望んでないのに救世主(メシア)!?   作:カラカラ

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遅くなって申し訳ありません。


第05話:ファーストコンタクトの準備(後編)

WILLからアドバルーンが上がった直後、監視をしていた日本帝国軍は瞬間的に臨戦態勢に移行した。しかし、最も接近していた帝国連合艦隊第一戦隊の尾北 十蔵提督が日本帝国へのメッセージと判断し、強襲上陸敢行しようとしていたHQを一喝し中止にできたことが幸いし、戦端が開かれることは無かった。後世の歴史家には、この尾北 十蔵提督の一喝が日本という存在を救うターニングポイントとなったと評価されている。

 

「マスター、どうやら無断で乗船してくるような事はなさそうですね。」

「それは重畳だ。彼我戦力が不明な現状で無駄な戦闘は回避しておきたいからな。」

「先ほどの出撃準備をしていた人型兵器の機動をモーションサンプリングしたところ、あの兵器は腰部側面に取り付けている跳躍ユニットと主脚にて機動制御を行なっていることが確認できました。また、装備形状を見る限りでは、白兵戦よりも砲戦若しくは銃撃戦を主体としていることが確認されました。」

「なるほど、この星の戦闘スタイルは射撃戦がメインになるのかもしれないな。まだ、詳細な性能はわからないが、人型兵器を100機も並べるくらいだからそれなりの軍事力があると見ておこう。」

「グランシーカーの情報では、後方にタイプが違いますが、30機程後詰がいるようです。」

「一気に掛かってくるとめんどくさいな。アトロポス、引き続き監視よろしく。」

「了解しました。相手側に動きがあるまでお休みください。」

 

結果的に対応検討会議からの返答も内容の受諾となり、青・黄・赤の信号弾を上げることになったのは尾北提督の乗艦である戦艦紀伊であった。

 

「マスター近くの水上艦より信号弾が上がりました。内容は受諾です。」

「そうか、相手側もうかつに戦端を開く馬鹿でなかったことは評価できるな。尤もこちらは殆ど示威行動をしていないから自分達がこちらを封じていると思っているかもしれないが。」

「こちらの基本戦略はいかがいたしましょうか。」

「基本戦略としては、自治・自衛権の確立と相手の胃袋を掴む事だな。」

 

戦争は、兵站が重要だからな。戦争中の相手から発言力を得ようと思ったら兵站を握るのが一番手っ取り早い。

 

「最初のコンタクトで要求する内容に医学や生態、文化、科学などの情報を入手しよう。俺たちと同じ食べ物が摂取可能か否かで専用の食料プラントを作る必要があるかわからないからな。WILLには空きスペースが山ほどあるし、整備ロボットも余剰数があるから食料プラントの設置と運用自体はどうにでもなるが、何を生産すれば良いかがわからないと手が打てない。とりあえずこの辺りが落としどころか。ああ、ついでに通信機をもらってホットラインと通常のオープンチャンネル等を確保しよう。」

 

流石にアドバルーン会話は手間がかかりすぎるし。広告としてはそれなりに効果があるが、レスポンスが悪すぎるからな。

 

―こうしてWILLと日本帝国のにらみ合いは会談の日まで続いた。この間に夜陰に乗じて侵入を謀ったスパイ達は侵入寸前に拘束され、簀巻きにして下半身を海に浸けられた。因にこの時拘束に使用したロープはファティマスーツの素材を用いていたため、海中からスパイ達を回収に来た回収班達がロープに傷1つ付けることが出来なかったため回収に失敗した。もちろんこの回収班も拘束され、同様の道を辿ったのは言うまでもない。

 

帝国連合艦隊第一戦隊からも海面に吊るされたスパイ達は確認できたが、政府側から何も聞かされていない上、表立って救助に向かった場合は敵対行為と判断され、戦闘に発展する危険があったため傍観することしかできなかった。ただ、意識の無いスパイ達を拘束し簀巻きにする人物は見当たらず、常に機械(エジェクター:A・T魔改造ver.)が粛々と行っていたため、自動防衛装置の一種と認識した。

 

「それにしても、無断で他人の家に上がり込むなどという無礼な輩共には本格的にお仕置きしないとダメだな!」

 

こいつらどうせ諜報員なんだから、スパイとして目立つのはスパイ生命に関わるはず、大々的にスパイとして宣伝して、業界に復帰できなくさせてやる!

 

「ククク、ITの調査が終了した段階で世界中の晒し者にしてやる。」

「マスター、黒いですよ。」

 

おっと。そろそろ会談の準備にはいるか。

 

「アトロポス、案内人がそろそろ来るんじゃないかな?」

「非武装艦が一隻白い旗を掲げながら近づいてきています。状況から察するに案内人が乗船していると思われます。また、同様の理由から白旗には『交戦の意思無し』の意味があるようにも推測されます。」

「多分そういう意味だよな。でも、一応用心のためMHで出撃するか。」

「了解しました。」

 

もし仮に白旗が『相手を地上から一人残らず殲滅する』なんて意味かもしれないし、来ている船に爆薬が仕込まれていたら、生身では被害が出てしまう。そう言う意味ではMHのコクピットはシェルターとしてももってこいだ。

 

「マスター、メインウエポンを選択してください。」

「見栄えも良いから実剣(スパイド)にしておこう。エンジンはアイドリングレベル(出力99%off)でキープしておいてくれ。」

「その出力では音速の二倍程度しか出ません。また出力をミリタリーレベル(出力MAX)にするためには30秒かかります。」

「乗員がたくさんいるような艦だ。攻撃態勢に入るのには30秒では足りないだろう。」

「了解いたしました。」

 

―WILLの甲板が一部開放され、白地に赤のラインで両肩に白銀のアクティブバインダーを装備した肩高13.9mのMHオージェ・アルス・キュルが実剣を携えて睥睨する様に姿を現した。

 

 さて、一言警告とお出迎えの自己紹介をしますかね。

 

『こちらは航宙艦WILL総司令のダグラス・カイエンだ。接近中の船に告げる。貴艦は現在こちらの射程圏内を航行している。交渉会場への案内人ならば、こちらの誘導に従え。従わない場合は害意有りとみなし、撃沈する。繰り返す――』

 

―突如登場したオージェの有無を言わさない迫力に、対岸で監視していた帝都防衛軍第一戦術機甲連隊及び帝国斯衛軍第16大隊は即座にスクランブルかけることができなかった。また、状況をいち早く認識できた尾北提督が全軍に聞こえる様に通信だけでなく外部スピーカーを用いて返答した。

 

 『了解した。こちらに交戦の意思は無い。誘導を頼む。繰り返す、こちらに交戦の意思は無い。誘導を頼む。』

 『今から其方に誘導装置を飛ばす、装置が到着次第、誘導ビームに沿って乗艦しろ。』

 

―オージェのアクティブバインダーからエジェクターが排出され、尾北が乗艦する連絡船の舳先に止まった。誘導ビームに従いWILLに連絡船を繋留した。案内人として帝国連合艦隊第一戦隊の尾北 十蔵提督と帝都防衛軍第一戦術機甲連隊の駒木 咲代子中尉が乗艦した。




前後編にやたらと白旗について記載していますが、元ネタはアフロな主人公が巨大なジ○に乗るあの作品です。
オルタで紀伊の艦長は名前が明らかになっていなかったので、オリジナルキャラとしてオキタ艦長にご登場いただきました。本当は大和に乗艦していただきたかったのですが、原作では田所君が大和艦長なのと地理的に配備されているのが紀伊であることが理由です。

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