真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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え~~~~~遅くなり、本当に申し訳ありませんでしたッ!!
大学のテストや身内の不幸などがあり、執筆できる時間がなかなか取れませんでした
前回の誓いとは何だったのか・・・・・・とりあえず、一月中に更新できてよかった~~

まあ、それはさておきいよいよ過去編本格スタートです
楽しんでもらえるように、かつ、できるだけ早く終わらせれるように頑張らせてもらいます!!



《過去》悠介と西方十勇士 その1

悠介の拳が戦の火ぶたを切った。しかし、当然いきなり始まる訳もなく、その日は嵐の前の静けさというべきか、何事もなく学校は終了した。だが、当事者たる悠介は放課後、館長室に呼ばれた。

対面しているのは、悠介と館長である鍋島正の二人。二人の目線が交差するが、決して言葉を発さない。沈黙が場を支配する中で、最初に口を開いたのは、鍋島。

 

「…‥すまなかったな。本来なら、俺がすべき役目だってのによ‥‥不甲斐ねぇぜ、全く」

 

おぼれたのは、悔やむ声。事の詳細を聞いた時、最初に到来した感情は怒りと不甲斐なさ。自分が成すべき役目を別のそれも弟子に任せてしまったのだだから、そのうちに渦巻くそれは、恐らく彼にしかわからない。

 

「‥‥肯定していいのかよ。叱る側じゃいけねえんじゃねぇか?」

 

「少なくとも可能性ある若人の夢を意味もなく終わらせる輩を、教師とは認めぇよ」

 

俺はなと口調に怒りを込めながら、鍋島は宣言する。

 

「そんな訳で、今回の暴力沙汰における罰則はねぇ」

 

心配すんなと不敵な笑みで鍋島は断言する。それを聞いて悠介の表情は変わらない。あの一撃を後悔する事は決してないが、己の行いゆえの罰則を受けないのは、話が違うのだろう。恐ろしいほどに真っ直ぐと筋を通す奴だ。と鍋島は薄く笑みを浮かべる。

だからこそ、起こるであろう戦いに横やりは入れさせてはならない。

 

「あのバカたれのことはこっちに任せな。オメェが警戒しなきゃいけねぇのは…」

 

「石田達西方十勇士だろ」

 

鍋島の言葉をつなぐように放たれた言葉。その言葉を聞いた鍋島は笑みを深くする。

 

「なんだ、やっぱ気が付てやがったか」

 

「石田が教師陣と手を組んで勢力を伸ばそうって話は、俺の耳にも入ってるからな。そして、あの野郎もそれに噛んでる。俺を討ち取れば、貸ができる上にかなり強力な後ろ盾になるからな。野心家な奴が、今回動かないわけがねぇ」

 

花丸の回答に鍋島はこれから起きる戦いを想像し、体が震える。どちらの在り方も決して間違いではなく、だからこそぶつかる若人達。これが興奮しないわけがない。

 

「用件がそれだけなら、俺は帰るぞ」

 

用が済んだといった感じで、そう告げて悠介は館長室から出ていこうとする。その背を見つめながら、つぶやいた。

 

「石田達はつえぇぞ………油断するんじゃねぇぞ」

 

「するかよ」

 

扉が閉まっていく中で、わずかな隙間から鋭い目線を見せながら悠介は、簡潔に告げた。自分一人となった場所で鍋島は、自身のすべきことをなすために行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠介に殴られた教師は、痛々しい傷の後を包帯で隠した姿をしていた。そして彼は、自身の持つ携帯に唾を吐きかける勢いで相手に告げる。

 

「いいか!!必ずあのクソガキを俺様以上の目にあわせろッ!!」

 

その時の光景を思い出し、湧き上がる恐怖は既に自身のプライドを汚した憤怒へと変わり、その全てを吐き出すように吠える。が、同時に傷が開いたような劇痛が襲い、床に打ちまわる。

 

『フフ、あまり叫ぶと傷が開くぞ、先生』

 

電話先の相手である石田は、笑みをこぼすながら教師をたしなめる。

 

「う、うるさい!!いいか、あのガキに必ず潰せ!!それが出来たなら後ろ盾にでもなんでもなってやるッ!!」

 

『ああ、委細承知した。必ずや期待に応えて見せよう』

 

石田は自身の満ちた声で告げて通話を切る。しばしの無言の後、教師は高笑いがあたりに響いた。

 

 

 

自身の携帯をしまった石田は、自身の右腕でもある島に告げる。

 

「島よ、十勇士を集え」

 

「はっ!」

 

自身の将たる言葉にためらうことなく役目を果たさんと動く。が、その瞳には迷いがある。

 

「ふん島よ、俺があんな輩の指示を仰ぐのは不満か?」

 

石田の言葉に島は言いどよむような姿を見せる。その姿に満足した石田は、その忠義心に満足したように言葉を紡ぐ。

 

「むろん、俺とてあのような輩にいいように使われるつもりはない。だが、奴の持つ権力はこの俺が出世街道を進むうえで重要なファクターだ。奴は俺がそれを得るまでの蓑にすぎん。出世街道を歩むためには、耐えねばならぬ時期がある。今がそれだと、俺は思っている。だからこそ、島よ俺の背は任せたぞ」

 

常に前を見るその言葉に感銘を受けたように島は「はっ!」と力強くうなずく。

 

「そして相良よ…………この俺の誘いを断ったことを後悔させてやる」

 

歯牙にもかけないように自身の誘いを両断した悠介の姿を思い出し、石田は唇をかみしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦の火ぶたが切られた翌日。噂は既に学校中に駆け巡っており、当事者たる悠介はいつも以上に腫れもの扱いを受けている。唯一発端となった少年が、悠介に駆け寄ろうとしたが、本人があしらった。彼の為にやったわけではないし、これからに彼を巻き込むわけにはいかない。その思いを短く告げる。やや渋ったものの少年は、どうにか納得した。

あたりに言いようのない殺伐とした緊張感が、張り詰める中授業が始まった。しかし、しばらくして、悠介は教室を無断で退室して、屋上に向かう。

あのままでは、授業にもならないだろうという悠介なりの気づかいだ。なくなりはしないだろうが、自分がいるよりはずっとましだろう。

屋上についた悠介は、給水タンクの近くで、寝転がり、ゆっくり瞼を閉じた。

 

時間がたって昼休み、ふと悠介の近くに人影が現れる。ゆっくりと近づき、懐から抜き出すは一本のクナイ。それが悠介に放たれようとした瞬間、偶然か必然か悠介のこぶしが握られる。

一瞬、息をのむ影だが、ためらうことなく振り切ろうとする寸前、屋上の扉が開かれた。

 

「っ!」

 

扉を開けた人物が、屋上に入ってきたときには、その人影はその場から消えていた。

 

「余計なお世話だったかな?」

 

現れた少女燕は、あたりを見渡しながら眠っている悠介に問いかけるようにつぶやく。既に悠介の拳は解かれている。

 

「授業はちゃんと出ないとだめだからね」

 

釘を刺すようにつぶやき燕は、屋上から姿を消す。扉が閉まった音が聞こえてしばしして、悠介は片目を開く。

 

「……めんどくせぇ」

 

釘を刺されたことに、悠介は小さく苦悶の声をこぼした。

扉を閉めて直後、燕は扉に背を預け

 

「頑張って…」

 

小さくつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐ろしいほどに何事もなく、悠介は放課後を迎えた。あまりのも拍子抜けに時間が過ぎ、悠介は言いようのないものを感じながら帰宅するために教室にバッグを取りに向う。

 

―――唯一らしかったのは、昼休みのそれだけか…

 

平穏な時間に疑問を感じながらも悠介は、教室に入る。瞬間、悠介の警戒心に何かが引っかかる。

辺りを見渡せば、別段何事もない風景。されど、何かが悠介のそれに引っかかる。

 

――――何か潜んでんな

 

何かを悟りながらも悠介は、警戒したそぶりを見せずに自分の机に置かれたバックを手に取り

 

「で、テメェは背後から奇襲か?」

 

「グッ!!」

 

後方に向かって裏拳を打ち込む。全く予備動作を見せずに放たれたそれを襲撃者は回避できずに吹き飛ばされるが…

 

「(手ごたえが軽い)身代わりか」

 

「何故に気が付いた」

 

悠介のつぶやきを拾うように、黒板の方から黒い衣装に身を包んだ男が現れる。

 

「別に、感だよ感。それで一応確認するが、テメェが十勇士の一人で違いねぇな」

 

「左様。某は十勇士の一人。鉢屋壱助(はちやいっすけ)

 

「そうかい。俺の名は…」

 

「相楽悠介」

 

「へぇ。流石は忍びってところだな」

 

自身の名を言い当てられても悠介は動じない。むしろ獰猛な笑みを浮かべる。

 

「テメェが宣戦布告を告げに来たって考えていいか?」

 

そう言いながら悠介はバックの中にある生徒手帳を探す。天神館の規則によって、互いの生徒手帳を重ねることで決闘の了承を告げる。だからこそ、悠介は自身の生徒手帳を出そうとするが

 

「否。宣戦布告は既に済ましている(・・・・・・・・)

 

「あ?」

 

壱助の言葉に疑問を感じた悠介がふと、視線を向ければ…

 

「この通り、布告は終えている(・・・・・・・・)

 

そこには十枚の生徒手帳(・・・・・・・)と一枚の生徒手帳を重ねるように置いて見せている。

 

「俺の生徒手帳…流石って言ったところか?」

 

「二重底で隠したところで、某には無意味である」

 

既に布告はされていた。ルールの外からの闇討ちと思われたが、実際は正当な行動だっただろう。おそらくいくつかある決闘方法の中でも奇襲など何でもありの自由型を選んだのだろう。

 

「決闘を避けるための策だったのだろうが、残念だったな」

 

絶望を伝えるように壱助は告げる。しかし壱助の予想に反して、悠介は不敵な笑みを浮かべる。

 

「何故に笑う?」

 

「なに、んなめんどくせぇ事しなくてもよ、受けたってのによって話だ」

 

「なに?」

 

バックの二重底は敵を作りやすい自分が、頻繁に決闘をしないようにと燕が施したもの。

 

「うんじゃまあ……仕掛けていいよなッ!!」

 

「ッ!!」

 

瞬間、悠介は壱助目掛けて地面を蹴って、俄然に迫っていた。跳びかかると同時に、放たれる拳を壱助はぎりぎりで回避する。

 

「流石に速いな」

 

「まさか某が奇襲を受けるとは…」

 

「それじゃあ始めるか」

 

握られた拳と闘争心が教室を満たす。既にほかの生徒の姿はない。存分にやっても申し分はない。

だが……

 

「否。某の仕事は奇襲と暗殺(・・・・・・・・・・)。失敗した今、某の仕事はこれにて終いなり」

 

「はっ?って、おい!!」

 

自身の言葉を告げ終えると同時に壱助は、悠介の前から姿を消す。あまりにも不意の行動に悠介は何もできずに見逃してしまう。

 

「ちぇ、ノリがわりぃな…………………まあ、ともかく開戦だな」

 

プラプラと拳を振りながらも悠介は、獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壱助と騒動の後、悠介は不満たらたらしながらも帰路についていた。

 

――――宣戦布告だけとはな……つまらねぇ。変に闘争心高ぶらせてせいで、ムズムズする

 

悪態をつきながら、悠介は校門に向かい帰路に着く。そこで気が付く、なぜか校門の中心に付近の道に誰もいない。

 

――――なんで道を開けて…

 

疑問に思いながらも、歩を進めば、回答はそこに立っていた。

 

「ガハハ。待っていたぞ!!」

 

上半身裸の大男が樽を傍に置きながら、道を遮るように堂々と立っている。そして悠介を視界に収めると同時に言葉を発する。

つまりそういうことだ。

 

「一応聞くぜ?十勇士の一人で違いねぇよな」

 

「おうともよ!十勇士の一人にして四国大使長曾我部宗男(ちょうそかべむねお)だッ!!」

 

「知ってると思うが名乗るぜ。相楽悠介だ」

 

長曾我部に近づきながら悠介は名乗りを上げる。

 

「布告早々に待ち伏せの一対一(サシ)喧嘩とはな」

 

「まどろっこしいい事は苦手でな。真っ向からぶつかってこそよ!!」

 

悠介の言葉に長曾我部は大笑いしながら答える。気が付けば、悠介はバックを放り投げ、拳を握り、闘争心を高ぶらせている。

 

「それじゃあよぉ……始めていいよな?」

 

「おうともよ」

 

既に二人の距離は、拳が届く間合いとなっている。悠介は好戦的な笑みを浮かべ、長曾我部はその笑みに応えるような笑みで答える。

周りにいた生徒たちは、あまりにも張り詰めた空気に足が止まっている。

誰もが見つめる中で

 

「オラァッ!!」

 

「フンッ!」

 

互いの拳が放たれ、ぶつかり合う。鈍い音が響き、二人は互いにわずかに後退する。

 

「はっ」

 

息を吐きながら、悠介は即座に長曾我部に向かって駆ける。速度を乗せ、更に威力を高めた拳を長曾我部に打ち込む。

 

「むぅぅ!!」

 

体制が整う前に放たれた悠介の一撃に苦悶の声をこぼしながら、地面に倒れながら吹き飛ぶ。

吹き飛んだ長曾我部に追撃を仕掛けるために、さらに加速し間合いを飛び越えるように飛び跳ね、鋭い蹴りを放つ。しかし、長曾我部は即座に体制を整え、迫りくる悠介の蹴りを受け止める。

 

――――動かねぇ

 

取り外そうとするが、捕まれた足はピクリとも動かない。直後、長曾我部は大きく体を回転させ、悠介を思いっきり投げ飛ばす。勢いが強く悠介はろくに受け身も取れずに、地面に激突するが、即座に立ち上がる。

 

「なるほど、名前負けはしてねぇみたいだな」

 

「ふん、当然よ。鍛え抜かれたこの肉体こそ、その証明よ。そしてお前もやるよぉ」

 

「それこそ当然だ」

 

互いの強さを確認しあった二人は、自然に笑みを携える。

 

「そのお前の強さに敬意を表して、俺も全力を出そう」

 

「あん?」

 

全力を出す。そう言った長曾我部は、先ほど自身の傍に置いていた樽を持ち上げたと思えば、樽の中にある液体を全身に浴びた。

 

――――なんだ、油か…?

 

「先祖秘伝、オキザリスの花から作った強力油!!ぬめりが違うぞ」

 

夕日に照らされ光沢を放ちながら長曾我部は、タックルの構えをとる。

今までに見たことのない戦型に若干戸惑う、悠介だが

 

――――ぶつからんことには、何もわかんねぇか

 

決意を固めるように悠介は固く拳を握り…

 

「行くぞッ!!」

 

「来い!!」

 

二人は再び激突した。

 




いかがでしたでしょうか?
本当に久しぶりなので、違和感とかあったら教えてください

ここから熱いバトルにしていきたい!!


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