真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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新年明けましておめでとうございます。
今年初投稿!!

本当は、もう少し早く投稿できるはずだったんですが、親が年賀状の作成にパソコンを独占などがあって出来ませんでした。

まあ、そんな事は置いといて本編ですが、例のごとく後半が雑になってるかもしれませんので、違和感とかあったら教えて下さい
阿保らしい話を書いていたはずなのに、なぜ?って感じになっております



悠介と再戦

大量の土煙を巻き上げながら落下して来た少女姿を確認した悠介は、驚きの声を上げる。

 

 

「モモっ!?」

 

 

突然の乱入者に、悠介に襲い掛かろうとしていた男達も歩を止める。ほんの一瞬、沈黙が場を支配するが、僅かな時間でそれは拡散する。

そんな中、百代に視線を向けていた悠介がある事に気がつく。

 

 

「うん?」

 

 

彼の視線に映る悪友の姿がおかしい。何というか、自分の記憶にないほどに怒っている様だ。僅かに顔を下に向けていて表情を見る事は出来ないが、その身にまとっている雰囲気が物語っている。

気のせいか髪が逆立ち、彼女の近くの空間が歪んで見える。

 

 

「えっと、モモ先輩?」

 

 

誰もが話しかけ辛いなか、ガクトが恐る恐ると百代に話しかけるが

 

 

「・・・・・・」

 

 

百代は答えず、岳人に背を向けたまま微動だとしない。対して悠介はと言うと

 

 

 

「・・・・・おい、急にどうしたんだよ?」

 

 

 

ずっと沈黙している百代に問いかける。いや、沈黙していると言うよりは、何かを堪えていると言った方が正しいのかもしれない。

 

 

「・・・・・とは、・・・・こと・だ」

 

 

「あ?」

 

 

突然百代の口から放たれた言葉。だが、その音量は小さく悠介の耳ではとらえきれない。

しかし、その声音には明らかにイラつきや怒りが含まれているのは、その場いた誰もが感じる事だ出来た。

 

 

「なんつった?」

 

 

悠介の確認する様な問いかけ。瞬間、百代の放つ威圧感が跳ね上がり

 

 

「悠介ぇぇえ!!。燕と同棲(・・)とは、どう言う事だッ!!」

 

 

「はあ?」

 

 

怒号と共に悠介を問いただす。しかし、当の本人はと言うと、百代の言葉の意味が分からずに、首をかしげる。

 

 

「さっき、クラスの男子から聞いたぞ!!お前が燕と一緒に二人で(・・・)暮らしているとッ!!」

 

 

時間は数十分前に戻り、悠介と話し合いをして以来、本来の調子に戻った百代は、同じクラスの弓子南條と話を終えて帰宅途中だった。

そんな中、クラスの男子たちが鬼気迫る表情で、話していたのを聞いてしまったのだ。

曰く「相楽悠介と松永燕は、親公認の中である」と。

その言葉を聞いた瞬間、百代の中に今までの人生で感じた事もない怒りが湧き上がった。

その時の百代の表情と雰囲気は、たまたま追いついた弓子と南條を問答無用で震え上がらせた。

 

そしてそのままに百代は、悠介たちの元に飛び降りた。

 

 

 

「・・・あのなあ、モモ」

 

 

百代の言葉を聞いた悠介が、一度構えを解いて誤解を解こうとする。

 

 

「俺は、燕の家に居候(・・)してるだけだし、久信さんもいるから、別段二人きっりって訳じゃねよ」

 

 

「でも、一緒には住んでるんだろ?」

 

 

「・・まあな」

 

 

しかし、一緒に住んでいるのは事実なのでそれを言われると、悠介は何も言い返せない。

ほんの僅かに言いよどんだ悠介。悠介の言葉を聞いた百代は、体を震わせ

 

 

「悠介ぇぇぇぇえええええ!!」

 

 

「っておうっ!!」

 

 

悠介に向かって拳を放つ。放たれた拳を悠介は、ギリギリに回避し

 

 

「あっぶねえなっ!!急に何すんだ!!」

 

 

文句を述べるが、当の百代は

 

 

「うるさいッ!!とにかく、一発殴らせろ!!」

 

 

「理不尽過ぎんだろ!!」

 

 

全くもって、聞く耳を持たない。

 

 

「一回落ち着けって、な?」

 

 

「私は、十分に落ち着いている」

 

 

「いや、落ち着いてねえって!!むしろ、俺の知る限りでは一番イラついてんぞ」

 

 

「いいから、一発殴らせろ」

 

 

「理由が理不尽だなあ、おい!!」

 

 

次々に放たれる拳を必死に躱す悠介は、どうにか落ち着かせようとするが、一向に百代は止まろうとしない。むしろ、悠介が躱すためにヒートアップしている。

 

 

 

「この・・・いい加減にしろ、コラァ!!」

 

 

理不尽な攻撃を躱し続けていた悠介も、我慢の限界が来たのか、パンと百代の拳を受け止め、逆に百代に一発叩き込む。

 

 

「わあったよ。一回ぶちのめして、頭を冷やしてもらうぞ」

 

 

数メートル後退した百代を視界に納めながら悠介はそう宣言する。

その言葉を受けた百代もまた、考えた訳でもなく自然に構えを取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に仕掛けたのは百代だった。短く息を吐いたと、同時に地面を蹴って悠介に肉薄する。

 

 

「悠介ぇえ!!」

 

 

ただ己の内に湧き上がる感情を吐き出す為に放たれた拳は

 

 

「チィ」

 

 

「ッ!?」

 

 

悠介の元には届かない。舌打ちをこぼしながら、百代の拳を簡単に受け止める。自分の拳が受け止められた事に驚愕する百代。そんな百代を見据えながら悠介は

 

 

「何だぁ?この腑抜けた拳(・・・・・)は」

 

 

ギリィ!と受け止めた百代の拳を握りしめながら呟く。その表情は、誰がどう見ても怒っている。

 

 

 

「違げえだろ?そうじゃねえだろうが!!」

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

怒りの言葉と共に放たれた拳。その一撃を真面に受けた百代は、苦悶の声を漏らしながら後方に数下がる。

襲い掛かってきたダメージに顔を顰めながらも、悠介に向ける殺気は一向に衰えない。

そんな百代の姿を見た悠介は、自然と言葉を漏らした。

 

 

「そんなモンだったのかよ・・」

 

 

そう言った悠介の表情は、何処か悔しがるように悲しむような、何とも言えないモノだ。

 

 

「そんなモンに支配されて、お前じゃないお前と戦う・・・・俺らの戦いってのは、そんな簡単なモノだったのかよ」

 

 

ああ、何処かではこうなるんじゃないかとは思っていた。久しく拳を交えたあの時、上手くは言えないが百代の拳から感じたのは、歓喜に似た狂気だった。勿論他にも感じた事はあるが、そんな一面も感じたのだ。

その後も、何気なく百代を見て悟ってしまった。川神百代の精神は、極めて未熟だ。

 

だからこそ、今の状況がひどく悔しく悲しい。自分の無力さが悔しい、自分との戦いをその程度に認識していた百代の事が単純に悲しい。

 

だが、皮肉にも悠介のその表情が、百代を正気に戻す切っ掛けになった。

 

 

「あっ・・・」

 

 

百代が漏らした声は、イタズラをしてやってしまった事の重大さに気がついた子供の様な声。その表情は、唖然と己がしていた事を思い出している。

 

 

「なっ・・・」

 

 

何をしてたんだ、私は そんな言葉すら言えない程に動揺している百代。彼女の呼吸は、過呼吸気味になり始めている。

 

今まで私は何をしていた?燕には、悠介との戦いを特別と言っておきながら・・・私はさっきまで何をしていた?

 

湧き水の様に湧き上がる後悔と自責の感情。

そんな百代の耳に

 

 

「モモ」

 

 

悠介の先ほどとは違う声音が届く。その声を聞いた百代は、下げていた視線を悠介に向ける。百代の視線を感じた悠介は、静かに拳を構え。

 

 

「悪いと思ってるならよ・・・拳を握れ」

 

 

それでチャラにしてやる。そう告げた悠介の言葉。

彼の言葉に呆然とする百代だったが、一度大きく息を吐いた後

 

 

「ああ、頼む」

 

 

拳を構える。

先ほどとは、全く違う空気が場に張り詰める。二人の近くにいるガクトやヨンパチたちは、余りの状況の変化の速さに、呆然とその場に立ち尽くしている。

 

 

「いくぜ?」

 

 

「何時でも来い!!」

 

 

悠介の確認するような言葉に、百代は力強く頷く。それと同時に、悠介は地面を蹴った。

 

 

「うらぁあ!!」

 

 

咆哮と共に右ストレートを放つ。迫りくる圧を前に百代が取った行動は

 

 

「ふぅ」

 

 

「!?」

 

 

脱力し、そのまま左斜め前に倒れ込む。そして、体が地面に触れる直前

 

 

「しっ」

 

 

「なッ!!」

 

 

ダン!と左足で地面蹴った。そして加速したままに

 

 

「悠介ぇえッ!!」

 

 

「ッ!!」

 

 

悠介の腹に一撃を叩き込む。その威力に、悠介の身体がわずかにグラつき、一瞬呼吸が止まる。しかし、それでも悠介は引かない。

 

 

「はっ!」

 

 

倒れない悠介の姿を見た百代は笑みをこぼす。そうだ。それでこそ、お前(ゆうすけ)だ。だからこそ、僅かに動きが止まった今の時間を無駄にする気はない。

体勢を立て直し、殴りつけた拳を開き

 

 

「致死蛍」

 

 

気弾を放った。爆音が鳴り響く刹那、誰もが爆風から目を護る中、百代は静かに拳を構え

 

 

「川神流 無双正拳突き!!」

 

 

「オラァァ!!」

 

 

直撃を受けてなお、止まらない。悠介の拳と衝突した。

バァン!辺りに響く衝突音。その音に誰もが耳を塞ぐ。

その中で、渦中の二人は

 

 

「「ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおッ!!」」

 

 

ギチギチと目の前の敵に拳を届かせるべく、より一層力を込める。ぶつかり合うは、互いの力。そこに技術(わざ)はない。

 

 

「!!ちぃ」

 

 

勝負に勝ったのは、百代だった。悠介は、拳を上に反らす事で後ろに下がる事を回避。しかし、その直後悠介の身体に、百代の拳が直撃する。

自分の拳が悠介に入った事を確認した百代は、二発目を叩き込もうと拳を構えるが

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

「なめんなあッ!!」

 

 

上に反らす事で後方に下がる事を回避した悠介は、その拳を百代の上から叩き込んだ。

ドガッ!と地面に倒れ込んだ百代。

拳を上から振り下ろした悠介は、再び拳を握りこみ

 

 

「シィ!!」

 

 

地面に倒れ込む、百代目掛けて振り下ろした。

 

 

「!!」

 

 

悠介の拳が当たる直前、百代は身をひるがえし拳を回避する。悠介は、後方に回避した百代を追撃するために、地面を駆ける。

 

 

「モモォォオ!!」

 

 

目の前に映りこむ敵に向かい足を動かし、百代に肉薄する。グッと握られた拳が、彼女の身体に直撃する。

 

 

「がぁッ!!!」

 

 

悠介の拳を直撃してしまった百代は、獣の様な声を漏らす。身体を襲う衝撃に意識を奪われる中、百代の視界が写し込んだのは、もう片方の拳を構える悠介の姿。それを見た百代の身体は、考えるよりも先に行動を起こす。

後方に飛ばされた状態から、空に浮いている足を小さく鞭の様に振るい、悠介の顔面に叩き付ける。

 

 

「ッ!!?」

 

 

突然の意識外からの強襲に、悠介の動きが止まる。その隙に百代は、体勢を立て直す。

 

 

「「・・・・・」」

 

 

距離にして約一メートル。構えは解かず、二人はただ無言で相手を見据える。

既に二人には、なぜ戦う事になったのか。そう言った理由など忘れている。

二人のうちに在るのは、目の前の敵を倒す。ただ、それだけだ。

 

フゥー と二人の口から息を吐く音だけが、その場を支配する。

互いに重心を落とし、拳を握る。

そして

 

 

「「オラァッ!!」」

 

 

再び互いの拳がぶつかろうとした瞬間

 

 

「顕現の参 毘沙門天」

 

 

「ジェノサイド・チェーンソー」

 

 

巨大な足と強烈な蹴りが、百代を叩き潰し、悠介を吹き飛ばした。

悲鳴すら上げる事が出来ずに、二人は地面に倒れる。

 

 

「やれやれじゃの~」

 

 

「ふん」

 

 

二人の戦いに介入した鉄心とヒュームは、何処か呆れる様な声を漏らす。

 

 

「おいッ、ジジイ!!何で邪魔をする!!」

 

 

鉄心の攻撃から立ち上がった百代が鉄心に食って掛かるが

 

 

「阿保たれッ!!周りをよくみんかい!。お前さんらの余波で、大変な事になっとるだろうが、学園長としてこれ以上は見逃せんわ!!」

 

 

「こちらも同じだ。川神百代」

 

 

「うっ」

 

 

二人の指摘に言いよどむ。確かに周りは、悠介が倒した男子と二人の戦いの余波で気絶した男子であふれかえっている。

全くもって、反論できない。

 

 

「じゃが、悠介にそれ(ジェノサイド・チェーンソー)とはの・・・どう言うつもりじゃ?」

 

 

先ほどのヒュームの行動に対して鉄心は、睨み付ける様に問う。その問いに対して、ヒュームは

 

 

「なに、俺の興味心と言ったところだ」

 

 

悪びれる事無く告げる。そんなヒュームの言葉に

 

 

「興味本位で、死にかける羽目になったのかよ」

 

 

悠介が反論する。息も乱れ、足もおぼつかないが、どうにか立って歩いている。

満身創痍と言う言葉がピッタシだが、確かに己の足で立っている。

ヒュームはその事実に、僅かに目つきを鋭くするが、それも一瞬の事だった。直ぐにその目線はなくなった。

 

 

「大丈夫かの?」

 

 

「どうにかな。当たる直前で、ギリギリ後方に跳べたのが幸いしたぜ」

 

 

声を出して技を放たれてなかったら、確実に気絶してたな と告げながら鉄心の言葉に答える悠介。

 

 

(それだけで、ヒュームの蹴りを耐えれるわけはないんじゃがな)

 

 

勿論、ヒュームも全力ではなかっただろう。それでも、悠介が満身創痍とは言え立てているのは

 

 

(どれだけ、自分を苛め抜いているのやら)

 

 

何度も何度も己を追い込んでいるのであろう。その鍛錬が、ギリギリに悠介を立たせているのだ。

 

 

「そうじゃ。伝え忘れとったわい」

 

 

「何だよ?」

 

 

鉄心の言葉に疑問の言葉を口にする百代。対して、悠介はマジかよと言わんばかりに顔を歪めている。

 

 

「今後、お主ら二人の勝手な戦闘を全面禁止とする」

 

 

「なっ!!」

 

 

「ちぇ」

 

 

鉄心の言葉に百代は驚き、悠介は悔しそうな声を漏らす。

 

 

「流石に見逃せんからの」

 

 

「わあってるよ」

 

 

鉄心の言葉に悠介は頷き、手荷物を持って帰宅を始める。その時、ヒュームと僅かに視線を合わせる。ヒュームは、悠介の視線を受けると、僅かに笑みをこぼしその場から文字通り消える。

 

漸く驚愕から抜けた百代が鉄心に再び鉄心に食って掛かるが、肝心の鉄心は全く相手にしない。

百代の声を後ろに聞いた悠介は

 

 

「モモ」

 

 

「何だよ、悠介。お前もそんなのはいやだろ!!」

 

 

「次こそはケリだ。次に俺らが、戦う時は絶対に誰にも邪魔はさせねえ。だから、それまで首あらって待ってろ」

 

 

拳を突き出しながら、再戦を誓う。

 

 

「!!」

 

 

「これ以上、無駄に戦って、楽しみを減らしたくねえ。お前はどうだ?」

 

 

「・・・良いだろう。だが、次戦う時は必ずケリを付けるぞ!!」

 

 

「たりめえだ!!」

 

 

此処に二人の間に誓いはなされた。もう次はない。今度こそ、二人がぶつかり合った時、どちらかが必ず、敗北と言う名の泥に身を汚す。

 

それは確信。二人の戦いに、これ以上引き分けはない。

 

 

 

 

 

 

「あっ!居候の件は、燕に聞いてくれや」

 

 

「・・居候?アッ!!」

 

 

悠介が校門間際でこぼした言葉に、百代はこの件の発端を思い出す。急いで問い詰めようとするが、それよりも早く鉄心が動きを止める。

 

 

「ジジイ、離せ!!」

 

 

「離さんわい。お前も、倒れておる生徒を運ぶのを手伝わんかい」

 

 

「なぜ、私だけ!!」

 

 

「ボロボロの悠介に頼めんじゃろ?治療はいいと、帰っちゃうしの」

 

 

鉄心の言葉を聞いた百代のは、さっさと帰ったライバルの名前を暫らく叫び続けた。




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最後になりましたが、完結目指して頑張りますので、今年も 真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~をよろしくお願いします

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