移動が多いと暇な時間にさくさく書けるでいいですね(^q^)
既に前言撤回な香りがする第2話です。
「あんじゅさんにとってA-RISEのお二人はどんな存在ですか ? 」
UTXから少し離れた喫茶店であんじゅは取材を受けていた。
取材内容は『ラブライブ!関東予選注目グループ ! 』と言うもので、当然のごとく前回大会優勝をしているA-RISEも注目グループであり取材のオファーが来ていた。
「う~ん……そうですねぇ……。」
あんじゅは笑顔で少し考える素振りを見せる。
「ツバサちゃんは努力の人って感じですかね ? 」
「努力の人ですか……。」
「正直、ツバサちゃんの身長はダンスで魅せるには若干ハンデだし元々そんなに体力も無かったし……」
「そうだったんですか……。」
記者は興味津々であんじゅの言葉に耳を傾ける。
「その彼女が今A-RISEのセンターで観客を1番魅了させてるのは日々の努力以外ないと思います。」
あんじゅは更に続ける。
「エレナちゃんはツバサちゃんとは別ベクトルで努力の人ですね。」
「別ベクトルですか…… ? 」
「彼女はA-RISEがお客さんを『笑顔にできるか』、『楽しんでもらえるか』を常に考えていてその目標のために本当にストイックに取り組むんです。」
「前回大会優勝しても常に挑戦者のような気持ちですね……。」
記者はA-RISEのラブライブ!に対する気持ちを聞いて感嘆する。
「私たちは常にお客さんにとって魅力的でありたいので ♪ 」
あんじゅは記者にウインクを決めて笑顔で答える。
「お二人のことを聞いたのですが、あんじゅさん自身は客観的に自分をどう見ていますか ? 」
「私ですか ? ? 」
あんじゅは思っていなかった質問で少し驚いた表情になる。
「私は、何となくダンスもできちゃうし、歌も歌えちゃうから努力の二人とは対照的で……」
_______言っちゃうと天才ですかね ?
柔らかい笑顔であんじゅは答える。
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「天才……ねぇ……。」
先日発売されたスクールアイドル雑誌のあんじゅの記事を見て目をジト目にして俺は呟く。
自身を❝天才❞と称し、歌にダンスなんでもこなし、メンバー二人とは別にファッション雑誌でも活躍し才能を溢れんばかりに使いこなしていると世間に評価される優木あんじゅは……
今ここで鬼の形相で練習に打ち込んでいる。
ここはUTXにある練習部屋。
練習器具が充実し、ダンス練習をするには申し分のない広さがある。
あんじゅはメディアには絶対に見せないであろう必死の形相でさっきから何度も何度もダンスの練習に打ち込んでいる。
恐ろしいのが、このダンスの練習の前にルームランナーで走りこんでいる。
あんじゅはダンスや歌で納得が行かない所があれば度々この部屋を貸し切り練習に打ち込む。
それは、A-RISEが始まった当初からである。
A-RISEメンバーやスタッフ、生徒には
『宏樹とのイチャイチャタイムのために練習部屋を貸して ♪ 』なんて言ってるが、
このモードに入ったあんじゅとそんな空気になったことはない。
他の人に内緒で思う存分練習に打ち込む為の口実に俺は使われているわけである。
別に不満に思ったことはないし、お陰様でUTXを自由に行き来する許可書ももらっているし
A-RISEのメンバーとも顔見知りになれているし寧ろ得した気分まである。
この部屋に連れ込まれた俺がしていることは、あんじゅが練習する為の口実になってあげることと……
「今日はそろそろ終わりにしたら ? 」
無理にならない程度に練習の止め時を言ってあげることだ。
「……。」
あんじゅはダンスの練習を止めない……。まだ納得いってないようだ……。
「……関東予選直前だから次の通しで終わりな。」
満足するまで練習させたい気持ちを抑え、俺は有無を言わさず終わり時を告げる。でないとあんじゅは壊れるまで練習を止めないだろうから……。
昔一度だけなんでこんな事をしているか聞いたことがある。
◆◆◆◆◆◆◆
「あんじゅはなんで天才キャラをやろうと思ったの ? ? 正直、しんどい思いしかしないだろ ? 」
「ん?確かにね。あんまり、得しないかもね ♪ 」
あっけらかんとあんじゅはメリットはないと言い切る。
「でも、メンバーの中に一人でも天才がいたらまた魅力的だとは思わない ? 」
あんじゅがワクワクする笑顔で俺に言ってきた顔は未だに忘れられない。
俺はその笑顔を見て溜息を付きながら手助けすることを胸に誓った。
◆◆◆◆◆◆◆
「はい、水。」
「……ありがとう。」
練習が終わったあんじゅは電池切れを起こして殆ど喋らなくなる。
まぁ、俺にとってはいつものことなのだが普段のあんじゅを知ってる人からすればあまり考えられない話である。
「納得が行く追い込みは出来た ? 」
「……まぁまぁね。」
やはり練習したりないようで満足したという返答は無かった。
練習させたい気持ちもあるが、無理はさせたくないので適当にあしらっておく。
こんな感じで俺はあんじゅの手助けもしつつ現在μ'sの写真担当として活動しているわけで、
今の状況はあまり人には話したくなかったわけである。
「次の自主練はいつくらい?」
「ホントは明日にでもと言いたいところだけど……」
「だーめ。」
練習したがる我が姉をジト目で見つめて咎める。
「分かってる。だから……次は来週かしら ? 」
「了解。また連絡して。」
我が姉は天才だと思う。
それは『ダンスが天才的に上手い』とか『歌が天才的に上手い』とかではない。
『天才』を演じるのが『天才的』に上手い。
そして『努力』の『天才』だと思う。
◆◆◆◆◆◆◆
「今週は水曜日にUTXか……。」
次の週の月曜日俺は学院からの帰り道。
あんじゅからの連絡で次の自主練の時間を受けそう呟く。
関東予選の最終予選もせまっている中であんじゅの追い込みはもっと過酷なものになるであろうから俺がセーブさせなければと心に誓う。
「……伊達君。」
「はい?」
トボトボと帰ってる中いきなり後ろから声をかけられ驚きながら振り返る。
俺の振り向いた先には……
____綺羅ツバサがいた。
正確に言うとサングラスと帽子で変装しているツバサさんがいた。
「ツバサさんっ ! ? 」
「しっ ! 静かにしないとバレるでしょ ! 」
ツバサさんに言われ俺は急いで口を塞ぐ。
「少し伊達君とお話したくてね。」
「は、はぁ……?」
変装して表情が読み取ることの出来ないツバサさんだが、すごく真剣なトーンであることは分かった。
しかし、なぜ俺と話がしたいんだ ? ? という気持ちが隠しきれず変な返事が出てしまった。
◆◆◆◆◆◆◆
流石に学院の前で話をするのはまずいと思い学院近くの喫茶店に入り
俺はツバサさんと話をすることにした。
「で、話しがしたいとのことですが……。」
俺は早速話しを切り出す。
「ええ、単刀直入に言うわ。」
____あんじゅがどんな人間か知りたいの。
「……はい ? 」
俺は思いも寄らない言葉に驚いて変な声を上げてしまう。
「言い方が悪かったわね……。貴方の知ってるあんじゅっていう人間の性格を知りたいの。」
首をかしげたくなる質問なのだが、ツバサさん本人は至って真面目な顔で話している。
「なんでまたそんなことを ? ? 」
残念ながらも一応は我が姉のプライバシーをおいそれと話すわけにもいかないので念のため確認をする。
「今までもそうだったんだけど……あんじゅって掴みどころが無くてね……。」
ツバサさんは少し不安気な表情で話す。
「あの子の事私はどこまで分かって上げてるのかな ? って最近思うの。」
「新しい振り付けの練習がダメダメだったら気分が乗らないとか言ってサボって帰るけど次の日嘘みたいな文句なしの動きになってたり、ついこの前まで連続でのダンスが厳しいって話してたのに気がつけば息を殆ど切らさなくなったり……」
俺が知っている努力の天才は嘘の天才でもあるようだ……。
「なんというか……最近あんじゅの事が全然分からなくなってきて……」
ツバサさんは溜息を吐きながらリーダーとして友人としての不安を吐露してきた。
俺が出来ることは……
「天才は気分屋でもありますからね。」
❝天才❞優木あんじゅのイメージ像を壊さないようにすること……。
「俺だって気分で振り回されますし、そんな風に思ったこと何度もありますよ。」
まぁ、振り回されるに関しては嘘ではない。
「ただ、アイツは好きな人や好きな物に対して裏切るってことは絶対しません。」
俺はツバサさんに向かって笑顔でそう答える。
「アイツは少なくともA-RISEが好きでA-RISEファンが好きでツバサさんやエレナさんが大好きだと思いますよ。」
この発言に嘘はない。
優木あんじゅの日々の発言や行動は言葉通りだと思う。
「だから……もう少しだけ優しい気持ちで見てあげて下さい。」
なんだかお母さんみたいな発言である。自分で言いながら少し笑ってしまった。
「笑いながら言うなんて酷いわね。」
ツバサさんも吹き出してしまった俺を見て笑ってしまう。
「分かったわ……。もう少し様子を見てみるわ。」
ツバサさんはさっきの真剣なトーンとは違いそのトーンは柔らかかった。
気分屋がいつかA-RISEを辞めるなんて言い出したりするかもしれないという恐怖があったのかもしれない。
まぁ、A-RISEの二人が大好きな我が姉がそんなことするわけないのだが……不安にさせてしまったことは問題ではある。今度この件に関しては伝えて置かなければ。
「それじゃ、私は帰ろうかしら……。いきなりこんな話してごめんね。」
「いえいえ。俺で良ければいつでも力になりますよ。」
「μ's側の人間のクセに。」
「うっ、痛い所を……」
意地悪な返答をするツバサさんの笑顔は❝スクールアイドルのトップA-RISE綺羅ツバサ❞のものではなく❞高校生綺羅ツバサ❞の無邪気な笑顔だった。
少しは荷が降りてくれたかな ? と思う。
「そう言えば……。」
「どうしました。」
「最後に聞きたかったんだけど。」
ツバサさんは去り際に俺に質問をしてくる。
「_____貴方にとってあんじゅはどんな存在なの?」
思わぬ質問で少し驚いた……が俺の言葉は決まってる。
_____大事な人です。
俺は真っ直ぐな笑顔でそう答える。
そう、浅い意味でも深い意味でも……答えはこの答えだ。
「……そう。ありがとう。」
ツバサさんはその言葉を聞いてクスッと笑いながら立ち上がり、俺に喫茶店の会計を渡して喫茶店を去っていった。
立ち去った席で一人になった俺はツバサさんの言葉が少し胸に刺さっていた。
俺にとってあんじゅはただの『大事な人』ではない。
多分あんじゅも俺を『ただの従弟』と思ってないだろう……。
俺たちは超えてはいけないラインの上で生活してラインを見て無ぬふりして生活している。
いつか直視しないといけないラインを……。
思わぬところでそう実感させられたのであった。
最後までご覧頂きありがとうございます!
砂糖を吐かせるとは何だったのか…。
次回以降は亀更新になるかも!?
でも頑張ります!(^q^)