入学者たちは通達されたアカデミアへの定期船に乗り、太平洋の孤島にあるデュエルアカデミアへと向かっていた。アカデミアが特殊な環境下にあることから、生徒たちはアカデミアにある寮で3年間過ごすこととなり、また本島-アカデミア間でに荷物を送ってもらうにしても定期便を利用しなければならない。
そのため、夜光は自分のデッキに必要になりそうなカードをあらかじめ自分の寮へと送っていた。船上では特にすることもなかったので、
(ラーイエローには無事合格できた。あとはアカデミアに潜伏している奴を探すだけか。
それにしてもこの世界の海と空は綺麗だよな……)
と思いながら青い海と青い空を珍しそうに眺めていると、
「夜光。元気にしていたか」
急に話しかけれられる。振り返ってみると赤い制服を着た十代と眼鏡をかけた水色の髪の小柄な少年がいた。
「元気にしていたぜ。十代も変わっていないな。そこにいる子は?」
「僕は丸藤翔です。よろしく」
「俺は広瀬夜光。よろしくな」
互いに自己紹介が終わったところで十代が用件を切り出す。
「実技試験を遅刻したから、夜光のデュエル見ていないんだよな。だから俺とデュエルだ!」
根からのデュエル馬鹿である十代に対し、
「良いぜ、海を見るのも少し飽きていたからな」
夜光はそのデュエルを受けることにし、持ってきたカバンからデュエルディスクを取り出す。
「「デュエル!」」
夜光LP4000
十代LP4000
-夜光のターン-
「俺のターン。ドロー!
ゴーゴン・エッグを守備表示で召喚」
夜光の場に巨大な眼がある不気味な卵型のモンスターが現れる。どう見ても強そうには見えないモンスターを見た翔は
「あんな弱いカードなら簡単に倒せるッス」
夜光のモンスターを侮っていた。
「通常モンスターほど怖いものはないけどな。カードを1枚伏せてターンエンド」
手札:4枚
場:ゴーゴンエッグ(DEF1300)
魔法・罠:伏せ1枚
-十代のターン-
「俺のターン。ドロー!」
十代は自分の手札と夜光の場を確認し、どのように攻めるか考える。
(夜光の場には翔が言うように攻撃力も守備力が低い通常モンスターが1体だけ。
でも伏せカードが通常モンスター専用のサポートカード、たとえばジャスティブレイクだったらまずい展開になる。
罠を覚悟で攻撃を仕掛けるか、様子を見るか……)
夜光が打ってくる一手を考えた十代は少し余力を残しつつ一気に攻めようと決断した。
「俺はE-エマージェンシーコールを発動。エアーマンを手札に加える。
エアーマンを召喚し、デッキからバーストレディを手札に加える。
融合を発動。手札のバーストレディとフェザーマンを融合。
E・HEROノヴァマスターを融合召喚!」
十代の場に赤いマントを身に着けたヒーローが現れる。
「あれ? フレイム・ウィングマンじゃない」
「E・HEROは同じ融合素材でも数多くの融合パーターンがあるのが特徴だ。この場合なら、フレイム・ウィングマン、フェニックスガイ、ノヴァマスター、Great TORNADOが出せる」
やや長身の男性が翔の後ろから現れ、翔の疑問に答える。
「おっと自己紹介が遅れたね。俺の名は三沢大地。よろしく頼む」
「僕は丸藤翔。こちらこそよろしく頼むっす」
「俺は遊城十代。よろしくな、三沢」
「俺は広瀬夜光。よろしく」
三沢が自己紹介をしたので十代たちはデュエルを一時中断し、互いに自己紹介を始める。
互いに自分のことを話した後、十代と夜光はデュエルを再開する。
「ノヴァマスター(ATK2600)でゴーゴンエッグに攻撃」
ノヴァマスターが炎を纏った拳でゴーゴンエッグを殴りつけ、破壊する。
「ノヴァマスターがモンスターを戦闘破壊したことにより、1枚ドロー!
エアーマンでダイレクトアタック」
「エアーマンの攻撃宣言時に強欲な瓶を発動。1枚ドロー」
夜光LP4000→2200
夜光はエアーマンが放つ竜巻に耐えながらも、手札のカードをデュエルディスクにセットする。
「フィード上にカードが存在しないときにダメージを受けたことで冥府の使者ゴーズを特殊召喚する」
冥府の使者ゴーズ
効果モンスター
星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守2500
自分フィールド上にカードが存在しない場合、
相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。
●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」
(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。
このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。
●カードの効果によるダメージの場合、
受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
身の丈ほどもある銀色の剣を持ち、バイザーを身に着けた男性が夜光の場に現れる。
「戦闘ダメージによってゴーズが特殊召喚したことで、カイエンを攻撃力1800で特殊召喚する」
「がら空きの状態から一気に2体のモンスターを召喚した!?」
夜光の場に最上級モンスターが生贄無しで召喚されたことに驚く翔。
「冥府の使者ゴーズ……効果で召喚するためには無情な状態で攻撃を受けなければならないことから、効果が強力とはいえ扱いにくいと一般的には評価されているカードだ」
三沢の解説を聞いても翔は「罠を入れて守った方が良い」と思っていた。
「ダメージを受けても最上級モンスターをだしてきたか。やっぱ一筋縄でいかないよな。俺はターンを終了するぜ」
手札:4枚
場:ノヴァマスター(ATK2600)
エアーマン(ATK1800)
魔法・罠:なし
-夜光のターン-
「俺のターン。ドロー!
俺は闇の誘惑を発動。2枚ドローし、手札のデビルズミラーを除外する」
手札交換を行い、反撃の準備が整ったことで一気にたたみかけようとする。
「奈落との契約を発動。レベル7カイエントークンを生贄にし、レベル7の闇属性である破滅の魔王ガーランドルフを儀式召喚!」
「そうか。ゴーズの効果で呼び出されたカイエンを儀式召喚の生贄にすれば、場のモンスターを減らさずに儀式召喚できるんだ。
万が一、手札から召喚できるような状況でなくてもレベル7ジャストを要求する儀式召喚には有効」
翔は夜光がゴーズを採用していた理由をようやく理解した。
「普通はな。ガーランドルフの効果で俺たちの場にいるゴーズ(DEF2500)、ノヴァマスター(DEF2100)、エアーマン(DEF300)は破壊される。
そして3体のモンスターを破壊したことでガーランドルフの攻撃力は2800になる」
「えっ~せっかく攻撃力2700のモンスターを召喚したのに」
夜光の場にいたゴーズを惜しむような声をする翔であった。
「でもガーランドルフの攻撃力は最上級モンスターの及第点である2800にはなったぜ。ガーランドルフ(ATK2800)でダイレクトアタック!」
鍛えられた肉体をもつガーランドルフが十代を数メートルほど殴り飛ばす。
十代LP4000→1200
十代がゆっくりと立ち上がっているのを見て、夜光は十代のターンに備える。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンド」
手札:1枚
場:ガーランドルフ(ATK2500)
魔法・罠:伏せ2枚
-十代のターン-
「俺のターン。ドロー!」
(伏せカードは気になるけど、ここは流れをこっちに持っていかないとな)
十代は先のターンで温存しておいた魔法カードを発動させる。
「俺は融合回収を発動。墓地の融合とバーストレディを手札に加える。
さらに戦士の生還を発動し、墓地のフェザーマンを手札に加える。
俺は融合を発動。手札のフェザーマンとバーストレディを融合。
マイフェバリットカード、E・HEROフレイム・ウィングマンを融合召喚!
E・HEROプリズマーを召喚する。
プリズマーの効果発動。融合デッキにあるE・HEROシャイニング・フレア・ウィングマンを見せてスパークマンを墓地に送り、プリズマーをスパークマンとして扱う」
十代の場にいた全身がプリズムで出来ていたヒーローが光を放つ。まばゆい光が収まるとプリズマーは雷を身にまとったヒーローに変身していた。
「さらに融合を発動。場にいるスパークマンとして扱うプリズマーと場のフレイム・ウィングマンを融合。
現れろ、E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン!」
巨大な翼が生えている鎧を身にまといまばゆいばかりの光を放つヒーローが十代の場に現れる。
「シャイニング・フレア・ウィングマンは墓地のE・HERO1体に付き、攻撃力を300ポイントアップさせる。
俺の墓地にはエアーマン、ノヴァマスター、フェザーマン、バーストレディ、フレイム・ウィングマン、スパークマン、プリズマーの7体。
よって攻撃力は2500+2100=4600。
シャイニング・フレア・ウィングマンでガーランドルフ(ATK2800)に攻撃!シャイニング・シュート!」
シャイニング・フレア・ウィングマンの身体から放出される光をみたガーランドルフは塵となって消えていく。
「シャイニング・フレア・ウィングマンは戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」
「ダメージ・ポラリライザーを発動。効果ダメージを与える効果を無効にし、互いに1枚ドロー!」
夜光LP2200→400
シャイニング・フレア・ウィングマンの効果ダメージを防がれるとは思いもしなかった十代は少し悔しがっていた。
「効果ダメージを防がると思わなかった」
「俺のデッキの性質上、バーンには弱いから何かしらの対策は必要だから入れているんだ。本当は地獄の扉越し銃の方が良いんだがな」
地獄の扉越し銃は持っていないと一言付け加えた後、バトルフェイズを終了した十代は自分の手札を確認する。召喚権も使い果たし、このターンはこれ以上動くこともできないと判断した十代はメインフェイズ2を終了しようとする。
「俺はこのままターンを終了する」
手札:2枚
場:シャイニング・フレア・ウィングマン(ATK4600)
魔法・罠:なし
-夜光のターン-
「俺のターン。ドロー!
俺はリビングデッドの呼び声を発動。ガーランドルフを攻撃表示で召喚。
巨大化をガーランドルフに装備。十代よりもライフが低いため、ガーランドルフの元々の攻撃力を倍にする(ATK2500→5000)。
ガーランドルフでシャイニング・フレア・ウィングマン(ATK4600)に攻撃!」
背丈が倍の大きさになったガーランドルフが右手に闇の力を纏わせ、シャイニング・フレア・ウィングマンを殴りかかる。攻撃を受けたシャイニング・フレア・ウィングマンも応戦しようとするが、圧倒的な力の前に敗北を喫した。
十代LP1200→800
(これでガーランドルフの攻撃力を5000のまま十代にターンを回すことができる。
ゴーズを蘇生させた場合だとライフが並ぶ上から、十代が何らかのライフを払う魔法を使われた場合、巨大化のデメリットで攻撃力半減効果により攻撃力が1350になってしまう。
今の十代のライフならライフを半分にする魔法を使われても、攻撃力2500のガーランドルフが場に残る)
うまく十代のライフを調整した夜光はバトルフェイズを終了する。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
手札:1枚
場:ガーランドルフ(ATK5000)
魔法・罠:巨大化(ガーランドルフに装備)
リビデ(ガーランドルフに使用)
伏せ1枚
-十代のターン-
「俺のターン。ドロー!
俺は貪欲な壺を発動。
墓地のエアーマン、ノヴァマスター、フェザーマン、フレイム・ウィングマン、シャイニング・フレア・ウィングマンをデッキに戻し、2枚ドロー!」
十代はドローしたカードを見てニヤリとした表情となる。
「俺はハネクリボーを守備表示で召喚し、カードを1枚伏せてターンエンド」
手札:2枚
場:ハネクリボー(DEF200)
魔法・罠:伏せ1枚
-夜光のターン-
「俺のターン。ドロー!
ガーランドルフにメテオ・ストライクを装備する。これでガーランドルフは貫通効果を得た。
ガーランドルフでハネクリボーに攻撃!
貫通効果を得たガーランドルフの攻撃を受ければ、十代のライフは0になる」
実技試験でクロノスが行ったように夜光は魔法カードで貫通効果を持たせたガーランドルフで攻撃を行ったが、十代は慌てた素振りを見せない。翔や三沢も何を考えているんだと疑問に思っていると、十代はデュエルディスクを操作していく。
「まだ俺には伏せカードがあるぜ。リバースカードオープン、進化する翼!
このカードは手札2枚と場のハネクリボーをコストに手札又はデッキからハネクリボーLv10を特殊召喚する」
十代の場に巨大な天使の翼と金色のドラゴンの頭部を模した装飾品を身に着けたクリボーが現れる。
「ハネクリボーLv10の効果発動!
ハネクリボーLv10を生贄に捧げることで相手のモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分相手にダメージを与える」
ハネクリボーLv10の効果による形勢逆転を確信した十代だったが……
「俺は負けず嫌いなんでね。
破壊指輪を発動し、ガーランドルフを破壊。互いに1000ポイントのダメージを受ける」
最後のあがきに対する策がなく、ガーランドルフが爆散し互いにその煽りを受ける。
夜光LP400→0
十代LP800→0
「あともう少しだったのになぁ~
でも楽しいデュエルだったぜ。ガッチャ」
引き分けでもいつもの決めポーズをする十代。
十代にとってデュエルは結果よりも心の底から楽しめたかどうかが重要であり、ガッチャという決めポーズはデュエルしてくれた相手を十代なりの方法でリスペクトしているという現れである。
「俺も楽しかったぜ。ガッチャ」
そのことを夜光はデュエルを通じてなんとなくだが感じ取ったため、十代と同じくガッチャをする。
デュエル終了後、4人はお互いに自分のデッキを見せ合ったり、デュエルの話をしていると
「デュエルアカデミアが見えてきたよ」
翔が目の前に見えてきたアカデミアを指す。翔の言葉を聞いた十代たちは今まで違う環境で暮らすことに対する不安よりも、自分たちの知らないデュエルを知ることができる期待のまなざしでアカデミアを見る。
進化する翼は最初から持っている設定です。
教師であるクロノスが知らない(明日香談)ほどのレアカードのサポートカードが一般向けのパックに同封されているとは思えなかったので、最初から持っている設定に変更しました。
一般人が簡単には手に入らないレアカードのサポートカードって誰得なんだろう?