真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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本当にお久しぶりです!!リアルが過去最高に多忙で、全く創作意欲がわかなかったのですが、漸く落ち着き投稿出来ました!!

久しぶりすぎて、書き方忘れかけてましたが、どうにか完成しました
今回でVS義経は終了です

楽しんでもらえたら、嬉しいです!!


悠介と若獅子タッグマッチトーナメント 準決勝VS源氏紅蓮隊 その2

たった一人で同年代の中で、トップクラスの猛者に挑む、その後ろ姿はボロボロになりながらも、それ故の凛々しさを天衣は感じている。今すぐにでも、助力しに駆けだしたい気持ちを押し殺し、天衣は己に託された役目を果たさんと、状況を見つめる。

 

――――ここだッ!!

 

闘技場へ向かう道中に言われた状況(シュチュエーション)に限りなく近い。判断すれば、天衣は即座に地面を蹴る。目指すは、闘技場の場外にあれを設置した場所。事前に用意するのは、警戒されるとしてあえて設置という形をとった。それを届けることこそが、自分の最初の役目。

 

「くっ―――行けぇぇぇぇええええ」

 

その重さに顔をしかめながらも、内気功と腕力に加え加速した勢いをのせて、それを悠介のもへと投げ込む。

投げ込まれた斬馬刀・斬左(それ)は、悠介の盾となる形で届く。悠介の感謝の言葉に胸の内でエールを送りながら天衣は、次なる己の役目を果たさんと行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然現れた巨大な武器に虚を突かれた義経と京の二人だが、虚を突かれ動きが止まったのも一瞬の事。即座のアイコンタクトをかわし、役割やタイミングを共通。

即座に二人は、行動を移す。義経は駆け出し、京は弓矢を構える。

 

――――少しは警戒して、動きが止まればと思ったが…流石にそこまでは甘くねぇわな

 

自分の見通しの甘さに内心舌打ちをこぼしながら、悠介は斬左を強く握る。

 

『悠介の奴、迎え撃つつもりだな』

 

『ああ、構えが完全に待ち(・・)のそれだ。だが、義経ちゃんも京の奴も、たやすく思い通りにさせてくれる相手じゃないぞ』

 

上から状況を見ていた石田と百代の二人は、目的を予想し次なる展開に期待値を高める。先に動いたのは悠介。義経が斬左の間合いに踏み込むと同時に、横薙ぎに斬左をを振るう。その圧は並大抵のものではなく、義経の顔が僅かに強張るが、それで動きがぶれるほど彼女は弱くない。強張りを一瞬で押さえつけ、かつての伝説の一幕のように斬左へと飛び乗り斬撃をかわし、斬左を踏み台にすることで京と元へ、元の戦型へと戻そうとする。が…

 

「いや~その避け方は正解とは言えへんで~」

 

「ああ、まだ悠介の攻撃可能範囲時だ」

 

「ふむ。度肝を抜かれる姿が目に浮かぶ」

 

その光景を見ていた大友・宇喜多・島の三人は、此処で悠介が終わるわけがないと断言する。彼らは知っている、悠介が斬左を持った時の恐ろしさを。

躱わされることなど、最初から折り込み済み。義経が横薙ぎをかわすと同時、悠介は全身の骨を筋肉を連動させ、横薙ぎの勢いを殺すことなく、上空へと飛び上がった義経へと軌道を変化させる。

勢いを殺すことなく、むしろその勢いを加速させて義経に迫る。

 

「っ――――!??」

 

予想だにしていなかったタイミングと角度からの攻撃に義経は驚愕する。

 

――――はいった

 

その驚愕の顔は完全に意表を付けた証。斬左が壁となり、弓の狙撃もある程度防げている。このまま押しつぶす。その思いを込め悠介は斬左を振りぬく。

しかし…

 

「……マジかよ」

 

まさに伝説の再現というべき御業。義経は、迫る斬左の剣脊方へと足を置くと、持ち主である悠介に重さを感じさせず、一気に足場として空中で加速すると同時に、斬左の勢いを殺してみせる。

刹那に行われた神業に、会場全体が驚愕に飲み込まれる。しかし当の本人である義経だけは、顔をしかめる。

 

――――まずい、勢いを止められない。場外まで、出てしまう

 

斬左の勢いを殺すために行った、足場にしての加速。あの状況下では、ああするしかなかったとはいえ、その勢いは考えているよりも大きく、京の前に出るどころかその後ろへと着地してしまう。

そしてその隙を悠介は逃さない。

 

「(ちぃっと想定とちげぇが…チャンス!!)――――オラぁ!!」

 

「嘘ッ!??」

 

「椎名さんっ!!」

 

僅かに感嘆と嫉妬の感情に支配されるが、即座に振り払い悠介は、一歩踏み込み。その巨刀である斬左を京に向かって投擲する。

 

『ななんとっ!!相楽選手!その巨大な刀をぶん投げた!!』

 

『まあ普通、あれだけ巨大な武器を投げれるとは思わないな。悠介らしいと言えば、らしいが』

 

『何度見ても驚かされる行為だな、あれは。戦いや武器のセオリーに真正面から喧嘩を売っているに近いぞ』

 

悠介のその行動には審判の大佐を含め、驚愕を隠せない。猛スピードで迫るその圧に京は、考えるまでもなく回避を選択する。

 

「くぅ――――っ!!」

 

京がその場所を離れて少しの間の後に、斬左がその重量+勢いで闘技場のタイルを文字通り粉砕する。その直後、飛び交うタイルの破片が有無を言わさずに義経と京の行動を阻害する。

 

――――動きが、阻害される

 

行動が制限される中で義経は、どうにか京と合流するべきか思考する。対する悠介は、仕掛けた側として迷わずに行動に移す。

 

『おっとー相楽選手が、再び巨刀を手にせんと走る!!』

 

大佐の言葉に義経の思考はさらに焦りを含む。

 

――――合流かそれとも…

 

その迷いは、その両方を選択できる能力があるからこそ。そしてその迷いは、困難な状況下に直面することのなかった能力が高すぎるが故(・・・・・・・・・)経験の未熟さ(・・・・・・)。加えその迷いは、彼女の優しさと責任感故に。

その隙をつくように悠介は、斬左に手をかける。

 

「しまっ!!」

 

『相楽の持つ斬左は巨刀であるがゆえに、その間合いは槍に匹敵する。そして今相楽がいる位置…』

 

『ああ。悠介の奴は、義経ちゃんも京の奴も間合いに捕らえている。それに即座に動かないところを見ると…』

 

『相楽の奴はトコトン義経を迷わせるつもりだな』

 

百代と石田の二人は、状況を読み解き解説しながら、状況の変化が確実に悠介へと偏っていっている事を理解する。だからこそ、此処から起きるであろう事に誰よりも期待するする。

 

 

斬左の投擲を回避した京は、即座に体制を整えて、弓を構える。タイルの破片は邪魔でこそあれ、壁ではない。天下五弓とされる腕前をもってすれば射貫くことはたやすい。だが京は動けない。視界の端に映る、天衣の姿が京をその場で硬直させる。振り返って射貫くのは不可能。その隙に天衣は自分を倒すだろうし、無視して悠介を射つのも同じ結果にしかならない。スピードクイーンの名は伊達ではない。だからこそ京にできるのは、射の構えを解かないことと集中を切らさない事。

しかし、過去に武術四天王の一人と数えられる天衣の動きと悠介の二人に意識を向け続けるというのは、並大抵のことではない。事実、京を揺さぶるように天衣は、僅かに足の位置や重心をずらし、京の緊張感を跳ね上がらせる。

 

「オラぁ!!」

 

そんな状態の京に追い打ちを仕掛けるように悠介は斬左を振るう。ズガガガァ!とタイルを削りながら、巨大な壁のように京に迫る。

 

「ッ――――!!」

 

「京さんっ!!」

 

己のタッグの危機に義経は先ほどの迷いを振り払い、即座に加速して悠介に斬撃を叩きつける。

 

「ぐぅ――――舐めんなッ!!」

 

確かな手ごたえ。事実悠介は苦悶の声と表情を見せるが、攻撃は止まらない。このままではまずい。そう察した義経は、攻撃をやめ迫る斬左と京の間に割って入る。直後、ズガンッ!という音共に義経の腕にとてつもない衝撃が走る。

 

『相楽選手の一撃を受け、義経選手と椎名選手が吹き飛んだ――――っ!!凄まじい威力だ――――!!!』

 

『攻撃を止めるために相楽に攻撃をしたことが裏目に出たな』

 

『ああ。もしも義経ちゃんが攻撃せずに京を助けていたのなら、二人とも回避できたんだろうが…攻撃に僅かに時間を使った分、回避する選択肢を取れなかったな』

 

吹き飛ばされた二人は衝撃を殺しつつ、体勢を整える。そんな中で二人の聴覚が猛スピードで迫る足音を感知する。その足音の正体が誰かなどと考えるまでもなく、二人は音のする方へと意識を向ける。そこには体勢の崩れた自分たちに追撃を仕掛けんと迫る天衣の姿。天衣を迎撃せんと無理やりに構えを取る二人。しかし残り二歩といったところで、天衣は後方に思いっきりバックステップする。

天衣の突拍子のない行動に二人は唖然とするが直後、再び空を裂くような轟音が聞こえる。慌ててその方向を向けば、再び斬左を投擲したのであろう。巨大な鉄の塊と見間違える斬左が迫る。

 

「「ッ――――!!??」」

 

その光景を見た義経と京は、即座にその場から回避する。それと連動するように天衣は自分の位置を二人を使い三角形を形作る間合いに入る。それを見た二人が、どっちに来る。と身構える。そんな中で悠介は、斬左を手に取ると重さを感じさせない動作で斬左を持ちながら飛び上がり、義経に向かって斬左を振り下ろす。ボウッ!と空気が沸騰したかのような轟音と共に振り下ろされる。その質量ゆえに防御は不可。カウンターを放とうにも斬左を刃を縦ではなく横とし、剣脊を叩きつけるという、斬るというよりも叩きつけるように放っているため、斬左自体が壁となり放てない。ドガァンッ!と轟音と共に、まるで爆心地のような跡が闘技場に生まれる。その衝撃と破片が後方に回避した義経に襲い来る。

 

『悠介の奴、巧いな』

 

『ああ、自分と義経の差を武器の性能とルールによって限りなくゼロにしている』

 

『そしてその悠介の思いに完全に答えている橘さんも流石だな』

 

『常に相楽の選択肢を減らすことなく、義経や椎名の行動の選択肢に影として存在できる位置取りをしている。客観的に場を見る力と冷静な判断力という高度な能力が必要だ。流石は、元武術四天王だな』

 

石田と百代は陰の功労者ともいえる天衣もしっかりと評価する。これにより観客たちの視線は、悠介と天衣に向けられる。

タイルを破壊した悠介は、地面に着地すると同時に腰を骨を全身をひねり、離れた義経ではなく、天衣の行動によって縫い付けられたように硬直している京に向かって斬左を横に薙ぐ。迫る攻撃を前に京は、天衣に注意しながら回避をこなす。しかし悠介の攻撃は止まらない。その横薙ぎの勢いに体をもっていかれることなく、見事に体をグラつかせる事なく斬左の勢いを殺してみせると、一歩大きく踏み込み京を間合いの内へと入れる。

 

「シャァッ!!」

 

気迫一閃の一振り。落下速度も相まって、その速度は優に京の回避速度を凌駕している。それを構えから同じ剣を持つ者として理解した義経は、内気功を最大限に使い数十メートルはあろう距離を一気に詰める。しかしほぼ一般人には視認出来ない速度の中で、義経の視界に天衣の姿が映りこむ。天衣は僅かに瞬く間に攻撃の動作だけ(・・)を見せる。しかしそれに優秀すぎるがゆえに義経は反応してしまう。僅かに速度を殺し、迎撃の構えを見せるが…

 

――――罠ッ!!

 

天衣は攻撃動作を僅かに見せただけで、それ以上何もしない。それが何を意味するか分からないわけがない。僅かに殺した時間、それがタッグ生死を分けるかもしれない。だからこそ、義経は先ほど以上に加速する。

 

――――間に合った!!でも…

 

回避は不可能。だからこそ取れる選択肢は一つ。直後、甲高い金属音が鳴り響く。

 

「うぅ!!」

 

「流石‥」

 

その刃をもって悠介の一振りを受け止める義経。しかしその威力は果てしなく、容易に膝をつき押し込まれる。

 

「ッ!!」

 

押し込まれると上からの力に必死に対抗する義経。ふと上からの圧が、離れる。

 

――――斬り戻しが早い!!

 

義経が意識するころには、すでに再び振り下ろさんとする悠介の姿。

 

――――回避…

 

「オラぁ!!」

 

義経が京を抱え、場を離れると同時に悠介の一撃が闘技場に炸裂する。斬左を引き戻した悠介は、僅かに舌打ちをこぼす。義経に抱えれ、その場を離脱する一瞬の間に京より放たれた一矢が肩に直撃したのだ。

 

「お荷物じゃねえってか…上等だ」

 

現状策はこれ以上ない程に成功している。しかしそれも時間の問題だ。もしも義経が覚悟を決めれば、もしも京が決断すれば。瞬く間に自分が不利へと落ちるだろう。

だからこそ、これ以上時間は掛けれない。

 

「次で決めるぜ」

 

決意と共に悠介は、最後の勝負を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙が壁となる中で義経は荒い息を即座に整える。そして自分がなぜ追い込まれているかを考え、即座に理解する。そしてどう対処すればいいかも。それゆえに迷う。その迷いは性格ゆえの優しさと武術家としての本能が板挟みとなるがゆえに。そして勝ったのは武術家の本能。負けたくない。戦いたいという思いは、たやすく優しさを飲み込む。

それでもこれから発する言葉を思い義経が、申し訳なさそうな表情を作る。せっかく、自分と出場してくれたのに。

 

「椎名さん…「行って、義経」え?」

 

しかし義経が言葉を発するよりも早く京が言葉を告げる。

 

「現状、私が義経の足を引っ張ってるから。だから義経は、私に気にしないで攻めて。大丈夫私、モモ先輩から体術を学んでるから、易々とはやられないよ」

 

そう告げる京の顔にはありありと悔しさが映っている。参加した動機は不純かもしれない。それでも彼女もまた武術家であり武人なのだ。

そんな京の思いを感じ取った義経は、一度目を閉じる。そして再び開かれた瞳には覚悟の色が灯っている。

 

「ああ、義経に任せてほしい」

 

覚悟は決まった。もう迷わない。

だからこそ――――

 

「悠介君は、必ず義経が倒す」

 

――――次で決着がつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空気が変わる。その変化が観客達にも伝わるほど露骨な変化。だからこそ、観客たちは声を潜め、闘技場に注目する。

 

『これは次で決まるな』

 

『ああ。悠介の奴も義経ちゃんも後の事は考えていない。今倒すことだけに集中しているな』

 

石田と百代の解説が観客たちの緊張をより引き立てていく。どれだけの時間、沈黙が場を支配しただろう。実際には10秒ほどの沈黙。しかし、観客たちにとっては10分にすら感じられた。観客たちがそんな沈黙に耐えられなくなったその瞬間、土煙を裂く様に悠介が、空を裂く様に義経が駆けだす。速度では完全に義経が上。されど、覚悟を決める間に悠介が駆けだしたことで、速度に差はない。

悠介は駆けだしているにも関わらず、斬左を平行に構えている。それだけで彼の修練の練度が見て取れる。ゆえに義経の胸の内から沸き上がる、勝ちたいという感情。

 

――――間合いでは義経が不利。もっと早く…速く

 

その認識と共に義経の脳裏に映りこんだのは、二回戦で見せた悠介の動き。それを見た瞬間、考えるよりも早く体は行動する。深く倒れこみ、重力落下の速度さえも加速する力へと変える。

 

「ッ――――!!??(俺の動き…)」

 

『これは…』

 

『盗んだな』

 

驚愕に感心。その声音すら置き去りにして、義経は深く集中する。虚を突かれた悠介が慌てるように斬左を振り下ろさんとするが、遅い。

ドンッ!!斬左の一撃がタイルを砕くが、義経はすでに間合いの内に入っている。

 

――――もらった

 

そう確信し、その刃を悠介へと放たんとした瞬間…

 

「えっ?」

 

義経の視界に信じられない物が飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景は義経よりも外から見ていた者たちの方が、即座に理解できた。特に経験している彼ら彼女らからすれば、今の義経の動きは文字通り術中に嵌っている(・・・・・・・・)としか言えない。

 

「あちゃ~これは悠介の勝ちやな」

 

「ああ、義経は肝心な事(・・・・)が頭から抜けている。あれでは躱せん」

 

「うん。あれには我ら十勇士も、悉くやられたものよ」

 

「究極の初見殺しってもんやもんな~」

 

経験しているからこその確信。ゆえにもっと強くなりたい。その感情が今まで以上に、彼ら彼女らの中に大きく大きく沸き上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義経が視認したのは、固く握られた拳。その拳がカウンターの要領で己に迫っている。回避を考えようにも体は動かせない。

 

「シィッ!!」

 

義経が認識するよりも早く、その拳が直撃し、体が吹き飛ぶ。己の加速していた勢いも合わさり、闘技場の外まで吹き飛ばされるだろうと、痛みと共に義経の冷静な部分がそう判断する。だからこそ、その距離を使って、もう一度仕掛けると決めるが‥

 

「かはぁ―――!??」

 

背中から襲い来る衝撃。何がと視線をわずかに向ければ、そこには壁のように斬左が存在している。

 

「逃がさねぇよ。その為の、斬左だ」

 

驚愕する義経だが、悠介が追い打ちをかけるように告げられた言葉。それによって義経の脳裏にある仮説が浮かび上がる。

 

――――罠だった…

 

虚を突かれたではなく、虚を突かせた。巨刀の存在と自身の不利によって、徐々に警戒が薄れてきた相楽悠介の戦型。そしてリングネットのように背後に壁として行動を阻害する存在としてある斬左。今の状況が、先ほどの悠介の言葉が、それを偶然と呼ばせない。

 

「終わりだッ!!義経ッ!!」

 

――――だめだ、防御も間に合わない

 

握られたその拳が、義経に迫るその瞬間、ダンッ!と一本の矢が悠介の額に直撃する。

 

「ッ!!?椎名かっ」

 

不意の衝撃に体が仰け反り僅かに浮き、動きが僅かに止まる。

 

「行って、義経」

 

その矢に込められた言葉。自身のタッグが生んだ、唯一無二の反撃の時間。ここで動かなければ、自分は英雄の生まれ変わりと名乗れない。

刀を握るよりも早く、拳を握り立ち上がり、体勢を戻した悠介目がけて駆けだす。

 

「はあぁぁぁああああああああああああああっ!!!」

 

「オラァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

距離にして二メートル弱。両者の拳が、互いの身体を貫く。一瞬の沈黙の後、ゆっくりと義経が仰向けに倒れこむ。

 

『そこまでっ!!勝者赤報隊っ!!』

 

義経が完全に起き上がれない事を確認した大佐が勝者を告げる。

 

『両者見事。それしか浮かばんな』

 

『ああ。誰もが様々な技を使い、己のチームに勝利を手繰りよそうとした』

 

『特に最後の椎名の援護は見事だったな。橘のプレッシャーの中で、あれだけの命中率を誇るとはな』

 

『弓兵としての意地があったんだろうな』

 

解説の二人が試合を振り返り、両者の激闘を称える。その解説に呼応するように観客たちの称賛の拍手が跳ね上がった。

そんな拍手を受けるなか、悠介は天衣と共に静かに闘技場から後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激闘の第一試合の後、続く第二試合<チャレンジャーズ>VS<知性チーム>の試合は、終始川神一子が松永燕に果敢に挑む形となる。しかし最終的に自力で勝る燕が勝利。

これによって決勝戦の組み合わせは

 

<赤報隊>VS<知性チーム>

 

の組み合わせとなった。

 

誰が何と言おうと、頂点を決める戦いはあと一つ。




さて、次はいよいよVS燕か
何気に対戦させたかったカードなので、頑張りたいな~

あと申し訳ないのですが、まだリアルが慌しいので、次の更新も遅くなるかもしれません
出来るだけ早く更新できるようにしますが、ご了承ください

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