真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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遅れてすいません!!
実は最近、夏風邪に罹ってしまっていて執筆できませんでした。
漸く、落ち着いて来たので更新します。

未だに微熱があるなか書いたので、何時もよりもグダグダで脱字や誤字が多いと思います


悠介と燕 その1

突如として現れた燕と言う美少女の登場にクラスのテンションが上がっていく。

燕は納豆小町と呼ばれるほどの美少女なのだ、男達のテンションが上がらない訳がない。ならば、女好きで知られる百代はどうかと言うと。

 

「美少女来た――――!!」

 

クラスの男子よりも上がっている。最近、自分が得をする事が起きているなと百代は思う。まるで幸運の女神が、今での不幸を帳消しにている様だと思ってしまう。

一定以上の強さを約束された義経たち武士道プラン然り、今朝の仕合から自分と打ち合える事を確認済みの悠介然り。そして今、自分に匹敵しかねない美少女である燕だ。百代がそう思っても不思議ではない。

燕は、笑顔で手を振り男子たちの声に応えていく。燕が男子達の歓声に応える度に、比例するように男達のテンションが上がっていく。

もしもこの場に悠介がいたならば、こう言うだろう『全部燕の計算どうりだな』と。

燕はある程度男子たちの声に応えたあと、軽やかな足取りで百代の前まで歩き、衝撃の一言を告げた。

 

「ねえ、モモちゃん。私と手合せしてくれないかな?」

 

燕の言い放った言葉は、F組の時間を止めるには十分すぎた。しかし、その中で百代が最も早く思考を取り戻し不敵に笑みを浮かべる。

 

「…ほう。言っておくが、今の私は余り手加減できないぞ。それでもいいのか?」

 

燕の言葉に先程のだらしがない顔が一瞬で、肉食獣を思わせる獰猛な顔に変わり、燕に意思を再確認する。

悠介と戦ったばかりで身体は、一向に落ち着かない。故に下手な手加減は絶対に出来ない。

そんな意味を持たせた言った言葉に燕も不敵な笑みを浮かべる。

 

「心配ありがとね。でも大丈夫だよ。

私も結構強い(・・・・)から」

 

先程までの営業用とも言える笑みが消え去り、顔を見せたのは武術家松永燕の顔。

瞬間、百代の本能が燕の強さの鱗片を感じ取る。

その言葉に嘘偽りはないと。

 

「いいだろう。それじゃあ早速始めるか」

 

「うん。学園長には、もう話は通しているから何時でもいいよん」

 

そう言って百代は静かに席を立ち、ワッペンを見せつける。燕もまた百代の行動に応えるようにワッペンを取り出し、互いのワッペンが重なり合う。

そうして二人はグランドの方に足を進める。

遅れてクラスメイト達は、百代たちの後を追ってグランドに向かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

グラウンドには既にルーが準備を終えて待っていた。辺りには、ルーが準備したのか多くの武器が置かれている。

 

「準備して下さってありがとうございます」

 

「気にしなくていいヨ。それよりも大丈夫かイ?」

 

「はい。大丈夫です」

 

燕の力強い声を聞いたルーは、これ以上言っても無駄だと悟る。故にルーは、一人の武人として審判としての役割を果たし結末を見届けようと決める。

 

「それじゃあモモちゃん、朝礼が終わる時間までよろしくね」

 

「ああ、此方こそだ」

 

二人は静かに舞台の両端に進み。合図を待っている。グラインドにくる前に事前にルールは共有し、互いに了承もしていた。そして燕自身、既にルーにもルールを伝えている。

故に後は時が来るのを待つのみ。

ルーは舞台の中心に立ち、腕を上げて宣言する。

 

「それでは始メ!!」

 

「行くぞぉ、燕!!」

 

ルーの合図と共に百代が猛スピードで燕に迫る。常人ならば、影すら終えない速度で迫る百代の行動に対して燕は。

 

「ほいさ」

 

「なっ!」

 

身近にあった武器である棒を拾い下段に放つ事で百代の体制を崩し攻撃をいなす。

様子見の一撃だったとはいえ、簡単に受け流された事に百代は驚く。

 

「今度は、こっちの番」

 

百代の攻撃をいなした燕はそのまま棒を振り上げ百代に叩き付ける。

が…

 

「あまいっ!」

 

「あれまっ!?」

 

燕の放った攻撃に対して百代は、ダメージを気にすることなく強烈な蹴りを放つ。

全くダメージを受けていない百代と自身に放たれた蹴りに対して、驚きの声を上げながらも燕は空中へ一回転する事で逃れる。

 

「まだだぞっ!」

 

空中にいる燕を追いかけるように百代も空へ跳ぶ。

 

「くらえ!」

 

「こっちこそ!」

 

百代の拳と燕の蹴りが空中で交差する。一瞬の接触。バチン!と二人は弾かれた様に地面に落下する。

 

「く~、強烈っ!!」

 

若干後方に下がりながら燕が、百代の攻撃に対する感想を自然と述べる。燕の言葉を聞いた百代は、笑みを浮かべながら高らかに言葉を発する。

 

「いいいぞ、燕。もっとだ、もっと戦おう」

 

「ありゃま!何かエンジン掛かってきたみたいだね」

 

最初は、いくら強いとは言え直ぐに終わるモノだと考えていた。

しかし、違った。僅かに手を交わらせて分かった。目の前の敵は、本物だと。

ああ、本当に嬉しい。こんなにも戦える相手が続々と現れるなんて。

ならば、後は楽しむだけ。

百代の纏う雰囲気が徐々に獰猛さを増していく。百代の変化に気が付いた燕は一瞬、観察する(・・・・)様な目線で百代を見る。

しかし、その目線は直ぐに無くなり、今度は自分から攻め始める。

 

「なら、お言葉に甘えて今度は、剣で勝負と行こっか」

 

「ああ、何でも来い!!」

 

剣を構えながら駆け出した燕を歓迎するように百代声を荒げながら吠える。

 

「はあっ!」

 

自身のスピードも乗せた斬撃が百代に向かって放たれる。百代は縦に放たれた燕の攻撃を横に躱す。しかし、燕の動きは止まらず、そのまま連続で斬撃を放つ。

 

「やあぁ!」

 

「なにっ!?」

 

「おっ!もしかしてチャンスかな?」

 

想定よりも多い燕の連続斬撃を喰らい、体勢を崩した百代の姿を見た燕は自然とそんな声を漏らす。すかさずもう一撃を叩き込もうとした燕だが、急激な悪寒が奔りその場から即座に離れる。

瞬間、鋭い拳打が放たれ燕の持ってい剣を破壊する。

 

「うそぉ!」

 

「外したか」

 

――――あの体勢から攻撃をしてくるなんて。ホント、情報通り出鱈目だね

 

百代の攻撃を躱した燕は、表情にこそ出てはいないが心の内で驚きを露わにする。

しかし、即座に切り替え攻撃に転じる。

 

「それなら、こっちでどうかな」

 

手に持った槍での連続の突き。襲いくる突きを前に百代はその全てに拳をぶつけ槍自体を破壊する。

しかし、燕も止まらない。近くにある武器を即座に拾い、あらゆる角度から連続で攻撃を放つ。

攻撃を避けながら舞うように攻撃する燕と攻撃を躱さずひたすら攻める百代。

二人の戦う姿は、教室から二人の戦いを見ている生徒たちのテンションも高まっていく。

 

「ギャラリーも乗ってきた。もっとだ燕っ!」

 

「そうでだね。期待に応えれるように頑張りますか」

 

百代の言葉に応えるように燕は武器を拾い百代に向かって駆ける。二人の戦いは、更に速度を増していく。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

燕と百代の手合わせは見る者達を興奮させていく。そしてそれは悠介の居るFクラスでも変わりはしない。

 

「わ~本当に凄いわね」

 

「ああ、そうだな。

あ!今度はハンマーを使いだしたぞ」

 

「正に変幻自在」

 

自分達のクラスの窓から戦いを見ていた一子達は、一日に二人も百代と戦える人物の登場に最初は驚いてたが、次第に二人の魅せる戦いに熱中していく。

それはきっと武人としての本能なのであろう。しかし、彼女たちの様に二人の戦いを見守る者もいれば…

 

「つっか、あの美女は誰だよ!!」

 

「俺様も全く知らねえぞ」

 

「あっ!速すぎてパンチラが写真に納められねえ!!」

 

「踏ん張れよ、ヨンパチ!!お前だけが、俺様達の希望だ!!」

 

「おうよ!!わかってるぜ!!」

 

己の欲望に忠実に従う者もいる。

ガクトと話しているのは、福本育郎。通称ヨンパチ(ガクト命名)。

パンチラ写真などを納める為にカメラを常備する男で、女子の間からは嫌われているが男子の間では一部を除き人気がある。

学園の裏で、自分が撮った写真などを売っているらしい。またの名を童帝。

 

「全くガクトは。それにしても凄いよね。大和は知ってた?」

 

「いや、俺も全く知らなかった。何者なんだ?」

 

普段通りのガクト達に呆れながらもモロもまた、負ありの手合わせに魅せられる。

そんなモロの言葉に大和もまた驚きながら否定の言葉を述べる。

 

「彼女の名は、松永燕。そこにいる相楽と同じく、天神館からの転校生だ。

それなりに使えるとは言っていたが、言葉以上だな。

見てる此方も引き込まれる武器さばきだ」

 

そんな大和たちの疑問に答える様に小島先生の言葉が届く。彼女もまた、二人の戦いに魅せられている。

そんな中大和は、小島先生の言葉を聞き悠介に視線を向け先ほどの言葉の真意を問う。その大和の目線に気が付いた悠介が言葉を発する。

 

「ああ。間違いなく燕は天神館の生徒で、三年最強の実力者だ」

 

「?。だったら何で、交流戦に出てなかったんだ?」

 

悠介の言葉を大和は純粋な疑問を口にする。燕という生徒が強いことは間違いないが、ではなぜ以前の交流戦には参加しなかったのかという至極真っ当な疑問が湧き上がる。

彼女がいれば、3年生の勝負もあれほど一方的には成らなかったのでは無いか。そんな大和の疑問に悠介は頭を掻きながら、ぶっきらぼうに答える。

 

「納豆小町の仕事と被って無理だったんだよ。

松永納豆って名前知らねえか?西だと結構有名だが」

 

「あ!それってこれの事?」

 

「それで間違いねえよ」

 

悠介の返答にいの一番でに反応してモロが、スマホを操作して松永納豆の画像を見せる。

モロの言葉に悠介が反応すると同時にガクトがモロからスマホを奪い画像を見る。

 

「うぉおお!!マジで可愛いい!!こんな子が売り子やってたら、俺様は百パックは買うぜ」

 

「ほんとだよな。この可愛さは最早詐欺だと言っていい」

 

狂喜乱舞するガクト達を見た悠介は、燕の本質を知っているからこそ苦笑いが止まらない。

女子たちもガクト達に軽蔑の目線を向けている。

視線が二人の戦いとガクト達に向く中、悠介だけは即座に視線を外し時計に視線を向ける。

その表情は、何処か寂しそうだ。そして静かに呟いた。

 

「そろそろ…ケリか」

 

その声を聞きとった者はおらず、ガクト達の騒ぎに消えていく。ふと、悠介の目線と燕の目線が交差した。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

高速で行きかう拳の連撃と武器の連撃。ぶつかり合うそれは、いくえの火花を咲かせながら場を彩る。

 

「はっ!お前は最高(・・)だな燕」

 

「それは、悠介君よりも(・・・・・・)?」

 

戦いのさなか。百代のふと呟いた言葉に反応した燕の言葉を聞いた百代は、一瞬言葉に詰まるが…

 

「いや、あいつは特別だ(・・・)

 

即座に答えた。

 

「そっか」

 

百代の言葉に燕もまた、戦いの最中とは思えない声で呟く。

 

「そんな事よりも続きを始めるぞ」

 

「そうだね。期待に応えようかな」

 

再び百代は燕に向け拳を打ち込み。燕は武器を拾いあらゆる角度から変幻自在に打ち込む。

放たれ打ち込まれて、激突していく二つの攻撃。百代と戦っているさなか、燕の目線との悠介の目線が重なった。

特別意識したわけでは無く、全くの偶然だった。

交わったのもほんの僅かな時間。しかし、悠介は告げていた『魅せてみろ』

ただ、燕の覚悟を信念を。いずれ(・・・)ぶつかるであろう俺を魅せてみろ。

 

――――全く、本当に無茶を言うな、悠介君は。まあでも、本当に君らしいな

 

今後(・・)を考えるなら、自分の手札を出来るだけ見せないことに越したことは無いし、それに応える義務も無い。

しかし松永燕はそれに応える。瞬間 燕の闘気が雰囲気が一変した。

 

「!?」

 

燕の変化を感じ取った百代の動きが止まってしまう。停止した時間はほんの一瞬。

しかし、百代には致命的な時間だと悟る。

 

「いくよん」

 

小さく小刻みに燕が跳躍しながら進んでくる。

違和感のある歩行だが、百代が動くには十分な時間だ。未だに払えぬ違和感を抱えながら、燕に突っ込もうとした瞬間。

 

「え?」

 

燕が百代の視界から文字通り消えた。

 

「えん――――」

 

燕の声が百代の死角から届く。行動に起こそうとするが遅すぎると直感する。

ダメージを覚悟した瞬間。

 

「うん?」

 

燕の気配が遠のくのを感じ、気の抜けた声がこぼれた。

 

「どう言うつもりだ?」

 

百代が振り向けば、燕が構えを解いている。その姿に百代は怒りの感情を含ませながら問う。

怒りの籠もった百代の問いに対して燕は柳のように怒りを受け流しながら告げる。

 

「本当は、その心算だったんだけど時間切れだね」

 

何時もと変わらない口調で百代に返した。その言葉と同時に戦いの終わりを告げるベルが鳴る。

ベルの音を聞いた百代は、燕の言葉の意味を理解し不満を覚えながらも力を抜いた。

 

「何だ、もうお終いか」

 

「そうみたいだね」

 

「その…何だ。また戦ってくれるか?」

 

若干の不安を含ませた百代の言葉に、燕は元気よく答えた。

 

「勿論だよ。これからも手合せだけど、やってくれたら嬉しいかな」

 

「ああ!!当然だ」

 

百代と燕が握手を交わすと同時に辺りから絶え間ない拍手が飛び交う。

それは、燕を歓迎する拍手の様だ。

ある程度、拍手が鳴り止んだ時を見計らい燕は、何処からか取り出したマイクを持って一歩前に出る。

誰もがその動作に疑問を持つ中、悠介だけは何処か呆れの表情を浮かべる。

 

「皆さん。心の籠った声援ありがとうございます。

西の京都にある天神館から来ました松永燕です。これからよろしくお願いしますっ!」

 

お辞儀をしながら自分の名を告げた燕。此処まではさして違和感を感じない。

しかし、次の動作は悠介以外は予測しえなかった。

 

「なぜ私が、武神相手に粘れたかと言いますと」

 

そう言いながら燕は、腰につけた箱からカップ型の松永納豆を取り出し

 

「秘訣はこの松永納豆で~~す!!

これを食べても強くなれませんが、ここぞと言う時に粘りを与えてくれます」

 

一度言葉切った燕は、再び息を吸い込み大きく話す。

 

「試食したい人は、私が持っていますので、お気軽に声を掛けてください。それでは、一日一食、納豆、トウッ!!」

 

その言葉と共に声援が巻き起こり誰もが松永納豆に興味を見せる。

 

「ご静聴ありがとうございます。以上、松永燕がお送りしました」

 

燕はお辞儀をしながら元の場所まで戻る。その姿を見た悠介は、燕を見据えながら苦笑いを浮かべる。

 

――――本当に、ただでは終わらない奴だな

 

悠介は燕に一種の尊敬の言葉を述べていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

グラウンドに出ていた三年F組のメンバーも手合せが終わると同時に校舎に戻ってく。そんな中燕は百代と見据えていた。

 

「どうした燕?」

 

「う~んとね。本当は言うつもりはなかったんだけど、やっぱり言っておくべきだと思ったんだ」

 

「?。何の事だ」

 

燕の言葉の意味を百代は理解できず頭を捻る。しかし、燕は気にせず人差し指を百代に向けながら宣誓する。

 

「モモちゃん。私、絶対負けないからね(・・・・・・・)

 

燕は顔を若干朱色に染めながらも決意の困った言葉で百代に告げる。

 

「まあ?負けるつもりはないが」

 

「そう言う意味じゃないんだけど。まあ、今はいいかな」

 

自分の言葉を言い終えた燕は、身をひるがえし校舎に向かって行く。燕の背を見ながら百代は、さっきの言葉の意味を考える。

 

「どう言う意味だったんだ?何か勝負事だと思うが」

 

が回答を得ることは出来ない。百代がこの言葉と燕の宣言の意味を知るのは、後少し先の未来の話だ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

同刻、二年F組。

 

――――さて、次は俺の番だな。存分に見せて貰うとするか

 

自分の机に座りながら悠介は、静かに一人の少女を見据えている。

 

 

――――川神一子。その実力(ちから)存分にぶつけ合おうや

 

 

相楽悠介は、休む事無く更なる敵を求めた。




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