真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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連続投稿です
久々の為、文の書き方忘れかけてたのですが、ゆっくりと思い出してきました
とりあえず、午前の部はこれでお終いです



悠介と水上体育祭 その2

一度目を閉じてゆっくりとお題の書かれた紙を見る悠介。しかし現実は変わらず、書かれている内容は『水着美少女の写真十一枚(スク水限定)』の文字。悠介は、薄く笑みをこぼしてから叫ぶ。

 

「‥‥‥ふ、ふざけんなぁぁああああッ!!エロジジイッ!!」

 

悠介がそう叫んだのも無理はないのかもしれない。

 

「ゆっとくが、変更は許さんぞ」

 

「いやいや、それ以前だろ!!ふざけんな、それでも教師かッ!!」

 

「わしには、聞こえな~~い」

 

「この老害ジジイが…」

 

言っても無駄だと悟った悠介は、ルーに視線を向けるが

 

「すまないネ、悠介。これでも妥協して貰ったんダ…頑張っテ」

 

「ほれ。はよおせんと、敗けてしまうぞ」

 

本当に済まなさそうな表情を見せる。そして畳みかける様な鉄心の言葉に、悠介は苦汁をなめた様な表情を見せながら、自陣に向かって走る。

 

「ほほほ。まさか悠介の奴が引き当てるとわな…こりゃあ楽しみだわい」

 

悠介の後ろ姿を見ながら鉄心は、面白そうな表情を見せる。その後ろでルーが本当に気の毒そうにすまなそうに悠介を見ていた。

 

 

走りながら悠介は、これからを即座に考える。幸い題をクリアする為の宛はある。

 

「どうしたの悠介君」

 

「何か手伝うべき事でもあるのか」

 

一子とクリスの言葉に悠介は、説明する事すら嫌なのか、題の書かれた紙を見せる。

 

「…つう訳で、一子、クリス、椎名、小笠原手を貸してくれ!!」

 

一瞬呆れた表情を見せた二人だが、仕方がないと了承する。

 

「恥ずかしけど、わかったわ」

 

「勝つためだしな、仕方がないな」

 

「しょーもない…けど、仕方ないよね」

 

「まあ、ゆうっちなら、いっか」

 

四人からの了承を得た悠介は次に必要な物を持つであろう人物を探す。

 

「おい、福本は何処だ?カメラを借りてぇんだが‥」

 

「ヨンパチなら始まると同時に海に行っちゃったけど…」

 

悠介の言葉にモロは、海の方を指しながら答える。その言葉を聞いた悠介は、参ったなと顔を顰める。

 

「どうすっかな、カメラがねえと意味がねえんだが…誰かほかに持ってる奴いねえか?」

 

そんな悠介の言葉にスグルが無言でデジカメを差し出す。

 

「お!助かるぜ、スグル!!」

 

「ふっ…壊すなよ」

 

「勿論だ」

 

スグルの言葉に悠介は、本当にサンキューと告げる。そして四人を写真に収める。

 

「それで悠介…他に当てはあるのか?」

 

「まあとりあえず、三年の方に行こうと思ってな。百代や燕に当たってみるさ」

 

そう言いながら悠介は、既に三年F組の方に向かって走り出す。悠介が彼女たちの前に現れたのは、さして時間もかからなかった。

 

「およ?どうしたの、悠介君」

 

「何だなんだ?もしかして、私がお題か?…仕方ないなあ」

 

「近からず遠からずだ。説明もめんどいし、これ見て悟れ!!」

 

そう言いながら悠介は、先ほどと同じように二人の前に紙を差し出す。内容に目を通した二人は、ニヤニヤと笑みを浮かべんがら了承する。

 

「そだ。お前らから見て、美少女って感じのクラスメイトも連れて来てくんねえか?」

 

「そう思ってもう…呼んでるよん!!」

 

「ワターシ美少女!!」

 

「勝つためなら仕方がないで候(うわ~~何かグラビアみたいで緊張するな)」

 

「おお、生徒会長にゆみゆみか…確かにF組の美少女勢ぞろいだ」

 

その四人を悠介は、しっかりと写真に収める。

 

「それで悠介君…他に当てあるの?皆結構手間取ってるみたいだけど…」

 

「まあ、黛に頼もうかと。直江の話聞いてたら、なんか同盟組んでるらしいからよ。頼めば、どうにかと思ってな」

 

「まゆまゆか…確かにいい線だぞ」

 

だろ。と言いながら悠介は、黛の方に向かって走る。周りを見れば、他のメンバーも燕の言う通りかなり苦戦している様だ。

 

―――このままペースを落とさずに行きてえな

 

「あれ?相楽先輩。どうしたのですか」

 

「どうしたのまゆっち」

 

黛自身は簡単に見つかった。しかも幸運な事にその隣に居る少女も紛れもなく美少女と呼べるだろう。

対する悠介は、二人に恒例の様に題の書かれた紙を見せる。紙の内容見た二人は、アワアワと顔を赤らめさせる。

 

「わりぃ…恥ずかしいと思うが、頼む写真を撮らせてくれ!!」

 

二人の恥ずかしさを理解できる悠介は、ひたすらに頭を下げる。ここまで来たら、悠介自身意地の域になっている。悠介の言葉を受けた、黛と川神学園一の野球好きの大和田伊代は、恥ずかしながら了承する。

 

「本当にわりぃ。後で絶対に詫び入れるわ」

 

珍しく誠心誠意感謝を述べてからその場を後にする悠介。走りながら周りを見るが、未だに大丈夫そうだが、油断は出来ない。

 

―――後一人なんだが…

 

周りを見てみるが、これ以上協力してくれそうな面々はいない。

 

―――S組に固まっているのが、キツイよな

 

そう言いながらも視線を巡らせる悠介。ふと、視線の端にある人物が映りこんだ。それを確認した悠介は薄く笑みを浮かべる。

そのまま猛スピードで、そこへと直行する。

 

「李!!」

 

「相楽様ですか…どうしましたか?」

 

悠介が見つけたのは、スク水姿の李。年齢も若くスク水‥完全にお題と一致している。

だからこそ、悠介は題の書かれた紙を見せる。

内容を読んだ李は、しばし思考する。

 

「…わかりました。少々恥ずかしいですが、貴方の(・・・)頼みならいいでしょう」

 

「本当か!!助かるぜ」

 

李の言葉に悠介は、嬉しそうな笑みを見せる。いつもと違う普通の少年らしい笑みに李は、少し口角を上げる。

そして悠介は、その姿を狙った様に写真に収める。

 

「本当に助かった」

 

「行きましたか…ええこちらこそ、笑みをありがとうございます」

 

悠介の後ろ姿を見ながら李は、小さくそう呟いた。

 

 

十一人の写真の入ったデジカメを持ちながら、悠介はゴールに向かって走る。周りを見れば、何人かのメンバーもゴールに向かって走っている。

距離を見れば、、ギリギリだが…悠介は

 

「此処まで来て敗けられるかよッ!!」

 

更に速度を上げて一気に、ゴールの鉄心がいる場所に一着に辿り着く。

 

「一着じゃが、お題を見せて貰おうかの。題が不十分であれば、もう一度じゃぞ」

 

「わあってるよ。…本当は見せたくねえんだが‥‥本当にしょうがないよな」

 

本当に渋々と言った感じで悠介が鉄心にカメラを差し出す。そこに映し出されたモノは、『元気一杯と映る一子』『凛とした金髪が人形の様に美しいクリス』『物静かながら己の身体を十分に魅せる京(大和が目線の先に)』『今時と言うべき小笠原』『エッヘンとばかりに豊満な胸を張る百代』『顎に指を当てながら首をかしげている燕』『腕を組み凛としている矢場』『バンザーイと笑みを浮かべる南條』『顔を赤らめている黛』『恥ずかしながらも顔をカメラに向ける大和田』『薄く自分らしい笑顔を見せている李』紛れもなくスク水の美少女達が、そこには写されていた。

 

「良いの~~良いの~~」

 

「オラ、問題なしだろ」

 

「ふむ、問題なし。相楽悠介一着でゴールじゃ」

 

鉄心の言葉にF組から歓声が届く。その言葉を聞いた悠介は、さっさと鉄心からカメラを奪う。

 

「な!そんな殺生な」

 

「…ルーさん、頼む」

 

「ハイハイ。総代…駄々をこねないでくださイ」

 

駄々をこねる鉄心をルーに任せ、悠介は疲れた様にため息をこぼす。

 

―――前半だと出るのは、あと一つか

 

そう言いながら悠介は、ゆっくりと自陣に向けて歩いて行った。(因みに、ちゃんとデータは消去済み)

 

 

 

 

 

 

 

 

ある意味最大の試練から競技は、過ぎていき遂に午前の部最後の競技。『大遠投』ルールは、岸からどこまでバレーボールを投げれるかと言うモノ。これは、今ままでと違い、男女別である。女子の方はトップを弁慶し幕を下ろし、遂に悠介たち男子の出番である。

次々に力自慢たちが、ボールを投げていく。そしてS組与一の番。

 

「たっく、めんどくせえ」

 

「頑張れ、与一!!義経が応援しているぞ!!」

 

「やめろ、恥ずかしい」

 

「あぅ…すまない」

 

「与一。何義経を泣かしている…本当に学習しないね」

 

「イ、痛ててててぇぇえぇえええ」

 

弁慶のアイアンクローの前に成す術もなく悲鳴を上げる。

 

「べ、弁慶!!与一が泡を吹いているぞ」

 

「確かに、これ以上は競技に支障が出るか」

 

義経の言葉で漸く解放される与一。ふらつく与一を義経が心配してる。いつも通りの風景に誰もが呆れた表情をしてる。しかし、悪ふざけはそこまでだった。

一度ボールを持った与一の雰囲気が激変する。鋭く海を見据えるその姿は、獲物を狙う猛禽類を連想させる。

完全に場を支配した与一が、ゆっくりと投球ホームに入る。

 

「おらよッ!!」

 

目視不可の速度で振るわれたボールは、悠々と彼らの視界から消える。

 

「凄いぞ、与一!!」

 

「ガーン。与一君にも負けたわ…」

 

「ほっほほ、これで男女ともにS組がトップじゃの」

 

「よくやったッ!!」

 

「さすがだね~~」

 

与一のたたき出した結果に一子達は驚きの声を。S組の面々は勝利を確信する。

しかし、その一方で

 

(さて、どう出るかね…)

 

(このまま何事もなく、勝てると良いのですが‥)

 

(このまま彼が何もせずに、みすみす勝利を渡すとは考えにくい…)

 

弁慶、冬馬、マルギッテ、そして燕や百代などの面々は、最後の投者に視線を向ける。

視線の先には、ゆっくりと身体をほぐす悠介の姿。

 

「さて、行くか」

 

そして悠介の番。片手にボールを持ちながらゆっくりと指定された場所の立つ。

 

「それにしても相楽の奴は、どうするつもりなんだ?」

 

「そうよね。普通やっても、与一君の記録を破れるとは思えないわ」

 

「つまり、二位狙いって事」

 

「まあ、普通に考えればね」

 

誰もがそう口走り、敗けを認めようとしている中で

 

「なあ~~~んか、面白い事をやってくれる気がするぜ」

 

「奇遇だな。俺もそう思っていたところだ」

 

「お!マジで」

 

風間とゲンの二人だけが、結果を楽しみにしている。そして悠介がゆっくりと投球フォームに入る。しかしそのフォームは、誰もが想像していたモノと異なっている。

 

「アンダースローッ!?」

 

―――単純な遠投じゃ勝てねえなら、こうすればいいッ!!

 

アンダースローで投げられたボールは、低空で海面スレスレを飛んでいく。しかし、ブイを越えた辺りで海面に接しかける。

 

「あっ!落ちる」

 

「チィ…二位か。だがまあ、悪くはねえな」

 

「ええ当然よ」

 

誰もがそう呟く。そしてボールが海面に浸かり、止まると誰もが思った瞬間、ジュシャ!と水切りの要領で、ボールが海面を跳ねる。

 

「ええっ!!ボールが跳ねたわ」

 

「もしかして最初からこれを狙ってたの」

 

「おいおい、平べったい石ならともかく球体だぞ」

 

目の前で起きた結果に誰もが驚く。そしてそれは、S組でも同じだった。

 

「なっなんじゃと!!」

 

「これはこれは‥やられましたね。確かにある意味では一番理に適っています」

 

「流石だね」

 

誰もが悠介の選択に驚いている。そして肝心の悠介本人は

 

「丸っこいから、回転に注意したが、上手く言ったな」

 

水面を跳ねるボールを見ながら笑みを浮かべる。

 

「あ~~でも、弁慶のは越えれなさそうだな」

 

はじめから男女トップを狙っていたのか、悠介は悔しそうに呟く。

数分、水面を切り続けたボールは、与一の出した結果をボール半個分越えた。

 

「よっしゃッ!!」

 

「凄いわ、悠介君!!」

 

「ああ、大健闘だ!!」

 

悠介のたたき出した結果に誰もが賞賛の声を上げる。

そして午前の部のプログラムが全て終了した。

 

「ふむ。これににて午前の部は終了とする。各自昼休みに入るがよい」

 

鉄心の言葉と共に生徒たちは、各々休息に入る。

水上体育祭。残すも午前の部のみ…

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。各々が休息を満喫する中、悠介は三年のエリアにいた。理由としては、突如現れた百代と燕にモノを言わせずに連れて来られ、昼食を共に食べる事になったのだ。

 

「どうだ悠介。こんな水着美女たちと一緒にご飯を食べれるなんて、男冥利に尽きるだろう」

 

「そうだなあ~」

 

百代の言葉に悠介は、上の空の様に答える。

 

「はい、悠介君。まあお弁当忘れたでしょ」

 

「って言うか、今日はいらねえって言ったよな?熊の奴がメシ作ってくれるからって」

 

「でも今は必要でしょ?」

 

「ああ、お前らのせいでな」

 

「と言うか悠介。こんな美少女の話を無視するな」

 

「だから抱き付くなッ!!」

 

「うふふ。本当に仲が良いね二人って」

 

構えよと抱き付いてくる百代を悠介は、引きはがそうと躍起になる。そしてその二人の姿を燕が楽しそうに見ている。そしてそんな光景を男どもは、嫉妬の目線で見ている。

 

「そう言えば、モモちゃんって今日は自炊なんだ」

 

「ああ、家で作った特製のおむすびだ。ジジイ達の監視の目があるからな、奢りは控えてるんだ。そう言う燕は自炊か?…それに悠介も」

 

「俺は燕が作ってくれてる」

 

「まあ、二人も三人も一緒だからね」

 

燕の言葉。ふと暗い感情が百代に湧き上がる。

 

「ほう‥」

 

「何機嫌悪くなってんだよ」

 

悠介の言葉で我に返る百代。そして悠介が食べてる納豆オムレツと自分のお結びを見比べる。

 

「悠介、これを食べろ」

 

「ってうお、いきなり押し付けんなって」

 

突然の行動。食べる為に口を開けていた悠介の押し込まれたおむすび。オムレツと塩辛いおむすびの味が口に広がる。

 

「ふふん。こんな美少女の手作りを食べれたんだから、それぐらいで文句を言うな。それでどうだった?」

 

「お前な…」

 

何処か必至気な百代に疑問を持ちながらも、悠介はしばし思考しから感想を述べる。

 

「そうだな。少なくとも少し俺的には塩辛かったな。もうちょい、塩を抑えた方がいいんじゃねえか?」

 

「そうか‥塩を抑える…なるほど」

 

悠介の感想に百代はブツブツ呟く。その姿に悠介は疑問を持つが、。傍に立った燕に話しかけられその疑問が消える。

 

「いや~意外と乙女だねモモちゃん」

 

「あれが乙女かよ。護ってあげたいって言うよりは襲われるって感じだぞ」

 

「はあ~~~」

 

「何の溜息だよ」

 

「悠介君って、本当にそう言う面じゃダメダメだよね」

 

どう言う意味だと悠介が問う前に燕が言葉を続ける。

 

「ほら、そろそろ帰らないと休憩時間終わっちゃうよ」

 

「やっべ」

 

燕の指摘に時間が少ないと悟った悠介は、自陣へ向かう。また後でと言いながら駆ける悠介の姿に手を振り見送る燕。

 

「そう言えば午後の部の最初の競技は何で候?」

 

「確-カ、水上歌ガッセンデース」

 

ぴくんと南條と弓子の話を聞いていた燕の耳が反応する。

 

―――ふふ、良い事考えちゃった。

 

その時の燕の表情を悠介が見たならば、こう言っただろう。

―――また何か考えてるよ。

今正にそう言う表情を燕はしている。




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