真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~   作:スペル

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お待たせしました!!
更新が早くなると言いながら、二週間ほど間を開けてしまってすみませんでした!!
連続で入るバイトのせいで、創作意欲を削がれてしまっていました。

これ以上待たせる訳にもいかないと、昨日からバイトで時間を取られながらも番外編を書きました。
題目は、バレンタインデー!!

ヒロイン?候補達が総出演します。その為一人一人の描写が短いです。

若干遅れてしまいましたが(本当は数十分前に投稿すべきなのですが・・・ギリギリ大丈夫ですよね?)まあ、取り合えず楽しんでくれたら嬉しいです!!




番外・悠介とバレンタインデー

バレンタインデー。正式には、殉職した聖人ウァレンティヌスに祈りを捧げる日で在ったが、近年の日本では恋する乙女たちと野郎どもの聖戦となっている。

それは人外魔境と言われる川神でもさして変わらない。

 

いや、むしろ欲望に忠実なメンツが多い分、より賑やかで殺伐としているかもしれない。

 

 

そんなある種の野郎どもの戦闘日であるにも関わらず、相楽悠介は変わることなく、いつも通りに登校していた。

 

 

「ねみぃ」

 

 

そうこぼしながら学校の門をくぐり、静かに教室に向かう悠介。その中で、ふとした違和感が悠介に過る。

 

 

「??・・・・何でこんなに殺気だってんだ?」

 

 

しばし辺りを見渡した悠介は、違和感に気がつく。そう殺気立っているのだ、男子たちが。

疑問を感じながらも、Fの教室に辿り着いた悠介は、その疑問を解決する。

 

 

「なるほどね」

 

 

悠介の目に飛び込んできたのは、机の上に多くのチョコをのせているゲンと風間の姿とその二人を射殺さんばかりに睨み付けるガクト達の姿。

 

 

「あ~そう言えば、そんな日だったな」

 

 

その光景を見た悠介は、今日一日が平和に過ぎる事はないと言う、欲しくもない確信を得る。

 

 

「めんどくせえ」

 

 

小さくため息をこぼしながら呟かれたその一言は、誰にも聞かれる事無く空気に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

その後は、一応平穏な時間を保っていたが、それが崩れたのは放課後だった。そしてその原因となったのは、他でもない悠介本人だった。

 

 

「やっほ~」

 

 

ホームルームも終わり、誰もが教室から出ていこうとした、その時弁慶が、気の抜けた声と共に教室に入ってきた。

瞬間、一部の男子を除いた野郎どものテンションが跳ね上がる。

誰もが淡い期待を持つが、現実とはいつも非常である。

 

教室に入ってきた弁慶は、迷う事無く悠介の元に歩いてきて

 

 

「渡したいものがあるから、後でだらけ部に来てくれない?」

 

 

川神水を飲みながら要件を伝える。

 

 

「今は、ダメなのか?」

 

 

「今でもいいんだけどね・・・雰囲気作りって大切だと思うんだ」

 

 

「??。まあ用もないし、良いぜ」

 

 

「うん。それじゃあ、待ってるから」

 

 

悠介の了承を得た弁慶は、鼻歌を歌いながらご機嫌に教室から出ていく。

それを確認した悠介は、席を立ちゆったりと拳を握る。

そして

 

 

「「相楽を教室から出させるなーーーーッ!!」」

 

 

ヨンパチとガクトの言葉を合図に、開戦。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か最近、おめえらと戦う事が多い気がするんだが・・・気のせいか?」

 

 

多くの生徒を床に沈めた悠介は、ふとした疑問を口にする。時間にして三十分前後。はじめはFクラスの面々だけだったが、少ししてからは他のクラスメイトも参戦して来たのだ。

悠介の言葉に誰も答えない。誰もが無念の涙を流している。

 

 

「相楽悠介、少し・・どうしたのですか、これは!!?」

 

 

「マルギッテか。いや、何か急に襲い掛かってきたんだよ」

 

 

「急に?そう言えば、弁慶が先ほど・・・・なるほど、理解しました」

 

 

「そうか??」

 

 

当たりの状況に驚いたマルギッテだが、持ち前の頭の良さで即座に理解する。

 

 

「それで、俺に何か用があったんだろ?」

 

 

一人納得しているマルギッテに問いかける悠介。その言葉を聞いたマルギッテの表情が僅彼の揺らぐ。

 

 

「え・・・っと、その・・」

 

 

「??。どうしたんだ、おい」

 

 

「も問題ありません!!」

 

 

急に言いよどむマルギッテに疑問を持つ悠介。

悠介の言葉に答えながらも、マルギッテの心を占めていたのは胸の動悸の速さだった。

 

 

(な何を今更、焦ってるのです!!)

 

 

覚悟も決意も決めた筈だ。自分のこの感情に名前を付けた時から・・・それなのに

 

 

(なぜ、こうも簡単に崩れてしまうのだ)

 

 

彼の声を・・・決意に染まったその顔を見るだけで、自分は今まで下らないと嘲っていた、それに陥ってしまう。

女と見られるのは嫌いなはずなのに、彼のそう扱われると、嫌な気尚欠片も起きない。

むしろ、異常などの満足感とそれ以上を望んでしまう。

 

 

「おい!顔が真っ赤だが、マジで大丈夫か?」

 

 

「問題ありません。それよりも、これを・・・」

 

 

「これってチョコ・・か?」

 

 

言え、ずっとずっとシュミレーションして来たではないか!!今言わずに何時言うのだ

 

 

「ぶ部下からの私へのプレゼントです。余りにも量が多く、食べきれないので・・・」

 

 

「ああ、それでか。でも、良いのか?これ結構高い奴だろ?」

 

 

「だ大丈夫です。お嬢様には、後で渡しますし・・・」

 

 

バカ。何を言っている・・・そうじゃないだろう。これでは、他のメンツに敗けてしまうではないか。決めた筈だ、絶対に負けないと・・・それなのに・・

後悔の念が、マルギッテの胸を過る。

しかし、それは次の悠介の言葉によって、完全に消失する。

 

 

「あんがとな」

 

 

「あ」

 

 

感謝の言葉と共に手から無くなる重量感。ただ、感謝された事が何よりも嬉しくて・・

 

 

「そ、それでは私はここれで」

 

 

「おう、またな」

 

 

僅かに見せた悠介の笑み。それを見た瞬間に、胸の中から湧き上がるそれを押しとどめながら、マルギッテはその場を後にする。

その朱色の髪と同じ位に朱色に染まった、顔を見られたくなくて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、そろそろ弁慶の所に行くか・・って、うん?」

 

 

歩き出そうとした悠介だが、携帯の着信音がその足を止める。

 

 

「清楚先輩からか」

 

 

メールの内容はこうだった。『今から、図書室に来れないかな?』

 

 

「・・・・まあ、先輩の方を優先するか」

 

 

少し考えた悠介は、年上である清楚の方を優先すると決め、図書室に向かって歩きだす。

 

地に伏した男どもから溢れ出す怨念に気づかないフリをして

 

 

 

 

彼女が座っている場所だけは、空気そのものが違っている。悠介は、何度見てそう思わずにはいられなかった。

それはたぶん、彼女のようなタイプが自分の周りには少ないからだろう。

 

 

「待たせた・・っすか?」

 

 

「ううん。待ってる時間も楽しかったから、問題ないよ」

 

だって、君を待つドキドキが、ずっと私を・・・・

 

 

悠介の問いに清楚は笑みをこぼしながら大丈夫と答える。そう言って席を立つその立ち振る舞いは、万人が見ても清楚だと言うだろう。

 

 

「それで何の用だ・・っすか?」

 

 

「あ、うん。いつも私達(・・)の相談にのって貰っている。お礼と思って」

 

 

「うんなもん。気にしなくていいのに」

 

 

「そんなのはダメだよ!!」

 

君には本当に感謝してるんだよ。私の重荷を一緒に背負ってくれて、私の全てを認めてくれて・・・この想いを私に自覚させてくれてんだから

当たり障りな言葉じゃ、伝えきれないモノが君にはあるんだよ。

 

 

悠介の言葉を力強く否定した清楚は、カバンの中から綺麗にラッピングされた二つのチョコを差し出す。

 

 

私達(・・)のお礼。しっかり受け取ってね」

 

 

差し出されたチョコを見た悠介は、諦めた様に受け取る。

 

 

「これって、手作りっすか?」

 

 

「うん、そうだよ」

 

君には一から作った物じゃないと、いけないって決めてるんだから

 

 

「性格で出るっすね」

 

 

「うん。そうだね」

 

 

「ありがとうございました」

 

 

「うん、また相談にのってね」

 

 

「俺で良ければ、喜んで。あいつ(・・・)にも、伝え解いて下さい『さんきゅー』って」

 

 

「うふふ、わかりました」

 

 

そう伝えて図書室から退室した悠介。その姿を最後まで見ていた清楚は、その表情は何処か残念そうだ。

 

あ~あ。こんな時、同い年で甘えん坊のキャラなら、君は頭を撫でてくれるかな?渡せたら満足できるはずだったのに、君といるとどんどん溢れて来る願いを止められない・・違う止めたくないんだ。

独占したい。皆よりも、誰よりも・・・・でも、それじゃあダメ。

もっと、強くならないとね、君の隣に立てるぐらいに・・・・そうでしょ、()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書室から出てきた悠介。今度こそと弁慶のいる場所に向かおうとした、その時

 

 

「漸く見つけだぜ!!」

 

 

「本当ですね」

 

 

「うん?」

 

 

よく出会うメイドコンビの声が足を止めさせる。

 

 

「おう、二人とも。どうしたんだよ、俺を探してた見てえだが?」

 

 

悠介の問い。その問いにステイシーと李の二人は、若干の不安を顔に見せながらチョコを悠介に手渡す。

 

 

「どうしたんだよ?」

 

 

「いえ、メイド仲間たちと作ったチョコです。仕事仲間全員に渡したのですが、余ってしまったので」

 

 

「おめえにやろうと思ってな。こんな美女から貰えるんだ、ロックだろ?」

 

 

二人ともいつもと変わらないが、心情は全くの逆だった。

上手く受け取ってくれるでしょうか?

いつも通りに振る舞えているか?

 

二人の胸の内に在るのは、受け取ってくれるかと言う不安だけだ。

しかし、それは即座に安堵に変わる。

 

 

「貰えるなら、貰っとくわ。さんきゅうーな、二人とも」

 

 

「いいえ。元々、あまりものですのでこちらこそです」

 

嘘です、それは私が作った中で一番の自信作です

 

 

「まあ、こんな美女からのプレゼントだ。受け取らないなんて言う、ファックな事は出来ねえだろ」

 

こんなにも嘘つくの上手かったんだな、私って。昨日の夜からドキドキで眠れなかったくせによ・・・こんな現金な性格だっけか?

 

 

「それじゃあ、俺いくわ。呼び出されてるんだわ」

 

 

「そうですか、お引き止めして申し訳ございません」

 

もっと、少しでもいい、私と話していてください

 

 

「まあ、あたしらも仕事あるしな」

 

何で、こんなにもタイミングが悪いだよ、クソ

 

 

背を向けて歩く悠介を見た二人もその場から消える、更なる決意を胸に。

(この二人は、未だに意識するシーンが登場してないので、結構ラフです。期待していた皆様には、申し訳ないです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さして時間も駆けずに、五つのチョコを手に入れた悠介は、漸く弁慶の元に辿り着いた。

ゆっくりと、何時もだらける場所に使っている教室の扉を開ける。

 

 

「遅いじゃん。何してたの?」

 

 

「いいだろ別に?つか、川神水飲んでんだから、さして時間も気にしてねえだろ」

 

 

「まあ、ね」

 

嘘。来ないかもって言う不安を消すために飲んでたんだよ

 

 

「それで、何だよ渡したいもんって」

 

 

畳に座りながら悠介がか問いかける。

 

 

「それよりも、遅れた罰。私にお酌しな」

 

 

「・・・時間を指定してね奴が言うセリフかよ」

 

 

「ほら、はやくぅ」

 

 

「ちぃ、ほらよ」

 

 

「うん」

 

これ以上めんどくさくなる前に言う事を聞いていた方が利口だな。と判断した悠介は、ゆっくりと弁慶の酌に川神水を渡す。

悠介から川神水を受け取った弁慶は、ゆっくりと身体を横に倒し

 

 

「う~~~ん」

 

 

「おい、何の真似だ」

 

 

悠介の膝に頭をのせる。世間一般的に言う、ひざまくらの体勢だ。まあ、悠介が胡坐をかいているから、若干歪ではあるが・・・

 

 

「暫らくこうさせてくれたら、許す」

 

 

「・・・・わあったよ」

 

 

「よろしい」

 

温かい。決して寝心地が良いとは言えない筈なのに、この温かさがあるだけでそれが最高級のベッドに変身するんだから、私も染められてるね~

 

数分間、じっとその温かさを味わっていた弁慶。

そして、もうちょっと楽しみたいけど、これ以上するとねむっちゃうから、ダメだね。

 

「もういいのか?」

 

 

「まあね」

 

 

そう言って起き上がった弁慶は、のそのそと目的の物を悠介に手渡す。

 

 

「はい。これを渡したかったんだ」

 

 

「これってチョコか・・」

 

 

「うん、今日はバレンタインでしょ?その・・だらけ仲間に友チョコをって思ってね」

 

何であの二文字が言えないんだろう。口に出すのは簡単な筈なのに、答えを聞くのが怖すぎて、今の関係が壊れるのが恐ろしくて・・・とても口に出せない。

自分に勇気をくれた、大好きな彼に・・・その気持ちを伝える事が

でも、いづれは必ず伝える。誰よりも早く、一番に・・・

 

 

「さんきゅう。また、一緒にだらけようぜ」

 

 

「うん。その時は、またお酌してね」

 

 

「ぬかせ」

 

 

そう言って立ち上がって、部屋から出ていった悠介。

弁慶は、ゆっくりと悠介が座っていた場所まで移動し

 

 

「よっこらしょ」

 

 

あの温かさを感じながら、眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

要件を全て終わり、貰ったチョコをかばんに詰めた悠介は、グラウンドの前で仁王立ちしていた。

理由は簡単だ。先ほど、沈めた筈のガクト達が復活して、待ち伏せしていたのだ。

 

 

「はあ、今日は一段としつこくねえか?」

 

 

呆れながら紡がれた悠介の言葉。それに反応するように野郎どもの殺気が跳ね上がる。

 

 

「黙れッ!!この学園を代表する美少女ばっかから、チョコを貰いやがってッ!!一個ももらえねえ、俺様達の恨みを思い知りやがれッ!!!」

 

 

「しかも、九鬼のメイドの姉ちゃんからも貰ったって情報も上がってるんだぜッ!!これはもう、許しておけねえぜッ!!」

 

 

「うん、まあそんなこったろうとは思ったが・・・おめえまで参戦するとは思わなかったぞ、師岡」

 

 

「ち、違うよ!!これはガクト達が無理やり・・」

 

 

「はっ!今更、ビビってんじゃねえぞ、モロ。おめえだって、俺様達の意思に賛同したじゃねえか」

 

 

「それと実際に行動するか、別でしょうが!!!」

 

 

「覚悟はいいか、相楽よ。今の我らは死兵・・・故に強い」

 

 

「みてえだな、めんどくせえ」

 

 

ガクトとモロの会話が成される刹那にも、ヨンパチが悠介に宣戦を告げる。

悠介が拳を握る。男どもが力を込める。

 

瞬間、悠介の右隣に誰かが落下して来た。

 

 

「は?」

 

 

男の誰かから零れた言葉。今からと言う時の出来事、毒気を抜かれかけるが即座に気を持ちなおす。

そして肝心の悠介と言えば、落下して来た見知った相手に向かって言葉を発す。

 

 

「いきなり、跳んでくるんじゃねえよ、モモ」

 

 

「見つけたぞ、悠介」

 

 

落下して来た百代は、悠介を見つけると嬉しそうな声を上げる。

 

 

「ちょっと、話がある。少し付き合え」

 

 

「今は無理だ」

 

 

「なっ!こんな美少女のお誘いを断るとは、どう言う事だ!!」

 

 

「見て分かれ、今は立て込み中だ、バカ」

 

 

そう言うわれ、百代は漸く周りの状況を把握する。

 

 

「わあったら、どっかに行って・・」

 

 

ろと言おうとした悠介だが、同じく肩を並べた百代の姿に言葉が止まる。

 

 

「どう言うこった?」

 

 

「私は、今お前と話したいんだ!!だから、協力してさっさと倒すぞ」

 

 

百代の提案・・・僅かに呆けた悠介だが、直後に笑みに変わり

 

 

「こうやって、お前と肩を並べて同じ目線で戦うのは初めてじゃねえか?いつも、お前は先にいたからな」

 

 

「ふっ。ああ、相手が役者不足だが、お前と共に戦えるなら、私はそれでいいぞ」

 

 

「足を引っ張えうんじゃねぞ」

 

 

「誰に言っている?」

 

 

そう言いながら肩を並べる二人。周りの男どもは、余りの流れに驚愕して固まっている。

しかし、彼と彼女は止まらずに

 

 

「いくぜ」

 

「ああ」

 

 

共に地面を駆ける。

結末は、最早言うまでもないだろう。

 

 

 

「それで、話って何だよ?」

 

 

大量の男子たちをグラウンドに寝かしつけた悠介は、同じく大量の男子を沈めた百代に話しかける。

 

 

「えっ!ああ、これを渡したかったんだ」

 

 

そう言って百代は、一つの箱を投げ渡す。

 

 

「おっと。これって、もしかしてよ・・・」

 

 

「ふふん!!この私の手作りチョコだ。ありがたく受け取れ」

 

 

「まあいいけど、何で手作り?売ってる奴で良くねえか」

 

 

「そ、それは・・・」

 

お前には他の誰かが作った物じゃなくて、私が作ったのをを食べて欲しいんだ。

 

 

悠介の疑問に百代は言いよどむ。ただ、伝えるだけなのに・・・・・お前の前だとそれすら叶わない。理由は簡単、お前が真実を知った時に出る言葉が、知りたくて知りたくて・・知りたくないんだ。

そこに武神と言われた少女はいない。お前の前では、簡単に年頃の少女になっちゃうんだよな。

 

 

「・・・言いたくねえなら、言わなくていいけどよ。味は、大丈夫だよな?」

 

 

「なっ!!お前は、私を何だと思ってるんだよ」

 

 

怒鳴りながら悠介に近づく百代。しかし、その怒りは即座に発散する。

 

 

「わりぃわりぃ。心配すんなって、どんな味でも貰ったからにはしっかり食うからよ」

 

 

そう言いながら悠介は、百代の頭を優しくなでる。

文句を言おうとした百代だが、頭から伝わる温かさが、全ての行動を停止させる。

気になる事を言われた筈だが、耳には入って来ない。今はただ、この温かさを全身で味あわなければ、勿体なさすぎる。

 

燕はたまにこれをしてもらっているんだよな?・・・本当に羨ましいぞ

全身に奔る心地よさを感じながら、湧き上がるのは嫉妬に似た感情だが、頭から伝わる温かさが、その暗い感情を失くさせる。

 

何時もなら、その感情に染まってしまうはずなのに・・この感情に気がついてからは、そればかりに支配されてしまう。

ホント、この私をこんなにした罪は払ってもらうからな。例え、他にも誰かがいたとしても・・・絶対に私だけに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫らく百代にねだられて、頭を撫でていた悠介だが、漸く解放され家に帰っていた。

 

 

「漸く解放されたぜ。・・・それにしても、モモの奴最近急に甘えだしてきたよな?何の心変わりだ?」

 

 

今までと変わり出した悪友の姿に疑問を持つ悠介。思考する彼の耳に、再び声が届く。

 

 

 

「あっ!悠介君だあ~」

 

 

「お、辰子じゃねえか。今日も昼寝か?」

 

 

悠介は、掛けられた声の元に歩いて、そこに腰を下ろす。辰子は、悠介が隣に座ったと言う事実だけでご機嫌になっていく。

 

 

「違うよぉ。今日は、悠介君を待ってたんだ~」

 

 

「そうだよ~。はい、これ。アミねえと天ちゃん後は、竜ちゃんからのチョコだよ~」

 

 

そう言って辰子は、三つのチョコを手渡す。若干一名おかしいのが混じっているが、気にしてはいけない。

手渡された悠介は、ありがとなって伝えといてくれと言う。

悠介の言葉を受け取った辰子だが、うずうずと身体を震わせ

 

 

「もう我慢できない~」

 

 

「ってうおっ!」

 

 

悠介に向かって抱き付く。柔らかな温かさが悠介を包み込む。急な突撃の為、悠介も耐え切れずに地面に横になる。

 

 

「辰子、急になに・・・」

 

 

しやがると言葉を続ける事が出来なかった。理由は至極簡単、悠介の口を辰子が差し出したチョコが閉じたから。

口の中に広がる甘さを感じながら悠介は、驚きに顔を染める。

その表情を見た辰子は、嬉しそうに懐からもう一つのチョコを悠介に差し出す。

 

 

「えへへ~。はいこれ、私のチョコだよ~」

 

 

そう言う辰子の表情は、嬉しさと恥ずかしさで赤く染まっている。しばし至近距離で見つめ合う二人。

 

そんな中でも辰子は、ぎゅうっと悠介に抱き付く。

辰子は顔を悠介の胸に埋めながら、その温かさをその身に移す様に、優しく甘えるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫らく固まっていた悠介だが、漸く意識が戻った頃、辰子は満面の笑みを浮かべながら夢の世界に旅立っていた。

このまま寝かしつけておく訳にもいかず、家までおぶって送った悠介。まあ、その直後釈迦堂とひと悶着あったが、訳だが・・・

漸く家に辿りつき、ゆったりとした時間を過ごしていた。

 

 

「悠介君?入るよ」

 

 

「あ、どうしたんだよ?」

 

 

部屋で、ゆったりと空を眺めて居た悠介は、突然部屋に現れた燕に問いかける。

 

 

「これ。悠介君に郵便だよ」

 

 

「俺に?」

 

 

手渡された小包には確かに自分の名前が刻まれている。誰からかと、開けようとした悠介の視界に、一つのチョコが現れる。

今、これを持っているのは自分に渡すのは、一人しかいない。

 

 

「大分遅くなっちゃたけど、バレンタインチョコだよ」

 

 

「うん、さんきゅう」

 

 

悠介は、小包を机に置いてから燕からのチョコを受け取る。恐らく最多で貰ってあるであろうチョコだ。今更、気負う必要などない。

 

 

「そう言えばさ、今年悠介君ていくつチョコを貰ったのかな?」

 

 

そしてこの質問もある年から毎年のように問われている。だから、特に疑問に思う事無く答える。

 

 

「確か・・・九つか」

 

 

「そうなんだ。今年は多く貰ったね~」

 

やっぱりみんな渡してる。当然だよね、今日はそう言う日なんだから

だから、こんな事で一々目くじらを立ててもしょうがない

まあ、独占したいって気持ちがないわけでは無いが・・・

 

でも・・・

 

コテン

 

 

「燕?」

 

 

「いや~今日は疲れたからね~。少し肩貸して・・・」

 

今からは私の時間なんだよ。誰にも邪魔はさせない。

 

 

「・・・しゃーねえな」

 

 

右肩に若干の重さを感じながらも、悠介は燕に肩を貸す。理由を聞かれれば、説明しずらいが、何処か今の表情がそうさせた。

 

 

「星・・・きれいだね」

 

 

「そうだな」

 

 

言葉は少ない。二人は、静かに空を眺める。

 

今、私と悠介君は同じ景色を見ている。そう考えるだけで、誰よりも君を手に入れた気になる私を君は安い女だと思うかな?

わかってる。これは自己満足、君には何の特もない・・・だからこそ、お互いにそう思える位置に辿りつきたい。誰よりも君を知る位置に・・・・絶対に

 

 

一人の少女がそう思うと同時に、空を一つの流星が流れた。

 

 

「燕?」

 

 

「う~ん」

 

 

「寝たか・・・しゃあねえな」

 

 

燕が寝た事を確認した悠介は、ゆっくりと抱き上げる。俗言いうお姫様抱っこと言うやつだ。

そしてそのまま、燕の部屋の布団に寝かせる。

そしてゆっくりと、部屋を後にする。

 

 

「俺もそろそろ寝るか」

 

 

部屋に戻った悠介は、背伸びをする。その瞬間、悠介の視界に小包が映りこむ。

 

 

「そういや、これって誰からの・・・」

 

 

そう言いながら小包を確信した悠介の声がふと止まる。そしてその表情に薄い笑みがこぼれる。

 

 

「そっか、あいつ(・・・)からか」

 

 

中身は手作りチョコだった。そしてその差出人の名を見た悠介は、嬉しそうな表情を見せる。

 

 

「頑張ってるじゃねえか・・・前向きによ」

 

 

そう言って一口サイズのチョコを一つ口に放り込む。

そして、今日チョコをくれた全員に感謝を込めて

 

 

「ありがとう」

 

 

ただ、一言、有り触れた感謝の言葉を述べた。




どうでしたでしょうか?
違和感なく、彼女達を描けたでしょうか?
久しぶりなので、違和感とか此処は違うって言う部分がありましたら、教えて下さい

最後にちょろっと示唆されたのが、一応現在での最後の候補です
誰かは、登場をお楽しみに!!

現在、本編の方もゆっくりとですが執筆中です!!
ですので、もうちょっとだけお待ちください

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