真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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ずっと戦闘ばかりだったので、ちょっとした日常回です

本当は短くして、もう一つ加えるつもりだったんですが・・・題名でわかる通り彼の暴走のせいで、丸々一話を使う羽目に
加えるはずだった話は、連休中にでも更新出来たらなと思っています




悠介とロリ

マルギッテとの決闘の決着は悠介の勝利で終わった。

気絶したマルギッテも川神院の治療により、数十分でどうにか日常生活に支障がないレベルまで回復した。

そしてマルギッテは、悠介を見つけて一言『今度戦う時はもっと・・いえ何でもありません』と何かを伝えようとしたが、思いとどまり『次は私が勝つと知りなさい』 そう言って悠介の元を去った。

その時のマルギッテの表情は、何処か清々しいモノがあり、マルギッテの言葉を聞いた悠介も『ああ、次もぜってぇ敗けねえよ』と笑みを浮かべてマルギッテの言葉に返した。

 

 

そんな悠介とマルギッテの決闘の翌日 川神学園 放課後

 

「すいません、相楽君。私の仕事を手伝ってもらって」

 

 

「気にすんなって。こういう力仕事はアンタよりも俺向きだ。適材適所って奴だな」

 

 

現在悠介は、甘粕と共に大量のプリントを運搬していた。

なぜそうなったかと言うと、放課後一人で作業していた甘粕を見つけた悠介が自分も手伝うと言って手伝っていると言う、ただそれだけの理由だ。

 

 

「何時もアンタがこう言った仕事をしてんのか?」

 

 

「はい。私は皆よりもお姉さんなので、こういうのは率先してやるのがお姉さんの仕事です」

 

 

「なるほどねぇ」

 

 

悠介の素朴な疑問に甘粕は、笑顔を見せながら悠介の問いに答えた。その笑みを見た悠介は、彼女自身の『強さ』を再確認し口出す事を止めた。

恐らく何を言っても無駄だろう。甘粕真与と言う少女はきっと譲らない、自分と同じように・・・だからこそ

 

 

「何かあったら頼れよな。年下には年上を手伝う義務ってのがあるんだからな」

 

 

助けよう。それぐらいならば、自分にも出来る筈だから。

悠介の言葉を聞いた甘粕は、一瞬呆けたような顔をしたのち、クスっと声を漏らし

 

 

「そうですね。たまには皆にも手伝ってもらわないといけませんね」

 

 

「ああ、その方が良いと思うぜ」

 

 

そう言って笑い合う二人は、本当に何処にいる兄妹の様だ。

     ゾクッ!!

 

 

「!!?」

 

 

「? どうしたんですか?」

 

 

突然、勢いよく後方を振り向いた悠介に疑問を持った甘粕が声を掛けたが、悠介は何も答えない。

 

 

「誰だ?」

 

 

後方に視線を移した悠介が発した言葉。その声音は、低く威圧感が含まれていた。

自身に向けられた負の感情。それを向けている存在に優しく出る必要などない。

悠介の言葉に反応して出てきたのは

 

 

「井上?」

 

 

つい最近出会った井上準だった。

その後ろには、冬馬と小雪もいる。しかし、その表情は何処か呆れ気味だ。

二人の表情に疑問を持った悠介だ。そんな悠介に準はゆっくりと近づいて

 

 

「同士よ!!」

 

 

バシッ!と勢いよく悠介の手を掴んだ。

 

 

「は?」

 

 

急に手を握られた悠介は、持っていたプリントを地面に落してしまった。

しかし、今の悠介にはそれを気にする余裕はない。

準は悠介が呆気にとられている事など一切気にせずに

 

 

「やはり俺の目に狂いはなかった!!お前も俺と同じ人種だと、何よりも今のその状況こそがその証!!なれば、俺とお前が望む桃源郷(りそう)も同じ!!先日の件と言い俺にはわかるぞお前の力の源が、俺と同じ物だと言う事が!!」

 

 

矢継ぎ早に己の想いを告げていった。

悠介は、余りの早口やら呆気やらでまともに思考が働いていないのか、呆気に取られ過ぎて身動き一つ出来ていない。

そして準は、早口そのままに

 

 

「間違いなく、お前はロリコン(同士)だ!!」

 

 

「はあッ!!」

 

 

己の本質(ほんしょう)を告げた。

思考を漸く取り戻してきた時に告げられた衝撃の言葉に、珍しく気の抜けた年相応の声を上げた。

それと同時に後ろに控えていた冬馬に助けを求めるが、笑顔で手を振るだけで助ける気は全くないらしい。むしろ『諦めてください』と目が言っている。

 

 

(なら榊原の奴は…っていねぇ!!)

 

 

ならばと思った悠介が小雪に助けを求めようとするが、その姿は何処にもなく、次いで甘粕の姿と落ちていたはずのプリントが消えている事から、小雪が甘粕を連れて職員室に向かったと悟った。イコール助けは期待できない。

そんな悠介の苦労など気にも留めずに準は話し続ける。

 

 

「おお!!そんなにも同士(おれ)がいたことが驚きか?安心しろ俺もだ!!だが、俺とお前ならば作れるはずだ!!いざ、理想のロリコニアの為に紋様に仕えようじゃないか!!あっ!でも、YES,NOタッチロリータは弁えろよな。お前が委員長を撫でている所を見た時は、俺の中の修羅が目を覚ましそうになったぜ!!って言うか、羨ましいので是非幼女の警戒心を解いて頭を撫でれる技術(わざ)を教えてくれ!ブラ・・ブオォ!!」

 

 

準が全てを言い終える間際、悠介の拳が準に打ち込まれ、準はドサと地面に倒れた。

本来ならば許されない行為の筈だが、悠介の本能がこうしなければならないと強く訴えた結果である。

地面に倒れた準を視界に納めた後、悠介は後ろでクスクスと笑っていた冬馬に視線を移し

 

 

「おい、葵。もしかしなくてもだけどよ、井上って」

 

 

一応の確認のセリフを述べようとするが、それよりも早く

 

 

「ええ、準は・・」

 

 

「ロリコンなのだ~」

 

 

冬馬といつの間にか戻ってきた小雪が事実を告げた。

 

 

「さいですか」

 

 

自身の予測が正解だったことを知り、ひどい疲労感に襲われた。

むしろ、あの状況で間違える方が珍しいが・・・

 

 

「ハゲ~起きろ~」

 

 

「ゴハァ!!」

 

 

小雪は未だ気絶している準を蹴飛ばした。苦悶の声と共に準の意識が無理やり覚醒させられる。

その小雪の蹴りを見た悠介は、即座に小雪の強さを察した。間違いなく強い。それが悠介が抱いた素直な感想だった。しかし、同時にそれだけだった。別段戦いたいとは思わなかった。きっと、井上のせいで疲れてんだなと悠介は勝手に納得させた。

 

意識を取り戻した準は

 

 

「若、つい先ほどまでの記憶が無いんだが、何でか知らないか?」

 

 

己の記憶の不振を問うた。

 

 

「恐らく興奮して理性が飛んだ状態で気絶した為、脳が何も記録していないんでしょう」

 

 

「興奮?」

 

 

「うん。凄く興奮してたよハゲ~。頭から、血が飛び出て赤い髪を作るぐらい」

 

 

冬馬と小雪の二人は、準をある種催眠していた。

先ほどのやり取りをなかったと事にするつもりだ。最も、悠介自身もその方が都合が良いので何も言わずに黙っていた。

 

 

「そうか。相楽、悪かったな。俺のせいで迷惑かけてみたいですまん」

 

 

「別に気にすんなって(性格は悪くねえのに・・・本性が勿体なさすぎるだろ、おい)」

 

 

先ほどまでとの落差に驚きながらも、どうにか平静を保って話せた悠介。

 

 

「それで準。悠介君に聞きたい事があるんじゃないんですか?」

 

 

 

「え!聞きたい事だと?」

 

 

冬馬の言葉を聞いた悠介に悪寒が奔った。思い起こすは、先ほどの会話。

井上は何と言っていた?

 

 

「ああ!!そうだったぜ」

 

 

冬馬の言葉で当初の目的を思い出した準は、悠介の目を真っ直ぐ見ながら

 

 

「頼む!!どうすれば、委員長の事を撫でれるのか・・・その秘訣を教えてくれ!!」

 

 

(さっきと、何も変わってねえじゃなねえか!!)

 

 

準の願いを聞いた悠介は叫びそうになるのをどうにか抑え込んだ。

そんな事よりも、どうにかしてこの場を納めなければならない。

下手な答えは、今後も尾を引きかねない。

ならば、最初に言わねばならない事は

 

 

「まず先に言っておくぞ、俺はロリコンじゃねえからな」

 

 

 

「なに!あれ程委員長を愛おしそうに撫でていたと言うのにかッ!!」

 

 

「あれは・・・何て言うか、頑張ってるから応援したくなるとかそう言う感じだ」

 

 

準の勘違いを正す事だった。

悠介の言葉を聞いた準は『そうか。未だに無自覚か』と納得していない様な様子だったので悠介は説得を諦め

 

 

(燕に頼むか・・・)

 

 

最終兵器を使う事を決断した。後日、井上準は燕に呼び出され、それはそれは素晴らしい笑みで説得され、悠介が違う事を語られ納得したと言う。

 

 

「それよりもだ。ならば、手段だけでも教えてくれ!!」

 

 

「・・・・」

 

 

準の問いに悠介は答えない。いや、答えられない。

だって、方法など無いのだ。ただ、気が付いたら撫でていたのだ。

しかし、そんな事を言って納得する訳もなく、しばし長考し

 

 

(今度こそ助けろ!!)

 

 

考える事を放棄し、後ろいる準の友達(かぞく)になげうった。

悠介の言葉を組んだ冬馬は、笑みを浮かべ『任せてください』と悠介に返した。

 

 

「準。よく考えてください」

 

 

「何をだよ、若?」

 

 

「悠介君が、委員長さんの頭を撫でれたかですよ。恐らくは信頼が関係しているんでしょう」

 

 

「信頼だと!!」

 

 

冬馬の言葉に雷を受けたかのような反応を示す準。

 

 

「ええ。悠介君は、何度も手伝いなどで委員長さんからの信頼を得ました。だからこそ、委員長さんは悠介君の手を払う事も嫌がる事もなかったのではないのでしょうか?」

 

 

「なるほど。流石は若だぜ!!ならば・・」

 

 

「ええ。委員長さんと仲を良くしていくべきですね」

 

 

「おお!!こうしちゃいられねえぜ!!待っててくれ、委員長ーーー!!」

 

 

雄叫びを上げながらその場を去っていった準を唖然と見送った悠介に

 

 

「今回はうちの準が迷惑をかけた様ですいません」

 

 

「ごめんなのだ~。はい、お詫びのマシュマロ」

 

 

「まあ、気にすんな。人の個性だしよ、あれこれ言う気はねえよ」

 

 

「そう言って貰えて助かります。では、またの機会で。ユキ行きますよ」

 

 

「ほぉーい。じゃーねー」

 

 

二人の姿が見えなくなった後、悠介は小雪から貰ったマシュマロを口に含んだ。

 

 

「何か、何時もの倍以上疲れたぜ」

 

 

口に広がる甘さが何故か心地よかった。

 

 

「はあ」

 

 

何故だかはわからない。しかし、ひどく疲れた。

 

 

「・・・どっかでだらけれる場所を探して寝るか」

 

 

そう言って悠介は、だらけるのに良さそうな場所を目指して歩き出した。

 




違和感あったら教えて下さい
何か、自分でも途中から何が何だか分からなくなってきていたので・・

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