真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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有言実行!!
頑張りました!!
VS十勇士の戦いもいよいよ佳境です
残す対決も数えるほど・・・・頑張りたいけど、いけるかな?

楽しんでもらえたら、嬉しいです!!




《過去》悠介と西方十勇士 その8

金属と金属が重い音が鳴り響く。互いに武器から伝わる衝撃。槍の矛先をもって斬佐の重量を支えるその島の技量に悠介は単純に驚嘆の声を漏らす。

 

「やるぅ!!」

 

認める声と共に悠介は身体を動かし、斬佐を引く。

 

「む!」

 

その動作を見た島は、即座に槍を手元に戻し、即座に鋭い突きを悠介の肩目掛け穿つ。その動作を見た悠介は、即座に身体を動かしつつ、空いてる左の腕をレールにし剣脊をもって槍の一撃を盾とする。

 

――――思ってたより、だいぶ速えぇ

 

――――話には聞いていたが、何という身体操作を

 

互いに今の動作のみで、自分の認識が甘かったと察する。そして即座に己の認識を改める。僅かな硬直……

 

「オラァッ!!」

 

硬直を破り先に仕掛けたのは悠介。持ち手から手を放し、斬佐の影から抜け出し、島の右に回り込む。

 

「なにを…」

 

その動作の意味を一瞬わからずに困惑する島。その困惑の隙を突き、悠介は地面を蹴り飛び上がる。

 

「ッ!!」

 

ここにきて悠介の狙いに気が付く島。跳びあがった悠介は、そのまま斬佐の持ち手を掴み思いっきり、地面に突き刺さった斬佐を引き抜く、そのまま下にいる島に向けて……

 

「オラァよッ!!」

 

斬佐を叩きつける。凄まじい轟音と共に地面が割れ、土煙が舞う。地面に着地した悠介。

 

――――いねぇ。躱されたか

 

割れた地面の先に島の姿はない。辺りを見渡す悠介。視界の端に僅かに動く土煙。

 

「チィ」

 

考えるよりも早く体を動かすが、それよりも早く槍の矛先が迫り、身をよぎり躱す。しかし、伸びきった槍がいきなり悠介目掛け横凪に迫る。

 

「しまっ…」

 

槍などの長物は点の攻撃ではなく線での攻撃が可能。その事を失念していた悠介に衝撃が走る。体が横に吹き飛びそうになる衝撃を、悠介は地面に刺さった斬佐を支えにすることで押し止まる。

その合間に槍は再び土煙の中に消えるが、今度は悠介が即座に仕掛ける。

 

「逃がすかッ!!」

 

槍が消えた方角に向かって、右から思いっきり斬佐を薙ぐ。

 

「ぐぅ!!」

 

その一撃を島は槍を縦に構え盾として使う事で防ぐが、その威力にかなり吹き飛ばされる。島を吹き飛ばすと同時に、斬佐を戻し即座に地面を蹴り距離を詰める悠介。

 

「喰らえ!!」

 

自己の加速をも乗せた上段の一撃が島へと迫る。迫るは己を倒さんとする鉄の塊ともいえる圧。その圧を前に身体が強張るが、胸にたぎる闘志をもって強張りを燃やし、迫るよりも早く、悠介に目掛け槍を穿つ。基本に忠実で無駄のない一突き。

 

「ッ!?」

 

まさか反撃が来るとは思っていなかった悠介の表情が驚きに染まる。攻撃を止めようにも加速し勢いの乗った攻撃をいまさら中断できない。ゆえに体をねじる事もできない。

 

「クソ」

 

躱せない一撃が大きく的となった胸に直撃する。体に走る衝撃に一瞬呼吸という動作が止まり、息が出来なくなる。体から力が抜ける。このままでは斬佐も手から離れるだろう。そしてその隙を敵は逃さない。だから…

 

「っな、めんじゃ…ねぇッ!!」

 

「なんと!!」

 

気合をもって無理やり体に活と力を籠め、半ば強引に斬佐を振り下ろす。完全に予想外の攻撃に今度は島の動きが止まり、その重い一撃が身へと襲い掛かる。今までに感じたことのない重い衝撃と重圧を纏った重さに島の体から力が抜け、意識が深く沈むのを他人事のように感じる。

 

――――ここまでか…

 

重力に従うように意識を手放そうとする島だが…

 

『島よ。見事この俺に勝利を献上して見せよ』

 

『はっ!!この島。必ずや、御大将の期待に応えて見せましょう』

 

『期待してるぞ』

 

その会話を思い出す。瞬間、失われていた力を無理やりに引き戻す。

 

「ぬう!!」

 

言葉と共に思いっきり地面を踏む島。刹那、グラウンドが僅かに揺れる。

 

「斬佐の上段を食らって一撃で沈まないとはな」

 

その姿に悠介は純粋な驚嘆と称賛の声を上げる。

 

「勝負は…ここからですぞ、相楽殿!!」

 

「ははっ。……おうよ!!」

 

島の気迫籠る言葉に悠介も気迫籠る言葉で答える。そこからは、互いに打ち合いの形となった。

悠介が斬佐を振るい、島が槍を放つ。悠介が一撃放つ頃には、島は三度攻撃を放ち、槍の側面などを使い斬佐の攻撃を逸らし、直撃を避ける。それでも斬佐の衝撃により島は僅かながらダメージを受ける。

そんな打ち合いを十合ほど交わした最中、事態が動く。

 

――――こりゃ、俺の負け(・・・・)だな

 

いくつかぶつかり合って確信する。湧き上がるのは純粋な称賛と紅蓮の様な悔しさの焔。最初に反撃を受けた時からなんとなく直観はしていた。それでも抗った。だが、結果は変わらない。それは先ほどからの攻防が証明している。

 

――――敵わねぇ、それでも必ず追いついてやる

 

決意を新たにする。そうしなければならないし、認めなければ何も意味がない。

だからこそ、その想いを形にするように…

 

「はっ!!」

 

島の全力の一撃を身をもって受ける。今までとは全く違う手ごたえに島の表情が変わる。ここが攻め時と更に踏み込み攻撃しようとする、その瞬間…

 

「なっ!?」

 

悠介が身体に直撃した槍を掴む。その手は斬佐から離されている。

 

武器を使った勝負(・・・・・・・・・)は…お前の勝ちだよ、島」

 

槍を悠介から剥がそうとするが、全く動かない。困惑する島に悠介はさらに続ける。

 

「だから、その勝負はお前の勝ちでいい。だがな、決闘の勝負は譲れねぇな!!」

 

掴んだ槍をひきつけ、島を自身の間合いに引き寄せる。体勢が大きく崩れたのを感じた島は、槍を持つ手と体を動かす。

直後…

 

「オラァ!!」

 

悠介の拳が炸裂する。しかし…

 

「やっぱ、スゲェわ」

 

島は僅かに動かせる槍の持ち手の部分に身を隠し、悠介の拳を防ぐ。

 

「負けられぬ!!御大将に勝利を献上するまでは!!」

 

最早風前の灯火。それでもその意思は消えない。それはどこぞの誰を連想させる。

 

「お前にそこまで言わせる大将か…戦うのが楽しみだ」

 

その言葉は本心からの言葉。今までの敵も強かったが、誰かのためにここまで闘志を燃やす敵はいなかった。だからこそそこまで言わせる石田に悠介は初めて興味を持つ。

無意識に悠介は槍を掴んでいた手を離す。

そして…

 

「来いよ、お前の全力!!」

 

拳を構える。沈黙は時間にすれば、15秒ほど。合図も何もない。それでも二人は記し合わせた様に同時に動き出す。

 

「オラァァァッ!!」

 

「はあぁぁぁッ!!」

 

互いの一撃が交差する。一瞬の間と共に突風がグラウンドを襲う。二つの影は静止したまま動かない。

 

「俺の勝ちだ」

 

ゆっくりと地面に倒れる島を見下ろしながら悠介は勝利を宣言する。その頬には島の攻撃でついたであろう一本の傷がある。

 

「残すはあいつだけか…」

 

気絶した島を一瞥してから、悠介は斬佐を担ぎながらゆっくりと校舎へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎に入った悠介は、下駄箱に斬佐を置いて目当ての存在を探す。ちらほらと校舎をさまよいながら探していると、情報室からお目当ての存在が出てくる。

 

「よぉ、大村」

 

「ゴホォ、相楽か」

 

悠介が声をかけたのは、マスクをつけた病弱そうな少年にして十勇士の一人であり、実力ではなくIT能力の高さから十勇士に名を連ねる少年(本人談)大村ヨシツグ。

声を掛けられたヨシツグは、泥まみれの悠介に驚いた表情を見せる。

 

「ついさっき、十勇士(おなかま)と戦ってきてな」

 

「そうか、ご苦労だな」

 

「結果は聞かねぇのか?」

 

「ゴホォ、問題ない。お前が此処にいる、ゴホォそれがすべてだ」

 

「そっか」

 

悠介の言葉にヨシツグはせき込みながらどこか悔しそうに呟く。そして一度瞳を閉じ、再び目を開けて、真剣な瞳でヨシツグを見る。

 

「今まで戦ってきた奴らは全員強かった。才能も感じたし、さらに上に行けるだろうな」

 

「ゴホォ。そうか、あいつらにとっては最高の言葉になるだろうな。武人ではない俺にはわからんが…」

 

悠介の言葉にヨシツグは困惑した様な表情をしながら告げる。

そんな瞬間

 

「嘘つけよ。十勇士の中で一番強いだろ、お前」

 

何気なく悠介は告げる。その瞳は鋭い。

 

「……………」

 

沈黙が場を支配する。はたから見れば、悠介の言葉に呆けているように見えるが…悠介の場所からでは表情がうかがえない。

 

「ゴホォゴホォ。何を言っているだ、相楽。見ての通り、俺は病弱だ。とてもじゃないが、武術などできないさ」

 

漸く言葉の意味が理解できたのか、ヨシツグは悠介の考えが間違いだと告げる。しかし悠介はヨシツグのその言葉が予想通りだというように口を開く。

 

「そうかぁ?じゃあよ、なんでお前の正中線はしっかりと中心を通ってる(・・・・・・・)んだ?」

 

「……………………」

 

その言葉に今度こそヨシツグは息をのむ。

 

「知ってると思うが、人には重心を通る軸ってもんがある。大体の人間はその軸がだいぶ歪んでるんだが…武術をしている人間は割かし例外で、重心を貫く様に頭の頂点から綺麗な軸線が出来るんだよ。もちろん、そこまで行くには膨大な鍛錬が必要だ。俺も意識しているが、まだ歪んでるしな」

 

一度言葉を切った悠介はヨシツグに視線を向けるが、全く表情がわからない。

 

「そんでお前の軸線は完全とは言えないが、限りなく中心を通っている。生まれつきは絶対にありえねぇ。普段何気なく生活していくだけでも軸は歪む。なあ、教えてくれよ。正中線がしっかりしていて、決して俺の間合いに入ろうとしない。ふらつきながらも、ぶれない重心。そこまでの基礎がある奴が、本当に武人じゃねぇのか(・・・・・・・・)?」

 

それが悠介の確信。それは最初に出会った時に感じたもの。弱弱しいふりをしながらも、そのうちは絶え間ない鍛錬の成果が隠れていた。だからこそ、怪しんだのだ。

 

「……どうやら、もはや隠すことは出来ないようだな」

 

「そっちが、お前の素か」

 

僅かな沈黙ののち話始めたヨシツグは、つけていたマスクをはがし、持っていたノートパソコンを脇に置き、猫背をただしている。

その身に纏う雰囲気は既に別人だ。

 

「やっぱ、わざと弱いふりをしてたのか」

 

「ああ、その方が何分都合がいい。俺を弱者だと油断した間抜けを簡単に倒せるしな。最も今回は意味を成さなかったわけだが」

 

「まあ、ある意味で実力を測れるからいいんじゃねぇか」

 

「確かに一理あるな」

 

日常会話のように話す二人。しかし反比例するように、場の空気は冷たく鋭くなってゆく。そして同時に二人は、間合いを取るように僅かに回転する。

 

「そういえばよ、いつぞやん時に自分は戦えないって言ってたが、戦っても文句は言わねぇよな」

 

「問題ない。正体がばれた以上、戦わないという選択肢は存在しない。それに、十勇士(あいつら)を倒したお前の実力にも興味がある」

 

「はっ!根っからの武人じゃねぇかよ、お前もよぉ!!」

 

言い終わると同時、二人は即座に構えを取る。そして、ほぼ同時に二人は地面を蹴り、敵に向かって駆ける。

 

「シィ!!」

 

「オラァ!!」

 

互いの拳がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈍い音と共に手に伝わる重い衝撃。

 

――――やっぱ、かなりの使い手だな

 

一手交わしただけで伝わる実力。だからこそ浮かべる獰猛な笑み。止まらずに拳を放たんとするが、その時にはヨシツグの姿が視界より消える。

 

「なにっ!?」

 

「遅い」

 

戸惑いの隙を突く様に脇腹に衝撃が走る。

 

――――速い

 

僅かに体が後退する悠介。衝撃が来た方を見れば、拳を打ち込んだ構えで静止しているヨシツグの姿。

 

「全力で打ったのだがな。異様なタフさだ、長曾我部が可愛く見えるな」

 

「へ。頑丈さは俺の売りだからな」

 

呆れ半分驚き半分なヨシツグの言葉に悠介は自信満々に答えるが、どこか瞳は遠くを見ている気がする。

 

「ならば、貴様が倒れるまで打ち込むだけだ」

 

「いいねぇ。単純な勝負は望むところだぜ」

 

少なくとも速度では負けている。ならば、狙うは攻撃を終えた瞬間のカウンターだろう。打ち込むが勝つか耐え抜き貫くが勝つかの勝負が始まった。




如何でしたでしょうか?
ヨシツグの強さに気が付けた理由は納得できましたかね?
此処から怒涛に話と戦いを進めれるように頑張ります

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