真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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・・・一週間丸々部活で出店するために働き、それが終わったと思ったら速攻テスト
一体何時勉強しろと?単位が死んだ

っとまあ、下らない報告は置いといて更新です



悠介とペア探し

今日は待ちに待った終業式。恐らく多くの学生達にとっては、待ちに待った時間といえるだろう。それは川神学園の生徒達も例には漏れない。

グラウンドで集合した面々だが、場の空気の違和感に気がついているのか、ガヤガヤと落ち着きがない。

 

「おい、テレビが来てるぜ!!あれ雪広アナじゃねえか」

 

「エグゾエルのメンバーもいるわよ。…でも竜造寺は来てないんだ。私ファン何だけどな~」

 

ヨンパチと千花の言う通り、テレビでよく見かける有名人たちがちらほらと集まってるのだ。

 

「あのメンツはニュースDEドゥーンの撮影か?」

 

「たぶんそうだろうね。竜造寺の代わりに別のメンバーが来てるみたいだけど。義経たちクーロンの取材かな?‥‥なんだか嫌な予感がするよ」

 

テレビカメラの存在もあるのか多くの面々は落ち着かないでいる。そんな中で終業式が始まれる。

 

 

鉄心が台に上り、集まった生徒達を見渡す。

 

「さーて明日からは楽しい夏休みじゃのう、皆。生水に気を付け、昆虫採集に勤しむのじゃぞ」

 

(一体いつの時代の話をしてるよ、学園長は)

 

(…‥ギャグのつもりだ‥‥よな?)

 

鉄心の言葉に千花と悠介は呆れの言葉を内のこぼす。

 

「さあて、冗談は此処まで。本題に入ろうかの」

 

(やっぱギャグだったのかよ)

 

「夏といえば祭じゃが‥‥今年はドデカいのがあるぞい」

 

ふとして告げられた一言に誰もが耳を傾ける。そんな中で悠介は一人拳を強く握る。

 

「皆知っていると思うが、八月に川神院主催で川神武闘会が開催される。今年も普通にやろうと思ったんじゃが‥‥折角義経達も現れた事じゃし、今年は特別に規模を大きくしてやってみようと思うんじゃ」

 

鉄心の言葉に、周囲はざわつく。それと同時になぜテレビ局が居るのかを理解する。

 

「おお!!燃えるじゃねえか」

 

「確かにキャップとかは喜びそうだね」

 

「実際に喜んでるしな」

 

「だが、予算はどうするのだ?施設や行事を縮小するのだろうか?」

 

次々に憶測などが飛び交う中で

 

「スポンサーは九鬼財閥がしてくれるので予算の心配はしなくていいぞ」

 

「フハハ。皆の者心配ご無用じゃ」

 

「我ら九鬼が全力でバックアップするのでな。存分に楽しむがよい」

 

告げられた言葉に、皆一同に納得する。

 

「ではどんな武闘会になるかというとじゃなッ。みんなー気になるか―――い、う、ごほっゴホゴホッ」

 

「は、はしゃぎすぎですヨ!大丈夫ですカ総代」

 

(年取ってんのに、若者らしく振舞おうとするからだろ)

 

むせこんだ鉄心の姿に悠介はため息をこぼす。ふと視界の端にルーの事を憧れる様に見る一子が映りこみ、悠介は複雑な目で一子を一瞬見る。

 

(‥‥まだダメか)

 

胸の内の言葉を飲み込み、悠介は再び話に耳を傾ける。

 

「気を取り直して、儂はこの大会を『若獅子タッグマッチトーナメント』と名付ける事にした!!」

 

タッグマッチ(・・・・・・)。一人ではなくペアの戦い。今までとは全く異なる言葉に、驚きの声が上がる。

 

「ただ競い合うのではない‥‥今の時代だからこそ『絆』をテーマにしたくての。ペアという縛りを設けたのじゃ。自分が信じ認めたペアと勝ち進んでほしいの」

 

 

「日時は今から五日後。七浜スタジアムで行われまス」

 

「五日後‥‥早いな。犬は知っていたか?」

 

「普通の武闘会にだけはしないって聞いていたわ。それでもここまで早いなんてね」

 

「隣町のスタジアム。だからこんなにも早いのかも」

 

様々な考えが飛び交う中、悠介は何かを考え込む姿を見せる。

 

(ペアか‥‥ちょいと不味いな。俺の条件(・・)に合う奴を見つけれるか?)

 

考え込む中でも話は進んでいく。鉄心の話を引き継ぐ形で現れたのは、ヒュームとクラウディオ。二人の話をまとめると

 

一つ、参加資格を持つのは、25歳以下の男女限定。(国籍問わず)

一つ、刀剣類は、峰打ちかレプリカのみ許可

一つ、銃火器は、指定の弾のみ許可

一つ、2対2の戦いで、どちらか一方がKOされるかリングアウトの10カウントで負けとなる

 

絆がテーマが故、どちらが一方が強くても意味がない。大物食いが起きやすいルールである。

全員が静かに二人の話を熱心に聞いている。

 

「ではこのトーナメントを勝ち抜いた者に、与えられる権利は何かと申しますと、一つは…絶大な名声…そして」

 

「スポンサーの九鬼から様々な贈り物がございます」

 

「若者に大金は毒ですので…‥現物支給となります」

 

「支給される品はWEBに公開しております」

 

「更におまけに…」

 

「九鬼財閥での重役待遇確定書もお付けしましょう」

 

語られる商品の数々に参加の熱が跳ね上がっていく。

 

「また、大会を優勝した者達には、武神・川神百代と決闘(・・)する権利(・・)を与えちゃうヨ」

 

ざわつきが一層大きくなる。悠介はその発言を受け、目線を三年の方に向ける。一瞬交差するのは百代との視線。

笑みを互いに交わす。それだけで二人のは十分。

 

数々の興奮を生み出しながら、終業式は無事に終わった。

しかしその放送を受け、世界各地の猛者たちが名乗りを上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後 帰り道。悠介と燕は先ほどの武闘会について話しながら帰ってる。

 

「それにしてもタッグマッチとはね。これは結構大変だよ」

 

「…嘘つけ。もう大体組みたいペアの目星つけてんだろ」

 

困ったなと頭を抱えるフリをしていた燕に悠介はため息をこぼしながらツッコミを入れる。

 

「ありゃ…やっぱり悠介君にはお見通しか」

 

「何年テメェの腹黒に付き合ってると思ってんだよ」

 

「ちょっ!その言い方はひどいよ!!」

 

互いに軽口をたたきながらも、二人は自然に互いが組むという選択を取らない。確かに二人が組めば優勝し目的を発する確率は跳ね上がるだろう。恐らく、自分の動きに一番合わせて自分の良さも出せるのは燕だけだろうと悠介は考えている。伊達に幼馴染をやっていない。

そして二人でなら百代を倒せる確率も上がるだろう。しかしそれでは意味がない。己の目的を達するためには一人で倒すしかないのだ。だからこそ、悠介も燕も組もうなどとは言わない。

優先すべきは、あくまでも自分の目的。その為に例え、その想いを踏みにじる事になったとしてもだ。

 

「大方、直江と組む心算だろ。一定以上の回避力と生き残るための知略を持ってるからな‥‥お前と相性良さそうだ」

 

最近よくつるんでるらしいしな。と自分の予想を告げる悠介。

 

「お見事。花丸百点だよ。…‥それにしても私が大和君と仲良くしてるってよく知ってるね」

 

「直江の奴が周りに言ってたからな。島津辺りが、恨みの叫びを叫んでたし」

 

「…‥ふ~ん」

 

「何でガッカリしてんだ?」

 

「え?…あ、うん何でもないよ」

 

「そうか」

 

単純に少し位嫉妬してくれても良かったんだけどな。そんな想いが沸き上がったとは流石に言えない。

 

「そう言えば、悠介君はペアの宛あるの?」

 

「それなんだよなぁ。マジでどうすっか」

 

今度は悠介が困ったと頭を掻く。その反応を見た燕は、自分の中で生まれた考えを口にする。

 

「もしかして悠介君。ペアになっちゃうとその人と戦えないからって、候補減らしてる?」

 

「…‥‥‥‥‥‥」

 

燕の指摘に悠介は視線を逸らす。それは燕の考えが的を得ている証拠。実際、終業式後一子やクリスからペアの申し出は合ったのだが、戦いたいからとその申し出を断っている。

 

「悠介君‥‥」

 

「わあってるよ」

 

燕が言わんとしている事はよくわかる。ペアを見つけなければ、そもそも参加も出来ないのだ。それでは目的を達する以前の問題になる。

 

「少し拳振ってから帰るわ」

 

分かれ道で悠介は燕に告げ、燕もわかったと口にする。燕の後ろ姿を見送りながら悠介は上を見上げ

 

「マジでどうすっかなあ」

 

本当に困った様に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川神山。何時もの様に悠介はここで拳を振り抜いている。周りには一部が砂塵と化した岩が多くその技を試しているとこが見て取れる。

 

「ふぅ‥‥両手はほぼ万全だが…」

 

今一度己の拳を見つめる悠介。足りない。あと一つあと一つがどうしても足りない。寸前までは行けているのだが、どうしても最後の最後でブレてしまう。

 

「何が足らねえ?」

 

試せることは自分なりに全て試したつもりだ。それでもヒントすらつかめない。

 

「クソッ」

 

焦っても意味がない事は判っているが、時間的余裕もない。わかっていても焦ってしまう。

 

「落ち着け…‥足りないモノを探せ」

 

息を吐き、ゆっくり感情を鎮める悠介。ある程度落ち着いた悠介は、近くに設置しているビデオカメラの映像を見始める。

 

「両手打ちの時と片手打ちの時とじゃ、フォームに違いはみれねえよな。…‥‥だとしたら精神的な問題だよな?。何が足らねえ…‥覚悟か?」

 

頭の中のイメージとカメラの中の自分のフォームを重ね合わせる。動きに対した違いはないように見える。だからこそ、尚更に迷い戸惑う。

 

「此処に来て…‥また足踏みか」

 

やりきれねぇな。そう思いながら悠介は帰宅する為の準備を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗がりの中悠介は、ペアの事を考えながら帰路を歩いている。

 

「さて二重の方も問題だが、こっちもマジで問題だよな。誰と組むか‥‥‥俺一人に戦闘を任せてくれてかつそこそこ負けない実力を持ってる奴…‥そんな都合のいい奴なんか、マジで直江位じゃねえか」

 

改めて燕のセレクトが的確である事を再確認する。

 

「竜の奴は暴れる事を我慢できるとは思えねえし‥‥ゲンの方は、一子の方に行ったポイし…‥」

 

マジで選択肢がねえと空を仰ぐ悠介。そんな中、ふと河川敷に目線を向ける。

 

「うん?ありゃ…テントか?昨日までなかったよな‥‥つか、何か見覚えがある様な」

 

何故だろう凄く見たことのあるテントの方に悠介は進んでいく。近づくたびにやはりテントに身に覚えを覚える。

そして川の近くに人影が映りこむ。

 

「うんん?‥‥まさか」

 

余りにも見知った姿に悠介は驚いたような戸惑ったような声をこぼす。

 

「はぁ‥‥今日の収穫ゼロか。晩御飯…‥‥どうしよう」

 

そこにいたのは正に幸薄そうな美女。しかし、悠介にはひどくその姿に見覚えがあった。

 

「た、天衣ッ!!。お前何でこんな所にいんだ!!?」

 

「へ?‥‥って、ゆ悠介!!ど、どうして此処に!!?」

 

そこにいたのは、かつて悠介と同じく松永の家に居候していた元・四天王の一人橘天衣だった。




いかがでしたでしょうか?
何気に『紋白の依頼』で僅かに存在が示唆されていた彼女の登場です
そして、言わなくてもわかると思いますが、一応にヒロイン?候補です

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