真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~ 作:スペル
上手くこの部活を描けるかわかりませんが、全力で書きました。
違和感とかあったら教えて下さい
井上準の驚愕の本性を知った悠介は、気怠そうにしながら廊下を歩いていた。
「さてっと、俺の経験から行くと・・・この辺りに在りそうなんだけどな」
一度止まって辺りを見渡しながらそう呟いた。
天神館時代に
その為、そう言う場所を探す嗅覚を持っていると言う、なんとも言えない自負があった。
「ふう。いや、ちげえか。もっと昔に
思い起こすは、まだ自分が川神院で修行を付けて貰っていた頃の記憶。
自分を痛めつけてくれた男が自分に教えてくれた、およそ教え導く者とは思えないそう言った事から逃げるための方法。
(なんで思い出してんのかね)
痛めつけられたり、苦汁をなめた記憶が多いはずだ。だからだろうか、何気ない日常の風景が一番記憶に残っているのは・・・・
(って、なんでこんなしみったれた気持ちになってるんだよ!!)
湧き上がってきた感情を振り払った悠介は
「お!あそこは結構いいんじゃねえか?」
自分の嗅覚に従い一つの教室を目指して歩を進めた。
悠介がいる階にある一室
「な~お前達。どうしたら、真剣に小島先生とお付き合いできるかね」
「まだ諦めてないんですか?」
「ある意味尊敬するよ。ホント」
将棋を打ちながら零れた切実な問いを聞いた大和と弁慶は、呆れ八割尊敬二割と言った声で、その問いに対する率直な感想を口に出した。
「いやいや。諦めない限り可能性はあると思うだよね、オジサンは。ほら、何処かの名監督も『諦めたらそこで、試合終了ですよ』って言ってたじゃん?」
「それはあくまでもフィクションの世界ですよ。それと王手」
「な!いや、待て。諦めなければきっと、希望の光明が・・・・・見えないのね」
しばしの将棋盤を睨んでいた男は、深くため息を吐きながら投了した。
「それにしてもさ、小島先生の所に新しく入った相楽って奴は、どうなのよ?やっぱり噂に違わぬ不良か?だったら、オジサン頑張って更生させて小島先生の評価を上げようと考えてるんだけど」
「言ってる事はカッコいいんだけど、理由が不純すぎるね」
そろそろ加齢臭を感じさせそうで、まるで駄目なおっさん 宇佐美巨人の言葉に弁慶は、川神水を飲みながら答えた。
宇佐美の言葉に大和は一瞬考える様な素振りを見せた後
「いや、俺も噂を調べてみたけど、そのほとんどが尾ひれのついた物だよ。授業態度はFクラスの中では上位に入るし」
「マジですか」
噂を否定した。その事を知った宇佐美は、軽く落胆の声を上げたが、その表情は何処かホッとしている。やはり、彼も一人の教師の様だ。
「さっきから言ってる噂ってのは?」
「ああ。相楽の奴が
「なるほどね~」
大和から話を聞いた弁慶は納得の声を上げた。
まあ、納得は出来る。顔は悪人面だし、口調は悪くないとも言えない。
今朝も武神に変わって、彼女に挑みに来た不良を全員倒していた。
その時も不良達と盛大に口喧嘩もしていた。
それだけ聞くならば、その噂も信じてしまうだろうが、弁慶自身はそうは思わなかった。
理由ならわかっている。川神一子とクリスティアーネ・フリードリッヒそしてマルギッテ・エーベルバッハとの決闘を見たからだろうと思っていた。
決して綺麗とは言えない拳だった、けれどもその拳を言葉を聞いて
(驚く事に、この私が素直に尊敬の念を抱いたんだもんね)
それと同時に、何か別の感情も抱いたが、それが何なのかは彼女自身理解できていなかった。
川神水を飲んでいた弁慶がある事に気がついた。
「どうしたのよ?」
「此処に誰かが近づいてきてるね」
「何だ、ならほっておけよ。こんな空き部屋に用がある様な奴はそうはいないだろ?」
「それもそうだね」
宇佐美の言葉に弁慶が同意した瞬間、ガララと扉が開き
「何だぁ?。先客がいたのかよ」
先ほどまで話題の人物だった 相楽悠介が現れた。
悠介が扉を開けると同時に視界に映りこんだのは、三人の姿だった。
それを見た悠介が感じたのは、残念と言った感情だった。
悠介自身は、誰にも邪魔される事無く一人でのんびりと惰眠を貪ろうと考えていたのだ。しかし他のメンバーがいたのではそれは出来ない。
(仕方ねえか)
他の場所に向かう気になれない悠介は
「わりぃんだけどよ、少しだけ場所を貸してくれねえか?」
許可を貰い場所を貸して貰い、そこで寝る事を選んだ。
多少は視線を向けられるだろうが、多少ならば我慢できない事もない。
「使いたいならさ。せめて何の為に使うかを言うのは、礼儀じゃない?」
「ああ!確かにそうだな。えーっと」
「弁慶。武蔵坊弁慶だよ。一応武士道プランの一人だよ。よろしく」
「そうかい。何、ただ少し昼寝をする場所を貸してほしいんだよ。今も眠気が襲ってきてしょうがねえ」
自身が明かした正体にもさして反応を見せなかった事に若干驚きを感じた弁慶だが、悠介の言葉を聞いて笑みを浮かべた。
「先生。どうやら、入部希望者の様だよ。私が推薦するよ」
「おいおいマジですか」
「まあ、試すぐらいいいじゃない」
弁慶の言葉を聞いた宇佐美は、やれやれと言いながら悠介に近づいた。
一方の悠介は、全く話について行けず、ハテナマークを頭の上に浮かべていた。
「なあ、直江。一体どう言う事だ?」
「まあ、直ぐにわかるよ」
大和は悠介の問いに簡単に答えた。
「それじゃあ、相楽。ちょっとした質問をするから答えてくれるか?」
「いいけどよ。あんたは確か、ジジイの部屋にいた」
「ああ、二年S組担任の宇佐美巨人だ。宇佐美代行屋と言う仕事もやってるから、困った事があったら、何でも言ってね。オジサンお金次第じゃ頑張っちゃうよ」
「金はとるんだな」
「勿論。現実の厳しさを教えるのも、オジサンの仕事さ」
「まあ、納得だわ。ある意味だけどよ。それで、何の為の質問だよ」
ある程度自己紹介を終えた悠介は、ずっと疑問に思っていた事を問うた。
「それは、お前さんがだらけ部に入部できる人材かどうかを計る質問さ」
「だらけ部?」
「そう。特に何をする訳もなく、ダラダラと時間を過ごそうと言う部活」
「あ、勿論非公式の部活な」
宇佐美と大和の説明を聞いた悠介は、漸く納得した表情を見せ「ジジイの学校らしいぜ」と呟いた。
そして
「おもしれえ。良いぜ、受けてやるよ」
承諾の意を伝えた。
「了解。それなら質問だ。お前は雪山にみんなで旅行に来た。自由時間、目の前にはウィンタースポーツに最適な雪山。さあ、どうする?」
宇佐美の質問に対して悠介は間髪入れずに答えた。
「そうだな。まあ、真っ先に思いつくのは雪山での鍛錬だよな。雪山で修行とかやった事ねえからな、どうなるか楽しみだぜ」
悠介の言葉を聞いた宇佐美と大和は、これは無理だと判断し、不合格を告げようとしたが
「でもまあ、鍛錬を抜きにして考えたなら、とりあえず温泉にでも浸かってのんびりしたあと、部屋で飯が来るまで昼寝だな。そんで終わったら、また温泉に入ってまた飯が来るまで寝ての繰り返しだな、たぶん」
次に語られたのは、紛れもなく合格と言えるだけのだらけぶりだ。
ある意味異例とも言える答えを聞いた二人は、どんな決断をするべきか暫らく考え始めた。
「まあ、異例な答えだが・・・確かにこの部に入部するだけの素質もある。合格だ」
しばしの間を開けた宇佐美が、悠介の入部を認めた。
「おし!!それじゃあ、早速その辺借りるぜ」
合格と知った悠介は、眠る為に横になろうとしたが
「ちょっと待ちなよ。新入部員は、先輩に酌をする義務があるよ」
「うおっ!」
弁慶が横になろうとした悠介の首を掴んで、自分の方に引き寄せた。
急に引き寄せられた悠介は驚きの声を上げた。
悠介は「何すんだ」と弁慶を睨み付けたが、当の本人は気にした様子もなく
「ほら、早く早くぅ」
悠介に酌を急がせた。
弁慶の頬は赤く染まっていた。その姿を見た悠介は、何を言っても無駄だと判断した。
こう言う状況は、久信のお蔭で慣れていた。
「ほらよ」
「うんうん」
弁慶から川神水を受け取り、弁慶の持つ癪に注いでいった。その姿を見た弁慶は、満足そうに頷きながら注がれた川神水を飲んでいた。
完全に出来上がっている弁慶。最早、会話を聞く耳など持たないのは明白だ。
しかも、どう言う訳か悠介を捕まえている腕の力が上がっており、さっきから脱出しようと試みているが、全く動かない。
何気に胸を押し付けられており、息苦しいのもつらい。
「おい、弁慶。そろそろ離せよ!!」
体勢も悪く自力では脱出は無理と察した悠介は、ダメもとで弁慶の訴えるが
「ほら、悠介。私がアンタに飲ませてあげるよ」
今度は悠介に川神水を飲ませようとしている。
悠介は、宇佐美と大和に助けを求めるが、二人は二人でだらけに入っており助けを期待できない。それは当然だ。此処にいるのは、めんどくさい事を嫌うメンツが揃っているのだ。そのメンバーが、弁慶から悠介を剥がさせるなど言う労力を使うモノを率先してやる訳がない。
この場所に来た時点で、悠介も休む気満々だったので、余り力が出ない。
ならばと、悠介は抗う事を止めて弁慶の思うがままにする事に決めた。
「ありがとよ」
川神水を飲み終えた悠介に満足したのか弁慶の笑みを浮かべた。
そしてそのまま
「よいしょお~」
「あだ!!」
横たわった。勢いがあった為に、悠介は勢いよく床に叩き付けられた。
(マジでヤバイ!!酔っぱらった久信さんとマジで同じノリだ!!)
ある種酔っぱらいの恐ろしさを知っている悠介は、ノンアルコール飲料でありながらも場の雰囲気で酔える飲み物で、此処まで再現できるのかと驚いた。
「おうおう。見せつけてくれるね~」
「ほんとですね、先生。もう付き合っちゃえば?結構、優良物件でしょ?」
悠介と弁慶のやり取りを見ていた大和と宇佐美の二人は、そんな茶々を入れる。
「出来れば、助けてくれよ」
「いやいや、男冥利に尽きる状態なのに何助けを求めてんのよ。むしろ自慢するところよ?」
悠介の助けに対して、宇佐美は更に茶々を入れる。
「いや、ただめんどくせえ酔っぱらいに絡まれている気分だよ」
宇佐美の茶々に悠介は、疲れた様に呟いた。
疲れをとる為に来た筈なのに、なぜむしろ疲れないといけないのだ。
「うん?お前さん、そう言った事に興味ないのか?」
「まあ、そうだな」
宇佐美の発言に悠介は、同意の言葉を発した。
「なんでだよ?」
悠介の発言に横やりを入れたのは大和だった。
心なしかその表情は、必死さを窺わせていた。
大和の問いに悠介は答えていく。
「自慢になるかもしれないけどよ、俺の周りって結構美少女?って奴が多いんだわ。モモに燕とかな」
「おお、それは確かに自慢だな」
「そんな奴らと小せえ時から、一緒にいるからな。ある意味馴れたって感じな。だから今一そう言った
そこで一度言葉を切って
「そんなモノよりも、優先させたいものがある。何をおいても優先させたいものが。それを成すまでは、きっと俺はそう言ったモノに興味が出ないと思うんだよな」
「なるほど。恋愛に浮つくよりも、大切なモノがお前さんにはあるのね。かっ~青春だね」
悠介の言葉に宇佐美は、かつてを思い出しかの様な声で感想を呟き、大和は何処か安心した様な表情を見せた。
「まあ、母さんからは、精神が早熟し過ぎって言われてるから、それも関係あるんじゃね?自分じゃ、どうにも言えねえけどよ」
そう言いながら悠介は、知らぬ間に眠ってしまった弁慶の拘束を脱し、自然と弁慶の頭を撫でていた。クセッ毛だが、優しくなでる姿は、本当に兄の様だ。
弁慶も気持ちよさそうな声を上げている。
「確かに、その表情は手のかかる妹を見る兄の目だわ」
「だろ。よく言われるぜ」
納得したように呟いた宇佐美の言葉を聞いた悠介は、弁慶から少し離れた場所に横になり、ゆっくりと目をつぶった。
それを見た二人も、ゆっくりと床に寝転がり目を閉じた。
数分後、四つの寝息が教室に奏でられた。
結局四人は、完全下校の時間まで惰眠を貪った。
え~っと、何となく想像がついてるかもしれませんが、弁慶もヒロイン?候補です
マルギッテと同じでどうなるかはわかりませんが
次回は、燕と悠介のデートの話を書こうと思っています
良かったら、感想をお願いします