遊戯王GX~Ritual Story   作:ゼクスユイ

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第1話 アカデミア入学試験(前編)

 多数の制服姿の受験者がいる教室の中で、一か所を除いてカリカリと書いている音だけが聞こえる。

「鉛筆を置いて、解答用紙を右端の人のところに集めてください」

 銀色の髪を後ろで束ねている男子中学生の広瀬夜光は鉛筆を置き、隣でぐーすか寝ている遊城十代を起こし、解答用紙を十代のところに回していく。

 一般教養の解答用紙を回収し終え、短い休憩時間を過ごした後、別の試験官が中に入っていく。

「それではデュエルについての筆記試験を始めてください」

 皆がテストを開始し始める。

 

問題

 自分の場にポールポジションとデーモンの斧を装備したスチームロイドが存在している。

 このとき相手はメカ・ハンターを召喚することができるか。その理由も答えよ。

夜光の回答

 攻撃力1850のメカ・ハンターを召喚するとポールポジションの効果により、デーモンの斧を無効になっているスチームロイドの攻撃力を上回る。

 このときポールポジションの効果はメカ・ハンターに移るが、今度はデーモンの斧が有効になったスチームロイドの攻撃力がメカ・ハンターを上回る。

 よって無限ループが発生するため、相手は攻撃力1801以上2800以下のモンスターであるメカ・ハンターを召喚することができない。

 

問題

 歯車街の発動にサイクロンをチェーンされた場合、アンティークギアを特殊召喚できるか。

夜光の回答

 不発になり、タイミングを逃すため特殊召喚できない。

 

 受験生たちが頭を抱えながらも問題を解いていき、あっという間に時間が過ぎていく。

 試験官が試験終了と宣言し、解答用紙を右端に集めるように指示する。試験官が解答用紙を確認し、教室から出て行ったあと、夜光は今日初めて知り合った十代に話しかける。

「よくデュエルの試験だけは起きていられたよな」

 無論、テスト中は横を見ることができないが、横から聞こえるいびき声くらいは聞こえるため、隣にいる人間が寝ているかどうかくらいは容易にわかる。夜光は十代が国語、数学、英語といった一般教養のテストを寝ていたにも関わらず、デュエルのテストだけはいびき声が全く聞こえなかったので少し気になっていたからだ。

「デュエルのことなら寝るわけにはいかないからな」

 という十代の返答に凄く納得した。

「それにアカデミアに落ちたら叔母さんから何時間も説教される」

 夜光は十代に叔母がいることをうらやましく思いながらも

「叔母さん、厳しいんだな」

「叔母さん、アカデミアの教員だから仕方ないんだけどな」

 会話を続けていき、駅で十代と別れる。

「俺をこの世界に送り込んだ父さんは俺のことをどう持っているんだろうな」

 夜光の小さな呟きは夕焼けの空に消えていった。

 

-試験会場-

 夜光は実技試験の会場がある海馬ランドにいき、その順番を待っていた。

(俺の受験番号は6番だから、次の人が終わったら俺の番か)

 そして7番のデュエルが終わり、夜光の番が回ってくる。

「基本的なルールは一般的なデュエルと同じ。先攻は受験生になっている。それでは実技試験開始だ」

 黒いサングラスをかけた試験官の宣言と共に、互いにデュエルディスクを展開する。

「「デュエル!」」

 

夜光LP4000

試験官LP4000

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!」

(よし、良い手札だ。これなら1killされることも少ないはず)

 夜光はさっそく1ターン目から、自分のデッキのキーカードをデュエルディスクに差し込む。

「俺は高等儀式術を発動!

デッキからレベル3深淵の冥王とレベル3キラー・ザ・クローを墓地に送り、デビルズ・ミラーを儀式召喚!」

 夜光の場に現れたのは人間くらいの大きさを持つ巨大な悪魔の鏡。

「手札を2枚も消費して効果もないモンスターを出すだけか……」

 試験官はややがっかりした口調でいう。一方で他の受験生たちは

「どうしてあんな雑魚カードを入れているんだ?」

「いくら頭が良くてもデュエルに勝てないなら意味が無いんだよ」

 疑問を持つ者や、野次を飛ばす者が大半を占めていた。

「攻撃力が低くても戦い方は色々とある。案外、このカードがフィニッシャーになるかもよ。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

手札:2枚

場:デビルズミラー(ATK2100)

魔法・罠:伏せ2枚

 

-試験官-

(効果がなく、攻撃力も高くないカードがフィニッシャーに? どういうことだ??)

 試験官が夜光の言葉の真意を考えたたが、単なるハッタリだろうと判断する。

「私のターン。ドロー!

 私は高等儀式術を発動!」

「なっ……!? まさかの儀式対決かよ」

 夜光は自分と同じ儀式を主軸としたデュエリストとの対戦したことが無かったため、試験中にもかかわらず声を出してしまう。

「私はレベル4甲虫装甲騎士とレベル4ネオバグを墓地に送り、終焉の王デミスを儀式召喚する。

デミスの効果発動!ライフを2000払い、デミス以外のカードを全て破壊する。終焉の嘆き!」

 

試験官LP4000→2000

 

「そうはさせるか。俺は永続罠、デモンズチェーンを発動する。デミスの効果を無効にし、さらにデミスの攻撃を封じる」

 カードから鎖が飛び出し、デミスの身体に絡みつき身動きを封じる。

 だが、試験官はそんなことを気にせずにカードを使っていく。

「墓地の甲虫装甲騎士とネオバグを除外して、デビルドーザーを特殊召喚する。

さらに甲虫装甲騎士を召喚する」

 試験官の場には合計3体のモンスターが召喚された。夜光のこの状況をみて

(巨大化のようなカードでモンスターを強化されたら1killされちまう)

 と思い、試験官の手札に強化魔法がないことを祈っていた。その祈りが通じたのか試験官はメインフェイズを終了し、バトルフェイズに移った。

「デビルドーザー(ATK2800)でデビルズミラー(ATK2100)に攻撃!」

デビルドーザーがその巨体でデビルズミラーを押しつぶし、破壊する。

 

夜光LP4000→3300

 

「デビルドーザーの効果でデッキトップを墓地に送らせてもらう……げっ!?」

 夜光はデッキトップにあった聖なるバリア-ミラーフォースが落ち、嫌そうな表情をする。

「甲虫装甲騎士(ATK1900)でダイレクトアタック」

 甲虫装甲騎士が持っていた剣で夜光を切り裂いていく。

 

夜光LP3300→1400

 

 試験官は夜光のライフがあと1回のダイレクトアタックで勝利できることを確認し、余裕の表情を浮かべる。周りにいる受験生たちも試験官の勝利を疑うことが無かった。

「私はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

「エンドフェイズ時にサイクロンを発動して、伏せカードを破壊する」

 試験官は万が一のために伏せていた万能なカウンター罠である神の宣告が破壊され、先まで見せていた余裕はなくなっていく。

 

手札:0枚

場:デミス(ATK2400)

  デビルドーザー(ATK2800)

  甲虫装甲騎士(ATK1900)

魔法・罠:伏せ1枚

 

-夜光のターン-

「俺のターン。ドロー!

儀式の準備を発動!破滅の魔王ガーランドルフを手札に加えて、墓地の高等儀式術を手札に加える。

儀式召喚の前に一族の結束を発動しておく。高等儀式術を発動!

デッキのレベル4ウィップテイル・ガーゴイルとレベル3ガーゴイルを墓地に送り、破滅の魔王ガーランドルフを儀式召喚!」

 

破滅の魔王ガーランドルフ

儀式・効果モンスター

星7/闇属性/悪魔族/攻2500/守1400

「破滅の儀式」により降臨。

このカードが儀式召喚に成功した時、

このカードの攻撃力以下の守備力を持つ、

このカード以外のフィールド上のモンスターを全て破壊し、

破壊したモンスター1体につき、このカードの攻撃力は100ポイントアップする。

 

 夜光の場に闇の塊が現れ、そこから青い皮膚を持つ巨大な悪魔が夜光の場に現れる。

「デビルドーザーの守備力は2600。普通であればガーランドルフでは破壊されないが……」

「俺の墓地には悪魔族しかいない。よって悪魔族のガーランドルフは一族の結束の効果で攻撃力は800ポイントアップ(ATK2500→3300)。

その結果、守備力3300以下のモンスターはすべて破壊する」

「まだだ、私は神秘の中華鍋を発動!デビルドーザーを生贄に私のライフを2800ポイント回復する」

 デビルドーザーの姿は消えるが、残された2体のモンスターがガーランドルフが作り出した闇に飲み込まれていく。

 

試験官LP2000→4800

 

試験官はこのターンはガーランドルフのダイレクトアタックを受けてもライフが削りきれないことに一安心する。

「破滅の魔王ガーランドルフの攻撃力はさらに200ポイントアップ。ライフを800払って契約の履行を発動!」

 

契約の履行

装備魔法

800ライフポイントを払う。

自分の墓地から儀式モンスター1体を選択して

自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する。

このカードが破壊された時、装備モンスターをゲームから除外する。

 

夜光LP1400→600

 

「墓地のデビルズミラーを特殊召喚して、契約の履行を装備させる」

「ま、まさか…………そんな宣言通りにやられるわけが……!?」

 再び夜光の場に現れた悪魔の鏡を見て狼狽する試験官。夜光の逆転劇に他の受験生も

「あの状況から一気に逆転だと……!?」

「ありえん」

驚きを隠せなかった。

「破滅の魔王ガーランドルフ(ATK3300→3500)とデビルズミラー(ATK2100→2900)でダイレクトアタック!」

 ガーランドルフが近くにあったデビルズミラーで試験官の頭を殴りつけた。

 

試験官LP4800→0

 

 試験官はガーランドルフに殴りつけられた頭を押さえながら、夜光の勝利を告げる。

「試験デュエル終了。君の勝利だ」

「ありがとうございました」

 夜光は頭を下げ、その場を立ち去る。

 1番の三沢大地のデュエルが終わっても十代が現れないことから、筆記試験で落ちたと判断した。

「それでは実技……」

「ちょっと待った!」

 クロノスの実技試験終了の宣言を遮るかのように十代の声が聞こえる。

「俺が乗っていた電車が…………事故で遅れて……これ、遅延証明書」

 十代は最寄駅から必死になって走っていたため、息遣いが荒い。クロノスは十代から遅延証明書を受け取り、

「確認しておくノーデ、待っとくのーネ」と言って会場から出ていく。

 それから少し時間が経ち、クロノスは再び会場に戻ってくる。

「受験番号100番、遊城十代の実技試験を認めルーノ」

「よっしゃ-!」

 十代はギリギリで実技試験を受けれることに大はしゃぎしていた。

「ですが、遅刻のペナルティとして実技担当最高責任者クロノス・デ・メディチが相手するノーネ」

「いきなり実技担当の責任者とデュエルか。ワクワクしてきたぜ!」

 互いにデッキシャッフルを終え、デュエルディスクにデッキをセットする。

「「デュエル!」」

 

クロノスLP4000

十代LP4000




ハーメルンでは初投稿のゼクスユイです。

この小説で出てくるカードはGXの時代だけでなく最新のものもあります。
シンクロに関しては少なくとも主人公が使うことはありません。
これからもよろしくお願いします。

追記(12/14)
GXテーマにエクシーズモンスターが出るので、一部のキャラのみ出すかもしれません。

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