まあ、そんなこんなで最新話、どうぞご覧あれ!
注意!今回グロいです!
「ば、ばけもっーーー」
言葉を言い終える前に、目の前の人間を殺る。右手で頭を掴んで、少し力を込めるだけであら不思議。真っ赤な血しぶきを上げて、人間は動かなくなった。
「……ふふっ」
その光景を見て、微笑む。それと同時に自覚する。ーーーあぁ、なんだ。僕にもまだあったんじゃないか。妖怪としての本能が、さ。
これで何人目かな。二桁にいったあたりから、面倒で数えてないんだよね。だってほら……皆殺れば一緒だから。数なんて数えた所で無意味だ。
「みーつっけた」
「ーーーひっ」
ほら、そんなことを思ってる内に、また一人獲物がいたじゃないか。壊れた建物の影に隠れてるなんてさ、姑息だよね。気付かなかったよ。
腰が抜けているのか、僕が近付いても逃げる様子がない子供。蛇に睨まれた蛙の気持ちでも味わってるのかな。まあ、どっちだっていいさ。ーーー相手が子供でも、僕はもう容赦なんてしないんだから。
怯えている子供の首を掴んで上へと持ち上げる。子供は苦しそうに呻き手足をジタバタと暴れさせるが、そんな行為は僕にとって全く意味がない。
「さようなーー「待て!日向!!」ーー……妹紅」
子供の首を掴んだ手に力を入れ、殺そうと思った矢先……そこで声が聞こえた。そちらを振り向けば、やはりと言うべきかーーー藤原妹紅が、そこに息を荒らげて立っていた。
「おまっ、えは!!何をしているのか……自分が何をしているのか、わかっているのか!?」
語気を荒げて言い放つ妹紅。僕としては、なんでそこまで息を切らしてるのとツッコミを入れたい所だったのだが……そうか、彼女は人里に住んでたわけじゃなかったね。ということは、騒ぎを聞きつけてここに急いできた
って感じか。
……さて、と。何をしているか、ね。
「決まってるじゃん。人里の連中を皆殺しにするんだよ。おかしなことを聞くよね、妹紅も」
「お、まえ……っ!いいからその子から手を離せ!!」
ん?その子?……あぁ、忘れてた。そう言えば僕、この子を殺そうとしてたんだね。完全に頭から離れてたよ。いや、うっかりうっかり。
ーーーグシャッ。
うっかり、殺しちゃったよ。忘れちゃっててごめんね、名前も知らない人間の子供。
「ーーーひなたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その瞬間、妹紅が動き出した。妖力で体を強化しているのだろう。普通の人間では目も追いつかないようなスピードで僕へと近付いてきた。……でもね、妹紅。
「僕には止まって見えるよ」
「ーーーがっ!?」
僕の顔面に向かって繰り出された右の拳を、頭を軽く横に振って躱し、そのまま妹紅の顔面を掴み地面に叩きつける。地面が陥没するほどの衝撃を与えてしまったが、そこは不死身の妹紅。こんなことで死ぬわけがないし、死ねない。
けれど、
「これでわかったでしょ?実力の差ってやつが」
「はな、っせ……っ!!」
大妖怪と、死なないだけの人間。少し考えればわかることだ。この、どうしようもないほどの実力の差というやつが。
「ね、妹紅……君は僕の友人だ。だから、いくら君が死なないと言っても、気が引けるんだよ、痛めつけるのは。だからさ、ここは黙って僕のすることを、見逃してくれないかな?」
「ふっ、ふざける、な……!」
ん、ちょっと話しづらそうだね、妹紅。って、そりゃ僕の手が妹紅の顔面に来てるんだから、当たり前か。うっかりうっかり。
ってわけで少し力を緩めると、一瞬で僕の手を両手で弾き退かし、後ろへと後退する妹紅。素早いその動きに、ちょっと感激しちゃったり。全く、成長したなぁ。
「……止める気はないのか、日向」
妹紅の成長を喜んでいると、そんな妹紅からそう聞かれた。止める気はないか、だなんて。
「ううん、違う。止まれないんだよ、今更。幽香ちゃんが死んだと認めたあの時から僕は……もう、止まれなかったんだ」
僕のその言葉に対し妹紅は、そうか、とだけ小さく呟くと、凛とした顔でこう言い放った。
「なら私は、尚更お前を止めないといけない……何故なら、やっちゃいけないことを止めるってのもーーー友達の役目だからなぁ!!」
❁❀✿✾
「……これで、いい加減満足?」
「……まだ、だ」
僕の足元に、倒れ伏しながらもしがみつく妹紅を見て、ため息をつく。
一体あれから、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。妹紅の恰好いい啖呵を聞いてから、もう三十分は経った気がする。どれだけ粘るのだろうか、この子は。もう妖力も底を尽きただろうに。
「しつこい女の子は嫌われるよ?」
「へ、へへっ、あいにくと、それが売りで、ね……っ!」
全く、いい加減うんざりしてきちゃうよ。何回殺したと思ってるのさ。殺す度殺す度生き返っては僕の邪魔をしてくる。はぁ、迷惑この上ないよ。
「慧音が、悲しむんだ……!帰ってきた時、人里がもっと酷いことになってたら、あいつが悲しむんだ!だから、私は、ここでお前をとめーーー」
言い終える前に、顔を蹴り飛ばす。頭が吹き飛び、お茶の間には見せられない姿になる妹紅。しかし、数秒もすると、
「お前を、止めるんだ!」
「ちっ……本当に厄介だな、不老不死も」
うざい、うざい。うざいうざいうざい。どうして僕の邪魔をする?どうして?友達ならわかってくれよ、妹紅。君だって同じ立場ならそうする。その慧音ってやつが殺されたら、その殺したやつを君は殺すだろ?それと一緒なんだ。
「そんなに睨むなよ、日向。ちびるだろ?」
「だったらそこを退いてよ」
「そいつは無理な相談だ」
いっそのこと、妹紅に僕の怒りと憎しみを譲渡しようか?いや、ダメか。そんなことをすれば間違いなく妹紅は耐えられなし、何より、
ーーーこの怒りと憎しみは、他でもない僕のものにしたい。
「……お前のことだ、私が駆けつける前に、過激派って呼ばれてる連中は全員殺したんだろう?幽香ちゃんを殺したのはそいつらだ、じゃあそれでいいんじゃないのか」
「それを見て見ぬ振りをしたほかの連中も同罪さ。皆等しく殺す。そうじゃなければ、またいつか同じ悲劇を生み出す」
お互いもうわかっている。これ以上交渉の余地なんてないことを。僕は妹紅に邪魔をして欲しくないが、妹紅は邪魔をする。妹紅は僕に人間を殺させたくないが、僕は殺す。
「いい加減、離してくれ」
「嫌だね。だったら、思いっきり振りほどけばいいじゃないか。お前は大妖怪だ、ほとんど妖力も残って無い私のこの両手を振りほどくなんて、そんなの簡単だろ?けどお前はそれをしないーーー心のどこかで思ってんだよ。こんなことをしたところで幽香ちゃんは、ってーーー」
妹紅が掴んでいる自分の足を振り上げ、振り下ろす。それだけで、妹紅は吹き飛んだ。妖力どころか、もはやそこから立ち上がれるだけの力もないくせに、どこまでも格好つけて。何も、知らないくせに。わからないくせに。
「知ったような口を、わかったような口を、きくなよ……っ!」
「どう、した、日向?余裕が、ないぞ……?」
うざいよ、妹紅。果てしなく。大体僕もそうだ。こんなやつ、放っておけばよかったんだ。構わなければよかったんだ。今の状態になるまで殺して殺して殺しまくってやればよかったんだ、最初から。
『だって、だって私達……ーーー友達でしょ!?』
くそ、幽香ちゃんのせいだ。あの子が言う言葉は、本当に僕に影響を与える。やめてくれよ、僕は君のためにと思ってやってるんだ。……なんで?こんなことが、幽香ちゃんのため?
もう、何が何だかわからくなってくる。この真っ赤に染まった自分の体を、幽香ちゃんはなんて言うんだろうか。僕のこの両手を見て、幽香ちゃんはどう思うんだろうか……。
「くそ、くそっ、くそくそくそっ……!全部、人間が、あいつらが悪いんだ!あいつらが、あいつらが……!」
「は、はっ……!怖いな、日向。本当に人里の皆を殺しそうな、勢いだ」
そうだ、皆だ。あいつら皆殺せば、それで済む話じゃないか。何を悩んでいたんだ、僕は。こんなんだから幽香ちゃんから、セクハラ妖怪だのなんだの言われるんだ。……ははっ、そうだね、妹紅になんか構ってた方が馬鹿だったんだ。もう、無視しーー「だけど、ひな、た……この勝負は、私の、勝ちだ」ーーは?
「……何やらどんちゃん騒ぎを起こしてるようだけど、気分は如何かしら?ーーー向日葵妖怪」
妹紅の突然の勝利発言に、何を戯言を、などと思っていた僕だったが……その声に、その姿に、考えを改めた。
見るもの全ての目線を吸い込むかのように真っ黒な、腰まで伸ばした漆黒の髪。幽香ちゃんにだって負けず劣らずな、整った顔立ち。脇が露出するという、独特な特徴を持った巫女服。……あぁ、間違いない。見間違えるわけがない。そして、忘れるわけがない。
「……博麗の、巫女」
昔、僕をボロクソにした張本人が、そこには居た。
作者、戦闘なんて初めて書きます:(´◦ω◦`):ガクブル。え?はしょってた?なんのことかな!
さてさて出ました、博麗の巫女。彼女の強さや如何に!そして、まさかの人里から用事で出かけている慧音!カッコイイぞ、妹紅!!悪役日向、どうする!?
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