真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~ 作:スペル
たぶんですが、眼帯を外したマルギッテや真剣でない弁慶たちと同じレベルです。
しかし、相性などで変化するので一概には言えません。
マルギッテとの戦闘も、もしも小技などを使われたら、悠介は苦戦必至です。
さて、前回も予告した通り燕とのデート界のつもりです
皆さんが満足できるとかどうかわかりませんが、自分なりに頑張って恋するを描いてみました。
楽しんでくれたら嬉しいです
悠介と燕が、川神学園に転校してから初めての土曜日。良く晴れていて、外で行動するには絶好の日だ。
川神院へと向かう途中にある「仲見世通り」数多くの川神市の特産品が売られている場所だ。
そんな華やかな場所でも一際目立つ少女がいた。道行く男達が、少女の姿を二度見する。誰もが、少女とお近づきになりたいと思い声を掛けようとするが、その後ろを歩く恐ろしく悪人面の少年を見て足を止めた。その少年の目が伝えていた『近づくな』と、その目に怯えた男達は、その少女を遠目に眺めるしかなかった。
しかし、男達の視線を集める少女松永燕は、そんな目線など歯牙にもかけずに、自分の少し後ろを歩く少年相楽悠介に向かって話しかけた。
「わあ~本当に色んなものがあるんだね」
「まあ、此処は昔から品揃いは豊富だったからな。川神院に続く道に在るからな、観光客が多く来る場所でもあるからじゃねえか?」
「なるほどなるほど。此処で、松永納豆を売ってくれそうな場所はないかな?」
「商売魂強すぎるだろ」
燕の呟きに、悠介は呆れ半分と言った声と共に燕の頭を叩いた。
ポコンと頭を叩かれた燕は、視線を逸らしながら「冗談だよ~」と呟いたが、決して自分と目線を合わせようとしない事から、冗談ではないと簡単に予想できた。
「で、この後はどうすんだよ。これで終わりなら、俺は山に行って修行してえ」
「絶対ダメ!!今日一日私と一緒に買い物するって約束でしょ!!」
「・・・了解」
疲れた様に呟いた悠介の提案を、問答無用に却下した燕の言葉に、悠介は諦めた様に頷いた。
事の始まりは、いつぞやの久信の覗きが原因である。その時、久信を止めれなかった悠介もまた、罰として燕と一日一緒に買い物すると言うモノだ。それのお蔭で悠介は、朝から謎に駅前から待ち合わせをしてから、燕の買い物と観光に付き合っているのである。
「小腹もすいた事だし、何処かで甘い物でも食べようか」
「まあ、確かにそんな時間だわな」
燕の提案に腹を撫でながら悠介が同意した。そして、辺りを見渡した悠介は、一つのお店が見つけ、その方へ向かって歩き始めた。その後を燕が文句を言いながら、追うように歩き出した。悠介の右一歩後ろから文句を言う燕だが、その表情はとても不満そうには見えず、むしろとても可愛らしい笑みで彩られていた。
悠介がお店に入ると
「いらっしゃいませってあれー?もしかして、ゆうっち?」
案内をしに来た店員が、意外そうな声を上げた。その声に反応して、視線を店員に写した悠介の目に
「確か・・同じクラスの小笠原だっけか?こんな所で何してんだ?バイトか?」
クラスメイトである小笠原千花の姿があった。学校では、今時と言える姿ばかりを見せていた彼女の少し違った姿に、悠介は少し驚いた様な表情を見せた。
「あー違う違う。此処って私の家なのよ。そんでそこのお手伝いって訳」
「へえ」
「やっぱり意外?」
「まあ、そうだが。別段、悪くは思わねえな。むしろ見直した」
「そっか。それで、何名様?」
「二名だ」
悠介がそう答えると同時に
「もお~悠介君は、もう少し女の子を待つべきだよ!!」
燕も店に入ってきた。燕の姿を見た千花は、若干驚いた表情を見せた後、ニヤニヤとした笑みを浮かべた後、悠介と燕を席に案内した。
その姿を見た悠介は、千花がとてつもない勘違いをしていると察して、頬を引きつらせた。
「今の子って、もしかして悠介君と同じクラス?」
「ああ、めんどくせえ勘違いをしたな」
「それってどう言う事?」
燕が悠介に尋ねるよりも早く
「ご注文をお持ちしました。それにしても、ゆうっちも隅に置けないな~。まさか、納豆小町をゲットしてるなんてさ」
千花が料理の一覧を持って来ると悠介に向かってそう言い放った。
それだけで、全てを理解した燕の頬が赤く染まった。
しかし、その変化を知ってか知らずか、悠介はさも当然のように言い返した。
「ただのダチだよ。お前が思って様な関係じゃねえ」
「む~」
「なるほどね~。ゆうっちも、そっち系のタイプなんだ」
悠介の発言を聞いた燕が、ジト目で悠介を睨み付けた。最も悠介は、その目線を受けても全く動じていない。その姿を見た千花は、全てを悟った様にそう呟いた。
「とりあえず俺は、久寿餅と抹茶わらび餅四人前頼むわ。燕はどうすんだ?」
「う~んそうだね。この和菓子パフェを頼もうかな」
「承りました。暫らくお待ちください」
注文を聞いた千花は、礼儀正しくその場から去った。
その間二人は、他愛もない話をして時間を潰し。最も燕が一方的に話しかけ、それを悠介がめんどくさそうに無視し、燕がそこに怒ると言った感じで、ある意味二人にとってはありふれた光景だ。
「はい、お待たせいたしました」
「おぉ!予想以上の完成度」
「えへへ。まあ、うちの自慢の品なんで、ゆっくり味わって下さいね」
「勿論だよ」
目の前に出されたパフェの完成度の高さに目を輝かせる燕。その姿を見た悠介は、やっぱりそう言ったところは、年頃の少女なんだと思いながら、自分の頼んだわらび餅を口に運んだ。
「うん~やっぱり甘い物はいいね~」
「そうだな。取り敢えず、その手に持った納豆は直せよな」
「む~」
「ダメなもんだダメだろ」
「・・・わかったよ」
悠介の目により交渉の末、渋々と言った感じで諦めた燕。その姿を確認した悠介はそっと胸をなでおろした。流石に納豆まみれの和菓子を食べる気にはなれない。
「ふふ」
「あん?どうしたんだよ燕?」
互いに注文した品を食べている途中で、ふと燕が笑った。急な笑みに悠介が、どうかしたかと問う。
「何か久しぶりだなって思ったんだよね。こうして悠介君と、二人でのんびりと会話するのも何かを食べるのもと思ってね。最近悠介君、修行ばっかで相手してくれなかったから・・」
「・・・・・・」
嬉しそうに少し悲しそうな表情を見せた燕に、悠介はバツの悪そうな表情をしながら視線を逸らした。何というか、今の燕の顔を直視できなかったのである。
しばしの気まずい沈黙。それを破ったのは、悠介だった。
「悪かった」
「え!ちょ、悠介君」
突然頭を机に叩き付けて謝罪の言葉を口にした。燕は、謝罪の意味が分からずに狼狽える。燕が戸惑うのも当然だ。燕がふと漏らした想いは、ある種の嫉妬だ。
自分自身でも理解しているつもりだ。悠介が、今回の件にどれだけの想いで臨んでいるのかを・・・。八年・・いや、下手をしたらもっと長い時間、相楽悠介が追い求めたモノが手に入るかもしれない。それは、同じ武人である自分にも感じ取れた。
本当ならば、自分は応援すべきだ。でも、その理解に感情が付いてくるかと言われれば、燕はNOとしか言えなった。
『もっと彼と一緒にいたい』『そんな夢よりも私を選んで』どれだけ押さえつけても、湧き上がって来るこの感情。むしろ押さえつけようとすれば、するほどに湧き上がって来る。
そして燕を焦らせる更なる要因があった。それは、ライバルの登場だった。
悠介自身は、武に打ち切んでいて自覚がないが、悪人面のせいで恐く見られがちな顔だが、よく見れば中の上ぐらいの顔つきだ。イケメンと呼べるかどうかは、その人次第だが、間違いなくカッコいいと思う人もいるだろう。
更に困った事に、悠介は強い女子に気にいられる節があった。
理由など決まっている。悠介の生き方にその繰り出す拳に魅せられてしまうのだ。
その飾らない生き方に、ただひた向きに進むその強さに魅せられるのだ。
そしてそれが尊敬へと変わり、次第にそばに居たいと願ってしまう。
自分がそうなのだから。
(ほんと、誰にも渡したくないんだよね。この場所だけは)
燕がそう思っている事など、構わずに悠介は話し続けた。
「母さんともミサゴさんとの約束だ。お前を悲しませないって約束した。でも、約束を破っちまった」
そう話す悠介の表情は、本当に申し訳なさそうだ。
その言葉を聞いた燕は、申し訳ないと言う気持ちと同時に嬉しい気持ちが立ち上った。
このままの空気はいけないと思った燕が、先ほどとは打って変わって元気よく話始めた。
「いやー、それにしても悠介君が、そんな事を気にしてただなんて驚きだよ!!」
燕の言葉を聞いた悠介は、バツが悪そうに顔を逸らしながら
「何つうか、お前には・・・その、笑顔でいて欲しいんだよ」
「え?」
何時もの彼とは思えない程小さな声で発せられた。悠介の言葉を聞いた燕また思考を一旦放棄した。そして悠介の言葉を何度も脳内でリピートしてしまった。
時間にして数秒、時が戻った様に燕の表情が急激に赤く染まった。
「え・・あっ!。え?」
「あ~~~」
燕は未だに言語能力が戻らず、悠介は深い深いため息をこぼした。どちらも恥ずかしがっているのは明白だ。
しばらくの間、二人は先ほどとは違う沈黙に支配された。
「漸く落ち着いたかよ」
「うん。まあ、どうにかね」
一足先に冷静になった悠介のお蔭もあり、どうにか冷静になった燕は、お茶を飲みながら答えた。
「お前って、本当に偶にそんな風にらしくなくなるよな」
「それもこれも全部悠介君のせいだよ」
「うん、何か言ったか?」
「別に何でもないよ」
燕が小さく呟いた言葉は、悠介に聞き取られる事はなかった。
悠介自身もさして気にしなかったのか、それ以上の追及はしなかった。そんな中悠介は、自分が持つ久寿餅と燕を見比べて
「おう、燕」
「うん?どうしたの悠介く・・」
悠介の声に反応して悠介の方を見た燕の思考が再び止まった。
理由など判り切っている。自分の目の前に差し出されたフォークだ。その先には久寿餅が刺さっている。
即座にそれが悠介が差し出したモノだと理解した故に止まってしまった。
しかし、悠介は気づかずに
「詫びだ。食べろ」
燕に久寿餅を差し出した。その瞬間、燕の脳内はありとあらゆる事を思考した。
周りの人数やその場にいる客の視線そして納豆小町としての体裁等々だが、そんなモノを全てをゴミ箱に捨てて燕が決断した答えは、たった一つ。
「あ、あ~ん」
「ほらよ」
差し出された久寿餅を幸せ様に口にした燕。その表情は、とても幸せそうだ。
「もう一つ食うか?」
「うん!食べさせてよね?」
「わあってるよ」
悠介の問いに元気よく答えた後、わざと小首をコクンと倒した燕。その表情と動作は、相まってとても可愛らしいが、悠介は何の反応も見せずに久寿餅を差し出した。
悠介の反応にイラッとした燕だが、そんな悠介だからこそ今の状況がありえるのだと納得して、滅多に来ないであろう幸運な状況を心から楽しみべきだ。
それが燕が下した決断だった。
「見せつけてくれるね~」
悠介が差し出した久寿餅を食べる燕の姿を見た千花は、とても羨ましそうに呟いた。
「う~ん。今日は楽しかったね」
「まあまあだな」
「あ~またそんな事言って~」
日が沈み始め、夕日が二人を照らす中、今回のデートに満足した燕は、ご機嫌そうだ。
対して悠介は、心的に疲労困憊と言った感じだ。
「よし、それじゃあそろそろ帰ろうか」
そろそろ時間だしねと呟いた燕に対して悠介は
「わりぃ。ちょっとだけ河川敷で軽く汗を流してから帰るわ」
まだ帰らないことを告げた。
「もしかして、今日のお出かけ楽しくなかった?」
悠介の言葉を聞いた燕は、先ほどとは違ってとても心配そうに尋ねた。燕の言葉を聞いた悠介は、頭をガシガシとかいた後、ゆっくりと燕の頭に手を置き
「あ」
「さんきゅうな。良い気晴らしになった。晩飯期待してるからな」
撫でながら、優しい声音でそう答えた。悠介から撫でられた燕は嬉しそうに
「うん。期待しててよね悠介君!!」
「出来れば、納豆料理は少なめで頼むぜ」
「それは無理だね」
「即答かよ」
「ふふふ。納豆小町がいる以上、その家の食卓には必ず納豆料理を並ばせて見せる!!」
「何つう決意だよ」
いつも道理の会話を話した。
「それじゃあ、後でね」
「おう」
手を振りながら家に向かって帰る燕を視界に納めた後、悠介もまた河川敷に向けて歩き始めた。
「そんじゃまあ、行きますかね」
今日もまた一歩を進むため。
ヤバイ、燕のお姉さんキャラが崩れている・・・・これでいいのだろうか?
自分事ですが、明日からテスト一週間前になるので、暫く更新できません。
大学が決まったとはいえ、下手をして赤点などを取ると危ないので
楽しみにしている方がいましたら、本当にすみません。
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