真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~ 作:スペル
日常会話を考えるのが難しい。
何か違和感があったら教えてください。
悠介と再会 その1
川神市にある
川神学園に向かう上で、必ず通らねばならないその橋は、多くの変人変態が通る事から別名
しかしこの場所には、もう一つの顔がある。それは武神と謳われる川神百代に挑める場所でもある。
川神学園に続く通学路である為、その道中に百代に挑もうとする命知らずが集まる場所でもある。その為日頃から、百代に挑戦する武術家や不良たちとの決闘や蹂躙が行われている場所となっている。
例に漏れず本日もまた、武神に挑もうと多くの不良達が集まっていた。しかし、今日は少し可笑しい。
未だに薄暗い中、微かに鈍い音と男達の悲鳴が橋の下の河川敷より響いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
時間は進み朝、変態橋付近。そこには島津寮から出た直江大和達、風間ファミリーが学園に向かうために歩いている。
「それにしてもよー。何かまた落ち着いて来たよな。もっと面白い事とか、起きねえかね~」
事態が停滞する事を拒むように風間は、集団の先頭に駆け出しと徐ろにつまらなさそうな顔をしながらぼやく。
「いやいや、結構賑やかだと思うよ!!
義経たちが来てから濃いメンツが集まって来てるわけだしさ!!」
「俺もそう思うぞ、キャップ」
風間の言葉に真っ先にツッコミを入れたモロに続くように大和も同意する。
「これだけの事が起きて、つまらなくなったとは…一体どれほどの事を望んでんだよ」
風間の言葉に何処か恐怖を覚えたような顔をしながら呟いた島津の言葉に、その場にいる全員が同意するように頷く。
「でもよ~」
「本当につまらなそうですね」
「まあ、キャップだし」
「その言葉で納得できる自分がこえーーYO」
「私は今のままでも十分よ!義経たちと戦えるんだから」
「うん。自分も犬に賛成だ」
ツッコミを受けた風間だが、全く納得はしていない。そんな風間の姿に、モロを含めた武士娘である彼女たちも少し引き気気味だ。
ある意味でいつも通りの日常で学校に向かう風間ファミリー。
すると少し先から聞き慣れた声が届く。
「あ!弟たちだー」
「姉さん」
大和たちの少し前方にいる百代が、大和達をを見つけ大きく手を振る。普段から出鱈目な登場をこなす彼女にしてみれば地味とも言える登場だ。
「あれって、義経たちじゃない?」
「うん。間違いない」
敬愛する姉の隣に見える人影の正体を一子が答えれば、ファミリーの中で最も眼が良い京が同意する。
どうやら百代は、義経達武士道プランの面々を見つけて喋っている様だ。
百代達の元に大和たちも合流する。
「皆、おはよう」
「おはよう。義経」
「おはようございます」
真っ先に大和達に挨拶をしたのは、凜々しくも何処か構いたくなる雰囲気を持った武士道プランの一人源義経。
そんな義経は、一子と黛のある意味似た者同士で仲良く挨拶している。
「ちぃーす」
「おはよう。相変わらず眠そうだな」
「まあねえ」
「むっ。ダメだぞ弁慶。生活リズムを崩しては」
眠そうに挨拶をしたのは、色気を全身から発する武士道プランの一人武蔵坊弁慶。
義経の部下であるが、普段のやり取りでは完全に逆転しているという奇妙な関係となっている。
因みに、極度のアル中で川神水を定期的に摂取しないと、体が震えて動けなくなるほど。
「うふふ。皆おはよう」
「おはようございます!!葉桜先輩!!」
「ちょ、岳人。落ち着いて!!」
「清楚ちゃん!!マジで可愛いいー!!」
「モモ先輩も!!」
島津と百代を興奮させたのは、武士道プランの一人であり唯一の三年だが、川神学園には居ない文化系少女葉桜清楚。
読書が趣味な、肉体派のび少女がが多い川神に現れた、美しく清楚な文化系の美少女である。
因みに彼女自身、自分がどんな英雄か聞かされていない。
本人曰く紫式部か清少納言あたりだと嬉しいらしい。
「ちぃ。お前ら俺には近づくなよ。
何処から、奴らが攻撃してくるかわからんぞ」
「にしても、本当に似てるよな」
「クックっ。正に生き写し」
「やめろーーー!!」
「悶える大和も素敵。結婚して!!」
「うぅ。お友達で」
「プロポーズ失敗」
風間と京にの二人に、聞く者に痛いと言える警告を警告したのは、武士道プランの一人那須与一。
その名が示すとおり弓の名手である。しかし極度の中二病であり、会話をするのは一苦労なのである。
因みに大和も昔中二病だったので、正に黒歴史の生き写しとも言える与一の存在は、地雷そのもである。
そんなやり取りをしながら彼らは変態橋に差しかかる。
「何だ?」
真っ先に疑問の声を上げたのは大和。時間帯的にも多くの生徒が通るため賑わいを見せる橋であるが、何時もよりも騒がしい。
「また、モモ先輩への挑戦者じゃねえのか?」
「義経たちと言う場合もある」
大和の疑問に岳人と京が答える。何処か適当な返答だが、あながち間違いではない。
しかしとうの本人たちはと言うと…
「えー!めんどくさいな。
折角こんな美少女達と登校してるのに」
「私も先輩に同意。
折角、川神水を飲んで心地いい気分なのに」
「だっ、ダメだぞ弁慶!!
折角来てくれたんだから、しっかりお相手しないと」
「ふん。誰が好き好んで罠に飛び込むか」
義経を除く面々は、全くもってやる気がない。唯一やる気を見せる義経が苦言を示すが効果は見られない。
「何か面白そうな匂いがするぜ。
行くぞ、野郎ども!!」
そんな中何よりも退屈を嫌い、刺激を求める風間のレイダーに何か反応があったのか、我先にと人混みに向かって突っ走る。そんなリーダーの後を、大和たちは呆れながらも追いかける。
そんな彼らも人混みを抜けた先で見た光景に驚愕の声を上げた。
「なっ!」
変態橋の下にある河川敷に、多くの不良達が死屍累々と山になって積み重なっている。しかも全員ひどく殴られたのか、顔は赤く腫れ涙や鼻水で汚れている。
「一体誰がこんな事を」
惨劇といえる光景に呟いた大和の言葉に周りに居たメンバーもまた同意する。不良達は全員、余りにも執拗にやられている。
武神である百代でも滅多なことがない限りは此処まではしないし、やるならもっとえげつない手段を取る。
驚く大和達男衆とは裏腹に、その光景を見た武士娘達は静かに辺りを警戒する。
此処まで暴力を振るう様な相手だ。何処からか攻撃してきても不思議ではない。
ある者は怒りに燃え、またある者は歓喜に震えるなど、反応は様々だ。
辺りを見渡していた京と与一の二人が、不良達が山になっている近くで人影を発見する。
「大和あそこ!」
「ちぃ。組織のエージェントか」
大和たちは京が指さした方向に視線を集める。ちょうど大和たちからでは、ギリギリ死角になるかならないかの場所に人影が見える。
瞬間、その姿を確認した百代の表情が、驚きと歓喜に変わる。
「何だよぉ…何だよぉ!!」
「姉さん?」
百代の変化を感じ取った大和が百代に声を掛けるが、その声に反応する間もなく百代は、人影の元に向かって跳んだ。
百代の突然の行動に驚きながらも大和たちは、急いで人影がある場所に視線を戻した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
百代の中には、歓喜の感情が渦巻いていた。
ほんの僅かしか見えなったが、間違いないあいつだ。
自分があいつの存在を見間違う訳がない。
だからこそ百代は、その人影に向かって吠えながら落下した。
「悠介ぇぇぇぇえええええ!!」
ドン!と大きな音を立てながら百代が地面に落下する。同時に、人影は大衆の前に姿を現した。
「漸く来やがったか。
久しぶりだなあ。モモ」
百代が地面に降り立ち、視線が交わると悠介は懐かしのライバルに向かって言葉を発する。
「ああ、本当に久しぶりだな」
悠介の言葉に返す様に百代も静かにライバルと言葉を交わす。
不思議と百代の言葉に先程合った筈の興奮は感じられず、普段通りの声音だ。
「…………」
「………」
挨拶と同時に二人の言葉は途切れ沈黙が支配する。
別段、話の内容が無いわけではない。むしろ逆で、ありすぎてどれから話して良いのか分からないのだ。
そんな中、百代はゆっくりと言葉を発した。
「どうして此処にいるんだ?
というか、来るなら連絡ぐらい入れろ!」
「ああ、それか。
今日から川神学園の世話になるからだよ」
「!。
此処に戻ってくるのか!!」
「ああ」
悠介の言葉を聞いた百代の顔が歓喜の笑みに染まる。
嬉しさからか百代は、今までの沈黙が嘘の様に話始める。
「だったら何で、連絡の一つも寄越さないんだよ!!」
「別に良いだろうが。
結局、学校で会う事になるんだからな」
「そう言う問題じゃないだろう!」
もしも知っていれば、もっと早くにお前に会えたかもしれないんだぞ。そんな気持ちを少なからず抱いた百代だが、それを言うのが恥ずかしい為に、次に出た言葉は、ッ全く違う言葉になってしまう。
「こんな美少女な幼馴染に連絡を入れないなんて、なんて酷い奴なんだ」
勿論、百代は無自覚な本心を隠すために、大した意識もなくその言葉を発した。
だからだろうか、次に悠介の放った言葉を理解出来なかったのは。
「まあ、連絡云々の所は置いといて。
美少女って部分を否定できねえのはうぜえな。昔なら、ギリギリ否定できたが、今は無理だな」
「えっ?――――――ええっ!!?」
「おっ!何だ急に」
「び、美少女って…えっ!!」
「何驚いてんだ?
自分が言った言葉だろ?」
慌てふためく百代の姿に疑問の声をぶつける悠介だが、今の百代には全く聞こえていない。
さっきから小さく「美少女って言った…あいつが認めた」と呟いている。
そんな百代の狼狽は橋にいる川神学園の生徒を驚愕させていた。
女好きと言われる百代が、男の言葉で顔を赤くしながら狼狽えているのだ。
驚かない訳がない。
そんな中でも最も驚愕しているのは風間ファミリーの面々の中でも古株のメンバーである。長い付き合いの彼らでもあんな百代の姿は見たことが無い。
「姉さん」
誰もが驚愕する中大和は、何処か悲しそうに狼狽えている百代を見ていた。その呟かれた言葉は幸か不幸か、驚きで一杯になっている周りには気がつかれなかった。
「で、落ち着いたか?」
「ああ」
「漸くかよ」
暫らく狼狽えていた百代だが、時間が経つごとに落ち着きを取り戻していく。落ち着きを取り戻した事を確認した悠介が何処か心配するような視線を向ける。
「それで、何が理由でそうなったんだ?」
「う、うるさい!!何でもいいだろ」
「いや、普通に気になるじゃねえか。
体調わりぃのか?」
「うるさい!!
私は元気だ!!」
「…はあ。わあったよ」
余りの百代の剣幕に悠介が先に折れた。これ以上追求しても無駄だと判断し、取りあえず体調に問題はなさそうだと判断する。
「まあ、いいや。
うんな話をする為に、此処で待ってた訳じゃねえし」
「どう言う事だ?」
悠介の言葉に疑問を持つ百代。自分に早く顔を見せたかっただけなのではと考えたが、それならば川神院に顔を出せばいいだけだと思いだし、更に疑問符が付く。
疑問で頭を捻る百代を無視して悠介は、構わずに宣言する。
「モモ。俺相楽悠介は、武神であるお前を倒すために此処へ戻って来た」
何処までも真っ直ぐに告げられた言葉。しかしその言葉を聞いた川神の生徒たちからは笑いの声が起きる。
「うわぁ。あいつ命知らずだな」
「まあ、いいんじゃない。
コテンパンに負けて、自分がどれだけ弱いか知るいい機会になるし」
「私もそう思う」
悠介の言葉を聞いた島津とモロそして京は、悠介を嘲笑い。
「まさか、モモ先輩に挑むなんて」
「命知らずなBOYだぜーーー」
「大丈夫かしら?」
「義経もそれが心配だ」
「そうだね。モモちゃんがやりすぎなきゃいいけど」
黛と一子そして義経と清楚の四人は、悠介の身を案じ。
「バカだね~」
「ちぃ。威力偵察か?」
弁慶と与一は、悠介の言葉に呆れ。
「おおっ!何だ、何だ!?
面白れぇ事になってきたじゃねえか」
「落ち着けよキャップ」
悠介にの言葉に、子供の様に飛び跳ねる風間を大和が抑えていた。
そんな中クリスは、一人鋭い目線で悠介を睨んでいた。
辺りに笑いが起きる中、悠介は笑い声を聞いて尚揺るがない。
揺るがないモノを自分は、西の地で貰い誓ったのだから。
笑われるのには慣れている。笑われて行こう頂点まで、その決意も覚悟も出来ている。
そんな悠介の宣言を聞いた百代は、真っ直ぐと悠介を見つめて返す。
「わかった。
川神院次期師範川神百代の名において、謹んでその勝負を受けよう」
静かにしかし歓喜を含んだ了承の言葉を発する。その言葉から百代が真剣であると見て取れる。
想像とは違う百代の声を聞いた面々は驚愕し目を見開く。
「そうか。感謝する」
「お前とやれるなら、これぐらい軽いさ」
悠介の言葉に百代は、気にするなと言う表情で悠介の言葉に答える。
「それじゃあよ」
「ああ」
瞬間、二人の闘気が辺りを包む。
百代に宣言すると言う目的を終えた悠介。本来ならば、そのまま川神学園に向かうべきだ。
しかし、長年のライバルと顔を合わせ、最早抑える事が出来なくなっていた。
それは、百代も同じである。
一瞬の沈黙の後、二人は同時に地面を蹴った。
「モモぉぉぉぉおおおおおおお!!」
「悠介ぇぇぇぇええええええええ!!」
瞬間、約八年ぶりに二人の拳は激突した。
と言う訳で、悠介の最初の相手は百代です。
う~んやっぱり恋愛描写は難しい。
上手く書けましたかね?
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