それでは最新話、どうぞ。
追伸
幽香ちゃんマジ天使。
「日向、どうかしら?この私のこの格好!」
「子供が無理に背伸びしようとしてコケてしまったくらいに失敗してるね、そのワンピース」
そう言った僕は悪くない。幽香ちゃんが真っ赤な顔でポカスカ殴ってくるが、全然痛くないし、やはり僕は悪くない。
そもそも幽香ちゃんの身長的に殴られるのが僕の腰あたりなので、痛いというよりはむしろ心地よい。肩叩きされてるみたいな感じである。まあ、僕の身長が180くらいに対して、幽香ちゃんは140くらいだからなぁ。いや、それよりも下かな?まぁ、どうでもいいや。
さてさて、幽香ちゃんである。我らが幽香ちゃんである。今日は幽香ちゃん、実はおめかしをしてきたのです。
いつものとおりリビングで酒を煽っていると、幽香ちゃんが訪れてきた。まあ、ここまでは夏の間だけいつもどおりなのだが、いかんせん、幽香ちゃんの姿だけはいつもどおりではなかった。思わず辛口審査してしまうほどの格好だった。
だって......。
「うーん、ワンピースっていうチョイスは悪くなかったよ。けどね、幽香ちゃん。どうして色が白とかの王道じゃなくて、灰色なの?」
挙句に袖付きである。もう一度言うけど、袖付きである。普通ワンピースは袖なしじゃないのかな?袖付きとかダサいと僕は思うんだよね。袖付きのワンピースなど邪道である。
そう指摘された幽香ちゃんはと言えば、恨めしそうな顔でこちらを睨んできた。おかしい。僕は思ったことを口にしただけなのに、どうして睨まれるのだろうか。
「人里じゃあこのワンピースしかなかったのよ。それに、似合ってなくても似合ってると言うのが、男の甲斐性じゃないのかしら?」
「ごめんね幽香ちゃん。僕は嘘はいけないと思ってるんだ。だから正直に言ってるんだよ。うわっマジ似合ってねぇなあっはっはウケるー、って」
クソ日向死んでしまえ!などと言われたが、知ったことではない。本当のことだし。それに女の子がクソだの死ねだの言うんじゃありません。はしたないからね?だから人里でモテないんじゃないの?いやまあ、そこはよく知らないけどもね。折角綺麗な顔してるんだから、もったいない。......髪だって綺麗なのに。
よし、ここは一つ、人生の大先輩である僕が注意をしておこう。これも幽香ちゃんのためなのだ。
「幽香ちゃん。僕は君をそんな子に育てた覚えはないよ」
「そもそも育てられた覚えとかないしアンタは私の父親かっ!」
「やだなぁ知人に決まってるじゃないか。どうしたのさ、いきなり僕を父親呼ばわりして。甘えたいの?ほーれほれ、よちよち。幽香ちゃんは偉いねー」
そう言って幽香ちゃんの頭をわしゃわしゃしたら真っ赤な顔でグーパンチが飛んできた。しかしいつものごとく痛くない。続けざまに顔面を殴られる。しかし痛くない。などと余裕ぶっこいてたら傘で顔面を殴られた。......ちょっと痛い。
「幽香ちゃん......傘は人を殴るための道具じゃないと思うんだよね」
「大丈夫。この傘は凄まじい強度で作られてるし、傘の裏側には魔除けのお札が貼られてるから、殴るために作られたようなものよ。妖怪限定で」
「道理で痛いと思ったらそんなのが貼られてたのか......」
誰だいそんなのを貼ったやつは。いやまあ、博麗の巫女製のお札じゃないだけまだマシなんだけどね。あの巫女のお札は本当にハンパじゃない。一回戦ったことがあるが、人間やめてるレベルの霊力込められてるお札とか、もう爆弾以外の何物でもない。
はぁ、とため息を吐き、幽香ちゃんを恨めしく見つめる。うっ、とたじろぐ幽香ちゃん。攻めには強いのに、攻められるのに弱い子だな、本当に。
「な、何よ......文句でもあるの?い、言っとくけど、いっつもアンタが私をからかうから悪いんだからね!ふん!」
「......セノビック」
ボソリ、と呟いただけの声だが、幽香ちゃんはしっかりと聞いていたようだ。ピクリ、と肩を震わせて、こちらをキッと睨みつけてくる。おお、怖い怖い。
「あ、アンタってやつはぁ......!」
「いやぁ、本当に見ものだったなぁ昨日は。セノビックの欲しさあまりに、まさか僕のついた嘘を真に受けるなんてねぇ?」
「あ、あれはアンタが『これは神様にもらったんだ。空にグラマーな女性になりたいって叫べばくれるよ』とか言うからやったんじゃないこのバカぁっ!!」
「ぷっ。く、くくっ......!今思い出しても腹が痛いよ......!人里まで聞こえたんじゃないの?く、くくっ」
「笑うな笑うなアホぉっ!!日向なんてとっとと死んじゃえ!」
先程までの態度はどこへ行ったのやら、肩をプルプルと震わせながら顔を真っ赤にして激昂する幽香ちゃん。そういうところ、本当に子供っぽいなぁ。グラマーな女性を目指すんなら、もっと大人っぽくならないとね。
「ふんだ!いつかグラマーな女性になって、アンタを見返してやるんだから!」
「おいおい、自分の体を見て言ってるのかい幽香ちゃん。あと何十年かけてグラマーな女性になるのやら。ひょっとしたら、何十年経っても成長しないかもね?」
「殺す!アンタを殺す!今殺す!」
おっとやばい、幽香ちゃんがお怒りだ。今にも傘を槍投げのようにこちらに投げてきそうな勢いだ。
身の危険を感じた僕は、幽香ちゃんが行動するよりも先に、リビングから飛び出し向日葵畑へと向かう。出遅れた幽香ちゃんが、傘を振り回しながら追いかけてくる。......お願いだから、向日葵にだけは当てないでね?
「待ちなさい日向!今日という今日は許さないわ!大人しく人喰い妖怪の餌になりなさい!」
「待たないしそもそも僕は妖怪だから人喰い妖怪の餌にはならないからね?そこんとこ理解してます?」
揚げ足取られた幽香ちゃんの怒りゲージがMAXにまで来たようだ。さらに速度をあげてこちらに迫ってくる。いやホント、弄りがいのある子だよなぁ。......それじゃあ僕も、少し速度をあげようか。
「くっ。こ、この、待ちなさい!卑怯よ日向!妖怪であるアンタの方がよっぽと有利じゃない!」
「いや知らないよそんなの。僕は妖怪で君は人間。そこは変わんないわけだしね」
まったく。幽香ちゃんは僕が好きで妖怪やってると思っているのだろうか。いやまあ、僕としてもどうして妖怪になったのかは知らないけどね。気付けば妖怪になっていて、自分は向日葵の妖怪、っていうことだけしかわからなかったしさ。
「ま、まちな、さい、よ......!ぬぐぐ、ぐっ......!」
後ろを見ると、幽香ちゃんはもう息を切らしていた。やっぱりここが人間と妖怪の違いだね。身体能力の大きな違い。それに幽香ちゃんはまだ子供。昨日聞いたけど、今年で11らしい。
......まぁ、これ以上鬼ごっこやって幽香ちゃんに体調崩されても困るし、そろそろ謝って終わろっかな。人間は色々と弱いんだから。
そう思った僕は走るのをやめ立ち止まり、幽香ちゃんがこちらまで来るのを待つ。その距離、およそ10mほど。......が、ここで一つ、僕は気づいてしまった。
あー、確か幽香ちゃんの前にあるあの土......滑りやすくなかったっけ?
「―――ぷぎゃっ!?」
「......」
案の定、こけた。幽香ちゃんが。それも、仰向けで。その光景に、なんとも言えなくなる僕。
......あー、こりゃ怪我したかな?とりあえず急いで助けよう。そう思い、小走りで幽香ちゃんに近寄る。恐らく幽香ちゃんの前面は泥だらけだろうね。風呂でも貸そうか。
「う、痛た......」
「幽香ちゃーん。大じょう―――っ!」
そこで僕は目の当りにした。いや、してしまったのだ。驚愕の光景を。
目を見開いている僕を、訝しげに見上げる幽香ちゃん。頭の上に『?』を浮かべていた彼女だが、体の違和感に気付いたのだろう。ギギギ、と首をブリキみたいに鈍々しく後ろに曲げ、目を見開く。
―――幽香ちゃんの下半身が、顕になっていた。
どんなこけ方をすればそうなるのかわからないワンピースの捲り方を、幽香ちゃんはしていたのだ。
そこに見えるのは、布。そう、布である。真っ白い、純白の。決して子供っぽいなどとは言えないような、そんな薄い布の三角形が、そこにはあった。
......幽香ちゃん、なんでそんな大人な下着を着けてるのさ。
気まずさで目を逸らす僕。その隙にバッと体を持ち上げる幽香ちゃん。再び幽香ちゃんを見る。顔を俯かせているが、多分その顔は、羞恥で真っ赤になっているだろう。肩もプルプルではなく、ブルブルと震わせている。
......嘘はいけない。僕は自分でそう言った。だから僕は、そんな幽香ちゃんの肩をポン、と叩いて、満面の笑みでこう言った。
「その下着、そのぅ......すごく、いいと思うよ?」
「うにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
僕はその日、初めて幽香ちゃんの攻撃を心の底から痛いと思った......。
これから徐々に文章量を多くしていきたいと思います。頑張ります。
こんな幽香ちゃんも、あっていいじゃないか。のほほんとした気分で書いておるため、不思議と指が進みます。でもどこかで詰まるかも......。
感想等、お待ちしております。