(……当麻が今、女関係で苦労している気がする)
当麻がそんなふうに苦労している一方で、駿斗は佐天、最愛、海鳥とウィンドウショッピングに連れられていた。
「あ、この小物入れかわいいデザインですよ」
「あった! イルカのデザインのペン立て!」
「これ、C級映画の傑作のデザインのハンカチじゃないですか!」
当然のことながら、ショッピングを楽しんでいるのは3人の少女なのであるが、駿斗も半ば無理矢理に買い与えられた赤いシャツと青と緑のシャツを入れた紙袋を持っている。
当然のことながら駿斗は遠慮したのだが、「人に貸しを作ったままにしようとしたってそうはいかない」と彼女たちが買い与えたのだった。
(ま、こうやって貰い物をするのは嬉しいものだし、いいか)
駿斗はそう考えて、必要以上に遠慮をするのも考えものか、と思い彼女たちの好意をありがたく受け取ったのだった。
「で、これからどうする? 他の服も見てみるか?」
買い物を一通り終わったところで、駿斗が3人に訊く。
「どっかファミレスでも入りません? まあ、いつも通りといいますか」
「そうだな」
そんな少女たちの言葉を聞いた駿斗は、「OK」とだけ言った。
(こういうところが、男女の差なんだろうなあ)
駿斗たちにとって、ファミレスでお茶をしたりだとか休憩に使ったりだとかは基本的にしない。ファミレスは、食事以外には宿題が多いときなどに使うのが基本的な『彼らの』使い方である。
反対に、彼女たちは日頃から結構ファミレスで友達どうしで集まることも多い。彼女たちの場合は、基本的にはドリンクバーオンリー若しくは、スイーツ系を1品頼む、といった感じである。(スイーツを大量に注文する初春は例外)
そんな訳で、彼らは近くのファミレスで休憩することにした。この店にしても、彼女たちにとっては『通い慣れた』店なのであるが、駿斗からすると『時々しか来ない』場所なのであった。
「私はマロンパフェで」
「私も佐天と同じで」
「私も同じです」
女子3人は、季節もののマロンパフェを注文する。
「じゃあ、マロンパフェが3つな。あと、アイスのストレートティーで」
「かしこまりました」
最後に俺が注文をして、店員さんがテーブルを離れたところでゆっくりと話をしていった。
「今更のようだけど、冬服は今日からだったよな。3人とも、似合っていて可愛いぞ」
駿斗がそんなことを言うと、3人の少女の頬が赤く染まる。
「い、一々そんなことを普通に……」
と、佐天は恥ずかしそうに俯いてしまう。
それを見た駿斗は、少しデリカシーが足りなかったか、と考え直すが、その様子を見ていた最愛が言った。
「これが『かみやん・はやとん病』ですか……」
「おい待て、その名前をお前らどこで聞いた」
『かみやん・はやとん病』。
土御門元春が名付けたその病(笑)は『無意識に女性とフラグを立てる病気』。特に、彼らが何か危険を冒すたびに、感染が確認される場合が多いとの報告がある。
もともとの名前は『かみやん病』だったのだが(校内のフラグは当麻の方が圧倒的に目立つため)、実は駿斗も当麻の陰で無意識のうちに旗を立てていることが確認されたため、この名前がつけられた。
「この間、繚乱家政女学校からきた土御門舞夏っていうメイドに会ったから」
「舞夏は『兄貴が言っていた』とか超言っていましたけれど」
そうか、と駿斗は表向きには冷静を保ちつつ幼馴染の話を聞いた。
(とりあえず、最愛に変なことを吹き込んだ土御門の野郎は今度ぶっ飛ばす)
だが表向きの様子とは裏腹に、心の中で明日の第一優先目標を定める駿斗。しかし、その間にも少女たちの会話は進んで行く。
「常盤台は繚乱家政女学校からメイドを呼んでいるの?」
「正確には、そのメイドの見習いである繚乱の生徒を、実地研修という形で出しているらしいがな」
繚乱家政女学校は、道路のガム剥がしから各国の首脳会議に至る、あらゆる局面で主人を補佐することの出来るスペシャリスト育成を目指しているメイド養育施設である。土曜も日曜も無く夏休みも存在せず、『真のメイドさんには休息はいらないってのが校則』であるとのこと。
「舞夏が言うには、全員が実地研修できるわけではないらしいがな」
その中で、一部のエリートメイドは学園都市内を縦横無尽に『実地研修』することができる。つまり、舞夏はその『一部のエリート』に属する優等生なのだ。
駿斗ははあ、とため息をつくと言う。
「とにかく、俺は当麻のような
「「「嘘を言うな(言わないでください)」」」
彼の申請は、少女3人にコンマ数秒で却下された。その行動に、駿斗本人は訳が分からないといった表情をしている。
新たな武器を携えている駿斗であったが、彼は今日も平常運転である。
「確か、あんたは罰ゲームで今日1日私の言うことを聞くことになっていたわよね……。だというのに、アンタはあちこちでいい顔しやがって! そんなに『妹』って響きが好きかコラァーッ!」
当麻は御坂妹にネックレスをプレゼントした結果、その姉からビリビリ攻撃を喰らってしまった。
「ところでお姉さまはここで何を、とミサカは情報収集を開始します」
「え? いや、まあ……大覇星祭で罰ゲームに私が勝ったから、私があいつを引きずり回しているってだけで」
その言葉を聞いた御坂妹は、相変わらずの無表情で告げる。
「つまりお姉さまは、素直になれないのですか? と、ミサカは情報を分析します」
「わ、私に裏表なんかないわよ! 大体、こんなやつに素直になんて……」
その思いがけぬカウンターに、御坂は顔を真っ赤にして叫んだ。
すると、妹は(いつもと同じであるが)極めて冷静な調子で行動する。
「そうですか、ではミサカはお姉さまとは違う道を歩んでみます」
そして、自然な調子で当麻の方に歩み寄ると、その右腕をつかんで抱きしめる。さらに、彼女は銀色に光るハート形のネックレスを取り出して言った。
「ちらり、とミサカはさりげなく買ってもらったアクセサリーを
その一方的ともいえる攻撃に、御坂はたじろぐ。するとそこに、さらに状況を
「ミサカも反対側から抱き付いてみる、ってミサカはミサカは面白そうなことに混ぜてもらってみたり!」
打ち止めが、勢いよくその右腕に飛びつく。
「って、打ち止め!?」
「ミサカの前に現れるとはいい度胸ですね、とミサカはにわかに本気モードへと移行します」
そして、彼女たちは速やかに去って行った。
「……何だったんだ?」
「さあ? っていうか、あの子も
そして、あまりのドタバタぶりに、彼らの険悪な雰囲気は霧散していった。
その後、御坂はイライラをゲームセンターのパンチングマシンへぶつけに行ったのだが、当麻は地下街のベンチに座り込んだ。
「はあ、なんていうか、不幸だ」
そこに、再び打ち止めが現れる。
「何を疲労感に肩を落としているの、ってミサカはミサカは癒し系マスコットとしてあなたの背中に張り付いてみたり」
彼女は、ベンチに座っている当麻に後ろから抱き付いた。
「……で、お前は妹達を束ねているホストコンピューターみたいなものだっけ?」
彼女をベンチに座らせた当麻が言う。
「ホストと言うよりはコンソールに近いかも、ってミサカはミサカは訂正してみたり。ミサカの中心点はどこにもなくて、ネットワークの中で特定の個体が核として存在することにはあんまり意味がないの、ってミサカはミサカは偉そうに胸を張って講釈してみる」
打ち止めはそう言うが、あまり頭のよろしくない当麻としては正直なところちんぷんかんぷんである。
これは、駿斗か最愛、海鳥あたりに訊いた方が早そうだ。
「あのね、ミサカは『実験』の時にあなたたちに助けてもらったから、お礼を言いに来たの、ってミサカはミサカは鶴の恩返し的展開を提示してみたり。キヌハタとクロヨルには会えたけど、あなたたちにはなかなか会えなかったの、ってミサカはミサカは中々会えなかったことが寂しかったことを伝えてみる」
そう説明する打ち止めに対し、当麻はやる気ゼロの顔で言った。
「で、本音は?」
「一瞬たりとも信用してないし、ってミサカはミサカは地団駄を踏んでみたり!」
当麻はやはり、女の子の相手は苦手だ、と思った。
「悪い、悪かった。あそこでポップコーン売ってるからそれでお許しくだせぇ」
なんとか打ち止めの機嫌を取るために、当麻は屋台を指さして言ってみる。すると、打ち止めはその方向をちらり、と見てから当麻に向き直った。
「女の子の繊細な心理を食べ物ごときで誘導できると思ってるの!? ってミサカはミサカは愕然としてみる!!」
インデックスや御坂妹にも通じたので、女の子には甘いものが最善の手札だと思ったのだが、どうやら違うらしい。
当麻はそう反省する。
そんな頃、そこに1組の少年少女が向かっていた。
学園都市の繁華街を、霧ケ丘女学院の夏服を着た地味な見た目の少女が1人、歩いていた。
腰まで延ばされた茶色いその髪は、何も手が加えられていないようでその先に癖が残っている。そして、その髪は顔の横で1か所だけゴムで括られていた。
その整った顔立ちには大きなメガネがかけられているが、彼女に起こっている『ノイズ』は非常に周囲の注目を浴びる原因となっていた。
電波環境の悪い場所で聞くラジオのように、ザザザというノイズが走るたびに彼女のスタイルの良い輪郭がぶれる。そして、幾度かそれが繰り返されたとき、少女は冬服へと衣装が変わり、よりはっきりとした輪郭を見せた。
彼女は注目されているものの、それを恐れているような人間はいない。この街では驚異的な科学が搭載されたものが日常茶飯事であるからだ。
さらに、超能力開発を行っているということも合わせて考えると、周囲の人々にはこういった不自然な現象も『何かの能力か科学技術だろう』という一言で片づけられてしまうのである。
「これか、通報にあったのは」
そこに2人の大人の男が現れた。彼らは『
「全く、良くできた
彼らは、『彼女』のことをそう分析した。その言葉に『少女』は一瞬だけ表情を歪めると、顔を俯かせる。
「本部に連絡して、該当する能力者を洗い出してもらおうか」
そうして、『少女』――風斬氷華は周囲に違和感なく許容されてしまう。
それ以上の何なのかを、まったく知られないまま。
「……で、そいつがエリアU、つまり地下街用だったってわけ」
迷子の彼女を探すために、一方通行は警備員である黄泉川の助けを借りながら、彼女の捜索をしていた。
「で、俺にそこに向かえってことかァ」
『一先ずはね。もっとも、あのすばしっこい子がまだあそこにいるとは限らないけど』
黄泉川は、そこで一度言葉を切った。
『ねえ、一方通行。人に好意を向けることがそんなに怖い?』
「なンだと?」
彼は打ち止めの好意を受け入れているみたいだが、その一方で自分から好意を向けることには拒んでいる。――裏目に出て取り返しのつかなくなることが怖いから。
『君が、昔いた場所が場所なだけにね』
「特力研、か」
特例能力者多重調整技術研究所――通称、特力研。
一方通行は9歳までそこに放り込まれていた。
「あそこは生きた人間を処分するための掃き溜めさ」
学園都市にかつて存在した、多重能力者の研究・実験施設であり、現在の常識である『多重能力の実現は不可能である』という学説はここで行われた『実験』で示された――つまり、数多くの『失敗』によって。
そして、そこを制圧・解体したのは黄泉川の率いる警備員の部隊だった。
『私も見たよ。重たい扉の向こうに横たわっている
「俺はその特力研すら持て余すほどの『怪物』だった。芳川から聞いてンだろ。俺が『実験』で何をしてきたのか……。好意を向けるなンぞ、不可能なンだ」
しかし、それでも彼女は話し続ける。
『だけど、それでも君はそんな自分を嫌悪している。違う? これは、私が自分に課しているルールなんだけど、私は子供に対して武器を向けない。例え、それが能力者であってもね。どうしてか分かる? そういうことよ。確かに、君に比べたら比べようもないほど軽いものかもしれないけれど、それでも負債を抱えていることには変わりない』
だったら、どんなに無様でも払い続けるしかないじゃんよ。そう黄泉川は言った。
『君には私と違って力がある。手はいくらでもあるじゃんよ』
もしも、この力で『実験』を止めていれば。
もしも、この力で死に突き進むことしか知らなかった
もしも、今からでも遅くないならば……。
「くっだらねェ」
そんな考えを、一方通行は一蹴する。
『そのくだらないものの積み重ねが、負債を返していくじゃんよ』
そして、一方通行が移動した先で会ったのは、銀髪のシスターであった。
「……なンだこれは」
ただし、腹から愉快な音を立てながら倒れていたが。
仕方がないので、一方通行は彼女に近くのファーストフード店でハンバーガーを奢ることにしたのであったが。
「でね、私はとうまかはやとを探していたんだけれど、途中でおなかが減っちゃって、それでね」
目の前のシスターは、ハンバーガーを食べつつジュースを飲み干していく。
「……食うか喋るかどっちかにしろォ。つーか、俺に何か言うことがあるんじゃねェのか」
一方通行のその言葉に、彼女は一気にハンバーガーをその小さな口に押し込むと言った。
「うん、ありがとね」
「一言かよ、オイ」
シスターはテーブルの上のペットボトル程の大きさのあるジュースのボトルの中身を一気に口の中に流し込んで飲み干していく。
「えっとね、私の名前はインデックスって言うんだよ」
「きたねえ面で自己紹介か?」
彼女の口元が汚れているのを見た一方通行は、彼女にポケットティッシュを渡す。そして、携帯電話を操作すると、打ち止めの写真を呼び出した。
「オマエ、このガキを見た事があるか?」
「いや、知らないけど」
即答。その返事に、やるべきことはやったとばかりに、一方通行は立ち上がる。
「もう行っちゃうの?」
「ああ、あいにくと大忙しだ」
しかし、インデックスがその次に発した言葉に、彼は思わず立ち止まった。
「私はとうまかはやとを探していたんだけれど、よく考えたらさいあいかうみどりでも良かったかも」
さいあいかうみどり――最愛か海鳥。
絹旗最愛か、黒夜海鳥?
(どォしてこのガキが、『暗闇の五月計画』の残骸のことを知ってやがる?)
すると、先ほど彼女が言っていた言葉を思い出した。
『私はとうまかはやとを探していた』
まさかとは思うが、その2人がおそらく『あの日』に突然現れた4人の中にいた男なのだろうか。
一方通行はチッ、と忌々しげに舌を鳴らすと、ファーストフード店を去って行った。インデックスは、慌ててその後を追いかける。
「でね、とうまもはやとも、2人ともいっつも私のことを置いてけぼりにしちゃうんだよ。あれはもう、1種の放浪癖なのかも。気が付いたら旅に出ている人なんだよ」
地下街の中を歩く一方通行を、後ろからインデックスが騒がしく追いかける。一方通行のチョーカーにとって、電波の悪い地下はあまり好まないのだが、ここは多くの人が集うためか、電波環境が良いようだ。
しかし、先ほどからインデックスが話す2人の少年の話が、一方通行を苛立たせていた。
「ところで、あなたはここで何をしているの?」
そして、いつも話が唐突に変わる。
「人探しだ」
「さっきのケータイの子?」
「だったら、何だ」
一方通行は現代的なデザインの杖を右手一本で突きながら、歩く。
「そういえば、まだお礼をしてなかったね」
「いいから帰れ、クソガキ」
「まだ、お礼をしてなかったね」
「俺の言ったことをスルーしてんじゃねェぞ!」
どうもやりづらい。この少女といい、あのガキといい、自分は年下の無邪気な女に対して苦手なのだろうか。
「とうまかはやとが見つかるまで、一緒に探してあげても良いよ?」
ね? と無邪気な笑顔で首を傾げる少女に対し、一方通行は思わず立ち止まって下を向くと、呟いた。
「……クソッタレが」
当麻が携帯電話の時計を見た時には、18時を回っていた。
「と、もうこんな時間か」
「うん、もう行くね。本当はもっと一緒にいたかったし、もう1人にも会いたかったけど、ってミサカはミサカはしょんぼりしてみたり。ここで会ったのはたまたまだったけど、お礼をしたかったのは本当だし、ってミサカはミサカは心中を吐露してみる」
そう語る打ち止めは、それまでとは異なってその表情にどこか暗い影を落としていた。
「でも、“あの人”が心配すると思うんだ」
「“あの人”?」
当麻は訊く。
最愛と海鳥は知っているが、駿斗と当麻は知らない。今彼女の側にいる相手を。
「あんまり遅いとミサカを探しに来るかもしれないし。ミサカも迷惑とかはかけたくないから、ってミサカはミサカは笑いながら言ってみる」
打ち止めがそう言って、少し寂しげな笑顔を浮かべる。
すると、その話を聞いた当麻が言った。
「ふうん、いいやつそうじゃないか、そいつ」
「……弱いんだよ」
だが、打ち止めは寂しそうな表情のまま言った。
「あの人はいっぱい傷ついて……手の中の物を守れなかったばかりか、それをすくっていた両手もボロボロになっちゃっているの、ってミサカはミサカは断片的に情報を伝えてみたり。だからこれ以上は負担をかけたくないし。今度はミサカが守ってあげるんだ、ってミサカはミサカは打ち明けてみる」
そう言って顔を上げた打ち止めを見て、当麻は「そっか」とだけ言った。
打ち止めにも前に『実験』以外の何かがあって、その時にその人から守られたのだろう。それしか分からないが、今はそれだけを知れば十分な気がした。
打ち止めは、そう言って去って行った。
「あ、とうまだ……」
一方通行の共に歩いていたインデックスが、一点を見つめながらピタリと動きを止める。彼女は通路の先、地下街にあふれる人々の中を見ていた。
「オマエが捜してたヤツか」
「うん」
すると、一方通行もその時自分に向けて手を振って来る1人の少女に気が付いた。
その少女は、相変わらずの無邪気な笑顔である。
「行けよ」
そう言った一方通行に、インデックスが心配そうに訊く。
「でも、あなたの知り合いの方は?」
「心配すンな。こっちも今見つけた」
吐き捨てるように言うと、一方通行は彼女に呼びかける。
「ラストオーダーッ!」
自身が呼ばれた事に気付いたその小さな少女は、彼の方を見ると、笑顔を向けながらまっすぐに駆けて行く。
「じゃあ行くね。ありがとう」
その横で、インデックスも駆け出した。
「とうま!!」
彼女たちは振り返らない。科学と魔術、2人の少女は地下街の一点で一瞬交差するが、お互いに気付かないまま離れていく。
「じゃあ、俺も佐天さんを寮まで送ったら帰るからな。お前らも、ちゃんと門限に間に合うように帰ろよ」
そう言って、駿斗は最愛、海鳥と別れた。
暗い夜道で、佐天と2人きりなのであるが、彼は普通に雑談を交わしながら帰り道を進んで行く。
「つーか、結構遅くなっちまったよな。こういう時、門限がないのは助かる」
「そうですよね。御坂さんたちの話を聞いていると、大変そうですから」
佐天がそう返事をしたとき、駿斗の携帯が軽快な着信音を奏でた。
駿斗は佐天に断りを入れた後で、電話に出る。
「当麻か、どうした?」
『ああ、実はさっき打ち止めに会ったからな。今はインデックスを追いかけているけど』
打ち止めか、と駿斗はその言葉を反芻する。
「ていうか、何でインデックスを追いかけているんだ? もう帰ったんじゃないのか?」
『ああ、御坂との罰ゲームは途中で御坂妹に会ったら、何だかうやむやになっちまって。どうしてあんなに機嫌が悪かったんだ、あいつ?』
大体察しがついたが、駿斗はあえて黙っておくことにする。
『それで、なんか知らないけどインデックスが親切な人にハンバーガーを奢ってもらったみたいで。その時に渡されたポケットティッシュを、あいつ律儀に返しに行ったから、それを追いかけているんだけ――何だ?』
その時、電話口の向こうからバタバタ、と何かが倒れるような音がした。
それと同時に、駿斗は気づく。
『ど、どうしました? もしもし、もしもし?』
「当麻!」
駿斗の大声に佐天さんが驚いているが、それを無視して彼は話し続ける。
『おい、駿斗、急に近くの
「魔術だ! 大規模な魔術が発生している!」
駿斗は、佐天さんに聞かれないように口を手で覆いながら話す。
「とりあえず、俺はすぐに佐天さんを寮に送り届ける。その後、一度合流するぞ!」
そして、彼は怪訝そうな表情をしていた佐天を突然抱き上げると、高速移動術式を使用して駆け出した。
(くそ、嫌な予想が的中じゃねーか!)
懐にある