東方千夢劇 ~Infinite DANMAKU for Lotus Land.   作:かぶらや嚆矢

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二ノ捌・

「それでは皆さん、今日もお疲れさまでしたー」

 

 1日の講義が終わり、総括として行われるショートホームルーム。またの名を帰りの会。それは勉学の苦役から解放されたIS学園生徒たちの間に弛緩した空気が流れ始める時間帯でもある。1年1組の教壇に立つ山田真耶がゆるゆると伝達事項を伝えた後、起立、礼の号令をクラス代表である少年が発せば、この先に待つのは心躍るプライベートか、クラブ活動や自学自習といった肩肘張らない課外活動だ。

 

 女子生徒たちは教室に留まって仲の良いグループ内で取り留めのない話に興じていたり、真耶にIS操縦における不明点を質問してレクチャーを受けたりしている。互いのこれからのスケジュールの空きを確かめ合いながら、何人かで連れ立って教室を出ていく少女たちもいた。

 

 楽しそうに賑わう教室内にあって、篠ノ之箒は、運動部に所属する者同士、セシリア・オルコットと一緒に部活棟へ向かおうとしていた。特定のクラブに所属していない織斑一夏はクラスメートに囲まれ、放課後の予定を訊かれている。シャルロット・デュノアは料理関係のテキストを買いに駅前のブックストアまで出かけようか考えながら教材を片付けており、ラウラ・ボーデヴィッヒは自主トレーニングのため、アリーナ使用許可申請を端末で作成している最中だった。

 

 いずれも日常的な放課後の風景であったがしかし、会議に出席していたためホームルームの場にいなかったクラス担任、織斑千冬が1年1組教室へ戻ってくると雰囲気が一変する。

 

 多人数が一室に介して雑談している場で不意に会話が途切れることを、幽霊や天使が通ったと表現する言い回しがあるが、まさにそれに似ていた。教室へ入ってきた幽霊もとい千冬がつかつかと教壇の方へ向かうにあたって、あれほど騒がしかった教室内の喧噪がぴたりと止み、誰もが目を丸くして千冬の挙動に注目している。

 そんな中、慌てて場所を譲った真耶に代わって教壇に立った千冬は教え子たちを見渡すと咳払いをひとつ置いた後、静かな、しかしよく通る声でもって言葉を発した。

 

「織斑、篠ノ之、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ――いま名前を呼ばれた者は、少し話がある。ついてくるように」

 

 それだけ言うと、千冬は入ってきたときと同じく、さっさと教室を出ていってしまう。

 

 白羽の矢を立てられた5人は離れた位置からお互いの顔を見合ったが、その誰もが急な呼び出しをされる心当たりはまったくないようだった。訝しそうに眉を潜める箒、首を傾げる一夏、視線をオロオロと彷徨わせるセシリア、目をしばたかせるシャルロット、千冬が出ていった出入り口をぽかんと見つめるラウラ。彼女たちは一様に狐につままれたような面持ちをしながらも、慌ただしく教室を出ていく。その後に残されたクラスメートたちは我に返るなり、唐突に降って湧いた新たな話題に色めき立って騒ぎ出した。

 

「ねー山ちゃんせんせー。織斑くんたち、また何かやったんですかー?」

 

「わ、私は何も聞いてないですが……というか、またっていうのは織斑くんたちに失礼ですよう」

 

「この前の、実習無断抜け出しのお仕置きとかっ?」

 

 クラスメートのざわつきを背中に感じつつ教室を後にした箒たちは、先行する千冬の姿を探す。

 

 IS学園校舎本館、3階廊下。白を基調にした制服に身を包んだ少女たちが行き交う中にあって、ただひとりダークグレーのスーツを纏った千冬の姿はすぐ見つけられた。箒たちに背を向けている千冬は各クラスの教室が並ぶ廊下を抜け、各階を繋ぐ昇降口の方へと向かったようである。5人が急ぎ足で追いかけると、果たして千冬は人気のない踊り場のところで教え子たちが来るのを待っていた。

 

「先に言っておくが説教の類いではないし、緊急を要するような事態が発生した訳でもない」

 

 呼び出された全員がいずれも不安そうな顔をしていることを斟酌してか、千冬は最初にそう断りを入れてきた。その言葉に5人は安堵したが、直後、今度は一様に困惑の表情を浮かべた。説教でも緊急事態でもないなら、なおのこと呼び出しをされた理由に心当たりがないからである。それも教室でも指導室でもなく、人目を避けるような場所まで呼び出して。 

 

 かかる少女たちの疑問に千冬はすぐには応えず、全員を見渡した後で尋ねてみせた。いわく、

 

「お前たち、今日これから予定は入っているか?」

 

「わ、私とセシリアは、これから部活動へ行こうと話をしてましたが」

 

 箒の説明にうんうんと頷いて同意を示すセシリアに続いてシャルロット、ラウラ、一夏の誰もが取り立てて急ぎの用事がないことを確認した千冬はひとつ首肯し、言葉を続ける。

 

「時間を取らせるが、全員に話しておきたいことがある。先日の戦闘に関連することだ」

 

「戦闘とおっしゃいますと……ええと、確か霊夢さんという方と交戦した件についてですか?」

 

「そうだ。まだ現時点では公に出来ないこともあるため、余人の目に付かない場所で話したい。まず織斑と篠ノ之の2人は、今から15分後に第6小アリーナまで来ること。オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒは――そうだな。それから30分後に、同じ場所まで来い」

 

 千冬の指示は軽薄短小を極めていた。もっとも、秘密主義的な傾向がある彼女にとってはこれが普通でもある。要点だけを伝えたあとで、遅れるな、と言い置くと箒たちをその場に残し、階段を下りていってしまう千冬。5人はただ呆然とその背中を見送っていたが、ほどなくして、それぞれ不安げな顔を突き合わせて相談する。

 

「な、何なんだよ一体? 急ぎじゃないって言う割には有無を言わせない感じだったが……」

 

「それに第6小アリーナって、確か何日か前に織斑先生の指示で閉鎖されてた場所じゃなかったっけ? たまたま近くを通りがかった時に、3年生の人たちが警備してるのを見かけたよ」

 

「うむ。剣道部の先輩が、その時の警備に動員されたと話していた。中で何が起きていたかは知らないが、見慣れない娘と織斑先生が、倉持技研と思われる研究者たちと何か実験のようなことをしていたみたいだった、とは教えてくれたな」

 

「その噂はわたくしも聞いたことがありますわ。他にも整備科の一部の方も関わっているとか……ただ織斑先生は先日の戦闘の件で話がある、とおっしゃってましたからそちらが本題で、小アリーナについてはまた別の話ではなくて?」

 

「みんながあの、空飛ぶ女の子と戦り合った話か? だったら俺は関係なくないか?」

 

「ここにいる全員は専用機持ちだから、一夏だけ共通項がまったくないという訳ではないだろう。だが、それならば全員一度に話をすれば済む。にも関わらず教官はなぜわざわざ2回に分けて集合するように指示されたのだろうか」

 

「分からないね……それに先生はまだ公に出来ないと言ってたけど、僕たち5人を集めたってことは、少なくとも僕たちか、クラスの子たちには話しても問題ない内容なのかな?」

 

「――まさかとは思うが、情報が外部に漏れたため何人かずつ呼び出して尋問にかけるとか……」

 

「ラウラさん! 怖いことおっしゃらないで下さい! だ、誰にも話してませんわよね、ね!?」

 

「おっ、俺に訊くなよっていうか疑うな! 俺以外にも箒だって一番最初に呼ばれただろ!」

 

「一夏ぁ! 貴様それは私が疑わしいという意味か!? そこへ直れ、叩っ切……ちっ、緋宵は教室に置いてきてしまったか……!」

 

「わーっ待って待って! 僕は2人とも、じゃなくてみんなが潔白だって信じてるからね!」

 

 5人は自らの不安を忘れようかとするように騒ぎ合うが、だからといって千冬が何を考えているかを言い当てることはできなかった。そもそも、与えられた情報が少なすぎるのだ。逆に、たったこれだけの情報で真実に辿り着くことが出来るなら学生などしていないで、探偵か警察にでも就職した方がはるかに世のため人のためになるだろう。

 

 かくのごとく喧々囂々と騒ぎ合っている内に、いつの間にか数分が過ぎていた。

 千冬の考えが何であれ時間通りに指定された場所まで行かないことには始まらない。一夏と箒は仲間たちに見送られ、処刑場に召喚された罪人のごとき心境と足取りで、第6小アリーナまで向かうことにした。

 

「えーと、第6小アリーナの場所ってどこだっけ。箒知ってるか?」

 

「知っている。というか一夏、お前未だに学園施設の場所も把握していないのか……」

 

 自信満々に先を歩いているから一夏は向かうべき場所について当然知っているものと思っていた箒は肩を落とし、溜息をついてみせる。

 

「とはいえ私も場所を知ってるだけで、内部に入ったことはないのだが」

 

「俺も。つーか、あんまりいい話を聞く場所でもないし」

 

 IS学園には6つのアリーナ施設があるが、そのうち第6小アリーナは普段は使われていない区画である。

 利用可能な施設として生徒たちへ提供されるのは、主にイベント開催時に使用される第1アリーナを除けば第2、3、5アリーナ、それに少し遅れて第4アリーナといった具合であるため第6小アリーナは生徒たちの間では、新開発したISの試験場だとか、裏取引の会場だとか、IS整備中の事故で命を落とした少女の幽霊が出る開かずのアリーナであるとかのネガティブな話題で語られる、準立入禁止区域として認識されていた。

 

 それだけに、かかる場所へ呼び出され、外部との接触を拒むように閉め切られている鉄扉の前に立った時の一夏と箒の心境は、決して晴れやかであるとはいえないものだった。

 小と前置きがつくだけあり規模は一回り小さい印象だが不穏な噂がつきまとっている分、ナンバリングされた他のアリーナと違う冷たさを、どことなく感じさせる。外と内とを隔てる鉄扉は固く閉ざされ、番人の役割を担う空間投影型のディスプレイには『Access Level 3』、すなわちレベル3以上の権限を持つ者、または権限を持つ者があらかじめ承認した者以外は通過できないロックが掛けられていることを示す文言が無機質に明滅していた。

 

「……本当に入っていいんだよな?」

 

「いいんじゃないか? それに指示された時間まであと5分だ。ぐずぐずはしてられんぞ」

 

 一夏はまだ不安をぬぐい去れない顔をしてはいたが、箒に先がけ、まず自分が最初に鉄扉の前に

立ち、読み取り面に手をかざした。ついで箒も一夏の横に並び立って同じ所作を行う。

 

 従来の指紋認証および静脈認証に加え、権利者認証をクリアしたところで空気が抜ける音を発して扉に斜めの亀裂が入り、上下へスライドしていく。問題なく認証を通過できたことに安堵の息をついた2人はちらと顔を見合わせると、閉鎖されていたアリーナ内へと改めて足を踏み入れる。

 

 回型の構造をしている第6小アリーナの下段部分、エントランスホールと呼ぶべき空間は人気がなく森閑としていたが、千冬はすでにその場に来ていた。先ほど一夏たちが通過してきた入口の向こう正面、石膏ボード製の味気ない白塗りの壁にもたれかかって腕を組んで、物思いに耽るように瞑目していたが、箒たちの到着に気付くと薄く目を開き、緩慢な動きで壁から背中を放す。

 

「遅れずに来たか」

 

「そりゃ千冬姉直々の呼び出しに遅れたら、どうなるか分からないし」

 

 いい心がけだ。そう答えて千冬は唇の端を吊り上げてニヒルに笑んでみせ、一夏もまた照れ笑いのような表情でもって応じつつ千冬のそばまで歩み寄った。まったく何気ない、血の繋がった姉弟間で交わされたそんなやり取りを、一夏の半歩後ろで聴いていた箒はしかし、怪訝に思ったものである。

 

(千冬さん、今日は一夏に指導を施さないのか?)

 

 公私を厳しく分けるはずの千冬が「千冬姉」と呼ばれたことをスルーし、あまつさえ、社交辞令的ではあるが一夏を褒めたのだ。普段ならば目は口ならぬ「手は口ほどに物を言う」の言葉通り、決して自分も他人のことは言えないが、何か言うよりも先に拳骨が出ているというのに。

 これからの用事がプライベートなものだからか、それとも、よほど虫の居所がいいのか? 

 

 箒は昔から、正確には実家の篠ノ之道場に足しげく通っていた時代からの千冬を知っているし、一夏ほどには鈍感でないため、無表情の中からであっても千冬の心の配電盤を流れる微細な電流がどういった具合のものであるか大まかには分析することが出来る。そんな分析者が改めて見立てたところ、千冬はこれまでに見たことがないほど上機嫌というか清々しているような印象があった。

 

 すると今度はいったい何が千冬をそこまで気分上々せしめているかが気になり始めるが、千冬は存外に早くそのヒントを与えてくれた。

 

「本題に入る前に、まず2人に紹介しておきたい奴がいる。と言っても、もうすでにお前たちとは顔を合わせた後ではあるが」

 

 言うなり、千冬は顎を突き出すような仕草でもってそちらを向くように促す。

 

 ジェスチャーを受けた一夏と箒が示された方向、自分たちのやや左後ろにあたる方へと振り返ると、そこには確かに見慣れないが、しかし確実に見覚えがある少女の姿があった。

 

 ノースリーブの紅いシャツに、シャツとはセパレートになっている広口の袖。たっぷりあしらわれたフリルがいかにも女の子らしい印象を与えるスカートは、緋袴に似た形をしている。服と呼ぶより装束、さらに限定するなら千早と呼んだ方がしっくりくる恰好をした少女は、一夏はもちろん千冬や箒よりも上背が低いにも関わらず、姿勢が良いせいか見た目ほど小柄な印象ではなかった。外見のみで判断するなら箒たちよりも年下と感ぜられるも、その身から放つ揺るぎない自信というかオーラのせいで、年齢以上の風格を感じさせる彼女の姿は見間違えようもない。

 

 空を飛び、弾幕を張り、とある神社で巫女をしていると自称し、その魔術的な能力と空戦技術で4機もの専用機をたった1人で退けてしまった正体不明の侵入者――博麗霊夢である。

 

「お前、あの時の……!」

 

「そういうあんたは篠ノ之束って奴の妹さんの、確か箒だったっけ。じゃあそっちの男の人が千冬の弟さんかな?」

 

「え、俺のことも知ってるのか?」

 

「千冬に聞いたもの。目の中に入れても痛くない大事な弟さんだって」

 

「おい」

 

 呆気に取られている箒や一夏とは対象的に、霊夢は飄々としたものである。弟をネタにして冷やかされることを嫌う千冬が発した威嚇にぺろっと舌を出しておどけてみせたあと、大きな紅いリボンを揺らしながら歩を進め、千冬の横に並び立った霊夢は改めて箒と一夏の方へと向き直った。そんな霊夢の肩に手をかけながら千冬いわく、

 

「改めて紹介しよう。この娘は博麗霊夢という巫女だ。出身などは伏せられているが、現在、私が招いた客員という立場でIS学園に留まってもらっている――そして博麗。すでに知っているだろうが彼女は篠ノ之箒。そしてこっちが不肖の弟、織斑一夏。どちらも私の教え子だ」

 

 そう紹介を受けた霊夢は、よろしくねと片手を挙げる。

 

 お世辞にも人当たりが良いとは言えない霊夢にとっては、かかる動作で最大限にフレンドリーさを表現したつもりだった。だが箒と一夏は何が何だか分からず言葉を失って立ち尽くしており、両目と口で三つの○を作って機能停止に陥ってしまっている。

 

 先日箒たち4人を相手に大立ち回りを演じた侵入者が、なぜ平然としてここにいるのか? どうして千冬も彼女を咎めずむしろ親しげにしているのか? あの紅白装束はわざと腋を露出させているのか? 千冬が招いた客員とはいったいどういう意味なのか? 噂で漏れ聞いた、千冬と一緒にいた見慣れない少女とは霊夢と同一人物か? 腋丸出しで寒くないのか? それより何より、どういった意図でこうして顔合わせの場を設けたのか? 分からないことが多すぎてもはや何から訊けばいいのかさえ分からず箒も一夏も混乱を極めていた。事実、一夏などは完全に頭を抱えてしまっている。それでも何か訊かなければという思いからか口を開きはしたが、あまりに漠然とした問いを投げかけるしか出来ないようだった。

「えーと、ちょ、ちょっと待ってくれよ千冬姉! いったい何がどうしてこうなったんだ?」

「そ、そうです! 彼女が、博麗霊夢が何者かということも重要ですが――それよりも彼女と私たちを戦わせたり、こうして紹介したり、織斑先生はいったい何をお考えで……!」

 

 一夏の言葉を引き継ぎ、気色ばんで尋ねる箒だったが、千冬はどちらの問いにもすぐには答えなかった。言いたいことは分かる、とばかりに手で制して二人を黙らせたあとで、千冬はひとつ頷いた。ついでいわく、

 

「もっともな疑問だが焦りすぎだ。まずは落ち着け。順を追って話してやる――が、野面を晒して突っ立ったまま長話というのはいかにも無粋だな」

 

 そう独りごちた千冬はホール内の自動販売機で人数分の飲み物を用意した。千冬はコーヒー、一夏はジュース、箒と霊夢は緑茶である。

 

「私お酒飲みたいんだけど」

 

「ふむ。よく聞こえなかったが、熱い茶で顔を洗いたいとは変わった希望だな。まぁいいだろう。もう一杯馳走してやるから今すぐ洗ってみせろ」

 

 剣呑に言ってみせる千冬に霊夢はひょいと肩をすくめ、紙コップのお茶を受け取る。その一方、千冬が軽口で応じたことに箒と一夏は大いに驚いていた。それだけ霊夢に気を許しているという見方も出来るが、ひょっとしたらこいつは千冬の偽物なのではないだろうか? 2人は飲み物を受け取った際、思わず千冬をじろじろと見つめてしまう。そんな教え子たちの困惑に気付いているのかいないのか、コーヒーに一度口を付けた後で千冬もまた2人を見返し、そして言葉を発する。

 

「……口止め料は受け取ったな?」

 

「え? あ、このジュースってそういう意味なのか?」

 

「まぁ口止め料というのはいささかオーバーだが、これからする話が他言無用だということは違いない。今の時点では当事者のみが知りうる話として理解し、決して口外するな」

 

「は、はい」

 

 気圧されるように箒は返事を返し、一夏もまた首肯する。よほど重要な話がされるのだろう、と箒は身を固くした。それを確かめた後で千冬が話し始める。

 

「一から話すと長くなるため、まず最初に結論から言うことにするが」

 

 そう言うと千冬は霊夢をちらと見、彼女の視線を受けた霊夢が小さく頷き返した。かくのごとくもったいつける千冬を見るのは実にレアなケースだけに、箒は固唾を飲み、決して聞き漏らすまいと緊張して話の続きを待った。それと同時に、どんな話をされても驚かないように心の予防線を張っておく。

 

 そうすることで箒は冷静さを演出しようとするが、結果として、千冬の告白は箒の心の防波堤を粉々に打ち砕いてしまった。

「もう一度私もISに乗ることにした」

 




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