遊戯王GX~Ritual Story   作:ゼクスユイ

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第23話 神vs邪神

 朝方、夜光がカギをかけて外出しようとしたとき、十代が息を切らしながら階段を上ってくる。

「ぜーはー。夜行、大徳寺先生を見なかったか?」

「見てないけど。どうしたんだよ、急に?」

「大徳寺先生が……消えたんだ!」

「消えた?」

「ああ。叔母さんが言うには朝の職員会議に大徳寺先生が来なかったから、部屋まで呼びに行ったけど、誰もいなかったみたいなんだ」

 無論、携帯やPDAで連絡しても繋がらず、大徳寺先生が何らかの事件に巻き込まれたのではないかと考えた教師陣は生徒たちに動揺を与えないように1限目の錬金術の講義を自習にし、大徳寺先生の捜索に乗り出した。そして、そのことをどこから手に入れたのか星奈が言いふらし、現在、生徒・教師総出で大徳寺先生を探している。

「大徳寺先生が居そうな場所で心当たりないか?」

「う~ん、心当たりね……廃寮にあった秘密ラボはどうだ? 案外、時間を忘れて研究しているだけかもしれないぜ」

「おお。そういや、そこはまだ探していなかった。サンキュー、夜光」

「俺も探しに行きたいが、少し用事があるんでね。先に廃寮に行ってくれよ。後で行くから」

「分かったぜ。でも、大徳寺先生が心配だから、みんな呼んで廃寮の探索を先にやっているからな」

 十代が廃寮に向かって走り去るのを見た後、夜行は十代とは逆の方向に歩き、薄暗い森の中へと入っていく。

 

 しばらく歩き、森を抜けると三沢とタニヤが戦ったコロッセオに着く。そして、コロッセオの中心部に一人の青年が佇んでいた。

「まさかお前の方から果たし状を出すなんて思わなかったぜ……プラシド、いやディアブロ」

「ふん。その名は気に入らんな」

「記憶投影型ライディングロイド試作機の方がよかったか?」

「俺は神に選ばれた者、救世主だ」

「なにがメシアだ。お前はAI熟成中の事故で暴走した欠陥品だ。さあ、お前が奪った神のコピーカードを返してもらおうか。大人しく渡せば、お前のことは目をつぶっても良いぜ」

「すると思うか?」

 偽プラシドがデュエルディスクを取り出し、交渉は決裂する。元から、上手くいくはずがないとおもっていたのか夜光もデュエルディスクを取り出そうとしたとき、観客席から物音がする。その原因を見るため、後ろを振り向くとそこには武藤遊戯が静かに立っていた。

「本物? ……いや、なにかが違う」

「そいつは俺が苦労して作り上げたデュエルロイドだ。完成度は83%といったところだが、お前を倒すには十分だ」

1vs2。かなり分の悪い勝負だが、ここで退くわけにはいかない。時間が経てば経つほど完成度は100%に近づき、下手すれば量産される恐れがある。そうなれば、容易に偽プラシドに近づくチャンスは訪れないだろう。つまり、このデュエルが偽プラシドを倒す最大のチャンスなのだ。夜光は覚悟を決めるしかないと思ったとき、「待ちなさい」と聞き覚えのある女性の声がかけられる。

「おいおい、カミューラまで来るのかよ」

「ふん。これで1vs3。勝負はすでについたようだな」

「あら、勘違いしないでくれる」

 どういうことかカミューラが夜光の隣に立つ。まさかの裏切りに夜光は目を大きく見開く。

「この前の借りを返しに来ただけよ」

「へへ。そういう事なら大歓迎だ、カミューラ。これで2vs2。条件はイーブンだ」

「ちっ。こうなれば裏切り者共々、消し去ってくれるわ!」

「「「「デュエル!」」」」

 

偽プラシド&偽遊戯LP8000

夜光&カミューラLP8000

 

-偽プラシド-

「先行はもらう。ドロー!

俺はワン・フォー・ワンを発動。手札のモンスターをコストにデッキからレベル1のワイズ・コアを守備表示で特殊召喚する。そして、シールド・クラッシュを発動。ワイズ・コアを破壊する」

「自分のモンスターを破壊ですって!?」

 カミューラはせっかく特殊召喚した自分のモンスターを破壊すると言う意味不明な行動に驚く。だが、この戦法こそが偽プラシドの基本戦術なのだ。

「ワイズコアは破壊されることで真価が発揮する。ワイズ・コアが破壊された時、デッキ・手札・墓地から機皇帝を呼び出すことができる。ワイゼルT!ワイゼルA!ワイゼルG!ワイゼルC!合体せよ、機皇帝ワイゼル∞!」

 

機皇帝ワイゼル∞(TF効果)

効果モンスター

星1/闇属性/機械族/攻 0/守 0

このカードの攻撃力・守備力は、

このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する

「ワイゼル」・「グランエル」・「スキエル」

と名のついたモンスターの攻撃力分アップする。

このカードは相手のカードの効果の対象にならない。

1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在する

シンクロモンスターを装備カード扱いとして

このカードに1体のみ装備することができる。

このカードの攻撃力は、この効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。

「∞」と名のついたモンスターは自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 5体のモンスターが一斉に特殊召喚され、1体の白いロボットに変形・合体する。

(データ通りの【機皇帝】デッキ。シンクロキラーたる機皇帝が最大限に活躍するのは相手がシンクロ使いのときだけ。俺のデッキにシンクロモンスターは入っていないし、カミューラも以前と同じデッキならシンクロモンスターは入っていないはず)

 だが、非シンクロデッキを使っていても、機皇帝にはカード効果を無効にできるゴースト・コンバートや攻撃力を実質4000ポイント上昇させる一族の結束等相性のいいカードは多々ある。それらのサポートカードを駆使されれば、苦戦を強いられるだろう。いくら機皇帝と相性が良くても油断はできない相手である。

「俺は通常召喚を行っていない。俺はワイゼルの両足と右腕を生贄に――」

「機皇帝を生贄にするだと!?」

 機皇帝はあくまでも5体のモンスター。生贄要因にするのであれば、これ以上の打って付けのカードはない。だが、デッキの中軸たる機皇帝を生贄を捧げるほど価値のあるモンスターはそうそうない。

「出でよ、オベリスクの巨神兵!」

 

オベリスクの巨神兵(アニメ効果)

効果モンスター

星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

このカードを生贄召喚する場合、自分フィールド上の

モンスター3体を生贄にして召喚しなければならない。

このカードは特殊召喚したターンに攻撃する事ができない。

魔法カードの効果で特殊召喚されたこのカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。

このカードはフィールド上に存在する限り、コントロールを変更する事はできない。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、罠・効果モンスターの効果

(神のカード・フィールド全域に及ぶ効果・攻撃力をダウンする効果を除く)を受けず、

魔法・攻撃力をダウンする効果は発動ターンのみ有効となる。

(フィールド全域に及ぶ魔法の効果は通常通り受ける)

自分フィールド上のモンスター2体を生贄にする事で、このカードの攻撃力は無限大となり、

相手モンスターを全て破壊し、相手プレイヤーに4000ポイントの戦闘ダメージを与える。

この効果で神のカード2体を生贄にした場合、相手に与えるダメージは∞となる。

 

 そして、現れる三幻神の1柱――青き巨神、オベリスクの巨神兵。コピーとはいえ、見るものを畏怖させるその神々しい姿は敵対する夜光らを圧倒させる。

「ぐっ……奪った神のカードをデッキに入れていたか!」

「俺は機皇帝ワイゼル∞を生贄にささげ、オベリスクの最上級能力を発動する。ゴッド・ハンド・インパクト!」

 オベリスクが青白き閃光を夜光に向けて放ち、後ろにあった森共々吹き飛ばす。

 

夜光&カミューラLP8000→4000

 

「これが神の裁きだ!」

「たった1撃で地形が変わるなんてな。こいつはデュエル後の歴史改変が大変そうだ……」

 ゆっくりと立ち上がった夜光は左腕からの出血を手で押さえながら、息を整えようとする。

「そのような心配する必要はない。俺がデュエルモンスターズを支配し、古き秩序を破壊し、新世界を創造する。おろかな人類は俺によって決められた運命によって踊りつづければいい。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

手札:0枚

場:オベリスク

魔法・罠:伏せ2枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン、ドロー!」

 ドローしたカードを見るが、この手札で神を突破する手段が全くない。このターンは動けない夜光はチャンスが来るまで粘ることを選ぶ。

「俺はモンスターをセットし、カードを2枚伏せてターンエンド」

「ならば、エンドフェイズにリミット・リバースを発動。ワイズ・コアを特殊召喚する」

 

手札:3枚

場:伏せ守備

魔法・罠:伏せ2枚

 

-偽遊戯のターン-

「俺のターン、ドロー!

俺はワイズ・コアを守備表示に変更し、リミット・リバースの効果でワイズ・コアを破壊するぜ。そして、ワイズ・コアの特殊効果により、墓地から足を除く機皇帝ワイゼルを復活させる。俺は機皇帝に生贄に――オシリスの天空竜!」

 

オシリスの天空竜(原作効果)

効果モンスター

星10/神属性/幻神獣族/攻X000/守X000

このカードは特殊召喚したターンに攻撃する事ができない。

魔法カードの効果で特殊召喚したこのカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。

このカードはフィールド上に存在する限り、コントロールを変更する事はできない。

このカードはフィールド上に存在する限り、

上級呪文・神のカードを除く罠・効果モンスターの効果を受けず、

それ以外の罠・効果モンスターの効果及び魔法の効果は発動ターンのみ有効となる。

(フィールド全域に及ぶ魔法の効果は通常通り受ける)

このカードはドラゴン族としても扱う。

このカードの攻撃力と守備力はコントローラーの手札×1000ポイントアップする。

相手モンスターが召喚・特殊召喚された時、

そのモンスターの表示形式数値を2000ポイントダウンさせ、

表示形式数値が0になった場合そのモンスターを破壊する。

 

 雷鳴轟く天空より紅き竜がその姿を現す。オシリスの攻撃力は手札の枚数分上昇し、偽遊戯の手札は5枚。よって、今のオシリスの攻撃力は5000だ。

「行くぜ!俺はオベリスクの巨神兵で裏守備モンスターに攻撃!ゴッド・ハンド・クラッシャー!!」

「暗黒のミミックLv1のリバース効果より、デッキからカードを1枚ドローする」

 押しつぶされたミミックから1枚のカードが出て夜光の手札に加わる。

「オシリスの天空竜で直接攻撃!超電導波サンダー・フォース!!」

「ガードブロックを発動。この戦闘によるダメージを0にし、1枚ドローする」

 このターンの神の攻撃を耐え、手札を5枚にまで増やす。しかし、ライフは残り4000。次のターンにモンスターが召喚され、オベリスクの効果が発動したら、一瞬で0となるデッドラインに立たされているともいえる。ギリギリの瀬戸際に立たされている夜光にこのターンを耐えきったことを喜ぶ暇はない。

「ふっ、やるな。俺はカードを3枚伏せてターン終了だ」

 

手札:2枚

場:オベリスク

  オシリス

魔法・罠:伏せ4枚

 

-カミューラのターン-

「私のターン、ドロー!

私はミイラの呼び声を発動」

「この瞬間、召喚時計を発動する」

「何も起こらない……?」

「そう慌てるな。お楽しみはこれからだ」

「ミイラの呼び声の効果で手札からヴァンパイア・ロードを守備表示で特殊召喚するわ」

 何も起こらないカードの発動に怪しみながらもヴァンパイア・ロードを召喚するカミューラ。だが、ヴァンパイア・ロードが現れるや否やオシリスの2つ目の口が開かれる。

「この瞬間、オシリスの効果が発動するぜ。召雷弾!」

 オシリスの雷撃によって、ヴァンパイア・ロードが破壊される。次のスタンバイフェイズに復活するとは言え、対抗策が無ければ永遠に破壊され続けることになる。一見すると意味不明な行動だが、夜光はカミューラにも何らかの策があるのだろうと考えた。

「オシリスの効果はモンスターの召喚・特殊召喚時のみ。それならこうすれば問題ないでしょ。モンスターをセット!」

 当然だが、オシリスの効果は発動しない。神と言えどもデュエルモンスターズのルールには従わないといけないのだ。最大のチャンスが訪れるまで神の攻撃を掻い潜るにはこうした小さな穴をついていくしかない。

「カードを2枚伏せてターンエンドよ」

 

手札:1枚

場:裏守備

魔法・罠:伏せ3枚

 

-プラシドのターン-

「俺のターン、ドロー!

俺はカードを1枚伏せる。リバースカード、天よりの宝札を発動。互いに手札が6枚になるようにドローする。先ほど伏せた臨時ダイヤを発動。いでよ、機皇神マシニクル∞³!」

 

機皇神マシニクル∞³(アニメ効果)

効果モンスター

星12/光属性/機械族/攻4000/守4000

1ターンに1度、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を選択し、

装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。

この時、このカードの攻撃力は装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

手札の「T(トップ)」「A(アタック)」「G(ガード)」「C(キャリアー)」

と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事で、そのモンスター効果を得る。

自分の墓地に存在する「T(トップ)」「A(アタック)」「G(ガード)」

「C(キャリアー)」と名のついたモンスター1体をゲームから除外する事で、

このカードの破壊を無効にする事ができる。

エンドフェイズ時に、このカードに装備されたシンクロモンスター1体を墓地へ送る事で、

そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 高層ビルほどの大きさはありそうな巨大なロボットが偽プラシドの場に現れる。特殊召喚に制限が無く、様々なサポートカードを受けることができるこのカードは【機皇帝】の切り札といっても差支えがない性能だ。だが、偽プラシドにとってこのカードですら神を呼ぶための供物でしかない。

「さらにカオス・インフィニティ(アニメ効果)を発動!フィールドの守備表示モンスターを攻撃表示に変更し、デッキ・墓地から機皇モンスターを1体ずつ特殊召喚する。俺は墓地の機皇帝ワイゼル∞とデッキの機皇神マシニクル∞³を特殊召喚する。

俺は3体のモンスターを生贄に――ラーの翼神竜!」

 

ラーの翼神竜(原作効果)

効果モンスター

星10/神属性/幻神獣族/攻 ?/守 ?

魔法カードの効果で特殊召喚したこのカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。

このカードはフィールド上に存在する限り、コントロールを変更する事はできない。

このカードはフィールド上に存在する限り、

上級呪文・最上位の神のカードを除く罠・効果モンスターの効果を受けず、

それ以外の罠・効果モンスターの効果及び魔法の効果は発動ターンのみ有効となる。

(フィールド全域に及ぶ魔法の効果は通常通り受ける)

相手はこのカードを生贄にすることはできない。

このカードの攻撃力と守備力は、このカードの生け贄召喚のために

生け贄にしたモンスター3体の元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。

自分フィールド上に存在するモンスターを生け贄にする事で、

このカードの攻撃力・守備力は生け贄にしたモンスターのそれぞれの数値分アップする。

このカードが墓地から特殊召喚に成功した時、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。

●ライフポイントが1ポイントになるようにライフポイントを払って発動する。

このカードの攻撃力・守備力は払った数値分アップする。

このターンこのカードは相手フィールド上に存在する

全てのモンスターに1回ずつ攻撃する事ができる。

この効果が適用されたこのカードが「融合解除」の対象になった時、

この効果によってアップした攻撃力と払ったライフポイントは元に戻る。

●1000ライフポイントを払って発動する。

フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

 

 太陽から最後の神が偽プラシドの場に降臨する。他の神と比べて強力な耐性と圧倒的な破壊力は最上位の神に相応しい。

「ラーの翼神竜の攻撃力は生贄にささげたモンスターの攻撃力分の合計、つまり8000ポイントだ!

オベリスクの巨神兵で魂を削る死霊に攻撃!ゴッド・ハンド・クラッシャー!」

「私はリバースカード、神秘の中華鍋を発動。魂を削る死霊を生贄にささげて、ライフを300ポイント回復するわ」

 

カミューラLP4000→4300

 

「それがどうした!攻撃を続行する」

「バースト・リバースを発動。ライフを2000払い、魂を削る死霊を裏守備で特殊召喚する」

 

カミューラLP4300→2300

 

 神と言えども戦闘破壊耐性をもつモンスターを戦闘破壊することはできない。そして、一度召喚に成功した死霊を破壊できる神は蘇生時のラーの効果しかない。だが、ラーはすでに場に召喚されている。そのため、対象をとるカードが来るまでは時間を稼ぐことはできる。そういうことも考えたうえでカミューラはバースト・リバースを使ったのだ。

「ちっ、攻撃を耐えたか。悪夢の蜃気楼を発動し、カードを3枚伏せてターンエンドだ」

 

手札:1枚

場:オシリス

  オベリスク

  ラー

魔法・罠:召喚時計

     蜃気楼

     伏せ3枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン、ドロー!

スタンバイフェイズにヴァンパイア・ロードは特殊召喚される」

「ふん。神のカードの前ではそんな雑魚モンスターなど無意味だ。蜃気楼の効果で4枚になるようにドローし、オシリスの効果発動。ヴァンパイア・ロードを粉砕しろ!」

「手札を1枚捨てて、トラップ・ブースターを発動!このカードの効果により、手札から罠を発動することができる」

「いかなる罠を用いようと神には通用しない」

「それはどうかな」

 

ヴァンパイア・ロードATK2000→4000

 

 雷を帯びたヴァンパイア・ロードが破壊されることなく、むしろパワーアップしてフィールドに残っている。

「こ、攻撃力4000だと!? 一体、何が起こった!」

「俺はあまのじゃくの呪いを発動したのさ。このカードの効果で攻撃力をアップ・ダウンを入れ替える。これにより、オシリスの攻撃力は0となり、ヴァンパイア・ロードの攻撃力は2000ポイントアップする」

「オシリスの効果を逆手にとったか!」

「いくら神と言えどもルールに対する罠は通用するぜ」

 神のカードと言えどもフィールド全体に及ぼす罠には耐性が無い。黎明期に出たただのノーマルカードが最強のカードであり、最高レアリティでもある神のメタカードになるとは皮肉としか言いようがない。

「リビングデッドの呼び声を発動!絶対服従魔人を特殊召喚する。そして、絶対服従魔人を生贄に偉大魔獣ガーゼットを召喚!ガーゼットの攻撃力は絶対服従魔人の倍になる。この効果はラーと同じくあまのじゃくの呪いの対象外。さらに、オシリスの効果も合わせて攻撃力は9000だ!!

駄目押しで名推理を発動。好きなレベルを宣言してもらうぜ」

「俺が宣言するのはレベル8だ!」

「1枚目、高等儀式術。2枚目、サイクロン。3枚目、スキルサクセサー。4枚目、E-HEROマリシャス・エッジ!コイツのレベルは7。よって特殊召喚される。オシリスの効果で攻撃力は4600だ」

 雷撃を爪に貯め、今か今かと攻撃する気満々なマリシャス・エッジ。だが、そんな様子のマリシャス・エッジに対し、夜光は心の中で謝った後、別のモンスターに攻撃命令を出す。

「ガーゼットでオシリスに攻撃!」

「シフトチェンジを発動。攻撃対象をラーに移す!」

 

プラシドLP8000→7000

 

「だが、ヴァンパイア・ロードとマリシャス・エッジの攻撃が残っているぜ。オシリス・オベリスクに攻撃だ!」

 マリシャス・エッジが雷を帯びた爪を飛ばしオベリスクを破壊し、ロードが鋭い爪でオシリスを切り裂く。

 

プラシドLP7000→3000→2400

 

「カードを1枚伏せてターンエンド。この瞬間、俺たちのモンスターの攻撃力は元に戻る。このとき、攻撃力が0になっても召雷弾の効果で攻撃力が0になったわけじゃないから破壊されない」

「エンドフェイズに非常食を発動。蜃気楼を墓地に送り、ライフを1000回復する」

 

プラシドLP2400→3400

 

ロードATK4000→0

ガーゼットATK9000→5000

エッジATK4600→600

 

 1ターン限りのドーピングが終わるが、プラシドたちの場から神の姿が消える。ピンチを耐えつづけた夜光たちの粘り勝ちだろう。これなら勝てると2人は思っていた。だが、このとき2人は1つ失念していたのだ。次のターンは伝説のデュエリスト武藤遊戯をコピーした偽遊戯のターンであることを。

 

手札:1枚

場:ロード

  ガーゼット

  エッジ

  死霊

魔法・罠:ミイラ

     リビデ

     伏せ1枚

 

-偽遊戯のターン-

「俺のターン、ドロー!

俺は強欲な壺を発動。デッキからカードを2枚ドローする。貪欲な壺を発動。墓地のオシリス、オベリスク、マシニクル、ワイゼルの両腕をデッキに戻し、2枚ドローする。

召喚時計の効果発動。このカードを墓地に送ることで発動してから経過したスタンバイフェイズの数だけ手札からモンスターを特殊召喚できる。俺はオシリスの天空竜、オベリスクの巨神兵を特殊召喚する」

「なに、貪欲で戻したカードを2枚引いただと!?」

「さらにリバースカード、死者蘇生を発動。甦れ、ラーの翼神竜!」

「1ターンで神が3体……本当にあれは偽物なの!?」

 本物としか思えない曲芸に2人は驚愕する。あれだけ苦労して倒した神3体を再度召喚したのだ。無理もない話である。

「先の借りは倍にして返すぜ。オベリスクの最上級能力発動!ラーとオシリスを生贄に捧げることで、相手モンスターをすべて破壊し、∞のダメージを与える。インフィニティ・ゴッド・インパクト!!」

「手札からクリフォトンの効果発動。ライフを2000払い、このターン、受けるダメージを0にする」

 クリフォトンが身を挺して、オベリスクの攻撃から夜光たちを守る。

 

夜光LP2300→300

 

「神の一撃を躱したか……やるな。カードを2枚伏せてターンエンドだ。そして、ラーは再び墓地に戻る」

 

手札:1枚

場:オベリスク

魔法・罠:伏せ3枚

 

-カミューラのターン-

「私のターン、ドロー!私はミイラの呼び声の効果でヴァンパイア・ソーサラーを特殊召喚する」

 ソーサラーが現れた瞬間、天空より雷が堕ち、ソーサラーが破壊される。

「一体何が!?」

「リビングデッドの呼び声を発動していたのさ。俺が甦らしたのはオシリスの天空竜!」

 神の効果で1ターンで効力が消えてしまう死者蘇生と違って、神は罠の効果を受けないため、罠で蘇生した場合は完全蘇生となる。これにより、カミューラはまたしても攻撃力2000以下のモンスターの召喚・特殊召喚を封じられてしまう。だが、先ほどと違ってカミューラには余裕があるような表情を受かべる。

「だけど、ソーサラーの効果発動。このカードが墓地に送られたとき、デッキからヴァンパイアを手札に加えることができる。私が加えるのはヴァンプ・オブ・ヴァンパイア。俊足のギラザウルスを特殊召喚。貴方は墓地からモンスターを特殊召喚できるわ」

「何を考えている……俺は機皇神マシニクル∞³を特殊召喚する。そして、オシリスの効果が発動!」

「私は墓地のヴァンパイア・ソーサラーを除外し、このターン、ヴァンパイアを召喚するのに必要な生贄をなくす。現れなさい、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア」

 カミューラの場に可愛らしい吸血姫が現れる。ヴァンプがマシニクルに向けて誘うようにウィンクする。

「だが、オシリスの効果が発動するぜ。召雷弾!」

「速攻魔法、突進を発動。ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアの攻撃力を700ポイントだけアップさせる。これで召雷弾を受けても攻撃力は700ポイント残るわ。そして、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアの効果により、機皇神マシニクル∞³をこのカードに装備させる。これにより、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアの攻撃力は4000ポイント上昇し、4700!ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア、オシリスに攻撃よ!」

 オシリスの攻撃力はたったの1000。この攻撃が通れば、偽プラシドたちのライフは0になる。だが、偽遊戯は手札から1枚のカードを発動させる。

「クリボーの効果発動。ダメージを0にする」

 無数に分裂したクリボーがオシリスが破壊されたときの爆風から偽遊戯を守る。残念ながら、1

「おろかな埋葬で馬頭鬼を墓地に送り、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

手札:1枚

場:ヴァンプ(ATK4700→4000)

魔法・罠:マシニクル

     ミイラ

     リビデ

     伏せ2枚

 

-偽プラシドのターン-

「俺のターン、ドロー!

死者転生を発動。手札を1枚捨て、オシリスを手札に加える。ジャンク・ディーラーを発動。墓地の機械族・戦士族モンスターを2体まで特殊召喚する。俺は墓地のジャンク・コレクターを特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃力が半分になり、生贄にできず、攻撃することもできない。オベリスクを守備表示に変更し、ジャンク・コレクターの効果発動。このカードとカオス・インフィニティを除外し、その効果を得る。オベリスクを攻撃表示に変更し、墓地の機皇帝ワイゼルとデッキの機皇神マシニクル∞³を特殊召喚する。アイアンコールを発動。墓地のワイゼルTを特殊召喚する。3体のモンスターを生贄に――出でよ、オシリスの天空竜!」

 何度目の登場になるか分からないオシリスの召喚。だが、攻撃力はたったの1000。これなら、オベリスクの最上級効果を使ったほうがはるかにマシだったのではないかと思えるほどだ。

「命削りの宝札を発動。手札が5枚になるようにデッキからドローする。オシリスの天空竜でヴァンプ・オブ・ヴァンパイアを粉砕!」

「罠発動、重力解除!」

「神に罠は通用しない」

「ええ。でも、私のモンスターには通用するわ」

 初めから神を狙わず、自身のモンスターを守備表示に変える。やむを得ず、偽プラシドは守備表示のヴァンプに攻撃するが、カミューラに与えるダメージはこれで0。だが、オシリスの攻撃が残っているため、偽プラシドは虫けらの悪あがきに過ぎないと考える。

「モンスターを装備したヴァンプ・オブ・ヴァンパイアが墓地に送られたとき、自己再生する」

「だが、オシリスの効果で破壊される。いい加減に落ちろ!」

「罠発動、幻影騎士団シャドーベイルを発動。守備力を300ポイント上昇させる。これでオシリスの効果を受けても300ポイント残るわ」

「小賢しい真似を……オベリスクでヴァンプ・オブ・ヴァンパイアに攻撃!カードを1枚伏せてターンエンドだ」

(俺の伏せカードはミラーフォース。あいつが攻撃してきてもこのカードで返り討ちにしてくれる)

 決定的なチャンスを何度も作りながらも、攻撃を躱し続けられイラつく偽プラシド。オシリスの効果を逆手にとろうとも、伏せカードで場のモンスターを破壊し、次のターンで息の根を止めようと画策する。

 

手札:4枚

場:オベリスク

  オシリス

魔法・罠:伏せ1枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン、ドロー!」

「貴様の場にはモンスターが居ないうえに手札はたったの1枚。そして、俺の場には神が2体。勝負はついたようだな」

「まだ分からないぜ。ライフがある限り、俺は、俺たちのカードを信じて戦うまでだ!マジック・プランターを発動。リビングデッドの呼び声を墓地に送り、2枚ドロー!儀式の準備を発動。デッキからチャクラを手札に加え、墓地の高等儀式術を手札に加える。闇の誘惑を発動。2枚ドローし、チャクラを除外する」

「ふん。貴様がいくら頑張ろうと敗北と言う運命からは逃げられん」

「運命ってものは己の手で変えるものだ。俺はもうあの時の無力な俺じゃない。見せてやるぜ、運命を変える圧倒的な力の象徴を!」

 夜光は1枚のカード――最後のジョーカーを切る!

「俺は高等儀式術を発動。デッキからレベル4ガーゴイル・パワードとレベル4三つ首のギドーを墓地に送り――大邪神レシェフを儀式召喚!」

「大邪神だと!? だが、オシリスの効果が発動する。召雷弾!」

「大邪神は神を統べし存在。神のあらゆる効果は通用しない!」

「なん…だと……?」

 大邪神レシェフの隠された効果により、召雷弾がはじき返される。プラシドの伏せカードがミラフォである以上、夜光を阻むカードはない。完成した勝利の方程式を組んでいくまでだ。

「レシェフの効果発動。手札のZ-ONEを捨て、オベリスクのコントロールを得る」

「耐性までもが無視されるとでも言うのか!」

「墓地の馬頭鬼の効果により、墓地のヴァンパイア・ロードを特殊召喚する」

「お、オシリスの効果で粉砕してくれるぅぅぅ!」

「無駄だ。墓地から罠発動!」

「ぼぼぼぼぼぼぼぼ墓地から罠だと!?」

「墓地のスキルサクセサーを除外し、ロードの攻撃力を800ポイントアップする。これでオベリスクと2体のモンスターが揃った」

「き、きぃい貴様ぁああああ!」

「オベリスクの最上級効果発動!レシェフとロードを生贄に捧げ、このカードの攻撃力を無限大にし、相手に4000ポイントのダメージを与える。ゴッド・ハンド・インパクト!」

「ぎ、ぎゃ、ぎゃああああああ!!!」

 青白い閃光が偽プラシドと偽遊戯をその原型を留めないくらいに木端微塵にする。

 

プラシドLP3400→0

 

「はぁ、はぁ。やったか」

「ええ。私たちの勝ちよ」

 デュエルが終わり、二人は安堵の息をつく。そして、カミューラはなぜ神のカードが奪われたのかを問う。夜光はどうこたえるべきか考え、真偽を織り交ぜて話すことにした。

「あれは近々出す予定のデュエル用のロボットだ。簡単な自立行動できるようにAIを積んでいたんだが、どういうわけか暴走を起こし、研究用の神のカードを奪って逃走。神のカードが奪われたことを知られたら不味いから、密かに回収を命じられたわけだ」

「神のカードを研究……ということは貴方はI2社かKC社の回し者ってわけね」

 神のコピーカードを所持している可能性があるのはその2社しかない。そのため、カミューラはその2社の社員かその身内の者だと推測した。それが当たっているのか夜光は頷き、肯定する。辻褄はあっているのでカミューラは納得し、踵を返そうとする。

「カミューラ、ありがとうな。借りは消してもらったぜ」

「どこが!私も何度か貴方に助けられたからおあいこよ。借りを返すまで死ぬんじゃないわよ」

「ああ。まだ死ねないからな。借りを返すまで死ぬなよ」

 カミューラは蝙蝠に分裂しどこかへと旅立ち、それを見送った夜光は緊張の糸とアドレナリンが切れたのか極度の疲労と痛みに襲われ、近くの木にもたれかかる。

「運が良いのかどうかは知らねぇが、歴史改竄の効かない十代が廃寮に行ったのは助かった。だけど、レシェフを出したせいでしばらく動けそうにもない」

 強力な力には必ず代価が必要だ。レシェフとの契約でただの少年だった彼が出したのは――

「はぁ…はぁ……この疲労感…………あと使えて2、3回ってところか。それ以上使うと死ぬな、これは」

 自分の命だった。




いつの間にかカミューラがツンデレになっていた。
超展開とか恋愛フラグとかそういうチャチな物じゃねぇ…
もっと恐ろしいヒロイン降格の片りんを味わったぜ…

マシニクルの説明時、OCGと比べて悲しくなったのは自分だけじゃないはず。
せめて墓地の機皇帝除外して破壊無効があれば、まだマシだったのに…

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