本年もμ's MUSIC BOX をよろしくお願いいたします。
# 01
今日も❝あの夢❞を見て私は思う……
この世に愛など無い。
それはきっとマヤカシで偽りで幻想。
でも皆は親やいろいろな人の愛を受けて来たんじゃないか?……って?
……そうね……。
❝私の世界❞には愛は無い。
私の人生がそう教えてくれた。
覚醒していく意識の中で私は溜息を付く。
『あの……さ、真姫ちゃん……俺をここに呼び出してかれこれ5分ほど会話が無いんだけど……。』
『その!……こっちにも色々あるのよ……少し待ちなさいよ。』
『いや、言い辛い事なら別に今じゃなくていいし……』
『待って ! ! 』
『その………き……。』
『……えっ ? 』
『貴方のことが好きなの ! ! 』
『えーっと……5分も黙り込んだのは……この為 ? 』
『そうよ ! ! 悪かったわね ! どうせ宏樹は海未が好きなんでしょ ! ? 振るなり何なりしなさいよ ! 』
『ちょっと待って ! ……ってか何か勝手に話が進んでない ? 取り敢えず俺も頭の整理が出来てないから……えーっと……。』
『何よ ! ? 』
『卒直な感想を言うとすごいびっくりしてる……。』
『はぁ ? ! 』
『俺……明日、真姫ちゃんに告白しようと思ってたから。』
『……えっ ? 』
『俺も真姫ちゃんが好きだ……なんか告白された後で言うなんてかっこ悪いけどね……ハハハ…。』
『……ウソ……。』
『えっ ! ? 真姫ちゃん泣かないでよ ! ! 俺が何か酷いことしたみたいじゃん ! ! 』
『したわよ……。』
『……へっ ? 』
『両思いなら宏樹から告白してきなさいよ ! ! 』
『……理不尽過ぎるだろ ! ! 』
2年生になりこれから新しくスクールアイドルとして活動していこうという機運が高まる中、西木野真姫はアイドル研究部でサポートをしている伊達宏樹に告白をした。
アイドルとして恋愛はご法度……彼女の中でも葛藤はあったが気持ちを抑えることが出来なかった。
ダメ元での告白してここでスッキリしてスクールアイドルとして頑張ろう決め今日に至った。
今日起こったこの展開は予想出来ず真姫は驚いた。
「真姫ちゃん ! 告白上手く行ったんだね !」
「ことり……。」
「ことりも色々相談に乗ったかいがありました ! 」
告白に至るまでは昔からの私の知り合いであり宏樹の同級生でクラスメイトとしても交流があることりに色々と相談していたのだが……。
「……貴方、色々知ってて相談に乗ってたわね ? 」
「……ソンナコトナイヨ ? 」
ぎこちない笑顔でロボットのような動きで小首をかしげることりを見て真姫の疑問は確信に変わる。
「貴方ねぇ……もう少し良いアドバイス無かったの ? 」
「で、でもね ! そうしないと、真姫ちゃんが勇気を出さないかもと思って……」
「うっ……確かに……。」
真姫はことりに宏樹は海未が好きで海未もまんざらでない関係であると伝えられた。
それを聞いてダメ元の告白をしたわけである……。
「ことりがそう言うわなかったら真姫ちゃんはどうしてた…… ? 」
「……。」
このまま告白しないでズルズルと生活していた自分が容易に想像で来てしまう真姫……。
「あ~っ ! ! わかったわよ ! ことりには凄く感謝してる ! ……騙したことも含めて……。」
最後の睨みを効かした嫌味にことりは少し『ビクッ ! 』としながらも笑顔で真姫の感謝を聞いた。
「そうとなればことりがやりたかった事に付き合ってもらいます ! 」
「……えっ ? 」
ことりは真姫の前に顔を突き出しニコニコと提案をしてくる。
「やりたいことって ? 」
「それは勿論……Wデートです ! ! 」
「そういや無事、真姫ちゃんとお付き合い出来たそうで。」
「うん。明日、告白するつもりだったんだけどな……ハハハ」
放課後のゲームセンター帰り伊達宏樹は友人の澤村拓哉と話しながら家路を歩いていた。
「まぁ、いいじゃん両思いで付き合うこと出来たんだし。」
「そうだな。過程とかあんまり気にしても仕方ないしな。」
「そうそう ♪ 結果を喜ぶことが大切。」
拓哉に現状を理解させられて今は結果をしっかり喜ぼうと宏樹は気持ちを入れ替える。
「そんなリア充まっしぐらの宏樹君にマイエンジェルから司令が来ています。」
「……なんか嫌な予感しかしねぇんだけど……。」
拓哉の言うマイエンジェルとは同級生で彼女である南ことりのことである。
拓哉とことりはμ's解散とともに付き合いだした。今や音ノ木坂学院を代表するおしどりカップルである。
「その司令は……Wデートです ! ! 」
拓哉はニコニコとことりからの司令を宏樹へ告げた。
「あ~もうっ ! ! 」
ことりからの司令を受けてから1ヶ月経った週末……
真姫は唸り声を上げながら階段を走っていた。
Wデートの当日、真姫は寝坊をしてしまい起床予定より1時間も遅く起きてしまった。
そこから急いで支度をし、最寄り駅へ向かった。
そこまでは良かったのだが、慣れない駅の利用で切符を買うところから躓いた。
本来、西木野家では外出の際は親の車に乗せてもらい集合場所まで行くのだが少し恥ずかしかったため真姫は自分の足で集合場所を目指すことにした。
「こんなことならパパに送って貰えばよかった……。」
溜息混じりに後悔の言葉を吐き捨て真姫は階段を走った。
そして、最後の1段をも登ろうとした瞬間……
「あっ ! 」
最後の1段に足を引っ掛けてしまいバランスを崩した。
「っと ! ! 」
前に転けてしまう瞬間真姫は咄嗟に目をつぶり手を前に出して地面にぶつかる覚悟をした。
「ったく……危ないなぁ……。」
「……っえ ? 」
転けることを覚悟した真姫だったが、地面に身体が付くことはなかった。
「なんか急いでる危なかっしい子が居ると思ったら知り合いで案の定転けてるんだから困ったもんだ。」
真姫は拓哉にすんでのところで支えられ転けるのを助けてもらっていた。
「あ、ありがとうございます ! ! 」
「急ぐのは良いけど自分の身は大切にね。」
______プシュー
「「……あっ」」
電車の扉の閉まる音を聞いて二人は同時に声を上げる。
「すみません ! すみません ! 」
「……いや、仕方ないから気にしないで。」
電車を一本逃したことにより遅刻が確定した拓哉に対し真姫は謝り倒した。
「ちゃんと話せばことりさんも宏樹も分かってくれるって。」
「……はい……。」
完全に意気消沈してしまった真姫を見て拓哉はバツが悪そうな顔で頭を掻く。
「取り敢えず、たまたま合流して俺がトイレ行ってたせいで遅れたって伝えるね。」
「……えっ ? ! 」
真姫は一瞬拓哉の行ってることが理解できず声を上げる。
「真姫ちゃんが転びそうになったのを助けて遅れたとは言いづらいでしょ ? 」
「はい……。」
拓哉は笑顔で提案してくるが、真姫は転びかけたことを思い出し顔を真っ赤にして俯く。
「何から何まで……本当にすみません……。」
「まぁ、親友の彼女の名誉のためだよ。」
拓哉は笑顔で話しながらトークアプリを使ってことりへ連絡する。
「その代わり ! 」
拓哉は携帯の画面から目を離し真姫へ顔を向ける。
「今日は全力で楽しんで笑顔で過ごすこと ! 」
そう話しながら拓哉はビシっと言う効果音が聞こえてきそうな指差しを真姫へ向ける。
無事(?)拓哉が罪を被り真姫への被害は最小限に収まり二人は1本遅れた電車で集合場所へ向かった。
「へぇ~……真姫ちゃんも寝坊とかするんだね。」
「……はい。」
今日のことが楽しみで興奮して眠れなかったとは言えず。
真姫はまた顔を俯いたまま返答をする。
「いや~……俺今日が楽しみで寝れなくて気がついたら出発予定の30分前でさ~…ドタバタだったよ~…また、ことりさんに説教だなこりゃ……。」
『私と同じだ』と思ったが自分の名誉の為、グッと堪えて真姫は笑顔で拓哉の話を聞く。
「遅刻した俺が偉そうなこと言うのもおかしいけど今日は思いっきり楽しもう。」
「はい。」
会話が終わるタイミングで電車は目的駅に到着した。
「あれ?そういえばことりさんから返信無いな。怒ってるのかな?ハハハ……」
「フフッ……ことりらしいですね。」
二人はそんな会話をしながら改札へと向かった。
「ん ? なんか人だかりが出来てるね。」
改札の前まで向かうと何やらざわついてる様子を真姫が確認した瞬間……。
『……おい、この辺にトラックが突っ込んだらしいぞ。』
『まじかよ……俺この一本前に乗る予定だったんだけど助かったわ……』
自分達を抜き去っていく男性の会話を聞いて真姫は凍りつく。
_____ ダッ !
「先輩 ! ? 」
動揺しながら拓哉の方を向こうとすると拓哉は駆け出していた。
遅れるように真姫も駆け出した。
駆け出した先にあった筈の集合場所の見慣れた噴水は
トラックと共に見るも無残な姿になっていた。
「……嘘でしょ ? 」
目の前に広がる光景が信じられず真姫はその場にへたり込む。
一度は足を止めた拓哉だったが、また駆け出す。
「待つんだ ! ! 君 ! これ以上先に行ったら爆発や火災の恐れがある ! 」
噴水があったであろう場所へ向かおうとする拓哉は付近にいた警官に抑えられる。
「恋人が……親友がいるかもしれないんです ! ! 」
______ことりさん ! ! 宏樹ぃぃぃぃ ! !
警官に抑え込まれながら叫ぶ拓哉を呆然と眺めてる場面であたりは段々と暗くなっていき
真姫の夢は終わりを告げ、脳が覚醒して行く。
「おはよう。」
「おはよう。」
「今日は少し起きるの遅かったね。お疲れ ? 」
「夢を……見たの。」
「いつもの ? 」
「……ええ。」
「朝ご飯とお昼作ってるからちゃんと食べてね。」
「ありがとう。」
「もう出るけど、遅れないようにね真姫ちゃん。」
「うん。」
「いってらっしゃい。拓哉。」
最後までご覧頂きありがとうございました。