向日葵の咲く頃に   作:『向日葵』

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すいません。彼女と別れた失恋のショックで、書く気力を失せてしまっていました......こんな諸事情で更新がたいへん遅れてしまったことを、お詫び申し上げます。本当にすいません。
『花妖怪の君と』の方は今日の夜か明日に更新する予定です。もう吹っ切れましたので、これからは普通通りに更新致します。


向日葵の咲く頃に―七輪―

―――『気味の悪い花だ』

 

うるさい。

 

―――『妖怪の育てた花など、言語道断』

 

僕が育てた花達を、家族を、貶すな。

 

―――『このような花に近付くな。危険だ』

 

それはお前らの勝手な偏見だ。この子達は皆良い奴なんだ。

 

―――『こんな不気味な花畑、ない方がいい』

 

うるさいうるさいうるさいうるさい。

 

うるさいんだよ。

 

耳障りなんだよ、人間。

 

貶すな。罵るな。傷付けるな。

 

何も理解していない人間が、僕の花達に、家族に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そんな口を、叩くな。

 

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

「......また、か」

 

目を覚まして最初に発した言葉は、その一言だった。

 

『また』

 

そう、まただ。またあの頃の夢。この前は幽香ちゃんがこの向日葵畑に来た時の夢だったけど、今回の夢は、幽香ちゃんが向日葵畑に来る前の頃の夢。

 

あの頃はちょっと、いやかなりひどかったから、あんまり思い出したくないんだよなぁ。......冗談抜きで。

 

「......ん?ってあ、起きてたのね、日向。大丈夫?随分とうなされてたけど」

 

隣を見ると、やっぱりというか何と言うか、幽香ちゃんがいた。ここって幽香ちゃんの家だっけ、と疑ってしまうほど自然にその場にいる幽香ちゃんは色々とおかしいと思います。不法侵入を超えてます。

 

それにしても......うなされてた、ねぇ。

 

 

―――『気味の悪い花だ』

 

 

「......別に。大丈夫だよ、幽香ちゃん。幽香ちゃんが僕を傘で殴打してる夢を見ただけだから。まったく幽香ちゃんがガサツだから、あんな夢を見るんだ」

 

「正夢にしてあげましょうか?」

 

冗談だよ、冗談。と軽く笑いながら、幽香ちゃんを宥めて誤魔化す。......幽香ちゃんには、できればあの頃の僕を知ってほしくない。あんな、憎しみしかなかった僕のことを、知ってほしくなんかないんだ。

 

 

―――『妖怪の育てた花など、言語道断』

 

 

「......日向、どうしたの?顔が怖いわよ?」

 

「あぁいや、なんでもないよ?幽香ちゃんちっちゃいなぁ、とか思ってただけだから。......エリーと比べて、ね?」

 

「おいこらどこ見て言ってんの?ねぇどこ見て言ってんの?」

 

まずいなぁ。昔のこと思い出しちゃったから、自然とあの頃の顔になっちゃうよ。まったく、夢ってのは困ったものだね。思い出したくないことも思い出してしまうから。

 

とりあえず落ち着くため、リビングから出て縁側へと行き、そこから見えるたくさんの向日葵たちを見つめる。後ろからブツクサ言ってる幽香ちゃんがいるが、無視だ無視。

 

うんうん。今日もたくさん元気に咲いてるね、家族たちは。やっぱり心を落ち着かせるのは、これが一番だ―――

 

 

―――『このような花に近付くな。危険だ』

 

 

「......落ち着く、なぁ」

 

「......日向、本当に大丈夫?」

 

「全然大丈夫さ。うん、全然」

 

「......そう」

 

あぁ、ダメだ。あの声が耳に残って消えない。僕の家族たちを馬鹿にする言葉が、耳に残って消えない。

 

......幽香ちゃんには、悟られないようにしないと。

 

そう思い、今度は向日葵たちの世話でもしようかと、畑の中に足を踏み入れる。

あぁでも、いいね。こうやって向日葵たちに水遣りをして、感謝の声を聞いてると、自然と心も落ち着いてくるよね。やはりこの向日葵畑は、僕にとってはかけがいのない大切な―――

 

 

―――『こんな不気味な畑、ない方がいい』

 

 

「......うるさい」

 

あぁもう、うるさいんだよ。なんでこんなに耳に残るのさ、人間の毒っていうのは。あぁそうさ、何時だって人間という生き物はいらない欲ばかりを生み出して、自分以外の他人を蹴落とし蔑んで、優越感に浸る。何時だって、そう、何時だって、人間は人間は人間は人間は人間は人間は―――

 

 

―――ニンゲンという、イキモノは。

 

 

「日向!!」

 

「―――ッ?......あ、幽香、ちゃん。どうしたのさ、そんな怖い顔して」

 

「アンタ......何苦しんでるの?」

 

「え?やだなぁ幽香ちゃん。別に僕は、苦しんでなんかないよ?」

 

「......じゃあなんでそんな、辛そうな顔してるの?」

 

「生まれてこの方、辛い思いなんかしたことない僕が、辛い顔をしている?はは。ナイスジョークだね、それ」

 

「......本気で言ってるの?」

 

「本気でって、何が本気なのさ。あ、わかった。幽香ちゃんが―――」

 

 

パンッ。

 

 

そんな音が、辺りに響いた。なんのことはない。この音は、頬を叩かれた音。僕の頬を、幽香ちゃんが叩いた音なのだ。

 

僕は目を見開いて、頬を叩いてきた幽香ちゃんを見る。

 

「どう、してなのよ......!なんで、誤魔化そうとするのよ!」

 

「幽香、ちゃん......?」

 

泣いていた。他でもない、あの幽香ちゃんが。寂しがり屋で、どんなに辛いことがあっても、強気で前を向いて弱音を吐かない、そんな幽香ちゃんが......泣いた。

 

「なんで、何も言ってくれないのよ......!ねぇ、気付かないとでも思った?アンタが何かに苦しんでることを!それに思い悩まされてることを!苦しいんでしょ?辛いんでしょ?だったら......だったらどうして、私に何も言ってくれないのよ!なんでアンタ一人で、抱え込もうとしてるのよぉっ......!!」

 

「幽香、ちゃん」

 

遂に堪えきれなくなったのか、涙をボロボロと零しながら嗚咽を漏らす幽香ちゃん。

 

......あぁ、そう、だったのか。心配、だったのか。朝から様子のおかしい僕を。怖い顔をしていた僕を。心配なんて、してくれていたのか......幽香ちゃんは。

 

「今は、今アンタは一人じゃないでしょ!私がいるじゃない!苦しいことがあるなら共有させてよ!辛いことがあるならそれも共有させてよ!だって、だって私達......

 

 

―――『友達』でしょ!?」

 

......あっはは。何やってんだろ、僕は。こんな、こんな友達思いの子を、泣かしたりなんかして、不安にさせて。あぁ、もう、本当に僕ってやつは。

 

この前だって、思ったじゃないか。幽香ちゃんは他の人間とは違う、って。それなのに僕は......僕って、やつは。

 

「......ごめんね、幽香ちゃん。話そうと思うよ、僕のこと」

 

「うん......聞いて、あげる」

 

あぁでも、まずは涙を拭かないとね。確かリビングにタオルとかがあったはずだ。

 

「幽香ちゃん......色々と、迷惑かけたね。とりあえずリビングで話そうか。涙だって拭かないといけないし」

 

「な、泣いてなんかないわよ!これは、その......汗よ!」

 

......まっ、幽香ちゃんがそう言うなら、そういうことにしておこうかな?普段ならからかってるけど、今回は特別だからね。

 

でも......なんで、だろうか。

 

 

「これで日向のことを、また一つ知れるわね!」

 

 

こうやって満面の笑みを浮かべている幽香ちゃんを見ると、どうしてドキッとしてしまうのだろうか。

 




久しぶりに文章を書いたせいでまずい文章でしたら、申し訳ないです。感想待っています!

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