真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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お待たせしました!!
今回は全く趣きを変えた勝負となっています
初挑戦の描写なので、上手くいくか不安です

それでも頑張って描きました!!

楽しんでもらえたら、嬉しいです!!


《過去》悠介と西方十勇士 その6

宇喜多と大友との激闘から数日、連続での騒動が嘘の様に穏やかな時間が流れる。当然の様に悠介自身は、周りから腫れ物を扱う空気だが、それだけだ。依然として、あの少年がどこか申し訳なさそうにしている他は何も変わらない。

今もまた、授業を終えて昼食をとるためにクラスメイト達が動いている。そして例にもれず、悠介もまた昼食を取るために席を立とうとしている。

そんな悠介に――――

 

「すまんが、相楽。次の授業で必要な資料を資料室から取って来てくれ」

 

一人の教師から声がかかる。教師からの頼みに、一瞬思考した悠介は頷く。そして持って来る物を聞き、悠介は資料室に向かう。

 

 

悠介の姿が見えなくなると、突然教師は力なく倒れる。そして音たてる直前、影が教師を連れ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的の資料室にたどり着いた悠介は、その場で僅かに静止したのち僅かに息を零し、教室の中に入っていく。

扉が開くと同時――――

 

「あっ?」

 

悠介に迫る無数の人影。完全に意表を突いた奇襲。しかし、悠介は全く動じず、むしろ備えていたかのように対処する。

 

「あめぇよ」

 

迫る二つの影の顔を掴み、双方にぶつけ後続へと投げ飛ばし、そのまま後続を巻き込みつつ回し蹴りを叩きこむ。そして回転の勢いを殺さぬままに、正拳を叩きこむ。

 

――――今の手ごたえは…

 

打ち込んだ瞬間に伝わる感触。それだけで敵が誰かを察する悠介。

 

――――どこに潜んでやがる

 

存在を探さんと、辺りを見渡す悠介。そんな中何かが自分の足を掴む感触が襲う。

 

――――さっきぶちのめした…ッ!!?

 

その存在を認識すると同時に、捕まれている手から感じる熱。それは悠介自身が最近経験した熱。

 

「まずっ…」

 

その正体を察した悠介は思いっきり、捕まれていない方の足を振り上げて掴んでいる者達を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた瞬間、それは大爆発を起こす。

 

「よくぞ、見破った」

 

「やっぱ、オメェか鉢屋」

 

背後、それもほぼ死角からの突然の声。しかし悠介は動じない。その反応に鉢屋は、ほんの少し驚いた様な表情を見せる。

 

「対処される事は想定内だったが…まさか正体まで悟られているとは」

 

「ここ数日色々動いてたのは知ってるからな。来るなら、次はお前だと思っただけだ」

 

「そうか。まだまだ修行が足りぬか」

 

「いや、こっちはこっちで優秀でお節介なバックがいたからな」

 

「松永燕か」

 

「へぇ、流石。そこまで調べてんのか」

 

その名を指摘された悠介は、関心半分と驚き半分の声をこぼす。そして鉢屋も自身の認識を改める。

 

「うんじゃ、始めるぞ」

 

「否。既に始まっている」

 

悠介の言葉に断言する様に返す鉢屋。瞬間、悠介の死角から人影が迫る。その存在に悠介は気が付いていない。それほどまでに高度な隠密。鉢屋は攻撃が当たると確信するが…

 

「その手はもう飽きた」

 

攻撃が当たる直前で、その手を悠介が止め、そのまま鉢屋の方へと投げ飛ばす。投げ飛ばされた方は、驚きながらも受け身を取り鉢屋の隣に着地する。

 

「どうやって見破った」

 

「なに、今までが数の利を生かしてきてからな。最低でもあと一人はいると思っただけだが」

 

同じ手を使いすぎなんだよ。そう言わんばかりに悠介は不敵な笑みを浮かべる。

 

「うむ。策士策に溺れるだな。鉢屋」

 

その悠介のセリフに先ほど投げ飛ばされた生徒が口を挟む。中性的な小柄な生徒。

 

「さて、役者は揃ったみてぇだし…前回は大友の名前聞き忘れてたからな、取りあえず名乗ろうや」

 

「西方十勇士が一人鉢屋壱助」

 

「同じく西方十勇士の一人尼子晴(あまごはる)

 

「相楽悠介だ」

 

武を納める者として故か、悠介の言葉に誰もが迷わずに名乗りを上げる。それに対するように悠介もまた名乗りを上げる。

そして名乗り終わると同時、鉢屋が煙幕を放つ。

 

「チィ。いきなりかよ!!」

 

視界が塞がれた悠介は、即座にその厄介さに舌打ちをこぼす。視界が晴れた先には二人の姿はない。

 

――――気配がそこら中にばらついてて居場所がつかめねぇ

 

辺りを見渡し敵の存在を探すが全く分からない。

 

――――死角の多い場所に入り組んで空間が狭い。斬佐封じも兼ねてるな

 

冷静に状況を把握する悠介。そんな最中でも視界の端に影が走っている。

 

――――この場所で戦うのは、チィっとめんどくせぇな

 

判断すれば、行動は早い。近くの窓を割り外へと飛び出る。外へ出た悠介。そこには多くの野次馬の姿。悠介と十勇士の決闘は有名になっており、今までがそうであったように多くの生徒の姿が見える。恐らく爆発音につられ集まったのだろう。

しかし悠介は、それらを気にすることなく校舎の方に意識を向けている。

 

――――いつ仕掛けてくる…

 

数秒の沈黙。突如として悠介に影が重なる。本能的にその影に向け拳を打ち込まんとする悠介だが、その拳がその影の存在を見て―――

 

「なにっ!?」

 

停止する。迫ってきているのは、何と一般の生徒。決闘の最中に無関係の生徒に危害を与えてしまった場合、反則負けとなる。

明らかな異常事態に悠介の動きと思考が停止する。ゆえに迫る拳を躱せずに直撃ししまう。ダメージはほとんどない。だが、僅かに体勢が崩れる。そんな悠介の視界の端と耳に今、自分を殴ったはずの生徒の姿とその彼の驚きの声。

 

――――そういう事か

 

その僅かなうちに悠介は全てを察する。状況理解した悠介は、殴ってきた腕を掴み空いた腕で思いっきり腹をかち上げる。と同時に崩れた体勢を修正する。

直後、再び野次馬の生徒たちが悠介に襲い来るが…

 

「オラァ!!」

 

悠介は躊躇う事なく襲い来る生徒たちを殴り飛ばしてゆく。その光景に野次馬たちは困惑の声を上げる。どうして自分が?と。

 

――――痛みに怯まない分…人と喧嘩するよりも厄介だな。奴は…どこだ?

 

襲い来る生徒たちを殴り飛ばしていく悠介。そんな中で、悠介の視野はある敵を追う。殴り蹴り、迫る敵を倒す悠介の背に一瞬の悪寒。

考えるまでもなく悠介は、悪寒のする方に拳を向けるとするが…

 

「ぐぅ」

 

一人の生徒の妨害により、動きを止められる。

 

――――やばいっ

 

瞬間に悟る、自身の不利。

 

「隙あり」

 

そしてその声と衝撃が悠介に直撃する。

 

「チィ」

 

突然の衝撃で悠介の動きが止まる。すると当然の様に生徒たちが悠介に群がる。

 

――――クソっ!本当に厄介すぎるだろ

 

拘束をはがそうとする悠介。そんな状態の悠介の耳に――――

 

「それがしの人形の味はどうだ、相楽」

 

鉢屋の声が届く。声は聞こえるが、全体に響いており場所を特定できない。その事実に悠介は舌打ちをこぼす。

そう今、悠介を襲い掛かってきている生徒たちは、全て鉢屋が生み出した人形。

そして鉢屋が得意としている戦術の一つに、人形爆弾がある。

つまり――――

 

――――やばい

 

「爆破」

 

悠介を拘束していた人形たちが一斉に爆破する。その光景を鉢屋は、無言で見つめている。すると、煙の中から悠介が現れ、先ほどの窓から校舎に飛び込む。

 

――――チィ。こっちに戻ってくる事になるとは…。最悪、これも二人の策の可能性もある

 

廊下に転がり込むと同時に感じる気配。悠介は、この行動自体が悪手であると察する。辺りを見渡す悠介は、窓より人形が待機しているのが見える。

 

――――無理には攻めてこないのか…それともタイミングを計ってんのか

 

状況を思考する悠介。その思考に向けた意識の死角に入りこむように影が走る。悠介がその影に気が付いたのは、影の攻撃が触れる直前、その影に気が付いた悠介は、その軌道から体を無理やり逸らす。

 

「あぶっ」

 

攻撃をかわし、即座に体勢を立て直して影を追う悠介。しかしその足が僅かに進んだところで止まる。

 

――――ワイヤー…(トラップ)

 

よく周りを見れば、鉄線が其処ら中に張り巡らされている。

 

「此処は此処で蜘蛛の巣の中って事か。クソ、やりずれぇ」

 

明らかに現状の様に搦め手をもって敵を倒さんとする策士タイプの戦い方。それは悠介自身が最も苦手とするタイプ。その独特の呼吸は、一度はまれば格上すら倒せる可能性がある。

自分の対応策は一つ。自分の土俵に引きずり込むのみ。その為には接近する必要がある。

舌打ちをこぼす悠介。同時、その背後からクナイが迫る。

 

「待ちだけじゃねぇのか!!」

 

視界の端にそれを捉え、即座に回避する悠介。だが、回避した先には…

 

「はっ!」

 

既に待ち構えた攻撃が。回避行動の最中。それゆえに軌道を変えることはできない。だからこそ、その攻撃を悠介は躱せない。

 

――――クソ!逃げがはえぇ

 

攻撃が当たると同時に悠介の体を踏み台に場を離れる。二度目の衝撃で悠介は、その衝撃の意味を理解。体勢を立て直す。

 

――――外では数での攻め。中では罠での攻め。外はたぶん鉢屋。中は尼子。どっちから崩す

 

唯一の救いは、完全に二人が役割を分担しているという事。ならば、崩すならそこしかない。どうする。ハッキリ言えば、両方とも苦手なタイプ。

ならば――――

 

「こっちだな!!」

 

悠介は即座に決断する。駆け出す、目指すは先ほど割った窓。校舎を出ると同時に悠介に迫る人形たち。

三十を超えるであろうその数を前に、悠介は…

 

「はは」

 

笑みをもって飛び込む。掴まれる前にその手を逆に掴み、引いて倒してゆく。それによって多くの人形が地面へと倒れる。それでも数は多く、いくつかの手が悠介に届くが、体を動かし緩急をつけ、その手を崩す。

 

――――そろそろ来るか?

 

捌きつつ、悠介は倒した人形たちに視線を向ける。先と違い、倒れてから動く気配はない。ならば、狙いは一つ。

そしてその考えが正しいと証明するように、倒れた人形たちが徐々に膨らんでくる。その変化を悠介が確認する。回避か逃げ。その二択を迫られた瞬間悠介は――――

 

「爆」

 

第三者の声。爆炎が場を包む。――――笑みを浮かべた。

 

爆風が布を揺らす。背後に待機させた人形たちを従えながら、影は佇んでる。

 

「終わった」

 

二度の爆撃を至近距離で受けたのだ。耐えられるわけがない。そう思いながらも影は爆煙から目を離さない。

 

「!!」

 

一瞬。本当に一瞬、爆煙が揺らいだように見えた。考えるまでもなくクナイを投擲。反応は全くない。見間違えか、そんな考えが頭をよぎる最中

 

「よぉ」

 

「ッ!?」

 

影の左後方から、敵である悠介の声。驚愕と共に影は、声のする方を振り返る。そこにはボロボロになりながら煙を突っきって来たであろう悠介の姿。

 

「くっ!」

 

慌てて待機させていた人形を動かさんとするが、それよりも早く――――

 

「おせぇ!!」

 

悠介の拳が影を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発が迫る事がわかっていた中で悠介が選択したのは、回避でも逃げでもない。ただ耐えるの一点。

ただ耐えた。回避などをすればそれは向こうの思惑通り。だからこそ、どこかでその思惑から外れなくてはいけない。だが、並の事ではすぐに修正してくる。ゆえにあえて嵌る。

普通ではありえない熱と衝撃に、策もなくただ耐える。熱の牢獄。誰もが逃げ出したいと思う中でも悠介はただ耐える。そして体を屈め、足元の石を煙に向かって投げ揺らぎを生み出す。そのすぐ後にクナイが悠介の近くを通る。

 

――――そっちか

 

方向を覚え、あえて悠介は大回りを選ぶ。それは揺らぎを悟らせないためと行動を起こした時を予測しての行動。

今回は偶然、死角に出れた。今回はただそれだけの話。

自身の加速を乗せた一撃が、影に直撃するが――――

 

「なにっ!?」

 

殴られた襲撃で影が大きくくの字に曲がった瞬間、影が木へと変わる。

 

――――変わり身!!

 

逃走。されど、悠介は逃がさない。

 

――――人形が動いているって事はダメージが入ってるて事だろ…それでこの人形の動きは逃げの手の筈。なら敵の居場所は

 

「一番(にんぎょう)がある場所だろ!!」

 

声を張り上げると同時にその方向を見れば、明らかに高速で移動する影。視認すると悠介は思いっきり加速し、地面を蹴り人形の壁を飛び越え影に迫る。

まさか飛び越えてくるとは思わなかったのか影の動きが止まる。その反応に一瞬悠介直観がうずくが、今は詰める事を優先する。

 

「漸く俺の間合い(どひょう)だ!!」

 

一気に間合いを詰め、悠介の拳が再び影に直撃する。今度こそ変わり身はない。そう思える手ごたえだが…再び変わり身が発動する。

 

「ッ!!?」

 

その現象に驚愕する。技をいなされた事ではない。問題はそのタイミング(・・・・・)

 

――――今、明らかに横やり!!尼子の奴も使えるのか…それとも

 

疑問と様々な想いが脳裏に走る。その中で、先ほどの一件。それが今、悠介の脳裏で一つの憶測が立つ。

 

「!!。まさか」

 

考えられない訳ではない。だからこそ、今まで嵌められていた(・・・・・・・)事実とその時間が()にどれだけ有利に働くかなど、考えるまでもない。

 

――――どこだ?どこに潜んでやがる

 

急ぎ、先ほどの影を探すが…

 

――――人形の数も増えてやがる

 

完全に自分が敵の術中に嵌り、後手に回っている事実に焦りが生まれる。そんな悠介の焦りの隙を突く様に人形たちが襲い来る。

 

――――チィ、考える時間はくれねぇか

 

焦りを覚えながらも悠介は、迫る圧に対して迎撃の構えを取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠介と人形のぶつかり合い。それを少し離れた場所で二つの影が見つめてる。一方の影は平然と立っているが、もう片方の影は少しふらついている。

 

「無事か」

 

「ああ、大丈夫だ。指揮をする上では問題ないぞ」

 

「そうか」

 

片方の言葉に片割れの影は難しそうに唸る。気を抜いた訳でもない、それでもあの一撃は自分が(・・・)救わねばならなかった。

だが、ギリギリ間に合い。策は完成した。

 

「これより忍びの戦いを御覧に入れよう。最も…」

 

一人の影が悠介を見つめる。その瞳には欠片も自分たちの勝利を疑っていない。

しかし――――

 

「貴様が理解できるかは別だがな」

 

何処かその言葉には言いようのない悲しみが籠っていた。




如何でしたでしょうか?

初挑戦した描写・・・ムズイ
違和感とかありませんでしたか?

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