真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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お待たせしました!!
今回は初の試みをやってみたので、少し淡白かもしれません
なんていうか、いろいろ浅いかな?

楽しんでもらえたら、嬉しいです!!


悠介と若獅子タッグマッチトーナメント 一回戦VSデス・ミッショネルズ その2

無言でその技を見つめる。動きは完全に拘束され、身動きは取れない。その速度とパワーを乗せ地面に叩き付けられれば、いかなる猛者といえども大ダメージは必至だろう。それでも…

 

――――ここで終わらないだろう、悠介

 

刹那に交わった視線だけでそう告げる。瞬間に何かに気が付いたような顔を見せる悠介の表情に満足する。

 

『相変わらずタフな奴だ。あれすら、平然と受けきるとは…』

 

難なく立ち上がった悠介の姿に石田がただただ驚嘆の声をこぼす。誰もが悠介に視線を驚きを集めている。今まで無名で脚光を浴びることのなかった悠介に集まるもの。そのことがどうしようもないほどに嬉しかった。

だからこそ…

 

『あれが相楽悠介だ』

 

その存在を後押しするように告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かに張り詰める空気。いつ(・・)からかはわからない。それでも昔はただ体を硬直させるだけだった空気が、緊張を硬直を生むのではなく、闘志を呼ぶきっかけとなった。体にダメージがないわけではないが、それでも膝を折ることなしない。わずかに視界がかすむが関係ない。

 

「来いよ」

 

そのダメージを欠片も感じさせない言葉と動作で悠介は弁慶たちに告げる。そのことが余計に弁慶たちには不気味だ。

 

――――ダメージがないわけは絶対にない…なのになんでだろうね、さっき以上に寒気がするのは

 

拳を握り、真っ直ぐと見つめる瞳。有利性は確実に自分たちのほうにある。その筈なのに、本能が告げる。危険だと。

 

――――手加減は絶対にできない。下手に…訓練のない動きで攻撃しても、練度が足りない。逆にその隙を衝かれてどっちかがやられる可能性が高い。なら、下手に策を弄するよりも…

 

弁慶の思考が加速する。そこに逃げの思考はない。

 

――――全くめんどくさい

 

内心ではそう思いながらも、矛盾するように湧き上がる高揚感を弁慶は自覚する。だからこそ…

 

「辰子!!行くよ!!」

 

「うん!!!」

 

「来い!!」

 

決意ある言葉に辰子もその思いに応えるように力強く返す。その返事と言葉に籠った意思を感じ取り悠介は、真正面から応じるように吼える。

先ほどの沈黙とは逆の熱意が会場を覆う。三人が一気に地を蹴る。

 

『さっきまでの展開から一転。弁慶選手と板垣選手が相楽選手を猛襲!!悠介選手防戦一方か――――!!』

 

悠介を中心に弁慶と辰子が囲うような動きで攻撃を仕掛けてくる。大佐の言う通りそれは猛襲というべきなのだが…

 

――――いやこれは、どれも芯ある攻撃ではない。ただ隙を生むための攻撃だ

 

天衣を筆頭に猛者たちはその真意を即座に察する。そしてそれは悠介も例外ではない。そしてその思惑を察したからこそ…

 

『おっと、相楽選手。猛攻に耐えられず体勢を大きく崩した!!』

 

もちろん、弁慶たちは今の攻撃で崩せるなど欠片も思っていない。とすれば、答えは一つ。

 

――――誘ってるわけね。いいよ、乗ってあげる「辰子!!」

 

「了解!!」

 

『体勢を大きく崩した相楽選手を中心に弁慶選手と板垣選手が対角に距離をとる。これは出るか――――!!?二度目のダブルラリアット!!』

 

誰もが絶体絶命と思う中でも悠介は笑みをやめない。むしろその笑みは深くなる。その笑みが見えたのは位置の関係上弁慶のみ。ゾクッと一瞬体を走る悪寒。本能が動きを停止させようとするが、それでは辰子が的になる。仕掛ける以外に方法はない。

 

「ハァッ!!!」

 

「おりゃら~~~~っ!!!」

 

再び二つの牙が迫りく。

 

 

 

誰よりもその生きざまを近くで見続けてきたと断言できる自信が自分にはある。モニターに悠介に迫る弁慶と辰子の姿。

 

――――安易な回避はツープラトンの餌食。事前に見れてよかったよ

 

冷静に悠介の負けを決めつけようとする理性(じぶん)と絶対に負けないと断言する本能(じぶん)。それでも自分が本当に望むのは…

 

――――だって君はいつだって…

 

モニター越しにすらわかるほどの威力でダブルラリアットが悠介に直撃した。

 

「決まった!!」

 

そばで見ていた大和がその光景に呟く。周りもまた似た雰囲気だ。それでも燕は、直撃の光景ではなく…

 

「あれは…」

 

その悠介の足元(・・)に視線が集中した。

 

 

怠惰でめんどくさがりやな自分たちが唯一大会に向けて修行した技。それはそのまま絶対の自信の証。それゆえの驚愕。確かに直撃したはず、タイミングも完璧だった。それなのに交差した瞬間…

 

――――手ごたえが軽い

 

今までのような手ごたえではない。タイミングを間違ったわけではない。ぶつかる中での思考。その中で弁慶の視線がふと下に向く。そこには悠介の足を中心にひび割れた闘技場の床が映りこむ。

 

――――まさか、衝撃で相殺を…

 

弁慶の考えは的を射ている。悠介がしたのは単純なこと。ただダブルラリアットが迫る直前につま先立ちになり、攻撃が当たる瞬間に思いっきり地面に足をつける。それによって生まれた衝撃がダブルラリアットの衝撃を緩和したのだ。

 

――――むちゃくちゃだよ。一歩間違えれば、大ダメージは確定っていうのに迷わずに選択肢するとわね

 

弁慶のほほに冷や汗が流れる。弁慶の言う通り、もしもタイミングが狂えば、その生み出した衝撃すらも己に牙をむきかねない。一か八かの賭けに近い。

 

――――普通に考えれば分の悪い賭けだろう。だが、悠介に限ればそうじゃない。会得せんとするあの技の特性上、拍子(タイミング)をとることに関しては異様にうまい

 

――――悠介君が会得しようとしてる技の拍子(タイミング)の難易度に比べれば、弁慶ちゃんと辰子ちゃんの攻撃なんて簡単に取れるだろうね。分の悪い賭けどころか、勝率はかなり高いよん

 

驚愕する弁慶たちとは対極に悠介を知る二人は当然の事実だと笑みを浮かべる。

驚愕ゆえの硬直。それゆえに悠介に先手を許す。

 

「しまっ―――!!?」

 

「わぁ――――っ??」

 

硬直している間に二人の腕を悠介の手がつかみ、徐々にしゃがみ込みながら回転してゆく。あがこうにもすでに生まれた回転の力に巻き込まれ、体勢が崩れうまく力を発揮できない。

 

――――力づくで突破するわけでも、技でいなすわけでもない。その二つをもって、私たちの技を攻略して…

 

前提としてダメージ覚悟という時点で、力づくだ。だが、今の巻き込み体勢を崩すのは明らかに技である。

回転の勢いで徐々に地面へと二人が叩き付けられる。

 

「「う――――っ!!!」」

 

二人を地面に叩き付けた瞬間、悠介はわずかに宙へ跳ぶ。回避しようにも重なり受け身も取らずに引きずり回される形で叩き付けられ、重なっているがゆえに容易に動けない。

 

その光景と先ほどの攻防を見て天衣はふと思い出す。それはまだ出会ってばかりのころ、ともに修行する中で黙々と技の修業をする悠介の姿を見て、疑問を口に出した、その時の記憶。

 

『なあ、悠介はどうしてそこまで技を磨くんだ?君の武器は力勝負だろ?』

 

まだその時は彼を知らなかった。だからこその言葉。その問いに悠介は、拳を開いたり閉じたりしながら一言だけ告げた。

 

『俺の一つじゃ届かねぇ…だから二つ以上いるんだよ』

 

その意味を当初は理解できなかった。だが、徐々に彼を知る中で理解した。そして今の目前の光景は…

 

――――確かに君の磨き上げた二つは十分に届いているよ

 

その言葉を体現しているのだから。

動けない。だからこそ、迫る悠介の姿が視界に映る。映るのはまさに殺す気と言える表情で拳を握る悠介の姿。その鋭い瞳を見て弁慶は…

 

「敵わないねぇ」

 

「ラアァッ!!」

 

誰にも聞こえない声でそう呟く。たぶん自分はその瞳と時たまに見せる年相応な瞳に…今ならわかる、胸の内にあるこの感情につけるべき名前を――――

弁慶の言葉をかき消すような悠介の咆哮とともに、上から伸ばされたその拳が二人を貫く。直撃。誰が見てもそう思える結果。しかし弁慶たちはまだ健在と判断できる。が、それはここで終わればの話。

 

――――まだだ

 

天衣は悠介の攻撃がまだ止まっていないことに気が付く。腕は伸びきっているが、体はまだ宙にある。地面に近づくと同時に悠介は、打ち込んだ腕を徐々に曲げてゆく。

 

「シィィ!!」

 

足につく瞬間、肩の筋肉と骨を使い拳に衝撃を伝え弁慶たちに叩き込む。攻撃を叩き込んだ悠介は、打ち込んだ腕を引かずに力を籠め二人を杭を打ち込むように動きを止める。

 

「詰みだ」

 

静かに悠介が弁慶と辰子に告げる。しばしの沈黙。口を開いたのは弁慶。

 

「……参った、私たちの負け」

 

小さながらもその声はあたりに響く。一瞬その言葉に驚いた顔を見せた大佐だが、即座に己の役目を果たさんと動く。

 

『そこまで――――っ!!!勝者赤報隊―――――!!!』

 

大佐の言葉を皮切りに会場の観客から歓声が沸き上がる。

 

『まさに大物食い(ジャイアントキリング)だな』

 

目の前の結果に石田は感嘆といった声で告げる。

 

『ああ、相楽悠介。その強さの本質を見せつける一戦となったな』

 

石田の言葉に応えるように告げる百代の言葉はどこか歓喜を含んでいる。それはそうだろう。自分が認めた数少ない武人。本来ならばもっと脚光を浴びるべき存在は、その研鑽ゆえに地の底にいた悠介。地元では多少有名だった程度の彼が、今漸く日の当たる場所に来たのだ。その存在を告げる十分な敵を倒し、名乗りを上げた。これが嬉しいくないわけではない。

満面の笑みを浮かべながら百代はその時を期待する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湧き上がる歓声を聴きながら悠介は深く息を吐く。周りの声はほとんど頭に入ってはいない。だが…

 

「ねぇ悠介。起こしてくんない?」

 

その声頭に入ってくる。声の主は決まっている。

 

「自分で立ち上がれるだろ。お前ら大したダメージ入ってねぇだろうが」

 

「私たちに勝っといてそれはどうなの」

 

呆れるような悠介の言葉に弁慶が文句をつけるが…

 

「抜かせ。俺が勝てたのはタッグマッチつうルールに救われた(・・・・・・・・)からだ。単調な攻めだけだった…普通に一対一(サシ)ならそうはならねぇだろ、お前らなら」

 

「いや~ものぐさなあたし達が唯一練習した技だからね。ねぇ、辰子」

 

「う~ん」

 

弁慶はなんてことないと受け流す。そのことに若干イラッと来るが、反論するのもアホらしくなり悠介は弁慶に手を差し出す。

 

「ほらよ」

 

「うん。ありがと」

 

「あ~~!!弁慶だけずるい!!悠介君、私も~~」

 

「………わあったよ。ほら」

 

二人の手をつかみ悠介は弁慶と辰子の二人を立ち上がらせる。その瞬間、弁慶は悠介にしか聞こえない声で…

 

「優勝しなよ、悠介」

 

「はぁ?」

 

その意味を一瞬理解できなかった悠介は弁慶のほうを向く。向けられた弁慶はどこ吹く風という表情で告げる。

 

「いや悠介が優勝してくれたら、初戦負けの私も拍があるからマープルにグダグダと説教を受けなくてもいいかもしれないでしょ」

 

「お前のためかよ」

 

「私も~~!!悠介君、がんばってね~~」

 

理由を聞いた悠介は呆れが限界を超えそうになる。しかし応援も応援なので、二人に拳を突き出す形で

 

「おう!!任せとけ」

 

その思いに応える。その言葉と表情を見て弁慶と辰子の顔が緩む。

 

――――まあ、今はこれが手一杯かな?邪魔だけはしたくないし…

 

「それじゃあ私たちは、離れようか」

 

「うん」

 

「そうだな。行こうぜ、天衣」

 

「ああそうだな」

 

そういって四人は激闘の時とは対極の雰囲気で闘技場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一戦からの展開に会場の熱気は跳ね上がり、他の試合も順調に経過してゆく。

 

<ザ・プレミアムズ>VS<桜ブロッサム>―――百代注目の二試合目は、剣聖の娘黛がその真価を発揮するも、敗北。

 

<源氏紅蓮隊>VS<アーミー&ドック>――――終始、紅蓮隊が圧倒し完勝。

 

<ファイヤーストーム>VS<大江戸シスターズ>―――風間の予想の斜め行く奇策で勝利。

 

<ミステリータッグ>VS<フラッシュエンペラーズ>――――ついにミステリータッグの二人、ヒュームと揚羽が姿を見せ己の役目を果たしたと、英雄を説得し勝利。ただし次の試合は棄権と宣言。

 

<チャレンジャーズ>VS<K・Kインパルス>――――隙を突き一子の一撃が不死川を下し勝利。

 

<400万パワーズ>VS<無敵童貞軍>――――鉢屋が岳人を爆発で倒し勝利。

 

<ワイルドタイガー>VS<知性チーム>――――燕が速攻でステイシーを下し勝利。曰く「ごめんね。小十郎さんみたいなタイプが厄介だって知ってるんだ」

 

そして次の組み合わせは――――

 

<赤報隊>VS<桜ブロッサム>   <ミステリータッグ>VS<チャレンジャーズ>

 

<源氏紅蓮隊>VS<ファイヤーストーム>  <無敵童貞軍>VS<知性チーム>

 

この形となった。一つの激戦を超えた悠介。されど、休む間もなく次の激戦が迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない会場の廊下。悠介は深く深く息を吸い吐いている。

 

――――初っ端からこれ(・・)かよ。わかっちゃいたが、並大抵じゃねぇな

 

わき腹を抑えながら悠介はわずかに表情を硬くさせる。

 

「グダグダ言っても始まらねぇか…」

 

体の調子を確認した悠介は、真っ直ぐと前を見つめる。そんな悠介の元に…

 

「悠介。そろそろ試合が始まるぞ」

 

「……おう」

 

天衣が現れ、次の勝負を告げる。その言葉がきっかけとなり、悠介の表情が変わる。表情から硬さはなくなり、闘志が表情を染める。それを確認した天衣は、笑みを浮かべる。ああ、それこそが悠介だと言わんばかりの笑み。天衣は一度悠介の肩をパチンと軽く叩く。

 

「うんだよ?」

 

「肩に力が入りすぎだぞ。もう少しリラックスしたらどうだ?」

 

「………………」

 

天衣の言葉に悠介は一瞬ポカンとした表情を浮かべるが、すぐに笑みを浮かべる。

 

「そっか力が入りすぎてたか…そりゃダメだな。助かるぜ、天衣」

 

「なに君の役に立てたならよかったさ」

 

悠介の礼に天衣は嬉しそうな笑みを浮かべる。そうしながら二人は闘技場へと足を進める。

 

「なあ、天衣」

 

「うん、どうしたんだ悠介?」

 

闘技場へと出る直前、悠介は何気なく天衣に告げる。

 

「……任せるぞ、天衣」

 

その意味を一瞬理解できなかったが、理解できた瞬間、歓喜が湧き上がる。自分が悠介の役に立ってるということを彼自身から伝えられたのだ。嬉しくないわけがない。だからこそ…

 

「ああ!!後ろは任せろ!!」

 

「ああ、頼りにしてるぜ」

 

決意新たに意思を思いを固める。その天衣の言葉とともに悠介ったい二人は闘技場へと姿を見せる。

 

『それでは参りましょう!!第二回戦第一戦<赤報隊>VS<桜ブロッサム>!!』

 

次なる激闘が幕を開ける。




如何でしょうか?
戦闘に恋愛面を入れるという暴挙・・・・うまくいったでしょうか?
たぶん、もうしないと思いますが・・・・

戦闘描写が短い・・・・どうにかしないと

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