実は、ホロウでフラグメントな世界からの延長の話であったw
SAOの開始時期もいじってます。詳しくはあとがきにて・・・。
それにしても、あっという間に後ろに下がっていったな。ハーメルンの回転速度は異常やでぇ・・・。
「おめでとう、実に鮮やかな勝利であった」
紅い鎧を纏った男性が、武器を持った少年、少女達へ賞賛を送った。
「君たちは見事アインクラッド100層、その全てを攻略した。ゲームはクリアされた」
その言葉に、彼らは戸惑いを隠せない。2年以上この世界で生きてきたのだ。その全てをしっかりと覚えている。良い事、悪い事。
それ故に今一しっくりと来なかった。すべてが終わったのだと。
「これから順に、君達は現実世界へと帰還していく」
「ヒースクリフ、あんたは?」
ヒースクリフ、それが今倒された男の名。彼こそは、このSAOの創造主たる茅場晶彦その人であった。
「私は負けたのだよ、キリト君。今は創造主権限でこの場にいるが、ここでルールを破ってしまえば、私にとっての唯一の現実を否定してしまう」
故に、ここでお別れだ。そう彼は言った。
キリトと呼ばれた少年は、ヒースクリフに訴えるように話を続けた。
「確かにここは仮想世界で、データの塊なのかもしれない。けど、俺は・・・いや、俺達はここをもう一つの現実だと思っている」
そうしなければ、この2年間のすべてを否定することになる。だからこそ、茅場のしたことは許せなくても、すべてを否定はできなかった。したくなかった。
大切な仲間たちと出会ったこの世界を。
「そう言ってくれるのか、ありがとう・・・」
そう言い、ヒースクリフ・・・茅場は消えていった。
次の瞬間、アインクラッド全体に鐘の音が鳴り響く。
『プレイヤーの皆様に、緊急のお知らせをします。現在、アインクラッドは強制管理モードへと移行しました。ゲームはクリアされました。現在ログイン中のプレイヤーは、強制ログアウトを―――――』
「本当に終わったのか・・・?」
白い鎧を着た一夏・・・アバター名・チナツはその現実に始まりの日と同じ茫然とした表情で呟いた。
「なんて間抜け面してんだ、チナツ」
「間抜け面って、酷いなエギル!?」
「まぁ、お前の気持ちも分からなくもないけどな」
苦笑いをしながら、大柄の男性・エギルは答える。
「二人の言う事もわかる」
「・・・チンク」
そんな話をしている、彼らの下へ眼帯をした銀髪の少女が近づく。
「最後のボスには確かに手古摺らされた。しかし、終わりとした少々、呆気ない気もする・・・。チナツ、お前の気持ちはよく分かる」
「だな・・・。これで、ギルドも解散か」
「元々、私とお前だけのようなものであったがな」
チナツの言葉にチンクは苦笑いをうかべながら言う。
「76層上がってからは、一人増えたけどな」
「そう・・・だな」
一瞬、気持ちが沈む二人であったがチンクは徐に咳払いをする。
「んん! ところでだ、チナツ!」
「お、おう」
「私の現実での連絡先だが、お前も知っての通り少々環境が特殊でな? まずは・・・」
「「「「「あ」」」」」
チンクの話の途中であったが、チナツ、そして聞き耳を立てていた者達含め思わず間抜けな声を出してしまった。なぜなら、話の途中にチンクが消える・・・つまり、現実世界へと帰っていったのだから。
チナツは思わず、ぐるりと仲間たちを見る。チナツが見ると皆思わず目を背け、それぞれ別の話題を出し始める。
「それにしても、現実に戻ったら大変ですね!」
「ほんと、ほんと! 2年以上寝たきりだったからね!」
「私とリーファは多少はマシでしょうけどね」
「スグは帰ったらまず、母さんに謝らないとな」
「う~ん、気が重いなぁ・・・」
「そう言えば、病院はどこになってるんだろう。みんな一緒だといいな」
「さすがにそれは難しいかもね~」
「誰かこっち見て喋れよ・・・」
気まずいのは分かるけどな・・・。けど、なんだかこれも俺達らしい。気が付くと自分の視界もぼんやりしてきた。どうやら今度は、チナツの番らしい。
「じゃ、俺もそろそろ行くみたいだ。じゃあな、皆。今度は・・・」
―リアルで・・・―
そう言い、少年が一人、この世界から脱出していった。
「・・・か・・・ちか・・・」
「ん、んむ・・・」
「一夏!」
「うお!? 寝てないよ!?」
「いや、どう見ても寝ていただろ」
呆れた顔で、目の前の女性は言った。
ここは、とある施設のトレーニングジム。一夏は、この施設の休憩所でリハビリを終え休んでいた。
「(そっか、俺はもう・・・)」
SAOをクリアして、1月以上経過していた。彼は2年以上寝たきりであった体を、少しでも以前と同じよう・・・いや、年相応以上にしたいと思いながらリハビリをしていたのだ。
とは言え、姉である千冬には驚かされた。会員制のトレーニングジムの登録をして、さらには個別のリハビリインストラクターまで付く徹底っぷりである。
正直引いた。だが、それ以上に姉の愛を感じた。
「(けど、それ以上に通帳の金額に驚いた)」
金の心配をしたら、自身の通帳を見せられ驚愕するしか一夏にはなかった。いくら過去、ISの世界大会『モンド・グロッソ』で優勝した経験があるとはいえ、一体今はどんな職場にいるというのであろうか?
「どうした、一夏。そろそろ帰るぞ?」
「あ、あぁ」
SAOで出会った”チンク”からは一時期、軍の教官をしていたと聞いたが、現在は違うようだし・・・。
「なぁ、千冬姉。本当に何の仕事してんだよ?」
「公務員だ」
二年前と変わんねぇし。胡散臭い顔を一夏はするが、ポカリと軽く頭を叩かれる。
「いって!」
「私の事よりもお前は自分の事を気にしろ。今度通う学校は少し遠い。バイクの免許を取るつもりなのだろう?」
「ん~、まぁ、そのつもりなんだけどさ」
SAO被害者達は2年以上というブランクがある。社会人であった人達にも再就職という課題があったのだが、学生には2年以上の勉強の遅れができている。
そのために、SAO被害者の学生には、専用の高等専修学校が用意されるようになっていた。
「ま、勉強の遅れは怖いけど少し楽しみなんだよな・・・」
SAO生還者が集まる学校。それは、かつての仲間たちと共に勉学ができるという事。
「そうか・・・」
そんな一夏を千冬は複雑そうに見る。正直、SAO・・・いや、VR技術に対し彼女は良い感情を持っていない。世界で唯一の家族を一時期奪われたから、当然といえば当然だ。
だが目を覚ました彼は、良くも悪くも成長していた。その事実がある以上、彼女は全てを否定できなかった。
それでも、彼女は積極的にSAO内部での出来事は聞けずにいた。すべてを否定しなくても、肯定もできないのも事実だから。
「って言うか、千冬姉も毎回迎えに来なくてもいいんだぜ?」
「心配しなくても、職場には事情を話して許可を得ている。どうしても駄目な時は、ちゃんとタクシーを予約しているだろう?」
「いや、タクシーって・・・」
昔から、ぶっきらぼうながら大切にされているのは自覚しているが、SAOから帰還してからは少しそれが強くなっている気がする。やはり、自分の考えている以上に心配をかけてしまったのだろう。
かつて友人の妹がSAOで教えてくれた、次々とSAOプレイヤーが亡くなっていく恐怖。それを考えると、本当に申し訳なく思えた。
「ほら、今日はもう帰るぞ」
「その前にさ、篠ノ之神社の道場借りていかない?」
「またか・・・」
彼女はまた呆れ顔で言う。本当にあきれ顔が多い姉であった。
「また相手してくれよ、千冬姉」
SAOから帰ってきて一夏はずっと遅れを取り戻すかのように、リハビリをしていた。それには、剣術も含まれる。眠る前以下になるのは何となく悔しい。そう言うのは本人談である。
「身体もいいが、勉学もしっかりしろ」
「そ、それは学校に行ってからってことで・・・」
だが、彼の根本にあるのはどこまでSAO時代の身体能力に近付けるかである。現実に戻って最初に感じた事は体の重さ。本来ならば、現実の感覚に戻すのが当たり前だが、彼は仮想世界にどこまで近付けるかに拘っていた。
その理由は・・・。
「ん?」
一夏は、前から歩いてきて自分の横を通り過ぎた男性を振り返って、その後ろ姿を見続けた。
「一夏・・・、他の男を見てもお前の背は伸びないぞ?」
「わ、分かってらぁ!?」
せめて、身体能力だけでも男らしく。その目標地点が仮想世界の身体能力である。
彼は、成長期である中学生の間2年と少し、碌な栄養も取れず寝たきりであった。そのため、女性と比べたら身長はあるが、男性の平均的な身長にはどうしても及ばなかったのだ。
顔立ちも、本来ならばもっと男性的になっているはずが、若干中性的である。
「身長が無理でも、せめて筋肉をつければ男らしくッ!」
「アンバランスな体になるから止めておけ・・・」
とにかく、今の一夏は男らしさを求めていた。
筋肉ムキムキ → 男らしい
剣術すごい! → 男らしい
家事が得意! → 今時の男
との事である。
「って、あれ?なんか、騒がしくね?」
トレーニングジムがあるのは、ビルの8階であった。そして、帰路につくために彼らはエレベーターに乗り1階に降りた訳だがどうにも騒がしい。
「あぁ、そう言えばISの展示会が特設ステージで行われてるのだったな」
「え? なんだよ、それ?」
「ほら」
そう言い、千冬はここに来る途中に貰ったチラシを一夏に見せる。
「うわ、ものほんのコア付きのISも1機とはいえあるのかよ?」
ISは・・・正確には、そのコアは世界でも467個しか存在しない。制作者である、篠ノ之束が作るのを拒否しており、それ以外の科学者では劣化品さえ作れないのが現状だ。
「なんでまた・・・」
「コア付きのほうが、客の入りもいい。少しでも、多くの人間の関心を出しIS関連の業種への人手が欲しいのだ」
「はぁ?」
まるで人手不足。そう言う姉に思わず間抜けな声を出した。
「いやいや、人手不足みたいに。IS学園なんて大層なものもあるしさ・・・」
「あぁ、人なら溢れるくらいいるさ・・・操縦者に関してはな」
「・・・うわ、そう言う・・・」
ISは女性しか使えない。しかし、技術者はそう言う訳ではない。にも拘らず、昨今のIS業界は女性のためだけの物という風評が漂っている。それにより、IS男性技術者が目に見えて減ってきているのだ。
それに比べてVR技術には多くの技術者が増え始めている。VR技術は何もゲームだけでなく、医療その他さまざまな事への応用が期待されているからだ。まるで、男性の技術者がそちらに流れる様にである・・・。
「故に今回の展示は、主に技術的な展示の意味合いが多い。女性よりも、男性に興味を持ってもらえるようにな」
「まぁ、パワードスーツなんて男のロマンの一つだしな」
「・・・覗いてみるか、一夏?」
「え? ん~・・・」
彼は何となく、展示会場の方向を見る。
「ま、ちょっとくらい良いか」
何も考えずに、その言葉を口にした。千冬も、なんとなくの意見であった。
それが彼の人生を再び大きく狂わせてしまう事に、二人はまた気づくことができなかった。
○キャラ紹介その2
・チンク(アバター名)
銀髪で眼帯をしている自称リアルでは軍人と名乗る少女。
SAO開始より1週間、フィールドでチナツこと一夏がHPレッド状態で発見した。一夏自身もMMOは不慣れであったが、彼女に関してはゲーム自体が不慣れであった様子でほっておけずコンビを組む。
しばらく、一夏だけが頼りであったため少しずつ心を開くが、一夏のリアルに気付くと複雑な気持ちでデュエルを仕掛けてきた。その後色々あり和解。更なる絆を求め、二人だけのギルド『サマーラビッツ』を設立する。
二人だけのギルドながらも、攻略組の一員として活躍していった。
いったい、何ウラさんなんだ・・・・・・。
うーす、皆のアイドルモッピーだよ。
ここでは、軽い時系列を紹介するよ。
モッピー知ってるよ。無茶苦茶でも皆、寛容な心で許してくれるって事。
小学校5年生 → 第二回モンド・グロッソにおいてイッピー誘拐される
小学校6年生 → 千冬一年間ほどドイツで教官。イッピー寂しい
中学校1年生 → 7月SAOサービス開始。イッピー悲しい
中学校3年生 → 12月SAOクリアされる。イッピー大変 ← 今ココ
大体こんな感じだよ。よろしくね。
モッピー知ってるよ。モッピーもずっと先だけど本編に登場予定だっって事。
(※箒じゃないよ、モッピーだよ!)
モッピー何でも知ってるよ、皆モッピーの出番が来るまで応援してくれるって事。