大変タートルな更新で申し訳ありません。
遂に、あんじゅ編最終話です!
_____カシャッ
街頭の明かりだけが当たるラブライブ!関東最終予選のステージにカメラのシャッター音が響く。
レンズ越しのステージを見つめながら俺は今日のμ'sのパフォーマンスをふと思い出す……。
練習は見ていたが、いざ本番でステージ上がオレンジ色に染まり高坂が歌い出す瞬間は鳥肌が止まらなかった。
そして、μ'sのパフォーマンスに見惚れてしまった。
全く、カメラマンとして失格である。
「ここに居たのね……伊達君。」
名前を呼ばれて振り返るとそこにはツバサさんが居た。
「あ……えっと……お疲れ様です。」
俺は少しぎこちない言葉で返事をする。
「私と英玲奈はもう帰るわ。あんじゅは控室に残ってるから。」
「……わざわざありがとうございます。」
「ハロウィンのイベントから会って無いんでしょ?ゆっくり話してきなさい。」
ツバサさんの言う通りあんじゅが『一人で大会に臨みたい』という決心を俺に告げてから俺たちは1度も顔を合わせていない。
俺はμ'sをサポートするアイドル研究部部員として、あんじゅはA-RISEのメンバーとして
俺たちはお互いがライバルとして今日まで過ごしてきた。
メールなどの会話は多少はあったが練習やラブライブ!の話題に関してはお互い一切話すことは無かった。
「ちゃんと伝えたからね。それじゃ……。」
そう言いながらツバサさんは背を向けて歩き出す。」
「待ってください ! 」
俺は思わずツバサさんを引き止めてしまう。
「えっと……その……なんと言いますか……。」
_____お情けは無用よ。
「えっ ? 」
「私たちは全力で挑んで納得行くパフォーマンスを本番で見せることが出来た……それだけ……。」
俺が掛けようとした言葉がわかっているようにツバサさんは俺に喋らせようとはしなかった。
「ただ、脅威と思ってマークしてたユニットに喰われちゃったのは悔しいわ。でも、勝負の世界だから私たちは負けを認めないと前には進めない……。」
_____この負けを糧にしてA-RISEはまだ前に進むわ。
ツバサさんは清々しいまでの笑顔を俺に向けていた。この人はホントに強い人だ。
でも、そんな強い人の目は腫れていて鼻は真っ赤だった……。
やっぱりこの人も人の子だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
ツバサさんと別れ俺はあんじゅがいる控室の前に来ていた。
当たり前のように会っていた人間と暫く会わずに久しぶりに会うという感覚は初めてで不思議な感覚だ。どんなテンションで話せば良いんだろう……そもそも…
_____A-RISEはμ'sに負けた。
なんて声をかければ良いんだろう……。
答えが出ないまま俺は控室の扉を開けていた。
「も~! ! 遅いぞ~ ! ツバサちゃんが見つけきれずに帰ったのかと思ったじゃない。」
「少しツバサさんと話してたから遅くなってね。」
「大会が終わったらまずお姉ちゃんをいたわりなさいよ~」
口を膨らましてかまって欲しいと言わんばっかりに愚痴を垂れる我が従姉。
「はいはい」
俺は軽くあしらう。
「ツバサちゃんどうせクールな感じで『あんじゅが待ってるわ』なんて言ってたんでしょ ? 」
「まぁ、そんな感じだったな。」
あんじゅはニヤリとする。
「あんたの前だとクールだったかもしれないけど大会の結果が出た後、大泣きだったのよ~」
少し予想は付いていたがあんじゅは楽屋裏話を暴露しだす。
「『大雪なのに学校の皆が助けてくれるとか、運良くラストに回るとかズルい ! 』ってね」
あのツバサさんが駄々こね気味にそんなこと言ってたのか……。
「『あんなに練習したのに ! 』って『色々な物が味方して』……ズルいって……。」
「ツバサちゃん一番頑張ってたからなぁ……悔かったみたいで……珍しく英玲奈ちゃんも泣いちゃってね……。」
ニコニコしていた何時ものあんじゅの表情は崩れていく……
「お姉ちゃん二人を……『ヨシヨシ』してあげたのよ……宏樹に見せたかったなぁ……」
「あとね……」
_____もう良いから ! !
今にも泣きそうな表情で、まだ話し続けようとするあんじゅを俺は見てられなくなり無理矢理抱きしめていた。
「……もう、良いから……無理して笑わなくていいから。」
「……俺の前では我慢しなくて良いから……。」
_____そう告げるとあんじゅは泣き崩れた。
「ツバサちゃんも、英玲奈ちゃんもあんなに頑張ったのに ! 神様はμ'sに味方して ! ! なんで……」
「……うん、うん。」
緊張の糸が切れたようにあんじゅは自分の吐き出したいことを全て吐き出していった……。
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◆
「……落ち着いた ? 」
「……うん。」
一頻り泣いて静かになったあんじゅに俺は優しく声を掛け、俺はずっと心に決めていたことを話しだす。
「あんじゅ……あのさ……」
「……ん?」
泣き疲れているのか少し元気の無いあんじゅの返事を聞いて俺は話を続ける。
「_____俺……あんじゅの事が好きだ。」
初めて拒絶されて、仲直りして、一人でラブライブ!に挑みたいと言われて、
会えない日々が続いてあんじゅに伝えたかったこと……。
元気になって欲しいとか、変な気持ちは抜きで純粋に思ったことを伝えたかった。
「相変わらず不意打ちね……。」
あんじゅは笑いながらそう答える。
「えっと……今回のはそういうのじゃなくてだな……。」
俺は頬を掻きつつ苦笑をする。
「えっ ? 」
「……今回初めてあんじゅと別々でお互いにライバルとして戦って気がついたんだ……」
_____あんじゅが従姉としてじゃなくて一人の女性として好きなんだって。
「会えることが当たり前でふと会わなくなった時に…‥会いたいなって気持ちが浮かんだ時に……やっぱり俺あんじゅの事が好きだったんだなって気がついて……」
_____だから、これからはずっとそばに居たい。そして、そばに居て欲しい。
「……あの、あんじゅさん ? 」
俺の一世一代の告白を聞いてもあんじゅは微動だにせず、俺の肩に顔を埋めたままだった。
「……い。」
「えっ ? 」
返事らしき小さな声が聞き取れず俺はあんじゅに聞き返す。
「やばい……嬉しくてそっち向けない……。」
「はい ? 」
予想していない返事に俺は思わず呆気にとられる。
「宏樹と居る時、いつも思ってたの……」
_____宏樹は私の事を従姉としか見てないんだなぁって……。
「宏樹は私がどんなに好きな気持ちを伝えても気持ちは届かないんだなって……。だから、宏樹に好きな人が出来るまで私が宏樹を独り占めしようって思ってた……。」
「お陰であんじゅが居ない生活考えられない人間になっちまったよ……。」
俺は苦笑しながら返答する。
「宏樹の気持ちを聞いて凄く嬉しい……でもね……。」
あんじゅはその言葉と同時に今までより強く抱きついてくる。
_____すぐ返事は出来ないの……私はスクールアイドルだから……。
俺は『えっ ? 』と言う顔で肩に顔を埋めるあんじゅの方を見てしまう。
「必ず返事はするから……少しだけ待って。」
そう答えるとあんじゅは俺から離れいつもの笑顔を俺に向けてくる。
「慰めてくれてありがとね。」
あんじゅはそう言って控室から出ていった……。
俺の一世一代の告白は壮絶な肩透かしと言う名の『保留』を喰らって終了した……。
◆◆◆◆◆◆◆◆
宏樹と別れた私はそそくさとスマホを起動させる。
「あ、ツバサちゃん ? 今日はお疲れ様 ♪ 」
「そうそう明日、少し話がしたいの……。」
「凄く大切な話……英玲奈ちゃんも一緒に……ね。」
スマホの通話を切ると私は今日の出来事を思い出す。
「天国と地獄を一度に体験することなんて多分、二度と無いわね……」
天国な出来事を少し思い出して私の顔は少し緩んでしまっているだろう……大事な大会が終わって悔しい筈なのに我ながら情けない話だ。
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明後日からの希望に胸膨らませているのか明後日からの現実に頭を痛めているのか……待ち行く人たちは忙しなくアキバの街を歩く……。
少し寒さが残る春休みも残り2日の本日、俺はとある場所に向かう為、行き交う人たちと同じくアキバの街を歩いていた。
「……明日で終わるのかぁ……。」
すれ違う人には絶対に聞こえない声で俺はボソリとつぶやく。
そう、明日のLIVEで我が音ノ木坂学院スクールアイドルμ'sはスクールアイドルとしての活動を終える。
実質の解散だ。
アイドル研究部に入部させてもらってからあっという間に時間が過ぎて、気がつけばμ'sはラブライブ ! を優勝し海外でパフォーマンスさせてもらい、知らない人は居ないレベルの人気になり、μ'sとしての最後のお祭りとしてアキバのストリートライブを成功させた。
人気絶頂での解散……賛否両論あると思うが俺は高坂や絢瀬先輩の意見を尊重したい。
元々、ラブライブ!の本大会をμ'sの最後にするものだった……俺もその事はよくわかってる。俺が出来ることは最後のパフォーマンスも皆が最高の姿で写真に収まるように仕事をこなすだけだ。
そんな寂しさを感じながら明日を迎えるはずの俺なのだが、とある会場の関係者入り口に向かっている。
何故かと言うと昨日、こんなメールが俺に届いた。
『明日、アキバホールのライブに来なさい。
関係者入り口から入れるようにしてる。
いい席に座らしてあげるから感謝しなさい。
あんじゅ』
A-RISEがスクールアイドルとしてラストライブをするとは聞いていたが、その日時が今日でしかも見に来いと来たもんだ……。
相変わらず色々といきなりな我が従姉である。
それに従ってヘコヘコと来る俺も俺だが……。
まぁ、惚れた弱みだな。
俺とあんじゅの関係は告白したあの日からも何も変わってない……
いつもの従姉弟の関係である。勿論返事は貰えてない。
こちとらヘタレなりに勇気を出して告白したのに向こうは何も変わってないないのは正直シャクだったが、コレもある意味『オレたちらしい』のかもしれない。
無理やりポジティブに自分を励ましつつ俺はホールの関係者入り口へ到着した。
UTXの見知ったスタッフさんに連れられ会場に入れてもらいあんじゅの用意した席に着いたのだが……ここは……
最前列じゃねぇかぁぁぁ!!!
何の嫌がらせか不明だが、ステージの最前列センターではなく下手側である。パフォーマンスを存分に見せたいならセンターで良いと思うんだが……。しかも、砂かぶりも砂かぶりの真ん前。
俺は溜息を付きつつ渋々と周りにいるA-RISEのガチ勢の方々と開宴を迎えた……。
開演したLIVEは文句の付けようが無い盛り上がりを見せた。
コレがスクールアイドルとして最後のLIVEだからだろうか?それともA-RISEのLIVEはいつもこんな感じなのだろうか……。
俺はただただ会場の雰囲気に圧倒された。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「今日は私達がスクールアイドルとして最後のLIVEに来てくれてありがとうございました ! 」
「どうせ遠征してきた半分位の人は大体明日のμ'sがお目当てなんでしょ ? 」
「あんじゅ……そう言う余計なことは言わなくて良い。」
アンコールの曲を歌ってMCになった3人はいつもの調子でトークを始めた。
「μ'sが目当てでも私達のLIVEに来てくれた事に変わりないわ。」
「あら、ツバサちゃんは相変わらず大人ね。」
ラブライブ!でのピリピリとした雰囲気から解放された3人のLIVEはとても活き活きしていた。きっとコレがA-RISEの本来の姿なのかなと思った。
「情報が出ていると思いますが、私たちはこれからはスクールアイドルではなくアイドルとして活動をしていきます。」
「これからはスクールアイドルという言葉には甘えられなくなる。今まで以上に最高のパフォーマンスを目指す。」
「私たちは今まで以上にファンの皆を楽しませる最高の舞台を目指して行きますのでよろしくお願いします ! ! 」
ツバサさん、英玲奈さんのMCに会場は大きな拍手でエールを送った。
「こんなMCしたあとで申し訳ないんだが、少しお知らせがある。」
英玲奈さんの発言に会場はざわつく。
「それじゃ、あんじゅ……」
ツバサさんは少し悲しそうな顔をしてあんじゅへ話題を振る。
「なんか、こうやって話を振られると話し辛いわね……。」
あんじゅは苦笑しながら改めてマイクを持ち直し喋りだす……。
____私、優木あんじゅは本日を持ってA-RISEを卒業させて頂きます ! ! !
『えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ ! ! ! ! ! ! 』
会場に怒号のような驚きの声が上がる。
勿論俺もその中の声である。
「私は天才なんかじゃありません。」
「天才を続けることが出来たのはA-RISE二人、そして私を支えてくれた人のおかげということに最近気が付きました。」
「その人の支えがなくなってから改めてその人の大切さが分かって……」
「その人の側に居たいと思うようになりました。」
「ホントにワガママでごめんなさい……私はA-RISEを卒業して……」
____この人と一緒に生きていきます ! ! ! !
その言葉と同時にあんじゅはステージにダイブした。
厳密に言えば俺に向かってダイブしてきた。
「宏樹 ! 待たせてごめん ! 私もずっと側に居たい ! ! 」
そう叫びながら飛びついてきたあんじゅを俺は驚きながら受け止める。
今日2度目の怒号のような声が上がる会場。
そして、俺はこう思った……
____あっ、俺今日ファンに殺されるわ。
まぁ、告白成功したからそれも良いか。
最後までご覧いただきありがとうございました!
いやー今回は更新ペースがホントに遅くて申し訳ありませんでした。
苦労話や今後の展開は活動報告で今日明日にでも書く予定です。
亀更新の中待っていただいた方ホントに申し訳有りませんでした!
次回からは頑張ります(^q^)