらいをする。

 

「シンってさあ、戦い方上手いけど剣の振り方がイマイチだよな」

 

シンとの訓練で思った事をそのまま口に出す一夏。

 

「俺は剣道とかやってないから剣の振り方は我流だよ。

だからまあ、純粋な剣の腕だと一夏には勝てないかな」

 

「同じ接近戦でも一夏さんとシンさんでは根本的に戦い方が違いますからね。

一夏さんにとって必要な技術、それはいかにして接近するかですわ。

ですから今からの訓練では、わたくしの射撃を躱しながら接近してもらいます」

 

セシリアの言葉に「うへえ」と声を出す一夏。

実際に射撃を受けるのは初めてであるが、昨日の試合を見る限り避けれる気がしない。

 

「一夏、なにがなくともお前はまず接近しなければ意味がない。

その実力をつけるのにセシリア以上の相手はいないだろ」

 

「それもそうだな。俺と白式には雪片しかないからな。

シンの様に俺もあの弾幕を華麗に避けてやるぜ!」

 

箒の言葉を受け訓練を開始するも、BT2基と本体の攻撃に翻弄され、接近どころではなかった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

数日後、2組に転校生が来たとクラスで話題になっていた。

 

「今の所専用機持ちは1組と4組だけだから余裕だよ」

 

2組のクラス代表が変わった事で、強い奴なのかと思った一夏にクラスメイトが答える。

そんな話をしていると、扉から誰かが声をかけて来た。

 

「その情報古いよ。

2組も専用気持ちが代表になったの。そう簡単には優勝できないから!」

 

突然の来訪者に全員が唖然としている中、一夏だけが彼女の事を知っていた。

 

「鈴、おまえ鈴か!」

 

「そうよ! 中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 

代表候補生を名乗るツインテールの少女に宣戦布告された一夏だが、格好つけてるのが似合わないと言ったりしている。

クラスの皆はそんな2人をただ黙ってみているだけだった。

 

今度のクラス対抗戦……本当に大丈夫なのだろうか。

 

 

 

 

 

……

…………

 

 

――所変わってイギリス

IS開発局では、ある会議が開かれていた。

 

「さて、先日IS学園のセシリア・オルコットから4月期中間報告書が届いた。

その報告書は各自既に読んでいるだろうから前置きはこれくらいにして本題へ入ろう。

単刀直入に言うが、BT兵器がこのままの状態では欧州連合の次世代機選定計画、イグニッション・プランで我が国のティアーズ型が選ばれることはないだろう」

 

議長である初老の女性の声が会議室に広がる。

欧州連合における第3世代型ISの次期軍用主力機を決めるイグニッション・プラン。

ティアーズ型以外にドイツのレーゲン型、イタリアのテンペスタⅡが候補に挙がっている。

ティアーズ型の特長は何と言っても遠隔誘導兵器であるBT装備である。

だがBT適性が最も高いセシリアですら、4基同時使用で自身の動きが止まる有様だ。

今までは包囲攻撃により本人が動かなくても相手を圧倒できると言ってきたが、送られてきた戦闘記録を見れば無理がある事は一目瞭然だ。

 

「それは前々から言われてきた事でしょう。

それなのにサイレント・ゼフィルスのBTの機能を増やして、あろうことか6基同時使用での攻撃と防御の使い分けを要求した結果、誰も満足に動かせないのが現状です!」

 

若い女性がそれは前から分かっていた事だと非難する。

事実を指摘されて静まり返る会議室。だがそこで眼鏡をかけた女性が発言する。

 

「とにかく今はBT兵器の使い勝手の向上が必要という事です。

そうなると、考えられる対処法はBT兵器を諦めて最初から作り直すか、自動操作あるいは操作補助システムの導入のどちらかでしょうか」

 

「諦めるのはまだ早いとして、却下。

自動操作だってできれば最初から搭載している。今のままではできない。

操作補助なら何とかできるかもしれないですけど、劇的に使いやすくはなりませんよ」

 

若い女性が提示された内容に対して現状を説明する。

 

「あ~あ、ISが勝手にBT操作を学んで補助してくれれば楽なのにな~」

 

なんとも投げやりな発言が聞こえてきて全員が発言者に視線を送る。

本当にそうなら良いのは確かだがそうは言ってられないだろうと全員思っていた。

 

(ISの自己進化とか、あてにならんしな~。

二次移行なんてそうそう起こらない事象を願うだけじゃだめだよね。

進化しなくていいから成長してくれないかな~。

ん? 成長? 成長するシステム……それってつまり人工知能?)

 

「そうだ! AIに補助してもらえばいいんだ!

ブルー・ティアーズに補助AI積んでBT操作の経験積ませて、ある程度成長したら学習結果を取り出してそれを元に補助制御システム作るのはどうでしょう!」

 

先ほどの投げやりの発言をした女性が自分の言葉で閃いたことを発言する。

 

「たしかに方法としてはありだが、肝心のAIはどうするんだ」

 

言いたい事は分かるがそう簡単にできる事ではない。

それについての疑問をある女性が発現するが、意外な事にそれに答えたのは議長だった。

 

「知っている人もいるでしょうが、先月宇宙開発局が無人探査機に搭載するAIを完成させました。

そこと協力すれば補助AIが作れると思うので、私から協力を頼んでみましょう」

 

宇宙開発局は無人機にAIを搭載して、より高度な情報を収集する事を目的とした宇宙探査計画を進行中であり、その無人機に搭載する自己対話型複列分散処理AIを先月完成させたばかりだった。

 

この会議で最終的に、宇宙開発局の協力を得てBT用の補助AIを作る事と、それができない場合は自力で操作補助システムを作る事に決まった。

 

 

 

 




セシリア喜べ! ブルー・ティアーズの強化案が決定したぞ!


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