未来人の選択   作:ホワイト・フラッグ

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晃助は危機を脱したもの、次なる賭けに挑むことに。
さぁ、アイムスリップした者が悩む一番大事で面倒な場面です。


5.身の上説明

「しばしの辛抱じゃ縄掛けをゆるされよ」

 

そう言って援軍を連れえ来た大将は、しもちゃん(下田 業兼)をはじめとした岩谷勢を捕縛していく。

しもちゃん以外の兵は武器を捨て大人しくしていたが、しもちゃんは、

 

「縄掛けの恥をさらすなら、刺し違えるまで!!」

 

と大将に切りかかったが、

 

「ほぉっ」

 

大将は刀を抜かず鞘でいなしてしまった、渾身の突貫をはじかれた、しもちゃんはすぐに他の兵士に取り押さえられ首を取られそうになるが。

 

「よいよい、将来が楽しみな若者じゃ、捕縛せい」

 

この一言で岩谷勢は全員捕虜となった。

他の侍達は晃助も捕縛しようとしたがこれも。

 

「ワシはこの者と話がしたい」

 

ということで縄掛けを免れたが、刀を取り上げられた。

結局あの刀を使うことはなかったが、脅しになっただろう何より使いこなせないにしろ、武器を持っていたことで少しは抵抗ができるという自信になった。

心の中で刀に感謝と別れを告げ、次の問題に意識を向ける。

 

(この御仁に未来人たる自分のことをどう説明しようか?)

 

現代なら科学の発展と共にSF系の映画や漫画がよくあり、現実味がないにしろ。

 

「僕、未来から来ました」

「何言ってんの?」

「証拠のショックガンです」

「おー!すげぇ」

 

みたいな展開があるだろうが、こんな昔の時代に未来を語る奴なんてそうそういないだろう。

なにせいくつかの自然現象を天狗の仕業、神・仏のバチやご利益と真面目に捉えている時代だ。

 

「僕、未来からきました」

「未来? なんじゃそりゃ」

「証拠の携帯電話です」

「不思議な箱じゃなー」

 

良くてこんな展開だが悪いと、

 

「おのれ、妖か成敗してくれる」

 

こんなことになりかねない、こればっかりは弁舌よりも[話の分かる人]じゃないと無理だ。

晃助は話が通じるように祈りながら陣まで歩いた。

 

斎藤家の陣に到着した。

どうやら村の建物を軍が一時的に間借りしているらしい、よくあることだ、陣幕を張っただけの陣は兵士たちの寝床が地べただからだ、当然夜露のせいで快眠とはいかないだろうから、

村人を敵から守ってやる代わりに一部の幕僚だけでも屋根の下で眠れるようにするのだ。

村一番の家に案内され一対一で向かい合った。

 

「さて、自己紹介からいこうかの、ワシは千早実光(ちはや じっこう)という」

「山田晃助です」

「晃助か良い名だ」

「ありがとうございます」

 

実光は五十七歳だと告げたが、十、二十は老けて見える、物腰や白髪しかない頭のせいだろう。

今の会話も老人と若者みたいなスタートだし、まぁ実際に老人と若者だが。

 

(あぁ、老人だから頭が固いかもしれないな)

「ところでお主は道三殿の直臣だそうだな?」

(あ!! まずいかも!?)

 

斎藤道三の家臣を騙ったのだから不敬罪みたいので処罰されるかもしれない。

 

(……どうやって切り抜けるか)

「道三殿の直臣、しかも忍びがあのような場所で何用かね」

(どう答える? 忍びの密命だから話せないで押し通すか? ……いや、もしここで疑われるようでは直談判されて美濃のお尋ね者になる恐れが…………いやせっかくのチャンスだ。)

 

晃助はここでも賭けに出ることにした、先ほどと比べて直接命の心配がないが、今後のこの世界での生き方に関わる、問題は話し方だが。

 

「いや、忍びということはあの場を切り抜ける為に使った方便です。岩谷勢がこの服を見てそう判断したんだ」

「そこでお主は、蝮の歯牙(しが)を騙り岩谷勢を捕えるために法螺を吹いたとな?」

「そうだ、斎藤の兵が来ることは予想外だが助かったな」

「もし、あの時、我配下の足軽が物見をしていなかったら、どう切り抜けるつもりだった?」

「それは……」

 

晃助は一度言葉を切り呼吸を整えてから、

 

(……ちっ、どう言い繕ってもこの時代でありえないことを話すんだ。)

「とても信じられないだろうが、俺は未来から来た!」

 

直球勝負に出た、とにかく自分の状況を説明して、質問が上がればそれに答えていく、疑問が全て無くなればあとは信じるしかないだろう。

何より晃助は実光という人物を信じることにした。

下田業兼の攻撃を許し、自分のような得体のしれない者と一対一で話し合う場を設ける度量と胆力、そして何よりこの子供や孫の質問に答えてくれるような雰囲気に信じてみようと賭けた。

人は自分に好意的に接してくる相手にはよっぽどのことがなければ、柔らかい雰囲気で応対するものだ。

晃助はまず、無理にでも実光を信じることで、相手からの信用を得ようとする、そんな僅かな打算を胸に自覚しながら、実光の反応を待った。

 

「未来とな? ほぉ」

「あぁ、どうやってこの時代に来たか以外は答えられると思いますが」

 

緊張もあり敬語が使えていない部分もあるが実光はそれに気にすることなく、問いかけた。

 

「もう一度聞くが、もしワシの配下が来なければどうした?」

「斎藤と織田の同盟をちらつかせて、岩谷に連なるものを全て斎藤が潰す。そう脅しかけて退かせるか逃げ出すかした」

「斎藤と織田の同盟だと!?」

 

晃助はここでも状況を知るために[斎藤と織田の同盟]、[ちらつかせる]と言って実光の反応を見た。

今がどの位の年代であるか知るためだ、斎藤と織田の同盟がもう結ばれているなら桶狭間の戦いが近い年代、結ばれていなければ〃まだ〃ということだ。

この同盟は斎藤道三が存命時に結ばれ、彼の死と同時に決裂したからだ。

 

「なぜその話をしっておる!?」

「未来から来たんだ、〃過去の〃資料を見ればわかる」

 

どうやら同盟はまだ結ばれていないようだ、だが近いうちに結ばれるようだ。

 

「同盟の話を知っているとしてもソレをどう使うつもりだった?」

 

実光は動揺から立ち直るや、試すようにだが楽しそうに質問する。

 

「向こうが同盟を知っているなら斎藤に突かれる背中は無いと脅したよ、南の織田は同盟、西の浅井は三人衆が抑える、信濃は甲斐と越後で不安定だとな」

 

稲葉一徹(いなば いってつ)氏家直元(うじいえ なおもと)安藤守就(あんどう もりなり)、かの三将は[美濃三人衆]と呼ばれたが美濃の西部に領地を持つらしい、この三人は斎藤家の重臣として名高い。

信濃はこの年代だと武田信玄が侵略中か、川中島で上杉謙信と睨み合いをしているはずだ、なんにせよ情勢が不安定なので美濃に攻めてくることはない。

 

「知らなければお前たちを徹底的に潰すための同盟だ、止めてほしくば俺を見逃せ、さすれば少しは譲歩した和睦で事が済む、お家の滅亡とするよりマシでむしろ手柄になる、と誘った」

 

晃助は、あの時実行しなかった、ハッタリを説明した。

ハッタリなので穴は多くある、まず自分の身分が道三の忍びだということだが、これは向こうからそう疑いこちらが肯定したのでうまく騙せた。

同盟を知らなかった場合だが、忍びとして失格だが命惜しさに機密を教えてやる体で話すしかない、

だが、向こうにとって本当なら不利なというより危機的な状況に陥る、しもちゃんはそれで動揺するだろう、

あとは動揺している心に手柄という餌をぶら下げれば上手くいったかもしれない。

仮定の話だが自信満々に語ることが大事だ。

 

「ふぅ~む…………」

 

実光は目を閉じ腕を組んで考え出した、次に目を開いたときは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

好奇心に満ちた目をしていた。

 

 

「その珍妙な服も未来のモノか?」

「あぁ……いや失礼、そうですこの服は私くらいの年齢の者が学問をする際に来ているものです」

「学問をするためにそんな服が必要なのか?」

「いいえ、この服は学問を授けてくれる組織が私を認め教えてくれることを証明する服です。この服を着ずに学び舎に入ることは許されません」

 

晃助は言葉遣いに気が付きながらも学ランと校則についてこんな感じかなと説明した。

 

「ならば未来の知識をお主は蓄えておるということか?」

「はい、その……未来の学問は少々難しくあまり多くは知りませんが……」

「ならば未来の知識について知っておる範囲でよいから教えてくれっ」

 

実光は身を乗り出して晃助に迫った。

 

(あれ? 予想と違う? 意外と好奇心旺盛な御仁なのか)

 

晃助にとって幸運なことに実光は珍しいことや物に抵抗がない人物だった。

その日、晃助は自分の知っている範囲で未来の科学で解明され、高校までで習った事を話始めた。

そのお勉強会? は夕飯に実光の家臣が呼びに来ても終わらず、食事をしながらも続けられ、晃助が眠れたのは現代でいう深夜二時になった。

 




晃助の場合は好奇心を忘れていない大人(実光)により都合よく話が通りました。
これから晃助は戦国時代をどのように過ごすしていくのか、

どうしよう(焦)

あと昔の刻限の読み方を覚えていません、最後がこんな書き方になったのは申し訳ない。

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