遊戯王GX~Ritual Story   作:ゼクスユイ

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第7話 月一試験(前編)

 試験。

 学生がその言葉を聞いたとき、ある者は真面目に勉強し、ある者は神に祈るという現実逃避をするだろう。

デュエルを学ぶためのデュエルアカデミアでも一般教養やデュエルに関する知識が問われる筆記試験とデュエルの実技試験をする月一試験がある。月一試験の結果次第では寮の昇格・降格があり、大半の生徒たちは昇格を夢見て必死に勉強する。

 試験の日が刻々と迫る中、夜光は黒く塗りつぶされた地図を見ていた。

「学生の身分で立ち入ることができる施設は見てきたけど、奴につながる手がかりはなしか」

 夜光は何の手がかりもないことに溜息を吐く。アカデミアがある島には学生が立ち入ることができない研究所や今は使われておらず鍵がかかっている廃寮等がある。夜光はそれらにも立ち入ろうと考えたものの十代の監視という別任務があることから、退学のリスクをとることはできなかった。

(奴が表舞台に出てくるとしたら、この島に封印されているカードを狙う時のはず。それまではおとなしく待つしかない)

 夜光が思考を巡らしているとドアからコンコンとノックする音が聞こえたので、地図を机の引き出しの中に入れる。ドアを開けるとそこにはなぜか涙を浮かべている神楽坂の姿があった。

 何事かと思った夜光は神楽坂を部屋の中に招き入れ、事情を聴くことにした。

「神楽坂、一体どうしたんだ?」

「さっき、実習生の龍牙さんにデュエルを挑まれて……

デュエル中に魔法カードが発動できなくなって……

それでデュエルで負けてデッキを無理やり盗られたんだ」

 神楽中は泣きじゃくりながらも要点だけはしっかりと話す。試験間近なこの時期に大事なデッキを奪われたことで泣いていたようだ。

「先生らに相談すれば良いんじゃあ? 樺山先生なら話を聞いてくれるだろう」

「それも考えたけど、龍牙さんはクロノス教諭のお気に入りだから僕が譲ったことになって匿われるだけだと思う」

「さすがにそれはないと思うが……う~ん」

 先生らの協力も無しでデッキを取り返す方法を考えては見たが、良案が思いつかない。とりあえず無駄足になる可能性が高いが龍牙に抗議することにした。

 

 神楽坂と共に龍牙がよく居るデュエル場に着く。そのデュエル場は設備が古いためブルーの生徒は使おうとするものがほとんど居ないため、イエローやレッド寮の生徒も使えるように解放している。しかし、島の裏手側にあるためデュエル場に行くには時間がかかり、利用者が少ない。

 デュエル場には目の前にいる翔が龍牙とデュエルしている姿があった。

 翔の場には攻撃表示のスチームロイド、手札にはリミッター解除が存在しており、それらを使えば龍牙の暗黒恐獣を倒し龍牙のライフを0にすることができる状況である。しかし、翔はなぜかリミッター解除を使わずに、いや使おうとデュエルディスクを操作しているにも関わらず発動できずにターンを終了する。

 そして翔のターンが終わり龍牙の暗黒恐獣の攻撃により、翔のライフは0になった。

「なんで魔法カードが発動できないんだ……?」

「お前のような屑デュエリストに愛想を尽かしたんじゃないか。

お前のような雑魚はとっとカードを私に渡して島から出た方が身のためだ」

「おい、勝手にカードを奪おうとしているんだ!」

 龍牙がデッキを手放さないとしようとする翔を力づくではがそうとしたとき、夜光が龍牙に向かって大きな声で抗議する。第三者が現れたことに気づいた龍牙は体裁を取り繕うとする。

「勘違いしないでくれよ。翔君が珍しいカードを持っていたから譲ってもらうように交渉していただけさ」

「お前の交渉ってのは力づくで奪うことかよ。さっきのやり取り、すべてこの携帯に撮影させてもらったぜ」

「お前ら、下手に出ていたら調子に乗りやがって!その携帯を私によこせ!!」

 本当はシャッター音で自分たちの存在を知られたくなかったので、携帯での撮影はしていない。ハッタリをかけられた龍牙はまんまとはめられ、本性を見せてしまう。

「やだね。渡してほしいなら月一試験で俺とデュエルしろ。クロノス先生のお気に入りならやればできるだろう。

俺に勝ったら、この携帯を渡す。だが、俺が勝ったら神楽坂のデッキ、いやこれまで奪ってきたカードを返して貰うぜ」

「良いだろう。お前のような屑カードばかり使うようなデュエリストに私が負ける要素などない。

フハハハハハハ」

 龍牙は高笑いしながらデュエル場から出ていく。それを見届けた後、3人は集まってひそひそと相談する。

「翔、神楽坂、良かったら2人のデュエルディスクを調べてみたい。2人ともデュエル中に魔法カードが使えなくなるのはどうみてもおかしい。

朝までには調べ終わるから、筆記試験前には返すよ」

「僕のデュエルディスク、まだメンテナンスしていなかったからそれが原因かもしれないけど頼むッス」

「僕は先週メンテナンスしたばかりだったから、急に故障するとは思えなかったんだ」

 神楽坂、翔のデュエルディスクを受けとった夜光は龍牙に勝つことを約束してデュエル場を後にする。

 2人きりになった神楽坂と翔は自分たちができることが無いかと考え、1つのアイデアが思い浮かんだ。

 

 月一試験当日。

 十代と翔は道端であったトメさんを助けたため筆記試験に十数分程度遅れてしまう。もし、20分以上が経過していれば教室に入ることすらできないため、レッド寮である十代たちは退学がほぼ決まることになってしまうところであった。

 そんなことがあったため、翔にデュエルディスクを渡すのは筆記試験後の昼休みとなってしまった。昼休みに校舎付近で食堂で買ってきたパンを食べている十代と翔を見つけた夜光は声をかけ、翔にデュエルディスクを手渡す。

「俺が調べた限りでは翔と神楽坂のデュエルディスクの機能に障るような異常はなかった」

「良かったッス」

「ん? それっておかしくないか?

翔のデュエルディスクの調子が悪くなったから魔法カードが使えなくなったんだろう」

 夜光の言葉を聞いて翔はホッと胸をなでおろす。もし、異常があってデュエルができない状態になれば恐らく退学になっていたからだ。しかし、十代は夜光の言葉と翔から聞いた説明でふと疑問に思ったことを口に出す。

「ああ。デュエルディスクの故障が原因なら必ずその痕跡があるはずだ。

それが無かったということは誰かが人為的にデュエルディスクの機能をマヒさせた可能性が高い」

「その誰かは龍牙だとしてもどうやって引き起こしたんだ?」

「可能性が高いのは妨害電波を出す方法だろうな」

 夜光は十代の問いに丁寧に説明する。

 デュエルディスクがカードに内蔵されたICチップを読み取ることでソリッドヴィジョンを発生させている。しかし、そのデュエルディスクに特殊な電磁波を当てるとICチップの読み取りエラーが起こり、カード認識が作動しなくなる。そして電磁波がなくなれば正常に作動するため証拠が残ることが無い。莫大なお金が動くことがあるデュエル大会では稀とはいえ、使われることもある手段の一つである。

 そういったこともあり、KC社は妨害電波に対抗できる新型デュエルディスクの開発を来年度発売をめどに進めている。

「来年にそのデュエルディスクができても龍牙先生は実習期間を終えているッス」

 翔の言う通り、アカデミアの実習生は生徒とのデュエル50戦といった課題と1年の研修期間を終えれば、教師として正式採用される。そのため、龍牙からすれば1年間不正がばれなければ、そのあとは手にした権力でどうにでもなる。

「だから、龍牙先生の不正を暴くには今しか無いッス!」

「翔、なんか名案があるのか?」

「実はかくかくしかじか……

というわけで夜光君には時間稼ぎしてほしいッス」

 夜光が翔の自信がありそうな発言に少し驚きながらも尋ねてみる。翔は神楽坂と建てた作戦を話し、夜光のデュエルの腕を信じて時間稼ぎをお願いする。それをきいた夜光は「分かった」と答え、その場を去る。

 

 デュエル場では神楽坂や翔のデュエルが終わり、二人とも何処かに行ってしまう。カードコレクターである神楽坂はデッキ1つ奪われてもデッキをもう1つ作るだけのカードはあった。普段とは違うデッキを

いきなり本番で扱うことになるが、様々なデッキを研究してきた神楽坂の腕であれば、どのようなデッキでもある程度は扱うことができる。一方でデッキを寸のところで奪われなかった翔は少し危ない場面もあったが、二人ともデュエルに勝利する。

 その後、次々と生徒が呼ばれて実技試験が終わっていく。そして夜光が呼ばれ、対戦相手は龍牙であった。その対戦カードに周りから驚きの声があがっていく。月一試験は原則として同じ寮の生徒同士でデュエルを行うため、実習生vs生徒というカードは行われることはほとんどないからだ。

「逃げなかったのは褒めましょう。しかし、お前が私に勝てる可能性はない!」

「自分のカードを屑呼ばわりして誰が逃げ出すか!

それにデュエルは最後まで何が起こるかわからないぜ」

 互いにデュエルディスクを展開し構える。

「「デュエル!」」

 

龍牙LP4000

夜光LP4000

 

-龍牙のターン-

「君から挑んできたんだ。先攻は貰う。

私のターン。ドロー!

私は俊足のギラザウルスを特殊召喚扱いで召喚する」

 小型で細みの恐竜が龍牙の場に現れる。

「この際、相手のモンスターを特殊召喚させるデメリット効果があるが、君の墓地にモンスターはいない。よってこのデメリット効果は実質無いに等しい」

大進化薬を発動。私の場にいる恐竜族モンスターを生贄に捧げることで、3ターンの間私は恐竜族モンスターの召喚に必要な生贄はなくなる」

 先攻1ターン目にギラザウルスを特殊召喚することでデメリットを回避したうえで大進化薬の生贄コストを確保する。生徒たちが「さすがは実習生だ」と思えるようなデュエルタクティクスが高いプレイであった。

「超古代恐獣を生贄無しで召喚!」

 白い皮膚を持ち、頭から角が生え背中には翼が生えているドラゴンに近い風貌を持つ恐竜が龍牙の場に現れる。1ターン目からの最上級モンスターの召喚に賞賛の声があっちこっちから聞こえる。

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

手札:2枚

場:超古代恐獣(ATK2700)

魔法・罠:大進化薬

     伏せ1枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

俺はマッド・リローダーを守備表示で召喚」

 頭部には4つの角を持ち、長い赤い舌を出し、小さな黒い翼をもつ悪魔が夜光の場に現れる。女子からは気持ち悪いという声がでてくるのは当然か。

「攻守0の雑魚モンスターなんか入れてる奴を初めてみたぜ」

「そんな屑入れるくらいなら、魔法カード入れた方がマシだ」

「悪夢再び、ダークバーストで回収できるから色んな意味で恵まれているステータスだろうが!」

 マッド・リローダーを馬鹿にするような声もチラホラ聞こえる。必死に反論しても馬鹿にする声は消えなかった。

「カードを1枚伏せてターンエンド」

「この瞬間、王宮のお触れを発動。これでおまえの罠は封じた」

 お触れにより夜光の罠は封じられてしまう。

 

手札:4枚

場:マッドリローダー(DEF0)

魔法・罠:伏せ1枚

 

-龍牙のターン-

「私のターン。ドロー!

私は暗黒恐獣を生贄無しで召喚。

暗黒恐獣(ATK2600)で雑魚モンスター(DEF0)に攻撃だ!」

「戦闘破壊されたマッドリローダーの効果発動。手札を2枚捨て、2枚ドロー!」

 暗黒恐獣がマッドリローダーをかみ砕き破壊される。マッド・リローダーの効果で手札交換する夜光を見て龍牙はあざ笑う。

「手札交換? 手札事故でも起こしたか!

超古代恐獣(ATK2700)でダイレクトアタックだ!」

「手札からクリボーの効果発動。このカードを捨てて、戦闘ダメージを0にする」

 夜光の場にクリボーが現れ、超古代恐獣の突進を受けて爆発する。爆発に驚いた超古代恐獣は体勢を立て直すため龍牙に場に戻ってしまう。

「ちっ……カードを1枚伏せてターンエンド」

 最上級モンスターで2体で攻撃したにもかかわらず、ダメージを与えられないことにいら立ちを隠せない龍牙は思わず舌打ちし、手札のカードを伏せる。

(この指輪で魔法を封じ、お触れで罠を封じている状態でおまえができることはモンスター効果で私のモンスターを破壊するくらいだ。だが、私が伏せた我が身を盾にで破壊効果は封じた。私の勝利は揺るぎない!)

 

手札:1枚

場:超古代恐獣(ATK2700)

  暗黒恐獣(ATK2600)

魔法・罠:大進化薬

     王宮のお触れ

     伏せ1枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

俺は闇王プロメティスを召喚」

 黒炎の中からオレンジ色のフードを被り、赤いマントをたなびかせて登場する闇の王。

しかし、元々の攻撃力が1200と低いことから、「名前負けしているじゃん」という声がレッド寮の席から聞こえる。

「召喚に成功した闇王プロメティスの効果発動。墓地のマッドリローダー、キングゴブリン、牛鬼、クリボーを除外する。

闇王プロメティスはエンドフェイズまで自身の効果で除外したモンスターの数×400ポイント攻撃力が上昇する(ATK1200→2800)」

「攻撃力1200の雑魚が私のモンスターの攻撃力を上回っただと!?」

 闇の王の名は伊達ではない。墓地<<やみ>>に住みし住人達の力を吸収し巨大化する。

「闇王プロメティスで超古代恐獣(ATK2700)に攻撃!」

 プロメティスが超古代恐獣に向かって黒い炎を放つ。炎で焼かれている超古代恐獣はのた打ち回るが、炎は消えることなく灰になってしまう。巨大化した意味はあったのだろうか。

 

龍牙LP4000→3900

 

「ターンエンド」

(俺に攻撃を防ぐ手段はない。龍牙が攻撃力2600以上のモンスターをだされたら敗北が決まる。

翔はまだか……)

 自分が敗北する前に翔が来るのを信じてターンを終了する。

 

手札:3枚

場:闇王プロメティス(ATK1200)

魔法・罠:伏せ1枚

 

-龍牙のターン-

「私のターン。ドロー!

ちっ、私は暗黒ドリケラトプスを召喚。

暗黒恐獣(ATK2600)で闇王プロメティスに攻撃!」

 暗黒恐獣がプロメティスをかみ砕き破壊する。

 

夜光LP4000→2600

 

「暗黒ドリケラトプスでダイレクトアタック!」

 暗黒ドリケラトプスが夜光に

 

夜光LP2600→200

 

「ターンエンドだ」

 

手札:1枚

場:暗黒恐獣(ATK2600)

  暗黒ドリケラトプス(ATK2400)

魔法・罠:王宮のお触れ

     伏せ1枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!」

「そういえば、あいつ魔法カード使っていないよな」

「そういえばそうだな。なんでだ? どんなデッキでも魔法カードは使うだろう」

「龍牙先生のデュエルを観たとき、対戦相手は魔法カードを使ってなかったぜ」

 一人のイエロー男子が疑問を口に出すと周りに次々と疑問の声が上がっていく。徐々に騒ぎが大きくなったため、クロノスが「静かにするノーネ」と注意する。しかし、彼らが一度抱いてしまった疑問は消えることが無い。

「龍牙のヤローとデュエルする奴は全員魔法カードが使えなかったんだ」

「そうだ、俺の時も魔法カードが使えなかった。しかもデッキを奪った最低なやつなんだ」

「龍牙先生はイカサマしているッス」

「マジかよ」

「そんな奴、教師にするんじゃねェ!」

 今まで龍牙にデッキを奪われたレッド・イエロー生が龍牙とのデュエルに起こった魔法カードが使えなくなった異常を次々と言う。翔と神楽坂は今まで龍牙と対戦したことのある生徒たちを探し集めていた!

 デッキがなくなったことで泣き寝入りしたり、不登校になっていた者が数多く居たが二人の説得に応じてこの場に来たのだ。

「龍牙君、これはどういうことですかな?」

「こ……これはですね…………

奴らは自分たちが負けた原因を私のせいだとなすりつけているだけです!」

 鮫島校長先生から理由を尋ねられて狼狽しながらもその場を切り抜けようと言い訳をする。龍牙の精神が不安定な今がチャンスだと考えた夜光は手札のカードを発動させる。

「俺はサイクロンを発動。王宮のお触れを破壊する」

「ぬぁにぃぃぃぃ!? 馬鹿な、妨害電波で魔法カードは使えないはずだ」

「語るに落ちたな。今の言葉をしっかり記憶したか、神楽坂!」

「うん。『妨害電波で魔法カードは使えない』ばっちり」

 神楽坂がボイスレコーダーに録音した龍牙の台詞を再生する。これで倫理委員会に提出できる証拠も手に入り、龍牙の逃げ道を封じることに成功した。

「あとは夜光君がデュエルに勝つだけだよ」

「おう!ライフを半分払って異次元からの帰還を発動!」

 神楽坂の期待に応えるべく、これまで仕込んでおいた仕掛けを発動させる。

 

夜光LP200→100

 

「除外されたマッドリローダー、クリボー、キングゴブリン、牛鬼を特殊召喚する」

「そんな雑魚モンスターを並べたところで何になる」

 4体の悪魔たちが夜光の場に集結する。

 このような状況になっても龍牙はデュエルを切り抜け、クロノスの力を借りてうまく取り繕ってもらおうとしていた。なぜなら、クロノスがデュエル成績がトップの自分をいとも簡単に切り捨てるはずがないと考えているからだ。

「奈落との契約を発動。手札の儀式の供物を生贄にチャクラを儀式召喚!

手札の儀式の供物はレベル1だが、闇属性モンスターの儀式召喚に必要な生贄をこのカードで賄える能力を持つ」

 触手のような手を持ち、下半身が拷問機械でできている一つ目の悪魔が夜光の場に現れる。女子からはやはりというべきか不評の嵐である。

「キングゴブリンの攻撃力は他の悪魔族の数×1000ポイント攻撃力が上昇する。よってキングゴブリンの攻撃力は4000!」

「あんな屑モンスターが攻撃力4000になっただと!?」

 玉座に座っている緑色のゴブリンがマントを広げて他の悪魔族から力を吸収する。元々の攻撃力が0のモンスターがサイバー・エンド・ドラゴンに匹敵する攻撃力になれば、龍牙でなくとも驚くだろう。

「屑なんて存在しない。どんなカードでも存在する意味はある。

チャクラ(ATK2450)で暗黒ドリケラトプス(ATK2400)に攻撃!」

触手のような手を伸ばし、ドリケラトプスを絡め取ると下半身の拷問機械で串刺しにしていく。

 

龍牙LP3900→3850

 

「キングゴブリン(ATK4000)で暗黒恐獣(ATK2600)に攻撃!」

 キングゴブリンが暗黒恐獣に正拳突きをして破壊する。

 

龍牙LP3850→2450

 

「牛鬼(ATK2150)でダイレクトアタック!」

 壺の中から出た牛鬼が龍牙を鋭い爪でひっかく。

 

龍牙LP2450→300

 

「クリボー(ATK300)でダイレクトアタック!ニードルスクリンプラー!!」

「この私が屑の中の屑に負けるなんてぇぇぇぇ!?」

 デュエルモンスターズ最弱のモンスターと評されるクリボーの毛針攻撃によって龍牙のライフは0になる。

 

龍牙LP300→0

 

「私がイエローごときに敗北した……!?

それになんで妨害電波が効かなかったんだ。おかしいじゃないか。

……そうだ、これは夢だ。たちの悪い夢に決まっている」

「夢でも幻でもない。現実だ」

 弱小モンスターの攻撃によって敗北した龍牙は今まで築いていたエリート教師の道を完全に失い、項垂れる。そして敗北のショックから現実逃避を始めた龍牙に夜光は追い打ちをかけるかのように現実を突きつける。

「それなら、なぜ、妨害電波は効かなかった」

「俺のデュエルディスクは特別性だ。ちょっとした電波で誤作動は起きない」

「そんなはずが……対策デュエルディスクはまだ開発段階のはず…………

それこそ未来から……技術を持ってこないとおかしい…………お、かしい……」

「姑息な手を使わなくてもあんたは強いし、今度は正規の手段で他の道を探せばいい。

少なくともアカデミア最後のデュエルは普通のデュエルで、その対戦相手である俺が言うんだ。間違いない」

 全てを失ったことを再認識したことで廃人同前となった龍牙に言葉をかける。ここから龍牙が立ち直るかどうかは本人の気力次第だろう。その後、倫理委員会の手によって龍牙は連行されることになった。倫理委員会の調査で龍牙の部屋から数多くの盗品が発見され、カードを奪われた持ち主のもとへ返されることになった。

 なお、騒ぎの張本人であった龍牙は大学を退学させられた。だが、入院生活の中で初心にかえることができ、今ではカードショップで子供たちにカードのことを楽しく教えている。それが良かったかどうかは本人しかわからない。

 龍牙の騒ぎにより月一試験が中断されたことにより、十数名の生徒が実技試験が行われ無かったため、日を改めて再試験という形で実技試験をすることになる。再試験リストには十代や万丈目の名が書かれていたのであった。




新年明けましておめでとうございます。

夜光のデッキで一番の過労死は手札から捨てられ、闇王のコストになって
キングゴブリンの攻撃力増強兼フィニッシャーのクリボーでないかと思う。
十代vs万丈目は次話になります。

今年もよろしくお願いします。

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