望んでないのに救世主(メシア)!?   作:カラカラ

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城内省のトップって省の長だから大臣ですよね?
またオリジナルキャラを作ってしまいました…。


第07話:ファーストコンタクト(1)

―会談は帝都にある迎賓館として使用されている濱離城にて行われる事となった。本来迎賓館は外国の元首またはこれに準ずる者で、国賓として招請することを政府が閣議決定し、皇帝若しくは政威大将軍が承認した場合に宿泊及び接遇が行われる。しかし、相手は突然帝都に近い相模湾に出現した謎の集団であり、総戦力は航宙艦WILLと名乗っている巨大なメガフロートのサイズからも連隊相当の規模を有している可能性がある等の経緯により、政府の対応検討会議がもはや常用的となっている横紙破りな手法として、政威大将軍に図ることなく濱離城の使用を決定した。

―この濱離城の使用は城内省だけでなく、国防省内部の現状に憂いている者たちも難色を示したが、結果的に政威大将軍である煌武院 悠陽が正式に追認したことで、反発者は矛を収めることになった。

 

「ようこそ日本帝国へ。ダグラス・カイエン殿。私は日本帝国内閣総理大臣の榊 是親です。こちらは城内省大臣の移住院隼人。我ら二人がこの交渉会議での窓口となります。」

「移住院 隼人だ。この交渉では主に軍事面を担当する。」

 

 榊大臣か、体格は中肉中背だが、眼光が鋭いな雰囲気的には政治屋として確固たる柱を持っているみたいだ。移住院大臣の背は俺より高いし、体格もゴッツイスキンヘッドの軍人だな。初対面の子供なら泣いてしまう顔だな。

 

「航宙艦WILL総司令のダグラス・カイエンだ。異星起源生命体と認識してくれ。」

「その割には、ずいぶん日本語が堪能ですな。」

「優秀な翻訳機のおかげでな、数種類のシチュエーションで音声を学習すれば、おおよそ日常会話レベルの翻訳が可能になる。今のこの会話も翻訳機にとっては学習の場だ。

ああ、それと今後の意思疎通や認識誤差を少なくする為に辞書や百科事典、通信を含めた一般的な規格、単位系の基準と名称、文化等の資料をいただきたい。」

 

 納得していないような顔をしているな。こちらが地球とは別の場所から来た存在とちゃんと認識しているのかね?

 

「辞書はわかるが、単位や通信規格はどういう意味がある?」

「単位っていうのは物理現象等のものさしだ。具体的な話をする時に同じものさしで会話をしないととんでもない勘違いをするだろう?

例えば長さの単位をとってみても1という長さが指1本の長さなのかこの惑星1一周の長さなのかでとんでもない問題が発生するだろ。単位の共通化は誤認を防ぐ為にも重要だ。此方が其方に合わせようと譲歩するから資料を要求するのは当然ではないかな?通信についても同様で、いつまでも看板出しあってでは機密情報などのやり取りができないし、レスポンスが悪いつまりは誤解の温床だ。相互理解の為にもこういったことは可及的速やかに整備しないと後悔することになる。」

 

顔色が変わったな。やっと事の重大さが理解できたようだな。恐らくこの星の住人は異星起源生命体とコミュニケーションをとったことが無いのだろうな。ラッキーだったな、初めて接触したコミュニケーション可能な異星起源生命体が俺たちみたいな少人数且つ、侵略意図の無い相手で。これが侵略を目的として来ていたらいくらでも難癖を付けて搾取されてしまうぞ?

 

「た、たしかにそれらはコミュニケーションをとる上で重要ですな。」

「重要性が理解いただけた所で手配をお願いする。こちらも資料をいただけないと対処できない事もあるはずだから、可能な限り早くお願いする。特に通信系の規格を優先してくれ、そうすればこの場では間に合わなかった情報も収集して対応できる。特に生態データ等関連付けが無いと事故につながる可能性があるからな。」

「わかった。秘書官に準備させる。」

 

「次に確認したいのだが、カイエン殿は本当に異星起源生命体なのですかな?」

「どう言う意味だ?」

「姿形があまりにも我々と酷似している、音声を使ったコミュニケーションをしている。等この星の住人が騙っていると思われても不思議ではあるまい?」

「なるほど。」

 

 流石は軍人のような移住院大臣だ、確かに見た目そっくりでは逆に騙りと思われても否定は難しい。というよりも証明する方法なんてあるのか?

 

「言いたいことは理解できるんだが、それって証明する方法ってあるか?普通に考えて姿形が酷似しているってことはできることも実際大して違わないと思うぞ?生物学的な事を聴かれても其方側の情報と比較しないと証明にならん。ましてや構成元素等を例に挙げたとしてもたまたま似たような環境の惑星で発現した種である場合には似たような生態系になると思うがね?」

 

 裏を取りたいのはわかるが、確認方法がお粗末になっているな。地球外生命体と証明したくとも証明する方法が無いと証明は不可能だろう。百科事典は掲載されていることでは証明ができても掲載されていないからという理由では証明にならない。未確認だっただけで元から地球生まれの可能性は否定できないからな。

 

「宇宙は広い、あらゆる可能性を否定することはほぼ不可能だ。これは完全な証明にはならないが、生物的に此方が可能で其方が不可能な事をやればある程度の証明にはなるかもしれないね。ただ、その場合にも今すぐ証明はできない。何故ならばそちらの生態データを知らない状態では此方との違いを示せないからね。」

 

 顔色が変わったな。データを渡すことの危険性は認識しているっぽいな。

 

「例えばどんなことかね?」

「違いがあるかはデータが無いので憶測として答えるが、測定可能な身体能力だな。これに大きな差があればわかりやすいな。しかも可能な限り客観的な数値に変換可能で大きな差ができる項目が望ましい。最もこれは大きな違いがあった場合の手段だ。何か根本的に此方と異なる項目が見つかればそれは証明となりえると考えられる。ただ、この方法では違いが無い=地球起源種との証明にはならない事も認識が必要だ。」

「確かに、先ほどの例が逆になったと考えられる。どうせ証明する手段など直ぐには思いつかないのだから、1つやってもらえないかね?」

「種目によるし、結果は保証できないぞ。」

「無論こちらもそれは理解している。だが、なんの証明もなくデータを提供等という前例は作りたくないのだよ。」

「それでは結局のところ証明できないことにならないか?」

「簡易的に測定できる握力計を手配する。握り締めれば直ぐに数値が出るので評価はスムーズにできるはずだ。こちらの要請に協力したという建前さえあれば、一般的なデータ提供のハードルは低くなる。最終判断はデータ提供後でも問題はないから地球人であるか否かの判断はデータ提供後に決定しよう。もっとも最終的に地球人と判断された場合は日本帝国の法に則ってもらうがな。」

「最終判断はそちらだけで行わない、判断基準を明確にこちらに提示する等の条件が付けばそれでも構わんよ。」

「了解した。双方が納得できる最終結果がでることに期待しよう。」

 

―移住院大臣がそう言うと部屋の入り口に控えている駒木中尉に命令した。

 

「駒木中尉、近くの病院から体力測定用の測定器具を一式手配しろ。2時間もあれば用意できるな?」

「は!至急手配いたします。」

「ではそろそろ本題である和平会談に入るとしよう。前提としてカイエン殿が地球人でないと確認できた後に有効とすることは明確に議事録に記そう。」

「ま、当然の内容だな。」

 

 さて、これからが本番だな。もっとも地球人の生態データを入手しないと当初の胃袋掌握作戦が展開できないからな~。何が毒になるかわからないものが交渉の役に立つ訳がない。このあたりは次回の交渉に持越しの形で進めないとまずいな。

 

「まず、WILL側のスタンスを説明する。こちらとしては日本帝国に含むところは特に無いので、ある程度友好的にしておくことが望ましいと考えている。態々血を流す所からスタートする必要は無いからな。」

「それについてはこちらも同様だ。だが、カイエン殿は帝国の領海と領海に存在するメガフロートを一方的に占拠している。このことについては日本帝国として看過することは出来ない。」

 

いいかげんWILLがメガフロート呼ばわりされるのは気に食わんな。だいたい勝手に占拠ってのはもともと相手の持ち物を奪い取るってことだろ?WILLは元々俺の艦だぞ。

 

「元々WILLは俺の艦だ。それに地球降下時まではコンシールしてあっただけであり、着水完了と共に海難事故を防ぐ目的で姿を現しただけだ。」

「あのサイズで艦とはいささか空想が過ぎるのではないかね?帝国としてもどうやって隠蔽していたかは気になるが、地球に大気圏突入できるサイズではないし、落着を観測できなかったことも疑わしい。」

「つまり、WILLが艦であることを証明すればアレは俺のものであることの証明になるんだな?」

「どうやって証明するのかね?」

「そうだな、まずはメガフロートでないことを証明してやるよ。流石に大気圏外に出るのは戻ってくるのに面倒だから、海面から浮いて見せれば納得するだろう?」

「浮く?既に海面に浮いているではないか。」

「だから、“海面から”浮くんだよ。それはメガフロートには必要のない機能であり、できないことだろ?」

「確かにそうだが、そんなことが可能なのか?」

「あっちに俺のパートナーを残している。あちらに連絡をすれば操艦するさ。これから連絡するが問題ないか?」

「ああ、それは問題ない。」

「周りの監視しているロボット共に連絡しておけよ。いきなり突入してきたら迎撃するように指示を出しているから一気に戦闘に突入するぞ。」

「ああ、出撃しないように指示を出す。」

 

―そう答えた移住院 隼人大臣は監視作戦を指揮しているHQに連絡を入れ、WILLに動きがあっても静観し、映像記録をこちらにも回せと指示をした。

 

「指示が行き渡ったらこちらも連絡を入れるから、準備が整ったら教えてくれ。」

 

―1時間後、WILLの浮遊が確認され、監視していたHQや戦術機衛士140名及び連合艦隊第一戦隊乗組員たちは度肝をぬかれた。また、会議室でモニターしていた榊・移住院両名も絶句し、カイエンの発言が事実を含んでいる事を実感するのであった。




7話現在のオリジナルキャラクターはカイエンとアトロポスを除くと3人の名前が出ております。元ネタはバレバレと思いますが・・・

異星人である事を証明するって難しいですよね。
因に百科事典の件は某召喚教師のネタです。

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