真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~ 作:スペル
十勇士との対決三話目です
さて、前回登場した龍造寺・・・・・いい感じの強さでかけたかな?
楽しんでもらえたら嬉しいです!!
目の前の敵を見て、龍造寺が思ったことは『虫の息』だった。既に肩で息をし、身体は見るからにボロボロ。ここまで来たことは称賛できるが、既に負けは見えているようなものだ。
その言葉が強がりだと理解したら、もう一度降伏を告げようとして…
「…ッ」
その瞳に気おされる。無意識に半歩、後退する龍造寺。そしてその隙を悠介は見逃さない。一気に階段を駆け上がろうとするが…
「甘いな!!」
「チィ!!」
迷いで一歩反応が遅れるが、即座に持ち直し足元を狙って放たれるバラ。いつもの悠介なら受けてでも前へと駆け上がっただろう。しかし、蓄積されたダメージと地面に縫い付ける様に放たれた攻撃ゆえに、回避せざる負えない。そして階段という限られた空間では、回避できる場所は限られる。それが龍造寺の策。
「そうだよな。そっちにしか、回避できる場所はないよな」
「ッ!!?」
最初に肩に向かって放たれる。回避するが、続けざまに放たれるバラが悠介の両足を壁に貼り付ける。そして両肩、両腕もバラによって壁に貼り付けにされる。
「まあ、この俺の手にかかれば、ざっとこんなものよ」
完全に策を成功させた龍造寺は、ゆっくりと階段を下り、悠介と視線を合わせる。悠介は、必死に体を動かそうとしているが、ほぼ大の字に近い形で貼り付けにされているため上手く力を出せない。
「無駄な抵抗だぜ?こう見えても捕縛は、十勇士一だと自負していてな」
「…なんで攻撃しねぇんだ?今なら攻撃し放題だろ」
龍造寺から闘志を感じない悠介が単純な疑問を問う。それは悠介にしてみれば純粋な疑問。自分はまだ負けを認めていない。というか、負けを認めるつもりはない。ならば、気絶させるのが普通だ。そうすれば、意思に関係なく自分の負けは決定する。
その悠介の言葉を聞いた龍造寺は、あり得ないという顔をする。
「おいおい。俺はアイドルだぜ。そんな俺が無抵抗の人間をボコるとか、全く持ってスマートじゃない。それに汗臭いのは苦手でね」
さも当然というように龍造寺は告げる。その言葉は、一種の逆鱗。悠介は無言となった。
「さて、さっきも言ったが、ここいらで降参したらどうだ?十勇士の一人である長曾我部を倒したんだ。もう
冷静に自分のいな客観的な意見を告げる龍造寺。その言葉に悠介は答えない。それは自分の言葉を考えているのだろうと考えている。その中でふと視線が、下へ向く。
「うん?」
そこにはバラが規則よく動いているように見える。最初は見間違いだと思った。しかしそれは断続的に起きている。そしてそれは全てのバラに起き始めている。
「まさか……」
視線が悠介に向けられる。未だに無言を貫いている悠介が、ゆっくりと口を開き始める。
「全てが終わってないなら、結果は誰にも分らねぇ。だからこそ、挑むぜ。俺はな…ッ!!」
宣言と共に悠介の拘束が無理やり外される。悠介は認めない。挑まずに確かめずに諦めるという事実を。
枷から外れた悠介が、目の前の龍造寺に向かって拳を振るう。余りの出来事に動きが止まっていた龍造寺は、迫る圧を前に無意識に後退しようとし、運よく足が空回り躓く様に倒れる。
そこにきて漸く龍造寺の意識が現実に追いついてくる。
――――力ずくで拘束を破ったのか?……いや、力でどうとか出来ないようにしていたはずだぞ!!
目線の先には拳を振りかぶっている悠介の姿。僅かに目線が合う二人。その瞳を見て龍造寺は無意識に下がろうとする。それは単純な恐怖と僅かな羨望。
「オラアッ!」
「ッ」
腹部に振り下ろされる鉄槌は、アイドルを優先し鍛錬を疎かにしていた龍造寺を容易に戦闘不能にする。
「ま、全く…アイドル相手に手加減なしとか…参ったぜ」
薄れゆく意識の中龍造寺は嫌味を言うように呟く。その言葉に階段を登ろうとする悠介が、告げる。
「知るかよ。うんなもん、勝負の場所じゃ意味はねぇよ」
「…………」
悠介の言葉に龍造寺は何も答えない。正論だ。何も言い返せない。
「ただ……お前が殴られるのが嫌だっていうなら、
「!!?。おいおい、この天才トップアイドルに努力というダサい行為をしろと?」
大して意味なく言われた言葉。対する悠介は当然の様に……
「 」
龍造寺に告げる。その言葉を聞いた龍造寺は目を見開き小さく「そうか」とつぶやき意識を手放す。きっとぶつからなければ、その目で見なければその言葉を言われても納得せず、鼻で笑っただろう。しかしその目で実践した男が言い、自分はそれをカッコイイと思った。ならば否定できるわけがない。薄れゆく意識の中、龍造寺は僅かな満足感を得て意識を手放した。
その聴覚が駆け上がる音を拾う前から、毛利は矢をたがえ準備していた。既に龍造寺との連絡が何度も付かない。その時点で毛利は、信じられない未来を受け入れ、臨戦態勢に入る。既に自分の勝機は、ただ一度の狙撃にかかっている。だからこそ、五感を集中し、その時を推し量る。
――――来たか…
その聴覚が、確かに敵の襲来を告げる。鷹の目の様に鋭く、毛利は屋上の出入り口となる扉を見つめ、手に持ったボウガンを構える。
――――開けた時が、貴様の最後だ
足音が近づいてくる。間はほぼなく、ドアノブが開かれる音が聞こえる。そして遂に扉が……開かれる。
「美しく沈めッ!!」
放たれる魔弾は、毛利が考える中で完璧といえるタイミングで放たれた。終わりを告げる魔弾が、ちょうど扉を開けた悠介の顔面に直撃する。
「ふっ、勝った」
空中に仰向けになる体勢になっている悠介の姿を見て、毛利は勝利を確信するが…確かに地面を踏みしめる光景が毛利の視界に映る。
「なにっ!!?」
「
「矢を…噛んで」
矢を口から落とし、悠介は毛利目掛け駆けだそうと足に力を籠める。一瞬僅かに今までのダメージで軸がぶれるが、そんなの関係なしに悠介は無理やり加速する。
「ッ!!」
迫る圧を前に毛利は矢を放とうとするが、
西に沈まんとする夕日の光と僅かに暗く染まりだした青空の下ボロボロの体ながら紅蓮の猛火の様に闘志が燃え盛る瞳に、沈む夕日と被り朱色に輝いて見える拳。
その情景は、本来なら醜いと吐き捨てるはずなのに、毛利元親の短い人生の中でも一番と思えるほどに……
「美しい…」
そう呟いた次の瞬間、悠介の拳が毛利を貫く。襲い掛かった衝撃に毛利は抗うことが出来ずに地面に伏す。完全に戦闘不能だ。
それを確認した悠介は、ゆっくりと息を吐く。また先ほどの様に奇襲される可能性はあるが、現状そういった感じはしない。なら、今のうちに帰るが吉だろうと悠介は結論付け、その場を去ろうとする。勝者が敗者に手を貸す行為は、敗者にとって屈辱でしかない。少なくとも悠介はそう考えている。だから、悠介は毛利に一度視線を向けた後その場を去ろうとする。
「ま、待て!!」
「あん?」
その場を去ろうとする悠介を毛利の声が押しとどめる。
「なぜ、貴様はそうまで美しい?」
「はっ?」
余りにも予想外の言葉に悠介は理解できないといった表情を見せる。
「お前のその瞳。それは…本来なら美しくないであろう足掻きですら、その美しさを引き立たせる。一体何なんだ、それは…」
その答えをどうしても知りたいという想いが言葉から感じられる。その問いに悠介は…
「
その言葉は、奇しくも龍造寺に告げた言葉と全く同じ言葉。お前らの価値観なんだからお前らが勝手に決めろ。言われた
その想いを込めて紡がれた一言。
「………確かに、それは美しいな」
悠介の言葉に毛利は真意を察して、満足げに意識を手放す。それを確認した悠介は、今度こそその場を去る。
――――西方十勇士残り、七人。
初日の激闘から一夜明け、二日目。悠介と十勇士の戦いは既に学校中に知れ渡り、様々な噂が生行きかっている。そんな中当事者たる悠介は、何事もないように日常を送っている。そして現在昼休み、悠介は昨日と同じく屋上へと向かっていた。
「ゴホッ。お前が相楽悠介だな」
「あん?誰だお前」
声を掛けられた瞬間、また十勇士が仕掛けてきたのかと思い警戒仕掛けた悠介だが、直前に聞こえたせき込みが僅かにそれを否定する。振り向いた先にいたのは、おそよ武を納めているとは思えない少年。手にはノートパソコンを持っている。
「俺の名は
「サイバー担当ってことは…」
「ああ、ゴホッ…ネット技術で選ばれた故に、戦闘能力はないものとして考えてくれ…」
「それで自分は戦えないってことを告げに来たって事か?」
「ああ、本来なら初日で終わっていると思っていたからな…ゴホッ」
「あの案は、テメェが?」
「ゴホッ…作戦を考えたのは俺だ」
「そうか…」
しばし二人の視線が交差し、沈黙が支配する。
「はぁ、わあったよ。俺も、戦えねえ奴をボコる趣味はねぇからな」
「ゴホッ、助かる。それでは俺はこれで…」
興味ねぇと言わんばかりに悠介は頭を掻きながら大村に告げる。その言葉に安心したのか、大村は一息ついてからその場を離れる。
ただ…
「…………」
その後ろ姿を悠介は鋭い目で見つめていた。
昼休みも終わり時刻は放課後。昨日を考えれば、再び仕掛けてきてもおかしくない。だからこそ悠介は、少し闘志を滲ませている。
――――昼休みにまた鉢屋に奇襲されたが、マジであいつ正面からは攻めてこねぇかもな。だとしたら、どう倒すか…
現状でからめ手で攻めてくる相手への対策。そんなことに頭を使っていると、目の前に一人の敵が映り込む。
「昨日に続いて真正面から勝負と来たか…」
「なんやクールタイムでも欲しいんかいな」
悠介の目の前に立つのは、ふくよかな体型にヘルメットを着け、巨大なハンマーを片手で持つ少女。
「冗談。むしろ、望むところだ!!」
「聞いてた通り、熱い男やな~。一応名乗っとくで、十勇士の一人
「相楽悠介だ」
互いに名乗りを上げ、構えを取る。
「吹き飛びな!!」
「オラァッ!!」
振るわれるハンマーと拳がぶつかり合い、鈍い音を辺りに響かせる。譲らずにぶつかり合う両者一撃が、大きく上にかちあがる。
「うおっ!?」
「シィ」
ハンマーが上に行ったことで大きく体勢が崩れた宇喜多。その隙を見逃さずにもう片方の拳を打ち込む悠介。
「甘いでッ!!」
「チィ」
されどその一撃は宇喜多の見かけによらないほど華麗なステップによって空を切る。今度は悠介が宇喜多に対して隙を見せる形となる。
「景気よくいくで~~」
思いっきり振るわれるハンマーを前に悠介は回避行動は間に合わないと悟る。ゆえに取れる手段は限られる。
「ぐぅ!」
拳で受け止めるのではなく腕を盾にし、ハンマーが当たると同時に一気に後方に飛ぶ。それにより、悠介はダメージを最小限に抑えるが、大きく距離を取る形となる。
「へぇ~~見かけによらず、技巧派やな」
一連の動作を認識した宇喜多は、敵への認識を変えなければならない。そう自覚する。
「まあ、それでもウチらが勝つけどな」
「聞き捨てなんねぇなそのセリフは」
「いや、確かに
「ッ!!」
その言葉の真意を理解した悠介は、即座に辺りを警戒する。しかし、それをあざ笑うかのように宇喜多は幾分か後退し…
「勘もいい。そうやな、数で勝っている以上、そこを使わん手はないわ」
その呟きの直後、爆炎が悠介を辺りを包み込んだ。
如何でしたでしょうか?
なんか展開が同じ気もしますが・・・・
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