真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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テストも終わって更新が再開できます!!
でもまあ、凄く久しぶりなので、違和感満載かも知れませんがよろしくお願いします

因みに今回は、テスト終了したと言う事で頑張ってみました。
あと、一話を今日中に更新させて貰います
詳しく言うと、後一時間後です

さて、今回の話も前回同様に甘さをメイン?で書きました
楽しんでくれたら嬉しいです!!


悠介と好敵手

夕日の明かりが、川神の土地を鮮やかな朱色に染めていた。

 

 

「綺麗だな・・」

 

 

何処までも朱色に染まった風景を見た悠介は、幻想的とも言えるそれに感嘆の声を漏らした。

 

 

川神(ここ)が、こんなにも綺麗だなんて知らなかったわ」

 

 

そう口にした悠介だが、自らが言った言葉を即座に否定した。知らなかったのではなく、知ろうとしなかったの間違いだ。

あの時の自分は、そんなモノを気にする余裕すらなかったのだ。ただ、ひたすら目標の身に向かって進む。それ以外など、視界に入れる気すらなく・・・でも今は、そんな事はない。少しずつだが、周りに意識を向ける事が出来るようになってきた。

 

 

「そう思うと、今日燕と出かけたのも、案外悪くなかったのかもな」

 

 

今日の出来事を思い出した悠介は、小さく笑みをこぼした。何時も自分を気遣う節介な幼馴染の姿。別段今日が特別な訳でない。燕の我儘に付き合わされて、一緒に買い物に言った事は、何度もある。

だからだろうか、武以外を見るようになったのは?

 

 

「・・・・・・ありがとな」

 

 

誰に告げた訳でもなく呟かれた悠介の呟きは、朱色の空に消えていった。

その表情が何処か赤く染まっているのは、きっと夕日のせいだろう。

 

そうしていくうちに、目的地である河川敷が見えてきた。

 

 

「? うん、あれは?」

 

 

そこで気が付いた。夕日と重なって気が付かなかったが、あそこに居るのは正しく

 

 

「丁度いいや」

 

 

その姿を確認した悠介は、手間が省けたわ と言葉をこぼしながら、その場所まで歩き始めた。

その表情は、何処か悪だくみを企てた燕の顔に似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕日によって朱色に染まった川を見ながら、彼女は何度目か判らないため息をこぼした。

 

 

「はぁ、何やってんだろ私・・・」

 

 

ため息の主川神百代は、何時もの彼女からは想像も出来ない程、弱弱しい声で呟いた。

最近の自分は何処かおかしい。何をやっても身が入らない。何時もは退屈しのぎになると、喜ぶべき挑戦者ですら、どうでもよく感じてしまう。

そのせいで、鉄心の説教を受ける羽目になったが、その説教すらも上の空で聞いていた。

 

 

「はぁ、本当にどうしたんだ?」

 

 

どうしてこうなったんだろうと思い起こす度に思い浮かぶのは、悠介と楽しそうに帰る燕の姿。

そしてその姿を思い越すと、必ずチクッと胸を針で刺された様な痛みが百代を襲う。

 

 

「なんなんだよ、これ」

 

 

自分の胸を抑えながら、百代は困惑した様な声で呟いた。痛みには慣れてる。元々自分は、痛みとは切っても切れない関係だ。最近では、痛みを感じる事が少なくなったがそれは決して変わらない。

痛みには強い・・筈なのに、今自分を襲っている痛みには、決して馴れる事も立ち向かう気にすらなれなかった。

 

 

「ほんと、何なんだよッ!!」

 

 

イラついた様に呟かれた百代の言葉、その一言に今の彼女の想いが込められていた。

百代自身、自分の内から湧き上がるこの感情を理解できていない。その感情に何と名を付ければいいのかすら、わからないのだ・・・いや、違う。彼女は恐いのだ。その感情に名前を付けて認める事が、名を付けて受け入れる事が怖いのだ。

そこに世界最強の名を持つ『武神』の姿はなく、年相応の川神百代がそこにいた。

 

自らの想いと葛藤している百代の耳に

 

 

「なあに、一人でやってんだよ」

 

 

「わっ!って、ゆゆ悠介!!」

 

 

その原因たる少年相楽悠介の声が届いた。

 

悠介は、驚いた表情と上ずった声を聞かせた百代を見て、イタズラ成功と言わんばかりに笑みを浮かべた後

 

 

「一人で悩んでたとこわりぃけどよ、ちょっと俺と話そうぜ」

 

 

百代との話し合いを望んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隣に座るぞ」

 

 

そう一声かけた後、悠介は百代の隣に腰を下ろした。

悠介からすれば、ただそれだけの事だったのだが

 

 

「っておい。何でそんなに離れるんだよ?」

 

 

「べべ、別に離れてなんかないだろ!!」

 

 

「いや、すっげぇ離れてんじゃねえか」

 

 

百代からすれば、一大事だ。それも当然、彼のせいで今自分がおかしくなってるのだ、その彼が近くにいるなど、とても我慢できない。

だから近くに座ろうとした悠介から、目にもとまらぬ速さで十メートルほどの距離を取った。

しかも、先ほどの言葉から察するに無自覚の様だ。

 

 

「まあ、どうでも良いけどよ。それだと流石に遠いからよ、もうちょっと近くにこいや」

 

 

「それも・・・・そうだな」

 

 

顔を下にしながら、百代は悠介との距離を少しずつ詰める。大体五メートル辺りで止まる。

 

 

「これでいいだろ!!」

 

 

「別に構わねえだがよ、何でお前そんなにやり切ったって顔してんだ?」

 

 

「なっ!」

 

 

悠介の指摘に百代は顔を赤めらせたが、幸か不幸か夕日のせいで、悠介には気が付かれていない。

 

 

「それでよ。聞きてえ事があんだけどよ、聞いていいか?」

 

 

「聞きたい事?私にか?」

 

 

「まあ、お前に直接聞くのが一番いいと思ったからな」

 

 

「私に聞くのが一番・・・良いだろう!!何だって答えてやるぞ」

 

 

「何で急に元気になったかは、置いておくとしてだ」

 

 

悠介の言葉を聞いた百代は、先ほどの表情を一変させ、嬉しそうな表情を示した。

急に嬉しそうな表情になった百代に疑問を持った悠介だが、さして興味もなかったのか彼はそのまま

 

 

「うんじゃあ、質問だけどよ。何でここ最近、様子がおかしかったのは何でだ?」

 

 

ずっと疑問に思っていた事を百代に問うた。

悠介の問いに対して百代は、口を閉ざした。無理もない。その質問は自分でも理解する事が出来ない、未知のナニカが関わっているのだから、百代自身も答えれない。と言うよりも、今の状況ではわかっていても言ってはいけない。そんな感覚が百代にはあった。

 

 

「え~っと、それは~」

 

 

「・・・・・」

 

 

じっと悠介に見つめられた百代は、恥ずかしさと間の悪さから視線を逸らす百代。

その姿を見た悠介は、さっさと答えろと言う目線を百代に送る。百代もその目線には気が付いているが、決して視線を合わせようとしない。

 

時間にして、およそ一分間の無言のやり取りがおこなわれた。

先に根を上げたのは、百代だった。

 

 

「ああ、もう!!言うよ!!言えばいいんだろ!!」

 

 

若干やけくそに叫ぶ百代と勝ったと言わんばかりに、短く息をこぼした悠介。何処までも対極の反応を示した二人。

そして呼吸を落ち着けた百代が、静かに言葉を発した。

 

 

「・・・わかんないんだよ」

 

 

「はあ?」

 

 

「だから、わかんないんだよ!!」

 

 

「わかんないって、何で様子がおかしかったのがか?」

 

 

「ああ、自分でもよくわからないんだ」

 

 

百代は最も大事な部分抜かして、現状の状態のみを悠介に伝えた。百代の答えを聞いた悠介は、静かに顎に手を当てながら何かを考える素振りをしている。

一方の百代と言えば、悠介と顔を会わせたくないのか、視線を彼とは逆の方に向けている。

 

 

「う~」

 

 

ついでに、よくわからない声を漏らしてる。どうやら、悠介に弱みと言うか、弱さを見せたのが、相当に恥ずかしかったみたいだ。

夕日の朱色に染まっていてよくわからないが、顔は確かに赤く染まっている。

 

 

「そうか」

 

 

ある程度の時間が過ぎた後、百代の耳に短い悠介の言葉が聞こえた。

そして続けて

 

 

「まあ、あれだ。俺の質問に答えてくれてあんがとな」

 

 

感謝の言葉が聞こえた。

その言葉を聞いた百代は、嬉しいような申し訳ないようなと、自分でもよくわからないフワフワとした感情に支配された。

 

 

(ほんと、何なんだよ)

 

 

未だ答えに辿り着けない百代には、その感情を御しきる事が出来ない。

そんな自分の想いと、ある意味戦っていた百代だが、彼女の武人として鍛え上げた第六感が警告を鳴らした。

 

 

「ッ!!」

 

 

自身の警告に従い、防御の姿勢を取った瞬間、ドゴォ!と鋭い一撃が百代を襲った。

 

 

「つうッ!!」

 

 

ズズズ!と地面を滑りながら衝撃を散らした百代は

 

 

「いきなり何をするんだ、悠介!!」

 

 

視界の先で、拳を振り抜いた悠介に真意を問うた。

しかし、悠介は百代に放った方の拳を握ったり、解いたりしていてる。

 

 

「おいっ!!」

 

 

自分の言葉に何の反応も示さない悠介に、怒りの声を上げる百代だが

 

 

「やっぱ強えな、モモ」

 

 

優しくそして何処か羨望するような声で放たれた悠介の声に、何も言えなくなった。

 

 

「だからこそ、俺はなりたい」

 

 

「なりたいって、何にだよ?」

 

 

最早悠介に対する怒りなど無く、ただその言葉の真意を知りたい願う百代の言葉。

百代の問いに対して悠介は、一度大きく息を吐いた後に告げた。

 

 

「俺は、お前の好敵手(ライバル)でありたい」

 

 

「え?」

 

 

告げられた言葉に百代は言葉を失った。

それに構わずに、悠介は話を続ける。

 

 

「お前とはそこそこに長い付き合いだが、幼馴染とは思えねえし、たぶん悪友ってのがピッタシ何だと思うんだわ」

 

 

でもな と言葉を続ける。

 

 

「俺はまだお前の好敵手(ライバル)には成れてねえ。良い所、数少なくいる対戦者の一人って所だろ?でもちげえんだよ、俺が成りたいのはその先だ」

 

 

「何でなりたいんだ?」

 

 

悠介の言葉にただ茫然と呟いた百代。彼女自身何故だかはわからななかったが、ひどく動揺した。

百代の言葉に悠介は

 

 

「そうする事がきっと俺の夢を叶える事に近づくと信じてるのが一つ。後は、単純に俺の願望だな」

 

 

きっぱりと迷いなく告げた。

未だに動揺から抜け出せていない百代に悠介はさらに続ける。

 

 

「待ってろ。俺は必ず真正面からお前に立ち向かう資格(・・)を手に入れた上で、お前に挑む。だからよ、俺がお前の前に着くまでによ、その迷いを失くしとけ・・・・いや、ちげえか。そんなモノに迷う暇さえぜってえ与えねえからな」

 

 

そう言って拳を突き出した悠介。その姿は、迷いなどは全く感じさせていない。

しばしの沈黙。それを先に破ったのは、百代だった。

まるで水があふれ出した様に笑い出した。

 

 

「何笑ってんだよ」

 

 

「ハハハ。悪い悪い。そっか、私のライバルにか・・・・」

 

 

「文句あっか?」

 

 

そう聞いた悠介の言葉に

 

 

「いや、楽しみに待ってるぞ、悠介」

 

 

百代は満面の笑みで答えた。百代の心を占めていたのは歓喜だった。先ほどまで自分を苦しめていた感情など、どこかへ消えてしまった。

そうだ。今、そんなモノに悩む必要はない。それよりも遥かに優先すべきことが、自分の目の前にはあるのだから。

きっと、遅くはない。目の前に立つ自分が数少なく認める武人との戦いが終わった後からでもきっと遅くはない。

この感情に名前を付けるのも、この感情と向き合うのも、この誓いが終わってからだ。

それまでは、この感情にそっとふたをしておこう。

 

 

「当然だ。直ぐにその其処に行くからな。首あらって待ってやがれ」

 

 

百代の言葉に悠介は、笑みを浮かべながら嬉しそうに拳を再び突き出した。

突き出された拳に百代は、自らの拳を重ねた。

 

コツンとぶつかった二つの拳。

二人は、互いに笑みを浮かべて拳を引いた。

 

それもある意味『青春』の一ページと言えよう。あらゆることを度外視して、ただ一つの目的の為に全てを捧げる。彼らはまだ若い。故に、時間も無駄遣いと言うのもまた、彼ら若人の『青春』の特権である。

 

少年少女よ、今を全力で謳歌せよ。




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