真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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今まで読み専門でしたが、ログインできたので自分でも書いてみようと思いました

まだまだ拙いとは思いますがよろしくお願いします


前譚~少年の歩み~
プロローグ


物心ついた時から、いやもしかしたらその前からかもしれないが、何時も同じ()を見る。

 

それは、一人の男の生涯を何度も何度もあらゆる観点から見た劇の様な物。

始まりは、まだ幼い男が未来の為に闘う一人の男の背に憧れ、その背を追いかける場面。

 

そこで、少年は夢の為未来の為命がけで闘う男たちの背中を眺めていた。

その背が少年にとっては、憧れであり同時に誇りでもあった。

しかし、悪夢は訪れた。

今までの男たちの行動を認めていた者達が、突然男達を裏切った。

男は、幼い者達を逃がし彼らの元に駆けた。

逃がされた童子の中に、少年もいた。数日後、男達は殺されていた。

少年は涙を流した、涙が出なくなり血涙になるまで泣いた。

少年の脳裏には、自分達に背を向けて歩いて行く男たちの背が、何度も浮かび上がった。

次に観るのは、少年が青年に変わった場面。

 

新しくなった世の中で青年は、ただ暴れていた。

何処にぶつけていいかわからない憎悪を悲しみを悔しさを、意味もなく誰彼構わずにぶつけていた。

そうやって生きていく中で、青年が徐々に有名になっていった。

青年を求めて、色々な人達が会いに来た。青年は、笑顔でそれに答えた。

でも、その笑みは何処か悲しそうな物だった。

そんなある日、青年にある依頼が届いた。その依頼が青年の運命を再び変える。

 

次に観る場面は、青年が救われ歩んでいく場面。

東京で青年は、一人の剣客と戦う事になる。結果的に青年は、その剣士に斬られた。

身体ではなく、その内に秘めてたどす黒いナニカを剣士は切り裂いた。

青年は、その日久しく本当の意味で笑えた。それから青年は、その剣士と行動を共にした

そこで色々な者達と出会った。気に食わない女医師・小生意気な士族の少年・男勝りな女道場主・憧れすら抱いた剣士・昔の仲間・命を懸けて戦った男の頭領。

そんなおり、自分を救ってくれた剣士がピンチだと知った。

青年は、今度は俺が救う番だと青年は、剣士を追って京へと向かった。

 

次の場面は青年が、剣士の掛け替えのない戦友(とも)になる場面。

京へ向かう途中青年は、剣士のライバルと言うべき男と出会う。その剣士に青年は、完膚なきまでに負かされた。

剣士は青年に、京へ来るなと言った。青年は、受け入れなかった。

自分の無力を知った青年は、一人の破戒僧と出会う。

破戒僧より、自分が憧れた男の助けもあり、青年は強さを学んだ。それは、青年の一つの誇りになっていく事にまだ気が付かない。

剣士と自分を負かした男と合流した青年は、生きて帰るために戦場に足を踏み込んだ。そこで青年は、自分を強くしてくれた破戒僧と戦うことになる。

激闘の末青年は勝利した。進んでいく中で遂に、剣士の敵に辿り着く。

そこで青年は、戦友を救うため、右拳を犠牲にした。

勝利した剣士だったが、同時に危機にも瀕した。

その危機を救ったのは、いけ好かないあの男だった。

炎と崩れ去る建物のさなか、自分達に背を向けて歩いて行った男の背を青年は見続けた。不思議と、その時まで抱いていた口惜しさが、一種の尊敬に変わった。

 

最後に観る場面は、青年が男に変わり誇りを貫く場面。

平和を過ごしていた青年に、再び剣士の危機が知らされる。再び青年は、拳を握り剣士を助けるために戦場に向かった。

そんな戦場に、自分達を救って死んだと思っていたあの男が現れた。

しかし、剣士は敗れ大切な者を失ってしまう。

剣士の心は死んでしまった。剣士の心に、もう自分の声は届かない。青年は、怒りと悔しさから剣士の前から姿を消した。そして、青年は再び剣士に出会う前に戻る。

そんな中、青年は自分が捨てた家族と再会する。知らぬ間に増えたきょうだいたちと変わらない自分の父親。

彼らと暮らす内に、青年に再び剣士に会う覚悟が出来た。今までは、見ているだけだった青年は、今、伝える側の男に成長する。

その男の背を、父親と弟に示して、男は剣士の元に向かった。

剣士と合流した男は、剣士と戦友達と共に、最後の戦場に向かう。

そこで男は、一人の刺客から剣士を護るために戦った。

男を見る剣士の瞳には不安など無く、ただ、信頼だけが男の背を見ていた。最後の戦いを剣士は勝利した。

全てが終わったが、男は剣士たちと共に居られなくなった。

仲間であった士族の少年に自分の誇りを示し、男は外の世界に歩き出した。

 

これが、俺が生まれてからずっと見続けてきた夢。

だからだろうか、俺も自然と憧れた。

男の生きざまに。

だからこそ、自分も背負うと決めた。

その男が、何時も背負っていた。

 

「惡」と言う一文字を俺も背負うと決めた。

 

未だに、背中しか見えないその男に追いつきたい一心で、俺は、「悪一文字」を背負う。

 


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