冬休みがもうすぐ始まろうとしている。選択した前期分の授業を既にやり終えている何人かの生徒たちは実家に戻ろうと続々と帰ろうとしている。そんな日の昼、夜光はアカデミアの屋上で3年生からの聞き込みの結果を書いた手帳を眺めていた。
「3年生が嘘やごまかしをついているような感じでもないし……
やはりカイザーだけが藤原優介のことを知っているのか」
最初は藤原が失踪したことに対し何らかの理由で箝口令が敷かれていたのではないかと考えた夜光は当時のことを知っているはずの3年生に聞き込みをした。その結果、カイザーを除く3年生の誰もが藤原優介のことを知らないのだ。いや、知らないというよりかは記憶から抹消されているのように。
「俺が藤原優介のことを知っていることがカイザーにばれた。
これはミスったなぁ……」
夜光は頭をかきながら、困ったような表情を浮かべる。困惑を振り払うかのように首を振り、デッキケースから1枚のカードを取り出す。そのカードは鏡に映し出されたかのように左右反転した『サイバー・エンド・ドラゴン』だった。
「デビルズ・ミラーの隠された能力……ゲットアビリティがうまく働いたな」
ゲットアビリティ能力自体は古代エジプトの盗賊王バクラの精霊ディアバウンドを起源とし、最近では海馬の青眼の白龍の力を奪うために獏良了が使用したディアバウンド・カーネル等、少数ながらも存在している。夜光が持つデビルズ・ミラーは相手のエースモンスターを戦闘破壊した場合、破壊したモンスターの情報を記憶することができる。そいて特殊な装置にデビルズ・ミラーが得た情報を取り出すことによりカードを複製することができるのだ。元々のステータスが低いデビルズ・ミラーではせいぜい上級モンスターを破壊するのが関の山だが、カイザー戦では運よくサイバー・エンド・ドラゴンを戦闘破壊することができ、カードを複製できた。
「夜行君、やっぱりここにいたんだ」
後ろから神楽坂
「一緒にご飯食べない?
今日、購買部でドローパンのセールしているんだ」
「ドローパンねぇ……
俺、焼きそばパンしか当たったことないんだけどな」
「えっ~と、確か29回連続だったけ?
でも今日は違う食材かもしれないよ」
「まあ、特にすることもないし。
記念すべき30回目の焼きそばパンを買いに行くとしますか」
盗聴器で響先生による十代の補習が長引きそうだと思った夜光は立ち上がり、神楽坂と一緒に購買部に行くことにするのであった。
購買部のワゴンにぎゅうぎゅうに詰められたドローパンの中からドローした夜光と神楽坂はお金を払った後、早速開封する。まずは神楽坂から味を確認する。
「……め、めざしパン」
「めざしって……
どうみてもパンに合わないだろう。じゃあ、俺も……」
「ウッキィィィィィ!」
微妙なパンを引いて落ち込んでいる神楽坂を見た後、夜光がドローパンを口に入れようとした瞬間、急にサルの鳴き声が聞こえ、食べようとしたドローパンが何者かに奪われてしまう。一体何事が起ったのかと足元を見ると、仰々しい機械を身に着け、片手にスーパーの袋を持ったサルが夜光のドローパンをもう片方の手に持っているのであった。
「なんだこのサル?
つーか、焼きそばパン返しやがれ!」
「ウッキキキー」
サルはドローパンを袋の中に入れ、挑発するかのようにおしりをペンペンとたたいた後、外に出ていくのであった。そして入れ違いに網を持った三沢が慌てた様子でやってくる。
「こっちにサルが逃げなかったか?」
「さっき来たけど……
三沢、何があったんだ?」
「研究所から『実験用のサルが脱走したから捕えてくれ』って樺山先生に要請があったみたいで、今アカデミアにいるイエロー生徒総出でサルの捜索しているんだ」
ちなみに研究所はブルー寮にも要請を出したがクロノスに『誇りあるオベリスクブルーの生徒に猿探しなんて許可できないノーネ』と断られた経緯がある。なお、レッド寮については『猿探しする暇があれば勉強しろ』ということから伝達すらされていない。伝えたら面白半分で捜索する馬鹿がいるからだ。特に十代。
「それなら俺たちも探すぜ」
「ああ、助かる。俺は寮付近を探すから、夜光たちは向こうの方を探してくれ」
三沢たちは手分けしてサルを捜索するのであった。
夜行と神楽坂が森の中を捜索していると何人かのブルー女子が三沢と同じく網を持って血眼になって何かを探しているそぶりを見せていた。
「向こうには居ませんでしたわ」
「分かった。とにかく私たちの手で捕まえるのよ」
「「「「エイ!エイ!オー!」」」」
付近の探索を終えた女子たちはぞろぞろと別の捜索ポイントに移動しようとする。その中に星奈がいたので、夜光は彼女から事情を聞こうと話しかけるとそこには目をギラギラと輝かせた星奈がいた。夜光たちは普段とあまりにも違うギャップに恐怖を感じ、一歩後ずさってしまう。
「さっきあのエロ猿が女子更衣室に入ってきて私のカメラを盗まれたのよ!」
「私の財布も」
「アタシのカードも」
「ウチの融合デッキもや」
「ああ、あの袋の中には盗品が入っているわけか」
次々と盗品被害の報告をあげていく女子生徒たち。裸を見られただけでなく、物も盗まれたとなれば怒りが頂点にたつだろう。それが大切なものであればなおさらである。そのため、彼女たちは先生たちには内緒でサルを探索しているのだ。
「何かあったら連絡するぜ」
「うん。こっちもエロ猿を懲らしめたら連――」
「キャアァァァァ!!」
「この声は明日香!?」
女子と別れて捜索しようとした瞬間、突如明日香の悲鳴が森中に響き渡る。ただ事ではないと思った女子生徒たちは何人かを引き連れて先生のもとに急行し、残る生徒たちは明日香の声がしたほうへと駈け出す。
森を抜けると、海を背に向け明日香を人質にしている猿と麻酔銃を手に持ち、白衣を着た研究員が退治している。そんなとき、麻酔銃を構えている若い研究員がやや老齢な研究員にしびれを切らしたような態度で話しかける。
「博士、いつ撃つんですか!? 今でしょ!
このまま長引かせれば、女子生徒に何をするかわかりません」
「だが、女子生徒にSAL用の麻酔銃が当たってしまうかもしれん」
今まで逃げ回っていたサルは研究所がデュエルが動物とりわけ人間に与える影響を調べるため、さまざまな装置によりデュエルができるように鍛えられたSuper Animal Learning(通称SAL)である。人間ではなくサルを使ってデータ収集をしているのは、研究所が学び舎近くに建てられているため、人体実験を一切認められていないからだ。
デュエルするために鍛えられたSALは通常の猿よりも多くの量の麻酔が必要になる。万が一、人間に麻酔銃の針が当たれば、取り返しがつかない事態につながるかもしれない。そのため、研究員たちは引き金を引くことができなかったのだ。
「このままでは北欧から取り寄せたカードが奪われたままになる。
何かで気をそらせばいいのだが……」
「それならデュエルすればいいじゃん」
後ろから声をかけられた研究員たちが振り返ると、そこには何人もの生徒がいた。
「君たちはここの生徒かね?」
「そうに決まっているだろう。
とにかく俺たちがデュエルしている隙に明日香を開放して、麻酔銃で眠らせれば解決だな」
「その通りだ。やってくれるか」
「そのつもりだ。よーし、俺と――」
「夜光君、ちょっと待った!」
夜光がデュエルディスクを展開しようとしたとき、急に星奈から制止の声が上がる。
「ここは女子代表で私に任せて。
着替えを覗かれた分と大事なものを奪われた分の恨み、きっちり返すんだから!」
「お、おう。がんばれよ」
怒りの炎に燃えている星奈に夜光はたじたじな様子であった。
『デュエルモードに移行します』
「ウッキー、こうなったらお前をボロボロのギッタンギッタンにしてやる」
デュエルの空気を感じたのかSALの機械から機械的な音声がアナウンスされると、SALが言葉をしゃべり始める。人間の言葉に翻訳する装置もつけられていることに生徒たちは素直に驚いた。
「「デュエル!」」
星奈LP4000
SAL LP4000
-星奈のターン-
「私のターン、ドロー!
私はガガガマジシャンを守備表示で召喚」
背中に我と書かれている制服を着た不良のマジシャンが星奈の場に現れる。
「カードを1枚伏せてターンエンド」
手札:4枚
場:ガガガマジシャン(DEF1000)
魔法・罠:伏せ1枚
-SALのターン-
「私のターン、ドロー!
私は炎王の急襲を発動。
相手フィールド上にのみモンスターがいるとき、デッキから炎属性の獣戦士・鳥獣族・獣族のモンスターを特殊召喚する。
彼方から急襲する天空の覇者、炎王神獣ガルドニクス!!」
青い尾・紅い羽根を広げ、燃え盛る炎のトサカを持つガルドニクスがSALの場に現れる。他者を圧倒するような威圧感に生徒たちは思わず息のむ。
「ノーコストでデッキからレベル8のモンスターを召喚!?
インチキ効果じゃないか!」
「この効果で特殊召喚したモンスターは効果は無効になり、エンドフェイズに自壊するデメリットを持つ。
デメリットもそうあるのでインチキではない」
神楽坂のいちゃもんにこたえるSAL。サルといえどもインチキ呼ばわりされていい気分にはならないだろう。
「激昂のミノタウルスを召喚。ミノタウルスの効果で場の獣戦士族・鳥獣族・獣族は貫通効果が与えられる。
ミノタウルスでガガガマジシャンに攻撃!アックス・クラッシャー」
「罠発動、ガガガシールド。
このカードの効果でガガガマジシャンは2度まで破壊されない」
「だが、ダメージは受けてもらう」
ガガガマジシャンが身の丈ほどある盾でミノタウロスの斧攻撃を防ぐが、生じた衝撃波が星奈を襲う。
星奈LP4000→3300
「ガルドニクス(ATK2700)でガガガマジシャン(DEF1000)に攻撃」
ガルドニクスがガガガマジシャンに向かって炎の渦を発生させるが盾で防ぐ。しかし、プレイヤーである星奈までは守りきることはできなかった。
星奈L3300→1600
「ターンエンド。ガルドニクスは破壊される。
そして炎王が破壊されたことにより、手札から炎王獣ヤクシャを特殊召喚する」
手札:3枚
場:ミノタウルス
ヤクシャ
魔法・罠:なし
-星奈のターン-
「私のターン、ドロー!」
「おっと、スタンバイフェイズにカード効果で破壊されたガルドニクスの効果が発動する。
不死鳥は灰より現れる!甦れ、ガルドニクス!!
ガルドニクスがこの効果で特殊召喚した場合、フィールド上のモンスターをすべて破壊する」
「ノーコストの蘇生効果にブラックホールと同じ全体破壊効果!?」
「「「「インチキ効果もいい加減にしなさい!」」」」
ガルドニクスが辺り一面に炎をまき散らすが、ガガガマジシャンは縦で何とか耐える。その強力すぎる能力に女子生徒たちがツッコミを入れる。もう言い訳するつもりはないのかSALは何も聞こえないふりをしてデュエルを続ける。
「そして破壊されたヤクシャの効果により、自分の手札または自分フィールド上のカードを破壊できる。私は手札のネフティスの鳳凰神を破壊する」
「うっ……これで私が罠を伏せてもネフティスの効果で破壊される」
普通はデメリットしかない効果だが、破壊をトリガーするカードを用いればメリットになるのだ。要はどんな弱小カードも使い方次第である。
「どうだ参ったか」
「まだだよ。王立魔法図書館を守備表示で召喚。
テラフォーミングを発動。デッキから魔法都市エンディミオンを手札に加える。
さらに図書館に1つ目の魔力カウンターが置かれる。エンディミオンを発動」
フィールドが中央に高い塔がそびえ立つ円形状の都市に変わっていく。
「図書館に2つ目の魔力カウンターが置かれる。
ガガガマジシャンのレベルを7に変更するよ。
救世の儀式を発動。レベル7のガガガマジシャンを生贄に救世の美神ノースウェムコを儀式召喚!」
星奈のエース、ノースウェムコがフィールドに降臨する。しかし、ガルドニクスと攻撃力は互角。そのため、SALは大きくおびえている様子は見えない。
「そしてノースウェムコの効果でエンディミオンを選択。
さらに儀式魔法を用いたことでエンディミオン(0→1)と図書館(2→3)に魔力カウンターが置かれる」
「よし。これで破壊耐性を持つエンディミオンをどうにかしない限り、ノースウェムコはカード効果では破壊されない。戦闘でも最悪相打ちに持ち込める」
夜光は星奈の戦術をほめたたえる。しかも、図書館には魔力カウンターがフルに溜まっている状態だ。
「王立魔法図書館の効果で自身の魔力カウンターを3つ取り除き、1枚ドロー!
ワンショット・ワンドをノースウェムコに装備。
ワンショット・ワンドの効果でノースウェムコの攻撃力は800ポイントアップ。
そしてエンディミオン(1→2)と王立魔法図書館(0→1)に魔力カウンターが置かれる。
ワンダー・ワンドを王立魔法図書館に装備。
さらにエンディミオン(2→3)と王立魔法図書館(1→2)に魔力カウンターが置かれる。
ノースウェムコでガルドニクスに攻撃!」
ノースウェムコが三日月の杖を振りかざし、頭上から雷を落としガルドニクスを破壊する。
SAL LP4000→3200
「戦闘破壊されたガルドニクスの効果で炎王獣バロンをデッキから特殊召喚する」
「効果破壊の蘇生効果だけじゃなくリクルート効果まで……」
ガルドニクスの焼け跡から赤い皮膚のサルが現れる。戦闘破壊・効果破壊されても後続が出てくるのが【炎王】の恐ろしいところである。
「ワンショット・ワンドを破壊し、1枚ドロー!
一時休戦を発動。互いに1枚ドローし、次のターンまでダメージを0にする。
王立魔法図書館の効果発動。自身の魔力カウンターを3つ取り除き、1枚ドロー!
ワンダーワンドの効果発動。王立魔法図書館を生贄にささげて、2枚ドロー!
カードを1枚伏せてターンエンド」
手札:4枚
モンスター:ノースウェムコ(ATK2700)
魔法・罠:伏せ1枚
フィールド:エンディミオン(4)
-SALのターン-
「私のターン、ドロー!
スタンバイフェイズにネフティスの鳳凰神の効果発動。
フィールドへ降臨させる。その後、フィールド上の魔法・罠をすべて破壊する」
「エンディミオンの効果により、魔力カウンターを1つ取り除いて(4→3)破壊を無効にするよ」
SALの場に現れたネフティスが魔法・罠を破壊しようと辺り一面が炎に包まれる。
「罠発動、奈落の落とし穴!
ネフティスを破壊して除外するよ」
「チェーンして速攻魔法、炎王炎環を発動!
ネフティスを破壊し、ガルドニクスを復活させる」
「せっかく倒したのにまた復活!?」
SALの場に再び現れるガルドニクス。ネフティスを除外することにより、蘇生を困難にしようとした星奈の一手は回避され、しかも次ターンでネフティスの効果が発動することが決まった。
「ガルドニクス(ATK2700)でノースウェムコ(ATK2700)に攻撃!
そして速攻魔法、突進を発動。攻撃力を700ポイントアップさせる」
勢いよく突進してきたガルドニクスに詠唱が間に合わず、ノースウェムコが破壊されてしまう。
「カードを2枚伏せてターンエンド」
手札:0枚
場:バロン(ATK1800)
ガルドニクス(ATK2700)
魔法・罠:伏せ2枚
-星奈のターン-
「私のターン、ドロー!
私は光属性・王立魔法図書館と闇属性・ガガガマジシャンを除外し、カオス・ソーサラーを特殊召喚する」
「モンスターを除外するつもりか、そうはさせん。罠発動、激流葬!
フィールド上のモンスターをすべて破壊する。
これで次の私のスタンバイフェイズにガルドニクスとネフティスが舞う。
さらに破壊されたバロンの効果で次のスタンバイフェイズに炎王と名の付いたカードを手札に加えることができる」
逆転への一手をかわされたところか相手のターンにもかかわらず、SALは星奈の行動の妨害・次ターンでの蘇生・モンスターのサーチをこなす。これらのSALの行動に対する星奈への精神的なダメージは大きいだろう。星奈は自分の手札を確認するが、この状況を打破するカードはない状況だ。
「っ……
カードを1枚伏せてターンエンド」
手札:3枚
モンスター:なし
魔法・罠:伏せ1枚
フィールド:エンディミオン(5)
-SALのターン-
「私のターン、ドロー!
ガルドニクスとネフティスを特殊召喚する。2体の不死鳥よ、舞え!そして焼き尽くせ!
ガルドニクスの効果とネフティスの効果でフィールド上のカードをすべて破壊する」
「罠発動、ホーリーライフバリア!
手札を1枚捨てて、このターンのダメージを0にする。
さらにエンディミオンの効果発動。魔力カウンターを1つ取り除いて(5→4)破壊を無効にする」
フリーチェーンの罠により、このターンの攻撃をしのいだ星奈。しかし、フィールドは圧倒的に不利なままだ。
「カードを2枚伏せてターンエンドだ」
手札:0枚
場:ガルドニクス(ATK2700)
ネフティス(ATK2400)
魔法・罠:伏せ2枚
-星奈のターン-
「私のターン、ドロー!
闇の誘惑を発動。2枚ドローし、見習い魔術師を除外する。
死者蘇生を発動。カオス・ソーサラーを特殊召喚する。
これで魔力カウンターが6つ揃った。墓地の神聖魔導王エンディミオンの効果発動。エンディミオンの魔力カウンターを6つ取り除き、墓地から特殊召喚する」
黒いロープに身を包み黒い仮面をかぶった魔導王が星奈の場に降臨する。
「この方法で特殊召喚に成功したとき、墓地の魔法カードを手札に加えることができる。私は墓地の死者蘇生を手札に加える。
死者蘇生を発動。墓地のノースウェムコを復活させる。
魔法使い族の里を発動。これで私が魔法使い族をコントロールしている限り、エロ猿は魔法カードを発動できない!」
「なにぃ!? これではカオス・ソーサラーの効果にチェーンして炎王円環を発動できないではないか!インチキフィールドめ!この負ける。ウッキー!!」
SALは自分の戦術が崩壊していく様子を認めないのか罵倒を続ける。だが、今の星奈には慈悲がなかった。
「カオス・ソーサラーの効果発動。攻撃を放棄する代わりにフィールド上のモンスターを除外できる。
私はガルドニクスを除外。
場のエンディミオンとカオス・ソーサラーを生贄に黒の魔法神官を特殊召喚!
黒の魔法神官でネフティスに攻撃!セレスティアル・ブラック・バーニング」
「なーんてな。私の演技に引っかかりおった。罠発動、聖なるバリア-ミラーフォース-!
これでお前のモンスターは全滅だ」
「黒の魔法神官の効果発動!罠カードの発動を無効にする」
「なんだと!? ウッキャー!」
黒の魔法神官と魔法使い族の里によるコンボにより、SALは魔法・罠を一切使えない状況になっていたのだ。そして黒の魔法神官の魔導弾によりネフティスが破壊される。
SAL LP3200→2400
「ノースウェムコでダイレクトアタック!」
「ウキウキウッキィィィィィー!?」
ノースウェムコの雷撃によりSALのライフが0になるのであった。
SAL LP2400→0
SALがデュエルで敗北した隙に人質になっていた明日香は逃げ出すことに成功する。そしてスーパーの袋から盗品を取り返した女子生徒たちは続々と自分の部屋と帰り始める。なお、夜光のドローパンの結果は当然!焼きそばパン!だった。
「ウッキ? ウキウッキキキー」
デュエルで敗北したショックか機械が故障したのかSALは言葉をしゃべることができなくなっていた。そんなとき、森の中からサルの群れが現れSALを誘っている。研究員がSALに向かって麻酔銃を向け、撃とうとしたとき博士が制止させる。そしてSALは仲間のサルの元へと戻るのであった。
「博士、SALを逃がしても構わないのですか?
どれだけのお金がかかったか博士もご存じのはずです」
「構わん。いまさら捕まえてもあの様子では再度教育が必要となり、さらに金がかかるだけだ。
ならば、別テーマの研究に力を入れたほうが良い」
博士は研究員を追い払った後、迷惑を掛けた生徒たちに頭を下げる。といっても、明日香、星奈、夜光、神楽坂の4人にしかいないが。
「このたびは我が研究所がご迷惑をおかけして申し訳ない。
そこで北欧で開発中の新モンスターをお見せよう」
SALから取り返した袋の中にあった箱を開けるとそこには白いふちのカードがあった。
「見たことがないカードね」
「うん。こんな枠を持つカードなんて初めて知ったよ」
「なんか強そうなカードだね。夜光君もそう思うでしょう」
「あ、ああ。そうだな」
4人とも様々な反応をするが、夜光だけがなぜか嫌そうな表情をしていた。
「これはシンクロモンスターと言って、北欧ではローカルに存在しているカードなんだ。
と言っても世界戦のような公式の場では使えないんだけどね。
数年後にはこのシンクロモンスターを公の場にも出せるようにI2社とKC社でルール変更も含めて調整しているそうだ。
噂ではあの伝説のデュエリスト、海馬瀬人も自分専用のシンクロモンスターを作ったとか作っていないとか」
夜光を除く3人が目を輝かせながら、博士の話を聞く。
博士の話を聞き終えた3人はいまだに興奮が冷めず、自分たちの寮へと帰らずデュエル上でデュエルしてから帰ろうとしたため、夜光は3人と途中で分かれる。
「……シンクロは嫌いだな」
夜光がポツリと漏らした言葉は誰にも聞こえることはなかった。
約1カ月ぶりの投稿です。いや、長かった。
今回はSALの話+伏線回。
本当は【ビースト】にしようとしたんだけど、いつのまにやら【炎王】に。
……ごめんよ、三沢。お前の炎デッキの候補をつぶしちゃって。
シンクロが北欧生まれになった理由はオーディン(シンクロモンスター)が代々伝わっているという設定から、きっと北欧ではシンクロは古くからあったのだろうと推測したためです。
まあ、矛盾があっても遊戯王ではよくあることで片付けられるますが。
冬休みの話を書くかどうか悩んでいるところ。
もしかすると冬休みはカットするかもしれません。
次は2カ月後くらいに投稿する予定です。早くできれば早く投稿しますが。