望んでないのに救世主(メシア)!?   作:カラカラ

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約3ヶ月ぶりの更新となります。

待っていてくださった読者の方遅くなって申し訳ありません。
雪がなくなりつつあり、年度末、始めのバタバタももうすぐおわるので更新できるように頑張ります。


第16話:フォーメーション決定

――佐賀関港に設置していた物資集積所の中身をイールに積み込む運搬作業が終了する頃、佐賀関に設置していた中央指揮所の解体を済ませた真壁少将はイールに搭載されている斯衛軍用コンテナを訪れた。

 

「……上級士官や下級士官だけでなく一般兵士まで個室だと? しかもこの広さはこの巨大な艦で且つ、今回の荷物程度はスペース上の問題は無いが、このままでは輸送効率が悪い。とても戦闘艦としての運用に向いているとは到底思えん。ただの的になってしまうのではないのか?」

「……閣下、先任の安岡少佐からの情報では、この艦は輸送艦であり、荷物が少なかったので今回は士官用コンテナのみを使用しているとのことです。一般兵士用の居住コンテナも存在し、そちらは大部屋仕様になっているとのことでした。また、先方の話ではこの艦も含めてWILLの艦は全て恒星間航行を目的として建造されており、長期間の航海でストレスを蓄積させないために広くとっているようです。」

「……そうか」

 

――部下の報告を聴いた真壁 零慈郎少将は、視線を天井の先、宇宙へと向けながらそう答えた。

 

 星の海を渡るという行為はそう簡単ではないということか、一部の上層部しか知らない事実ではあるが、第五計画の巨大宇宙船建造による他星系移住計画の宇宙船もこの輸送艦レベルの設備での建造が必要なのかもしれんな。 だが、人類は負けたわけではない。まずはこの日本の国土を奪還からだ!!

 

 

 

――真壁 零慈郎少将が西日本奪還の決意を新たにし、イールへの積込が完了した頃

 

「マスター、帝国斯衛軍の真壁少将が今後の作戦について会談を希望されています。本艦のブリッジにご案内してよろしいでしょうか?」

「ああ、ブリッジに案内してくれ、此方からコンテナへ向かってもいいが、先方もイールの中を見学したいだろうし、あからさまに見せないようにしては不信感を煽りすぎる。それに、打合せの内容としては作戦の繰り上げ等だろうから、現状を確認しやすいブリッジが適切だろう。アトロポス、ついでに会議の準備もたのむ」

「イエス、マスター」

 

――1時間後、真壁少将が幕僚と神宮寺、安岡両少佐を連れイールのブリッジに現れた。カイエンはにこやかな営業スマイルで彼らを迎え、座席を勧めた。

 

「ようこそイールへ、俺がWILLの総司令官ダグラス・カイエンだ。で、こっちが本艦を運営、操艦しているバスクチュアル、アトロポスは既に自己紹介していると思うが俺の秘書とでも認識していてくれ」

「ヨロ・シク・オネ・ガイ・イタ・シ・マス」

「こちらこそ、危ないところを助けていただき感謝する」

 

 フム、厳ついオッサンであることはまあ、職業柄仕方がないとしてもあまりこちらに好意的というわけではないな。まあ自国の領土で協力者と名乗っていても指揮下に入っていない武装組織を前にしては不機嫌にもなるか。そう言う意味では我々はまだ信用されていないってことだな。

 

「カイエン殿、この艦に移乗して以来小型ロボットのような物を多数見かけたがあれはい一体なんなのだ?」

「小型ロボット? ああ、あれは整備兼労働ロボットだ。WILLは万年人手不足でね。ああいったロボットで労働力を補っているのさ」

「……セキュリティは大丈夫なのかね。場合によってはハッキングや暴走等で内部崩壊など洒落にならないぞ」

「それについては心配ご無用だ。ロボット達は確かに他律型だが、逐一このバスクチュアルが直接操作しているから暴走は起こさないし、ある意味スタンドアロンと言えるシステムだからハッキングも不可能だ。この方法でこの艦よりも大きなWILLも地球時間で50年以上運営しているこの点は信用してほしいな」

「……そ、そうか余計な心配だったようだな。しかし、このような巨大な艦をカイエン殿の話では実質彼女一人で運営しているということなのかね?」

「ああ、現状はそうだ」

「ここがブリッジだと入るときにアトロポス殿に教えてもらったのだが、見たところブリッジには多数の座席がある。見るに本来はロボットではなく人で運営するように思えるが?」

 

このオッサンなかなか鋭いところに気がつくな。まあ、俺も万年人手不足なんて発言しているからそこから連想できたのだろうが

 

「まあな、本来の運用方法ではないことは認めるよ。先程も言ったように人手不足なんでね、本来人間が担うべき事もバスクチュアル達に負担してもらっているのは事実だ」

「そうかね。……まあ、運用に支障が出ていないのであればこちらからとやかく言う内容ではないのだろうな」

 

――真壁 零慈郎はそう言うと言葉を一度切り会議出席者を見渡しながら発言した

 

「では以降の九州奪還作戦について、会議をはじめる。カイエン司令、神宮寺少佐、儂は本作戦における総指揮を殿下より指名されている。戦力を統合する意味でも指揮権を預かって良いかね?」

「は、我が国連軍は副司令より九州奪還作戦司令部の指揮下に入るように指示を受けておりますので問題ありません」

「あー、水を差すようで悪いがこっちは戦力輸送が今回の依頼内容で、戦闘は契約外だ」

「では先日の戦闘はどういうことかね?」

「輸送中に邪魔する奴や襲撃してくる奴は排除して良いというROE(戦闘規約)があるからな。流石に行き先がなくなるような状況であれば、先に敵を殲滅する事は契約を達成するため必要と判断したまでだ。だいたい契約内容はあくまでも輸送と護衛であり、積極的な戦闘は規定していない。それとも契約違反をするつもりか?」

 

――神宮寺少佐や安岡少佐等イールの九州上陸戦を見ていた者達の多くはカイエン達が戦闘に参加する意思がないことに落胆の表情を浮かべたが、一部の国粋主義者達はカイエンの言葉を腰抜けの戯言と内心で冷笑した。……カイエン達が発した次の言葉を聞くまでは。

 

「アトロポス、仮に戦闘の強要があった場合のペナリティはどうする?」

「そうですね。現在の状況としてBETAと日本帝国・国連軍の戦力比51:49と若干劣勢であるという事実もありますので責任者には相応のモノを要求しないといけませんねぇ。なにしろ生命を危険に晒すのですから」

「責任者ってくると移住院のおっさんか?」

「マスター。お忘れですか? 軍の最高司令官とは国の指導者を指すのですよ」

「そうなると榊大臣か」

「いいえマスター。現在の日本帝国における最高指導者の肩書きは政威大将軍でしょう」

「あれ? 日本“帝国”なんだろ?」

「はい。現在の日本“帝国”最高指導者は、マスターとメル友の煌武院 悠陽殿下です」

「「「「はあ!?」」」」

「マスターも彼女のことは気に入っていたようですし、……ペナルティは嫁入りにしましょうか?」

「「「「ふざけるな!!」」」」

「いや、彼女とはまだお友達レベルだからな、此方が良くとも彼方は是とはしないだろう。だいたいペナリティで嫁入りは流石に本意ではないな」

「「「「いいかげんにしろ!!」」」」

 

――日本帝国軍人・帝国斯衛軍人・国連軍人の全員が心を一つにした瞬間であった。

 

――会議が終了し皆が解散した後に神宮寺まりもは意味不明だった単語を思い出すが質問する相手が既に姿を消していた。

(……ところで、“メル友”ってどう言う意味なの?)

後にこの“メル友”というカテゴリーにまさか自身が入るとは神宮寺まりも当時27歳思いもしなかったという。

 

 

◇○――――○◇

 

――アトロポスの “カイエンと煌武院 悠陽がメル友”という謎の爆弾発言とその後の漫才で契約違反云々の話は有耶無耶となり、結局カイエン達は本陣(イール)の守備と詳細な戦況を司令部に提供する役割を担うことになった。そのおかげで帝国軍はアトロポスの戦力予想における人類へ2に値する戦力が前線に出ることで実質50:50の戦力差にすることができた。

 

◇○――――○◇

 

――最終的にカイエン達は持ってきたE-75と空中砲台の重砲を用いて本陣であるイールの護衛をすることとなり、連れてきている日本帝国軍をはじめとした帝国斯衛軍・国連軍は佐賀・熊本方面から鳥栖へ進撃し、最終的に福岡へ向かうことになった。

 大分方面は関門海峡に布陣している帝国斯衛軍の一個中隊を抽出し宇佐地方を押さえ、本陣が日田地方を確保する包囲網を形成し全体指揮及びBETAの南下に対する最終防衛ラインを形成する。

 




次回更新は今回ほどはお待たせしない予定です。

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