真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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今回悠介の意外な特技が明らかに!!・・・・ちょっと、やっちまった感あるけど、祭りだし八チャケても大丈夫だよね?

楽しんでくれたら嬉しいです!!


悠介と水上体育祭 その3

昼休憩を終え、いよいよ始まる午後の部、最初の競技は『水上歌合戦』 ルールは普通の歌合戦に同じ。そして女子限定の競技である。

スクール水着で歌う女子の姿に、男子達のテンションがうなぎ登りに上がる。

 

「いいの~。若返るの~」

 

「総代。少しは自重して下さイ」

 

十代の男子達に混ざり、テンションを上げる鉄心。それを止めるルー。二人の姿を悠介が呆れた表情で見ている。

そして更に男子達のテンションが上がる存在が登場する。

 

「次、松永燕!!歌いまーす」

 

颯爽と水上に置かれた台の上に上がる燕の姿に、ボルテージが際限なく高まる。燕は声援に笑みを見せながら手を振る。その姿を見た悠介は、慣れてるな~と達観したような表情で見ている。

 

「やっべ!!燕先輩マジで可愛いぜ」

 

「ちょ、落ち着きなよガクト」

 

「何言ってんだよモロ。お前だって、さっきからチラチラと見てんじゃねえか」

 

「でも確かに、自分達から見ても可愛らしいな」

 

「女としての満足感をありありと感じる…」

 

燕の纏う空気に京たち女子達は、ある意味羨望の目を向けてる。

 

「歌うのは納豆小町の曲『I_Love_ねばねば~ライフ』です。聞いて下さい」

 

流れる曲と燕の歌声に、誰もが引き付けられる。

 

「なんだか、凄く納豆が食べたくなってきたぞ」

 

「私も」

 

「何と言う洗脳力」

 

ダンスする様に身体を動かし、歌う燕。

 

「松永燕にこんな才能があったとは…」

 

「う~ん、川神水と合うなら食べてもいいかもね」

 

「義経も食べたくなってきた」

 

燕の歌に誰もが引き込まれていく。そんな光景を見ながら悠介は、二人で歌詞を考えた時を思い出す。

最初はいやいやだったのだが、一緒に考えるうちにはまり込んだ。

 

―――こんな感じでどうかな?

 

―――いや、それだったらつながりが薄くなるんじゃねえか?

 

―――ふむふむ。だったら、こっちの方が良いかな

 

―――まあ、お前らしくていいんじゃねえか

 

―――うん。ありがとう

 

「よくやるぜ。本当に…」

 

当時の事を思い出し、悠介は感嘆の声を漏らす。最愛の母と離れる事となり、それでも健気に笑う燕の姿。だから自分は、力に成ろうと思ったのだ。ある意味この歌は、悠介が燕に力を貸した証なのだ。

悠介がふとした過去を思い出している間に燕の歌が終わる。それと同時に拍手が鳴り響く。悠介も周りに会わせ、拍手を送る。しかし、その中で燕と悠介の目線が一瞬交わる。

 

―――ニヤリ。

 

「ッ!!?」

 

ヤバイ。長年共に居た経験と勘が悠介に悪寒を感じさせる。手を打たないと不味い。そう思い、とにかく燕の視界から身を隠そうと動かすが。根本的な話で、悠介は完全に油断し後手に回っている。よって、勝者は言うまでもないだろう。

 

「皆さん、応援ありがとうございます。そんな皆様にご提案がございまーす」

 

ある程度歓声に応えた燕は、元気よく提案を述べる。

 

「一体なんじゃ?」

 

「それはですねー、私と悠介君の二人でデュエットで歌いたいと思いまーす!!」

 

「はあッ!!」

 

燕の提案に悠介は、意味わかんねぇと言わんばかりに声を上げる。それは周りのメンバーも同じである。

百代は驚きの声を上げる。京極は興味深そうな表情で燕を見ている。清楚は単純に悠介が歌えるんだと驚いている。

冬馬は大変面白そうに。井上は気の毒そうな顔を。マルギッテと弁慶は、驚きながらも興味深そうな面を見せている。

そしてそれは、悠介がいるF組でも同じ。

 

「おいおい、何だ!!面白そうな事になってんじゃねえか」

 

「ふっざけんな!!何でリア充を見なきゃいけねえんだよ…いくら美人の先輩の頼みでも聞けねえな」

 

「‥‥ガクト」

 

「‥‥大丈夫か、相楽」

 

誰もが燕の発言に注目する中、ゲンが一人頭を抱えている悠介に声を掛ける。その発言にも悠介は答えずに頭を抱えている。

 

「これは…相当重傷だな」

 

「まあ仕方ないわよ」

 

「って言うか、ゆうっちって歌えるの?」

 

「確かにイメージ無いですね」

 

小笠原の言葉に悠介は、何も答えない。と言うか、本当に答えたくない。昔納豆ソングを考える中で、燕の策に嵌り歌わされた事があったのだ。その時の燕の大笑いが何となく悔しくて、修行の合間を見つけては必死に練習して、一泡吹かせたのだ。

しかし、それがダメだった。完全に目を付けられ、自前の持ち歌を考えさせられたのだ。その数は全部で『六曲』。三つの曲はいい。それ自体は、自分なりに気に入っている(それでも人前で歌う気はなれないが)他三曲は、完全に自分に合っていない。

しかも、二曲あるデュエット曲の一曲は完全に自分に合っていないのだ。

 

―――いやだ。絶対に歌いたくねえ

 

そんな悠介の感情を読み取ったのか。鉄心は、ニヤリと燕と同じ笑みを浮かべる。なるほど、これは面白そうだ。男子だけならば、苦情が出るだろうが、女子がつくならば…

イケるかの?と言う鉄心のアイコンタクトに燕は、大丈夫ですと答える。ならばと良いじゃろと鉄心は頷く。瞬間、信じられない悪寒が悠介襲った。

 

「いいじゃろ。偶にはそう言うのも悪くもないしのぉ。ワシの権限で許可する」

 

「ありがとうございます、学園長!!」

 

「…待ちやがれ!!俺の意思を無視するんじゃねえッ!!」

 

「うるさいのぉ。これも祭りに醍醐味じゃ。男なら、腹くくらんかい」

 

「そうだよ、悠介君。それに始まる前に言ったよね?貸し一だよって」

 

決定に対して吠える悠介だが、悲しいかな全く意味をなさない。ならばと、周りの男どもを味方に付けようとするが、燕の『お願い』と言う言葉に、完全に撃沈。

最早味方が居なくなり、悠介は完全に打つ手がなくなった。ゆっくりと自分に近づく燕の足音が、死刑執行の針の音に聞こえる。

 

「ほら行こうか、悠介君」

 

その言葉に対して悠介は、力なく頭を垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何でこうなった?水上のステージに立ちながら悠介は何度も自問自答を繰り返すが、答えが見つかる訳がない。

 

「さて、そろそろ始めようか」

 

「‥‥‥わかった」

 

此処まで来たら仕方がない。本当に本当に嫌だが‥‥‥やるしかなだろう。後で、記録した奴は潰す。そんな感情を身体から発し、けん制する。(のち、燕との交渉の末、どうにか記録した危機の削除には協力を得れた)

 

「それでどっちを歌うんだよ?『U-n-d-e-r-STANDING』かそれとも『2 of a Kind!』か?希望的には、後者で頼む」

 

「う~ん、両方やるよ。絶対に」

 

「…‥もう、何も言わねえよ」

 

「ありがと。それじゃあ、最初は『U-n-d-e-r-STANDING』から行こうか」

 

「はあ…ここまで来たら、楽しんでやるよ。だから、頼むぞ」

 

悠介の発言に燕は目を丸くする。しかしそれは即座に笑みに変わる。ああ、こう言った切り替えの早さも今の瞬間を楽しむ時は大切だ。

 

「悠介君、大丈夫かしら」

 

「ああ、確かに心配だな」

 

「あっ!始まりますよ」

 

最初、誰もが大した期待もしていなかった‥が。それは始まる前までの話。

一度始まれば、二人の歌に引き込まれた。悠介の声音から今を疾走するそんな想いが伝わる。燕の声音から、何時までも支えて見せる。ついて行くと言う想いを感じ取る。

 

「凄い」

 

そう呟いたの誰なのかは判らない。だが、先ほどまでの表情が嘘の様に真剣に歌う悠介。そして一人で歌う時よりも楽しそうに嬉しそうに歌う燕。

その燕の姿に、大和達男子ははふと魅入られる。そして、百代達一部の女子は、何処か焦りの感情が湧き上がる。

 

そして爽快に入り込んでくる恋愛の歌詞が、百代達の心を揺るがす。燕の今を女子としての満足感が、彼女の魅力を更に引き立ててるのかもしれない。いや、実際にそうなのだから、百代達はなぜか焦りが生まれ、大和達は魅入られるのかもしれない。

 

そして遂にクライマックスに入る。

 

「「探してみて」」

 

二人の声が終わる。瞬間、静寂が場を支配する。そして大歓声が上がる。その歓声に二人のは笑みを浮かべる。

その歓声の中には、ヒュームを初めてとする面々も混じっている。それだけの想いが感じられたと言う事なのだろう。

 

「実はもう一曲あるんですが…アンコールありますか?」

 

燕の言葉に誰もが賛成の声をこぼす。

 

「それでは聞いて下さい『2 OF a kind!』聞いて下さい」

 

その曲は先ほどとは違い、腐れ縁や何か深いモノを感じさせられる曲。悠介の方は変わらないが、燕の雰囲気が少し異なる。先ほどの曲とは違い、支えるのではなく見守ると言う面が強い。

これには理由がある。単純にこれは、悠介が自分なりに気に入っている曲なのだ。理由としては、悠介があの夢で見た憧れの男と女医の関係を歌ってみた曲なのだ。当然燕には、怪しまれたが力づくで強引に隠したが…

まあ、肝心の燕も何処か気に入ったので、問題はなくなったが。(それでも一部気に食わない歌詞があるとぼやいているが)

 

先ほどの曲とは違い、若干らしくなった悠介の声音。だからだろうか、より悠介の決意の様なモノを感じるのは。必ずその場所へ。聞く者にそう宣言する声。ふと、百代や弁慶やマルギッテや清楚そしてステイシーや李などの女子達一部の女子達はその声音に引き込まれる。

そして大和は、何処か悔しさがにじみ出る。なぜだかはわからないが、それを認めるのを大和は拒否した。

 

そしてクライマックスに入る。

 

「「シャレにもなんないね」」

 

結果、水上歌合戦は大成功を博した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時のテンションに身を任せる者は、身を亡ぼす。と誰かが言った。そして今、正にそれを体現している者が一人。

 

「‥‥‥‥」

 

「お、おい」

 

ゲンの問いかけにも悠介は答えない。と言うか、答えるだけの気力がない。全身から暗黒オーラを出す悠介の姿は、ある意味で珍しい。

 

「悠介君。そんなに落ち込まないで、凄くうまかったわよ」

 

「そうだぞ、相楽」

 

一子とクリスが、元気を出してと言うが、今の悠介には完全に逆効果だ。結局、悠介が立ち直ったのは、最終競技が始まる前だった。

 

 

「さて、いよいよ最後の競技じゃ。その名も『怪物退治』!!着ぐるみを被った川神院の門下生を倒せば、終了じゃ。クラスで力を合わせねば、勝てぬぞ。倒したタイムが速いほど高得点という訳じゃ」

 

鉄心の言葉が終わると同時に、クラスの各場所に着ぐるみを着た門下生が姿を現す。

 

「って、何でジジイが居るんだよ~~」

 

「ありゃま…本物の怪物が出てきちゃったよ」

 

「文句を言うではないわ。フェアに勝負を行う為じゃて」

 

 

「さあ、君達の実力を見せて貰うヨ」

 

「義経たちの相手は、ルー先生か…頑張るぞ!!」

 

「めんどくさいなあ」

 

各自、簡単には行かない怪物が並ぶ。そして悠介たちFクラスにも、フランケンシュタインを思わせる熊が現れている。

 

「さあ~って、やるわよ~~!!」

 

「ああ、ここで勝てば我らの勝利だ」

 

「ようし、大和お前の出番だ!!」

 

「任せてくれ」

 

誰もが気合十分という中、悠介もまた身体をほぐす。ふと、悠介が視線感じる。しかし、それも一瞬の事。その為悠介は、気のせいかと再び身体をほぐし始める。

 

「おい相楽。大丈夫なのか?無理だったら、休んでろ」

 

「心配するなよ、もう大丈夫だからよ‥‥でも、頼むから傷を思い出させないでくれ」

 

「わかった」

 

ゲンの言葉に悠介は、大丈夫だと答える。どうやら記憶の奥底に封じ込めた様だ。

 

「それでは、始めッ!!」

 

二人のやり取りが終わると同時、開始を告げる合図が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合図と共に、一子にクリスそして京が目標に向かって駆ける。事前の打ち合わせ通りの動き。三方から動きを止めに掛かるが

 

「むぅ」

 

「なに!?」

 

「わっ!」

 

その動きにくそうな容姿からは想像できない程軽やかに躱す。しかし、そこには既にガクトが待ち構えている。

 

―――へぇ、伊達で軍師をなのってるわけじゃねえな

 

恐らくは大和の指示。軍師としての能力の高さに悠介は内心で感心する。

 

「おらっ!!その足貰ったぜ!!」

 

カシッ!と熊の脚を掴むガクト。熊が地面に倒れ込む。瞬間、多くの生徒達が熊に覆いかぶさるように動く。

詰め。誰もがそう判断したが

 

「うおっ!!」

 

脚を抑えていたガクトの絞めから、無駄のない動きで脱する。そして襲い掛かって来る生徒を躱す。しかし、そこには悠介が既に構えて立っている。

一度軽く息を吐く。拳を放つ直前

 

―――ッ!?

 

感じる悪寒。手を抜いて放つわけでは無い。それでもチームプレイの為、ある程度抑えて打つと決めたその意思を嘲笑うような悪寒。

考えたまでもなく、身体は全力を放った。

そしてそれに答える様に、熊もまた拳を放った。

 

ぶつかり合う拳と鈍い音。そして、弾き飛ばされる悠介。

 

「うそッ!!」

 

衝撃の光景に誰もが驚く。あの川神百代の一撃をもってしても怯まなかった悠介が飛ばされたのだから。

 

「!!‥チィ」

 

飛ばされる中で悠介は、何かに気がつく。そして哂う。それは嬉しさゆえか、無意識かはわからない。

刹那、悠介の纏う雰囲気が変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊から放たれる連撃の前に、一子達は攻めあぐねている。

 

「厄介だな」

 

「ああ、まさか相楽を吹き飛ばすとは。おい、犬。あの正体は誰だ?」

 

「わかんないわ。…でも少なくとも動きは川神流だし、うちの門下生なのは確かなんだけど」

 

「それにしても妙」

 

「妙って、一体何がだ京?」

 

京の言葉に反応したのは、少し後ろで戦況を見ていた大和。大和の言葉に京は、熊から視線を逸らさずに語る。その行動自体が、ある意味奇妙さを浮き出させる。

 

「うん。あのね、大和。さっきは、相楽を吹き飛ばすほどの実力を見せたのに、今はどう?」

 

「どうって…攻めあぐねてはいるけど、チームプレイが効いて上手く流れを引き込めている様に見えるけど」

 

そうそれが普通の視方。事実、ゆっくりとだが熊に接近出来始めている。しかし、武を納める彼女達は別だった。

 

「でもね、だったら何で相楽を吹き飛ばせたの?」

 

「それは悠介の奴が、頭一つとびぬけていたからだろ…違うのか?」

 

「ううん。たぶんそれで在ってる」

 

「だがそれだと、今の動きに説明が出来ないの」

 

「ああ、自分達に攻めさせていながらも、決して致命的な隙も動きも見せない」

 

「まるで待ってるみたいなの、誰かを」

 

「もっと細かく言うと、自分達を見ていない(・・・・・・・・)だ」

 

「感じるのよ、大和。あの人から感じる圧倒的な技量の差を」

 

三人の言葉に大和は答えない。そしてその疑問は、熊と戦っている一部のメンバーも感じている。

 

 

「おいおい。どうなってんだ?」

 

「ああ、攻撃は決まってる筈で押してる筈なのに、最後が決めれねえ」

 

「俺らなんか眼中にないってか…うおおお、ムカつくぜ」

 

ガクトにゲンそして風間もまた、彼女たち程ではないにせよ、その違和感を感じている。

それでも攻めようと熊に視線を向けると同時、三人は後方より風を感じた。




因みに、悠介の持ち歌は『U-n-d-e-rSTANDING』(アニメ版マジ恋のOP)
           『2 of a kind!』(キャラソン 左之助&恵)
           『一発野郎(嵐を呼ぶ男)』(キャラソン 左之助)
           『心の裸』(キャラソン 左之助)
           『そばかす』(るろ剣のOP)燕に夢を題に書いてみてと言われ制作(最初は、燕が歌うモノと言われていた)
           『1/3の純情な感情』(るろ剣ED)燕に恋愛についてと言われ制作(これも同じく、最初は燕が歌うモノと言われていた)です

因みに、下の二つは一応燕も歌えます

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