真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~ 作:スペル
頂まであと二つ
最後のクローン組との対決となります
楽しんでもらえたら、うれしいです
彼の戦いを初めて見たときの衝撃は、今でも忘れない。ただ前へ前へと進み、聳え立つ壁を前にしても決して屈せずに、進む姿に感動すら覚えた。彼の様な存在がいるのだから、自分ももっと頑張って自分の役割を果たさねばと決意を新たにした。
そして彼はこの大会でも、自分を何度も驚かせてくれた。自分が最も実力を知る二人を破り、自分の前へと立ちはだかる。
自分が尊敬する相手が立ちはだかる。その事実に今まで感じたことのない、緊迫感と高揚感の二つが胸の内から湧き上がる。
初めて自分が全力で競い合ってみたいとすら思える相手。そんな彼とこんな大舞台で戦えると事に己の役目を果たせねばという建前を超えたものが沸き上がる。
「義経。そろそろ行かないと」
「…ああ、行こう京さん」
ペアの言葉に義経は闘技場へと歩を進める。昼の光が照らされる中、彼はその場所に立って自分を真っ直ぐと睨んでいる。
――――トクン
抑えきれない闘志が沸き上がるの感じた。
『圧倒的な強さで勝ち進んできた源氏紅蓮隊。対するは、
大佐の紹介に開始の時が近づいたことを悟り、観客たちの意識が闘技場に立つ四人へと向けられる。
「悠介君」
「あん?」
そろそろ始まるだろうとい瞬間、義経が悠介の名を呼ぶ。呼ばれた悠介は、なんだという表情を向ける。
「いつか君に言った言葉を覚えているだろうか?」
「ああ。それがどうかしたか?」
それは黛との決闘を見た義経が悠介に告げたのだ「義経は感動した!!悠介君にも敗けない様に、義経も頑張らねば」と。それはある意味で二人の出会いともいえた。
「それがどうかしたか?」
突然の質問に悠介は疑問を口にする。少なくともいまする話ではないと思っているからこその疑問。その問いに義経は真っ直ぐと悠介を見据えながら口を開く。
「義経は皆の成長を促進させ壁となり共に切磋琢磨することが義経の使命だ。だからこそ、悠介君のような人がいることが嬉しかったし、感動した!!」
だからとひとたび言葉を切った義経は、自身の愛刀を抜いて構えながら告げる。
「義経は君と全力でぶつかりたいと思った!!初めてなんだ、戦いたい競い合いたいと純粋に思えたのは!!」
興奮したような困惑したような声音の義経の言葉に悠介は一瞬ポカンとした表情を見せるが、その言葉を理解すると、獰猛な笑みを見せる。
「だったら単純だ。ぶつかり合おうじゃねぇか!!」
パン!と手のひらに拳を打ち付け、その思いに答える。悠介の言葉に義経も嬉しそうに「うん!!」とその言葉に頷くように答える。
『今回は悠介が不利だな』
『ああ、京の援護射撃の存在が大きいな。元々義経ちゃんの高い実力があるからな。それに加えて、弓の援護が加わると、普通に考えれば勝ち目はないな』
『実際、義経たちと戦ったペアはそれを攻略できずに敗れているからな。だが…』
『そういった前評判を崩して勝ってきたのが、悠介だ。その期待値を込めれば、勝負はやや悠介が不利という感じだな』
百代と石田の二人が勝負の予想を口にする。告げられるのは、自分の不利。その事実に悔しさがないわけではない。それでも受け入れ、超える。
『あふれる闘志は止めることなかれ。準決勝第一試合<赤報隊>VS<源氏紅蓮隊>試合開始!!』
大佐の開幕を告げる宣言。と同時、悠介と義経が地面を蹴り、互いに肉薄する。が…
「チィッ!!」
「そううまくはさせない」
間髪入れずに降り注ぐ矢の雨が悠介の動きを阻害する。その僅かな隙を義経は見逃さない。足が止まった悠介の元へ肉薄し、横なぎに一振りに刃を振るう。
「っ!!」
回避は不可能。そう察した悠介は受け止める体勢を取る。その最中にも矢の雨は止まらない。
「うぐっ」
鋭く重い一振りの衝撃に悠介から苦悶の声がこぼれる。それでも悠介は屈しない。効いていないと感じた義経が加速を込めた一振りをもう一度放つため、一度距離を取ろうとした瞬間、悠介の足が義経の足を踏みつける。
「しまっ!!」
「逃がさねぇよ」
行動を阻害され一瞬の行動のラグ。その瞬間、悠介は大きく息を吐き腰を落とし、右の拳を大きく引く。
「オラぁ!!」
そして引かれた拳を一気に義経に向かって放つ。その拳が義経に迫る刹那
「悠介!!」
天衣の叫びと共に悠介の眼球めがけ、矢が到来する。
「まずっ!!」
天衣の叫びに反応するように体を大きく逸らし矢を回避するが、その回避行動のせいで体が大きく動き、義経の拘束が外れ攻撃も失敗する。
そして上半身を大きく逸らす形で回避したためにがら空きとなった悠介の脇腹に…
「ハァア!!」
「ぐぅ!!」
鋭い一振りが斬りこまれる。その体に受ける衝撃は、悠介が過去に受けた黛の剣に匹敵、もしくは凌駕するほど。しかしそれだけでは悠介は止まらない。攻撃を受けると同時に拳を握り、横へ振り切っているために隙だらけの顔面へと拳を放とうとする。が…義経は躱す動作を見せない。その意味を悠介が理解すると同時、ズシャ!と肘の関節部に走る痛み。
「ッ!!」
何が起きたかなど考えるまでもない。椎名の狙撃による妨害。大したダメージにはならないが、確かに動きが阻害され、動作が遅れる。そしてこの対決におけるその遅れは致命的。
「はあっ!!」
下から上への鋭い斬り上げ。悠介は攻撃を妨害されたことなど、関係なし無理やり背中を逸らして、剣の軌道から頭を逸らす。チリッとデコに僅かな熱さを感じる。
『やはり強い!相楽選手、弓と剣のコンボに、今迄の攻めが封じられている』
大佐が告げる通り、義経の攻撃をかわした悠介は即座にその場から離れる。悠介が離れると同時に数本の矢が地面を貫いている。更に回避した悠介に、義経が肉薄する。
現状、大佐の言う通り悠介は不利としか言えない状況。
しかし、義経は悠介の瞳が決して打つ手がないと諦めたものではない事を察していた。
――――チィ。見ると体感するとじゃ、此処まで違うか
実際何度か映像で照らし合わせたが、やはり体感するのは一味違う。特に義経や京のような一流クラスの武人となれば、相手によって攻める緩急や鋭さなどの違う。その差を現状埋めているのだが、なかなか上手く適応できない。
――――義経に集中するならまだしも、椎名の援護がマジでうぜぇな
肉薄する義経の攻撃に対応しているさなかも、絶え間なく襲い来る弓矢が、悠介の行動の選択肢を塞がれたり、妨害され思い通りの行動ができない。
――――まずは一瞬でもいいから、椎名の動きを止めねぇと
策は思いついている。あとは実行するタイミングだけ。剣と矢が絶え間なく襲い掛かるが、どうにか深いダメージを受けないで入れている。が…
――――キレが上がってやがる
先ほどまでは軽傷で済ませれていたはずの太刀筋だったが、今は受ける傷の深みが深くなっている。これ以上は受け手に回るのはやばいと本能的に理解する。
――――
だからこそ、悠介は選択する。あえて悠介は足を止める。その瞬間、悠介の身体に無数の矢が突き刺さる。それに加え、義経の斬撃が襲い来る。それは今までの中ではまぎれもなく直撃ともいえる攻撃。
『これは直撃――――!!!相楽選手、これはかなりの痛手か??』
『いや、これは…』
『相変わらず、無理やりに無茶を通す奴だな』
大佐の言葉が響くと同時に、上から全体を見ていた百代と石田の二人は悠介の行動を誰よりも早く見抜き、驚きの声を上げる。
その声が発せられるとほぼ同時、義経の攻撃を受けた悠介の身体が右から大きく沈む。その瞬間、悠介の右腕が闘技場のタイルに手をかける。誰もが膝をつかない為だと考える。その瞬間…
「オラぁッ!!!」
「えっ!!??」
悠介は闘技場のタイルを落下する勢いと力を利用して、剥がして京の方へと投げ飛ばす。誰もが想定していなかった攻撃に京は意表を突かれ、僅かに体が硬直してしまう。
「京さん!!!」
義経の叫びと共に京の硬直が解け、迫るタイルを回避する。そして慌てて視線を向けた先には、タイルを投げ飛ばし終えると同時に右手と軸足に力を籠め、一気に低空加速。義経の足元を抜けて、京へと迫る。
迫る悠介と防がんと駆けだそうしている義経。逃走か援護か二つの選択肢が京の頭をよぎる。
――――ううん。速度なら、義経のほうが圧倒的に有利。だったら…
迷いを捨て京は悠介を狙うべく矢を構える。徐々に低空から大勢が上へと上がっていく悠介の身体に狙いをつける。
そして上半身がほぼ起き上がった瞬間、番えた矢を放たんとするが…
「えっ―――!!??」
「シィ!!」
矢が放たれると同時、悠介が身をひるがえし自身へと迫る義経の方を振り向き、すでに握られていた拳を放つ。その時に京の矢が体にあたるが、全く意に介さない。
「ッ!!??」
突然の悠介の行動。急いで追わんと加速していた義経は止まる事も向きを修正する事も出来ない抜群のタイミング。迫る拳を前に義経は、刀を盾にすることでその直撃を避けるが、自身の加速も加わり受ける衝撃の重さは凄まじく、踏ん張る事が出来ずに吹き飛ばされる。
「義経!!」
『強烈なカウンター!!義経選手、堪らずに吹き飛んだー!!』
追撃をさせないと京の矢が悠介に襲い来る。だが…
「義経の攻撃がねぇなら、意味ねぇぞ!!」
放たれる矢は悉く、悠介の拳が撃ち落とす。しかし、それこそが京の狙い。迎撃のために脚が止まる。そしてその隙に…
「はあぁ!!」
義経が迫る。その刃が届かんとした瞬間、
「ナイスタイミングだ、天衣!!」
義経の目の前に壁が現れた。既に振り切りに近い状態だった刃を止めることは出来ずに、壁と斬撃がぶつかり合い、甲高い音を上げる。
その存在に最初に気が付いたのは、大友と宇喜多の二人。その顔には苦い思い出を思い出したかのようなしかめ面を見せている。しかし同時に、その力を最も知る人物でもある。だからこそ、
「相性的には不利なはずやけど、悠介の奴~。どないするつもりや?」
「だが、何の策もなく相楽の奴が使う訳もない」
「ああそうやな。こっからが本番ちゅー訳や」
次の展開を期待するように闘技場へと意識を向けた。
突如現れた鋼の壁。その全貌を知ろうと一瞬、視線を上に向けようとした瞬間、壁が自分の方へと叩きつけるように迫る。
義経はその壁を踏み台にすることで回避。しかし、それにより再び距離が出来てしまう。だがそれにより義経は、その壁の正体を知る。
「剣?」
それは鍔もなければ鞘もない。自身の知る剣とは大きく違う。しかしギリギリでその形状が剣だと断定できる。
義経がそんな衝撃を受ける中、悠介はその異形なる
「さて、漸く場が整った。こっからが本番だ」
前方と後方にいる敵に不敵に告げた。
というわけで、前哨戦が終了
次からが本格的な勝負となります
なんか最近、文章作るのが下手になっているような・・・・・思い違いだと思いたい