FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~ 作:えんとつそうじ
さと、今回は久しぶりのフェアリーテイルの二次の更新。ルーシィを主人公が救出してからのその後の話。久しぶりな感じなのでだいぶ違和感があるかもしれませんがどうかお許しを。
それでは短いですが暇つぶしにでもどうぞ。
俺の名前はユーリ・クレナイ。現在このかもめ屋で手伝いとして働いている、少し変わった魔法が使えるだけのごく普通?の少年だ。
元々俺はとある事情から、エルザという少女と2人でローズマリー村という場所に住んでいた。しかしある日、ゼレフという黒魔術師を信奉する集団に楽園の塔という場所に攫われてしまい、そこでついこの間まで奴隷として働かされていたのだ。
やがて、仲間たちと力を合わせて反乱を起こし、黒魔術師の集団からの支配自体からはなんとか逃れることができたのだが、しかし仲間の1人であるジェラールに裏切られてしまった俺は海へと放り出されてしまった。
その後、海を漂流しこの港町リオの近くの海岸へと打ち上げられた俺は、当時釣りをしに海岸までやって来ていたこのかもめ屋の店主に拾われ、同じくジェラールに裏切られ行方がしれないエルザの行方を探すため、そしてジェラールの目的、その真意を探るために少しでも情報を得るために旅に出る。その資金を貯めるために、店主の好意もあり、この店で働いているというわけである。
早くエルザを探しに行きたいと逸る気持ちもあるが、しかし忙しく平穏なこの毎日がもう少し続けばいいなと思う。そんな日々を送っていた俺だったのだが、実は最近ある人物に悩まされていたりする。
その人物は現在俺の職場であるこのかもめ屋で、その小さい体をせかせかと一生懸命に動かしながら、接客に勤しんでいた。
「いらっしゃいませー♪」
かもめのシルエットが印刷されたエプロンを身につけながら、その天使のような満面の笑顔で来る客来る客の癒しに貢献しているこの少女の名は”ルーシィ・ハートフィリア”。
そう、先日俺が誘拐から助け出した、あのハートフィリア財閥の御令嬢である。
………どうしてこうなった?
☆
☆
それは、俺が彼女ルーシィを助け出した翌日のこと。俺がこの街の警備隊からの事情聴取を受けた帰り道のことだった。
「あーあ。もうこんな時間になっちまったか」
街の広場に設置されている時計で時間が既に昼を過ぎていたことを確認した俺は思わずその場で溜息を吐いてしまう。
それはお店が一番忙しい昼の時間を手伝えなかったことによる罪悪感だった。
「全く、メンツがかかってるのはわかるが、ああもしつこく聞かなくてもいいだろうに」
そう、俺が事情聴取から帰るのにここまで時間がかかったのは、昨日起こったルーシィ誘拐事件のことについて少しでも情報を得ようと、しつこく俺から聞き出そうとしていたからだ。
まあそれも仕方ない。なんせ世界的に有名なハートフィリア財閥の御令嬢が誘拐騒ぎにあったのだ。この街の治安維持を担当する彼らからすれば、幸いルーシィの安全が確保されたとはいえ、この事件の裏にいる存在を確かめることすらしなかったならなにやってたんだ今までって話になる。
「(だからって、まだ子供の(少なくとも見た目は)の俺相手にあそこまできつい取り調べをしなくてもよかろうに……)」
俺が年齢詐称美少年(笑)じゃなかったら泣きわめいてたぞと声に出さず文句をいいながら、「すみません、送れました!」といいながら店の中に急いで入ったのだが、そんな俺を一番に出迎えたのは店主のシドウさんでもなく奥さんのメグさんでもなく、ましてや昼間から店の隅で呑んだくれてるダメおやじでもない。
「――――あ、おかえり!」
「」
なぜかワンピースの上にエプロンをつけたこの少女、ルーシィ・ハートフィリアだったのだった。
☆
☆
あの時は驚いたものだ。思わず「お前、なんでいんの?」って問いかけてしまって彼女に涙目でビンタの一撃をもらったのはいい思い出……でもないか。あれはとても痛かった。おまけにルーシィを泣かせてしまったから周りに冷たい目で見られて、散々だったよ。
まあ、その後懸命に慰めてなぜここにいるのかと理由を聞いてみたところ、なんでも彼女は先日俺が彼女を誘拐犯から助けた件についてお礼に来たらしいのだが、俺が事情聴取でいないことを知るとなぜか彼女が俺の代わりに店の手伝いをしたいと申し出て、こういう状況になったのだという。
子供に店の仕事を任せても大丈夫なのかと思いシドウさんに聞いてみたのだが、一緒についてきたハートフィリア家のメイドさんであるスペックさんの手伝いもあり子供ながらよくやっており、またその可愛らしい容姿でいい客引きにもなっているので、シドウさん的には文句がないのだとか。……それにすっかり忘れてたが、俺も見た目だけは子供だしな。
まあ、そんなわけで俺が事情聴取から帰ってくるまで彼女たちが店の手伝いをしてくれたわけなのだが、それで結局彼女たちがなぜ俺の元を訪ねに来たのかというと、まあここまでいえば誰でもわかると思うが、先日の誘拐犯からの救出。そのお礼に来たのだという。
俺は、正直あの程度のチンピラ程度のしたところでお礼されるほどじゃないと思っていたのだが、ルーシィの母親であるハートフィリア夫人が是非お礼がしたいといっているといわれ、まあそこまで拒絶することもないかなと思い、その後店が閉まった後に俺はハートフィリア夫人の元に向かうためにハートフィリア家の別荘へとお邪魔することとなった。
そして俺はハートフィリア夫人。本名レイラ・ハートフィリアと対面することとなったのだが……いやー、あの時は驚いた。正直あそこまでの美人は前世で芸能人とし活躍していた人にもいないんじゃないかなと思うほどの美人だったなー。思わず柄にもなくどきどきしてしまったよ。なんていうか顔はルーシィにそっくりなんだけど、雰囲気がまるで違うんだよなあ。
まあそんなわけでレイラさん(初対面の時にそう読んでくれといわれた)といろいろ話をした俺は、その結果ルーシィ救出の礼としていくらばかりかのお金を貰うこととなった。俺が幼馴染を探すために旅費を稼いでいることを聞いたレイラさんが、ならばその足しにしてくれとくれたのだ。
その額がこれまた結構多く、貰うのが申し訳なかったが、しかしあまり拒絶するのも失礼にあたると思い、結局俺はその謝礼金をレイラさんからのある頼みを引き受けることで貰い受けることとなった。
その頼みとは、彼女の娘であるルーシィの遊び相手。なんでもハートフィリア財閥というのは、レイラさんの夫である現当主が一代でここまで大きくしたらしく、ルーシィもその時に作った子供らしいのだが、だからこそ彼女は物心ついたときから友達といえるものがいなかったらしい。
世界的な財閥の令嬢となってしまったルーシィは身の安全を考えて学校には通えず、自由に街にも出れず、使用人も高齢かはたまた独身の者しかおらず子供などいなかったため友達などできようはずもない。なので、年齢(しつこいようだが見た目だけはだが)が近い俺に彼女の遊び相手になってほしいというのだ。
俺はまあその時はそれぐらいならと、なんの考えもせずその頼みを引き受けたのだが、その時はかもめ屋の手伝いがあったことを忘れており、彼女と遊ぶ時間がなかなか捻出できなくて困っていたのだが、ルーシィからすれば同じくらいの子供である俺と一緒に何かするという行動自体が楽しかったらしく、なら私も仕事を手伝ってあげると、こうして遊び半分の気持ちで手伝ってくれているというわけだ。
まあ、遊び半分とはいっても仕事自体は真面目にやっているし、その可愛らしいからいい客引きにもなっているので、シドウさんたちは文句もいわずむしろ愛娘でも見るように生暖かい視線を向けながらそんな彼女の様子を見守っていた。
まあそんなわけで最近の俺は、ルーシィと一緒にかもめ屋でお店の手伝いをしながら彼女の遊び相手をするという毎日を送っている。
あ、一応魔法の練習は続けているよ?これからの俺の生きる重要な手段となるはずだからな。
まあいつもは朝早くに起きて近くの森に出かけて練習しているのだが、どうやらルーシィは魔法に興味があるようで、なので最近はルーシィの見学の元で魔法の練習をやってたりする。
まあ俺の使っている魔法はサーゼクスの力を受け継いだ俺だからこそ使える専用魔法みたいなところがあるからルーシィには教えられないための苦肉の策だったんだが、ルーシィがそれで満足してくれたのはよかった。教えてといわれたとしても今の俺はこれ以外の魔法は知らないしな。
そういえば、レイラさんは今は引退してるけど実は星霊魔導師だったっていってたから、もしかしたらルーシィの将来は星霊魔導師かもしれないな。
そんなことを考えていると、俺の服の袖を誰かが引く感覚があったのでそちらを振り向くと、そこには不思議そうな顔でこちらを覗き込むルーシィの姿が。
ルーシィは俺の顔を見ながら訝しげに首を傾げる。
「どうしたの、ユーリ?せっかくのお休みなんだから早く探検行こ?」
「あ、そうだな。悪い悪い」
ルーシィの言葉で我に返った俺は思わず彼女に頭を下げる。そういえば、今日は店長が一日休みをくれたんで、ルーシィを連れて街の探検に来たのだった。考えごとに熱中し過ぎてぼうっとしてしまったよ。
「(これはいけないな。せっかくルーシィが楽しみにしていてくれていたのに)」
実は今回街の探検に出たのは俺の提案だったりする。前々からルーシィがこの街をゆっくり見て回りたいといっているのを俺にぼやいていたのを知っており、レイラさんはそんな彼女の願いを聞き叶えてあげたいと思ってはいたのだが、立場が立場なので下手に外に出したら前回のように誘拐される可能性があるのでその願いを叶えてあげることができなかったのだとか。
護衛を雇うことも考えたらしいが、それだとルーシィが遠慮してしまう可能性もあるし。
だからこそ、俺がレイラさんに名乗り出たのだ。
俺なら大分前からこの街に住んでいるからそれなりに街の地理に詳しいし、魔法という護衛手段もある。それにルーシィと年齢が近い俺なら彼女も遠慮することもないだろうしな。
というわけで、お店が一日休みである本日。俺はこうして彼女を連れて街のあちこちを案内しているというわけだ。
「大丈夫ですか、ユーリ君。疲れているなら別の日にしてもいいのですよ?」
俺の様子を見て何か勘違いしたのか、労しげにこちらに語りかけるメイドのスペットさん。
あ、なぜ彼女がいるのかというと、ぶっちゃけ彼女は今回の保護者役兼ルーシィの財布役だ。言い方は悪いが。
なんでも今回の探検で使うお金を俺に支払わせるわけにはいかないし、さすがに子供だけにするわけにはいかないということで、俺と顔見知りである彼女が今日の外出についてきたというわけだ。
俺は心配そうに俺にそう話しかける彼女の様子を見て、慌てて声を上げる。
「だ、大丈夫ですよ!ちょっとこれからどこ案内しようか考えていただけなんで」
「そうですか?それならいいのですが……」
俺の言葉に訝しげな顔をしながらも、スペットさんは一応の納得を見せながらも引きさがる。
まあそこまで言及することじゃないと思ったんだろうが、これ以上変な心配をかけることもないと考えた俺は、とりあえず昨日から二人を案内しようと決めていた、最近評判のいい甘味屋に二人を連れて行こうとした………その時だった。
ドオオォォォン!!
「「「ッ!?」」」
突如聞こえてきたその轟音に咄嗟に振り向く俺たち。
すると、音が聞こえてきた方角。大体港がある場所から黒い煙が上がっていたのが見える。
何が起こったのか理解できていない俺たちは、揃ってしばし呆然とその煙を見上げていたのだが、やがてとある叫び声と共にこちらに逃げ込んできた人々の声で、現在起こっている状況について理解する。
「た、大変だああああ!!」
「か、海賊が攻めてきたぞ!」
「皆逃げろおおおお!?」
その彼らの言葉を聞き、周りで俺たちと同じように固まっていた人たちが状況を理解したのかとたんにパニック状態となり、騒ぎ出す。
「う、うわーッ!?」
「キャー!!」
「に、逃げろー!!」
蜂の子を散らすように取るものもとらず逃げ出す人々。そんな彼らの様子を見たルーシィは俺に向かって涙目で不安げな声をあげる。
「ど、どうしよユーリ!私たちも逃げたほうがいいのかな?」
実は俺もあまりに突然の出来事に思考が停止してしまっていたのだが、ルーシィの声で我に返ると同時にある事実に気づいた。
それはおそらく海賊が攻め込んできたであろう港の近く。現在の俺の働き場所であり、住まわせてもらっているかもめ屋はその場所にあるということに。
「(まずい!?店長、メグさん!!)」
二人の安否が気になった俺は、今すぐ店に駆けつけたい衝動を抑えながらも、このまま二人をこの場所に置いておくのはまずいと思い、ルーシィの気持ちを落ち着かせるために頭を撫でながらも、スペットさんの方に向き直る。
「スペットさん。申し訳ありませんが、ルーシィを連れて別荘に帰ってくれますか。あそこなら警備が厳重ですし、いざとなったらレイラさんとルーシィの二人と一緒にこの街を脱出してください」
ハートフィリア財閥の別荘なら、そういういざという時の脱出経路を確保しているはずだろうしな。
スペットさんは先ほどまで周りの大人たちと同じく顔を真っ青にしておろおろと動揺していたようだが、俺の言葉に自分の職務を思い出したのか、未だ顔を蒼白に染めながらも、俺の顔を見て真剣な顔でしっかりと頷いた。
「わ、わかりました。ところでユーリ君はこれからどうするんですか?」
「俺はこれからかもめ屋の様子を見に行ってきます。店長たちの安否が心配ですので。――――それじゃあ失礼!!」
「え、あ、ちょ、ちょっとユーリ君!?」
慌てたようにスペットさんは俺の背に言葉を投げかけるが、しかし俺はそのようなことを気にせず走り出す。恩人の無事を確認するために。
「(二人とも無事でいてくれればいいんだが……)」
どうでしたでしょうか。だいぶ説明回っぽくなってしまいましたがお楽しみいただければ幸いです。
正直これを書いていてレイラさんとの会話シーンも書いといたほうがいいかなと思ったんですが、暇がなかったのでこれでいいかなーと思い投稿してしまいました。だらだらとそういうの書くくらいならばっさり切ってもいいかなーと。
それでは感想や誤字脱字の報告。アドバイスなどありましたらよろしくお願いします。