ではでは、文章力がないのに、更に落ちてしまった作者の新話を、どうぞ向日葵畑を想像しながら見てください(இ௰இ`。)。
「ふんふふん。ふんふふふん。……やめよう。僕に鼻歌の才能なんてないみたいだ」
そう独り言を零しながら、僕はいつもの向日葵畑……ではなく、人里の近くの森に来ていた。向日葵畑は、幽香ちゃんとエリー、あ、今日はもっこすも遊びに来るって言ってたな。
まあとにもかくにも、何故僕がこんな陰気なところにいるのか。そう、それは今からこの陰気な雰囲気に合った陰気な友じ……僕の友人に会いに来たのだ。
スキマの話によれば、確かここら辺に住んでいるみたいだけど……お、あれかな?って、ちょうど家から出てきてるじゃないか。相も変わらず、本を片手に持ってるんだねぇ。
そんな昔と変わらない友人に、手を振りながら声を上げる。
「おーい、こーりーん」
❂ ❃ ❅ ❆ ❈ ❉ ❊ ❋
「……久しぶりだね、日向。まさか君が自分の花畑を離れて、ここに来るなんて」
「そんなに意外かなぁ、僕がこーりんに会うためにここに来るのは」
いきなり気色悪いこと言わないでくれ、などとため息混じりに言う、僕の友人森近霖之助こと、こーりん。実に数十年振りに会ったが、流石は半妖。もっこすに似た白髪に整った顔立ちというその容姿は昔とまるで変わらない。
「いやいや、何も気色悪いことじゃないよ。ついこの間、もっこすに会ってね。数百年振りに。で、そういえばこーりんは何してるかなぁ、って気になってね」
「だからと言ってわざわざ人里近くにある僕の家まで来るのかい、人間嫌いの君が」
久しぶりに会いに来たというのに、なんだろうこの反応は。辛辣過ぎやしないだろうか。だからこーりんは友人が少ないのだ。幽香ちゃんと一緒で。……あれ?じゃあなんで僕も友人が少ないんだ?いや、幽香ちゃんやこーりんには負けてない。負けてないから大丈夫。少ないってことに変わりはないけど。
「……まあ、いいさ。僕も僕で、近頃君のところを訪れようと思っていたからね。手間が省けてよかった」
「ん?僕のところに?それはまた、どうして」
珍しい。引きこも……インドア派なこーりんが、外に出かける。ましてや長年会ってない僕にわざわざ会いに来るなんて。それほどの用事なのだろうか?
「何年も前から君の花畑に、風見幽香、という女の子が来ているらしいね?」
「あぁ、うん。幽香ちゃんね。こーりんも知ってるの?」
「当たり前さ。人里の有名人だからね。人里で働いてる僕にとっては、そういった噂はよく耳にする。特に、緑髪の女の子、なんてね。……まあ、でも」
ーーー君の花畑に彼女が訪れているという噂は、つい最近聞いたんだけど。
……嫌に気になった、その言葉。そう、何か聞き覚えがある。あれは、そうだ。幽香ちゃんが熱を出して、僕がお見舞いに行った時。人里の団子屋で聞いたあの話。
『妖怪なんていう、化け物のところに行ってるからだ』
……は?
「待って、こーりん。その噂、ほんとに最近聞いたの?」
「うん?そうだよ、間違いない。つい最近からこの噂は出回ってるらしいね」
おかしい。だってあの時、団子屋で聞いたあの話は……『数年前』だ。噂になってるのなら、数年前からその噂は出回ってるはずだ。何故最近になって?
……いや、まさか。
見落としていた、かもしれない。だって、こーりんが言ってるとおり、その噂が人里に最近出回ってるのだとしたら?『風見幽香は妖怪のところに入り浸っている』なんて噂が、人里中に出回っていたとしたら?
『妖怪なんていう、化け物のところに行ってるからだ』
あの時あの場所で聞いたこの言葉が、『まだその場でしか話されてないこと』だとしたら?
「日向。僕が君のところを訪れようとした内容は、忠告さ。ーーーこれ以上風見幽香に君は関わってはいけない。君は彼女の人生を、台無しにするつもりかい?それでなくとも、彼女の家柄は特殊らしいんだ」
「……特殊?」
「僕も店主から聞いた話だから、一概にほんとかどうかなんて知らないけども。彼女の先祖は、妖怪と交わった人間らしいんだ。生まれた子供はもちろん半妖。だけど、その半妖は人間と結婚し、子を成し、そしてその子も人間と子を成し……って繰り返した結果、半妖の血は薄れていき、遂には限りなく人間に、いや、もはや人間としか言いようのない存在になった。それが彼女、風見幽香。人間になった、半妖みたいなものだよ。けれど、遺伝子は引き継いだんだろうね……」
彼女、髪が緑色なんだろ?と、ひときしり話し終えた後に僕に聞くこーりん。あぁ、そうだ。彼の言う通り、彼女の髪は緑色だ。『普通』ではありえない、緑の髪。
「彼女はそんな過去と、その奇怪な髪の色から、人里では化け物の子、などと言われていじめられていたらしい。……半妖の血が、ほんの少し混ざってるだけで、ね」
こーりんは、心底憎たらしい顔をしながら、最後にそう呟いた。今の話が本当なら、幽香ちゃんよりも半妖の血が混ざっている、いわば彼女と同類の彼からしたら、なにか思うところもあるのだろう。僕達みたいな純粋な妖怪と違って、人間の部分がちゃんとあるのだから。
「で、だ。さっきも言ったと思うが、もう彼女と関わるのはやめといた方がいい。ただでさえ彼女に対する周囲の反応は悪いのに、その噂のせいで彼女がさらに酷い目に……いや、最悪、殺傷沙汰になるかもしれない」
「……だよねぇ。僕も、そう思ってたところ」
そりゃそうだ。あそこまで妖怪に対して強い憎悪や嫌悪を持っている人里の連中。下手すれば幽香ちゃんに、化け物の仲間とかなんとか言って襲うかもしれない。……いや、まあ、流石にそんな馬鹿がいない、とは信じてるけども。
「まあ、これは単なる忠告だし、僕が今言った殺傷沙汰だって、ただの予想。そうなるかもしれない、というだけで、ほんとにそうなるわけじゃない」
そう結論づけ、こーりんは読んでいた本をパタン、と閉じると、僕の目をじっと見てきた。
「ーーー君は、どうするんだい?」
「……どうする、とは?」
「人間嫌いの君がそこまで関わるほどの人間なんだろ、その幽香ちゃんというのは。そんな存在を、君は切り離せるのか?」
「……どういうこと?」
「そのままの意味さ。君は、『彼女と二度と会わない』ことができるのか?」
えらく真剣なこーりん。他人にほとんど興味を示さない彼が、見たこともない、話に聞いただけの幽香ちゃんにここまで肩入れするなんて……よほど、同類というのが気になったのだろう。まあ、こーりんらしいと言えばらしいか。
「今は、まだなんとも言えないかな。実際そうなったわけでもないし。……まあでも、そうならないよう、努力はしてみるよ」
「ふむ……いやはや、やはり変わったね、日向は」
唐突にそう言われた。変わった、と。別に僕自身は変わったつもりなど……いや、あるか。変わった。確かに、僕は変わったさ。ううん、違うかな、この表現の仕方は。だって、僕は。
「変わったんじゃなく、変えられたのかもね?たった一人の人間に、さ」
「……ふっ。俄然興味が湧いてきたよ、その幽香ちゃんとやらにね」
「なら今度遊びにきなよ。いつでも歓迎するよ?幽香ちゃんも、ほぼ毎日いるし」
それもいいかもね、と彼は言い終えると、再び閉じていた本を開け、そちらに目を向ける。相も変わらず、マイペースな友人だ。昔と変わらないその姿に、つい苦笑してしまう。
「……おっと、そろそろ僕も帰る時間だね。エリーからの話だと、こういう時、幽香ちゃんが日向はどこー、とか、うるさいらしいし。あはは。まるでお父さんみたいだね、僕って」
なんて、ここに来てから意外と時間も経っていたため、幽香ちゃんうるさいだろうなぁ、と思って冗談交じりに言ってみた言葉。
だがしかし、こーりんは。
「…………」
顎に手をやり、真面目な顔をして考え事をし始めた。先程まで目を通していた本など、お構いなしに。この反応には、流石の僕も驚いた。一体どうしたというのだろうか。
「日向がお父さん、ね。……なるほど、道理で」
「あのー、こーりんさんや?僕には全くわかりませんが?」
「うん?幽香ちゃんから、聞いてないのかい?いやまあ、これも僕が店主から聞いた話だけどね」
ーーー彼女の親、人里の過激派の連中に殺されたらしいんだ。
実はこの小説のゆうかりん、結構な人生を送っております。はい:(;*'ω'*):。
さてさて、物語もどんどん進んできそうな予感!……多分:(;*'ω'*):。
評価、批評、感想等、心よりお待ちしております。