μ’s MUSIC BOX   作:ぶりくすむ

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お馬鹿なノリ全開の今シリーズも無事完結です!
最終話お楽しみ下さい!




あとがきにて次回シリーズの意見募集についても色々話していますのでよろしくお願いします!


ではどうぞ!













# 04

 

 

 

 

 

「…あの希さん?」

 

「…。」

 

「…。」

 

 

飲み屋で先日の一部始終を話し一喝を入られた私はおどおどと様子を伺うように希の名前を呼ぶ。

 

 

「のじょみ~…私知ってますよぉ~コレ『ビッチ』ってやつれしょう!」

 

「海未ちゃん?園田の家元を次ぐ人間がそんな汚い言葉話したらアカンよ?」

 

 

早くも泥酔している海未に希は優しく諭すように話しかける。

 

 

「ちょっと!わ、私はビッチじゃなくて!」

 

「…エリチは黙ってて。」

 

「は、はい…。」

 

 

希は海未にしていた優しい顔とは対照的に鬼のような形相で私に睨みを効かせる。

確かに、全面的に私が悪いわけなのだが…。

 

 

「伊達君と無事付き合えたって聞いたからウキウキしながら海未ちゃんとここに来たらなんやこの救いのない情けない話は…。」

 

「ヘタレのアイツもアイツなりにお酒の力を借りてですが頑張ったのに…」

 

「仰るとおりです…。」

 

 

後日談として聞いたのだが彼も相当酔っていたらしい。

けど、お酒の力を借りながらも自分の口でしっかりと告白をした…。

私はというと結局あれから告白という告白も出来ずホントの事を言えずにいる…。

 

結論を言うと私たちは付き合うことが出来た。

ただ、私の気持ちを知らない彼の中では私は想い人を忘れきれてない女…ということになっている。

 

 

「気になる男のことは忘れられんけど酔っ払った勢いで関係を持ってそのまま付き合ってってまんまビッチの立ち回りやん。」

 

「そうれす!そうれす!」

 

「…。」

 

 

親友たちに言われるがままで正直泣きそうである。

こう言われても仕方ないから言い返すことも出来ず…。

 

 

「わ、私だってこのままだったらマズイ事だって分かってるわよ!」

 

「…へぇ~…」

 

 

希は明らかに私の言葉を信じていないような蔑んだ目で見てくる。

 

 

「あの1件があってから宏樹君と1度デートしたの…。」

 

 

本日の飲み会より少し前の出来事を私は振り返る。

 

 

 

 

 

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その日は私の家に彼を招きデートをすることになっていた。

 

 

「なんだかんだ絵里さんの家に来るの初めてですね!」

 

「確かにそうね…まぁ、そんな人を招くような事もそんなにないし招いて何かあるような楽しいものでもないわよ。」

 

 

私は若干テンションが高そうな彼を笑いつつ私は彼を部屋に招き入れた。

 

この日、私は決心していた。

 

そう、まともな告白もしていないこの関係を終わらせることと、彼が勘違いしている何処かに居るであろう想い人は本当は彼であるということ。

 

この2点をしっかり彼に伝えなければ…。

 

 

「絵里さん…」

 

「どうしたの?」

 

 

はて、どのタイミングで伝えたら良いだろうか…。あとはタイミング次第だ。

 

 

「俺…頑張りますから。」

 

「…えっ?」

 

 

彼の唐突な言葉に困惑する。

 

 

「俺、絵里さんの想い人からすれば足りない部分沢山あるかもしれないですけど…」

 

 

 

____絵里さんを幸せにできるよう頑張りますから!

 

 

 

 

「…ありがとう。」

 

 

私は彼の言葉に照れくさそうに笑う。

単純に彼の真っ直ぐな気持ちが嬉しくて笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

………って!!

 

ちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁうぅ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

私はラブコメをする為に彼を呼んだんじゃない!

 

しっかりと本当の事を…

 

 

「…絵里さん?」

 

 

本当の事を…ね?

 

 

「大丈夫ですか?身体の調子悪いんですか?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

____こんな真っ直ぐな眼をする彼に言えるわけないでしょぉぉぉ!!!

 

 

 

 

 

 

 

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「んで、結局言えず終いだったと…。」

 

「…はい。」

 

 

説明しながら自分が情けなくて私は机に突っ伏していた。

我ながら本当に情けない話である。

 

 

「つかぬことをお聞きしますが、その日はやっちゃったのれすか?」

 

「…へっ?」

 

 

泥酔している海未に質問をされて私は固まる。

 

 

「だからぁ~前の宏樹の家の時みたいにやったのれすかときいてるのれすよぉ!」

 

「あの、その…そういうのは…そのね」

 

 

あまりにも唐突な質問だったので私はアタフタと答え困る。

 

 

「やったん?やってないん?」

 

 

静かに氷のような冷たい笑顔で質問してくる希に背筋が凍る。

 

「…しました。」

 

 

彼に流されてと言い訳したものの現状が現状だけに言い訳は許してもらえるわけもなく…

 

 

「のじょみ!このビッチは誰れす!私の知ってる絵里ではありません!」

 

「そやなぁ~この約10年で別人と入れ替わったんかもなぁ?」

 

 

なんかもうこれだけボロクソに言われてるけど大分平気になってしまっている自分が少し嫌になる。

 

 

「絵里…。」

 

「海未…ごめんなさい…。私の事嫌いになっても…幻滅しても仕方ないと思う。」

 

 

海未に名前を呼ばれても顔を上げる気が起きない。

大切な幼馴染の男友達が遊ばれてるわけである。

それが、長い付き合いの友人となればホントに呆れる話である。

申し訳無さ過ぎて穴があったら入りたい。

 

 

「絵里には伝えなければいけないことがあります…。」

 

「えっ?」

 

 

先程まで酩酊していたトーンとは違い、いつものトーンで海未は私に声をかけてくる

このポンコツエセロシアに何か掛ける言葉でもあるのだろうか?そう思いながら私は顔をあげる。

 

 

「正直、コレは墓まで持って行こうと思っていたのですが…」

 

 

海未はそう前置きした上で話しを続ける。

 

 

 

 

____私は、宏樹の事が好きでした。

 

 

 

 

「……。」

 

 

あまりにも衝撃的な告白に私は絶句した。

 

 

「勿論、今は旦那様が一番です。宏樹なんか遠く及ばない位大好きですので…。」

 

 

少し茶目っ気のある笑顔で海未は話を続ける。

 

 

「高校まで恋心というものが良く分からないまま私は生活して来ました…。」

 

 

「自分でも何時だか忘れてしまいましたが、ふとした時気がついたら宏樹を目で追いかけるようになり…一緒にいたいと思うようになりました…。」

 

 

「ですが…」

 

 

 

____宏樹はずっと貴女しか見ていませんでした。

 

 

 

「私の初恋は告白をすること無く失恋です。」

 

 

海未は少しだけ寂しそうな笑顔で私に笑いかける。

 

 

「貴女に無駄に背負わすつもりはないのですが、私が諦めるくらい宏樹の気持ちは真っ直ぐでした。」

 

「…海未…。」

 

「貴女も同じくらい宏樹を真っ直ぐ思い続けたと思います。」

 

 

 

____自分の気持ちを素直に伝えるだけです…伝えれなかった私が言うのもおかしいですが。

 

海未はそう言って笑う。

 

 

「まぁ、えりちがどう思うかやな。」

 

 

____これから先ずっと…伊達君に存在もしてない想い人の『次の人間』って十字架を背負って生活させる事出来るん?

 

 

 

 

出来るわけ無い…

 

そんなの耐えられない…

 

 

 

 

「はい!湿っぽい話は終わり!」

 

「そうれすそうれす!絵里!貴女、全然飲んで無いではないれすか!」

 

 

 

親友たちは私に伝えたい事は言い切ったようで話を切り替え飲みだした。

彼女たちなりの私への気遣いだろう。

 

正直、その日の飲み会は全然酔えなかった。

味なんか分かるはずもなく飲んでも飲んでも酔う気がしなかった。

 

きっと心はその場になかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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「あ、もしもし伊達君?今大丈夫?」

 

その日私は家に帰るなり彼に電話した。

 

「来週末って空いてる?」

 

「良かった…。急にどうした…って?」

 

 

 

 

 

 

「…大事な話があるの。」

 

 

 

 

 

 

 

「うん…場所とかはまた追って…うん…おやすみなさい。」

 

 

 

もう、退路は断った。後は逃げないだけだ。

 

 

彼は私からの『大事な話』をどう思っただろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ーー

 

 

 

 

 

 

「お邪魔します。」

 

「どうぞどうぞ。」

 

 

週末、私は彼の家を訪れていた。自分へのケジメをつけるために…。

 

 

「適当に座って下さい。」

 

「ありがとう。」

 

 

彼の部屋は綺麗に片付いていた。私が来るので掃除してくれたのだろうか。

 

 

「お茶淹れてきますね。」

 

 

そう言って彼はキッチンへ向かう。

 

彼が帰ってきたら今日話したいことを全て伝えよう。

ズルズルするとまた彼に甘えてしまう。

本当の私の気持ちを伝えてしまおう。

 

彼は幻滅してしまうかもしれない。

嫌われてしまうかもしれない。

 

 

そうなったらその時だ。私がしてしまった過ちだ。

 

昨日私はそう決心した。

 

 

「はい、どうぞ。」

 

 

彼は笑顔で渡しにお茶を渡してくれる。

 

 

「あのね、宏樹君…」

 

 

私は意を決して彼に話を振る。

 

 

「あ!そうだ!絵里さん映画見ます?面白い映画のDVD買ったんですよ!」

 

「えっ?ええ…。」

 

 

彼は私の切り出しを打ち消すように話し出す。

 

 

「えっとね…映画を見る前にね…」

 

「あっ!お茶請け忘れてましたね!取ってきます!」

 

 

また話を打ち消すように彼は話し席を立つ。

 

 

 

 

「待って!!」

 

 

 

私は気がついたら咄嗟に立ち上がりキッチンへ向かう彼の腕を掴んでいた。

今、彼に部屋を移動されたらまたズルズルと離せなくなりそうで…。

 

 

 

「…宏樹君…話を聞いて欲しいの…。」

 

 

 

私は気がつけば必死だった。今まで逃げてきた自分に負けたくない気持ちで一杯で。

 

 

 

______…嫌です。

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

彼の否定に私は一瞬固まってしまう。

 

 

 

「…こんな関係ダメだとわかってるんです。」

 

 

背を向けてる彼の表情は分からない。

でも、話す声はとても悲しげだった。

 

 

「絵里さんには好きな人がいて、それは俺じゃなくてこんな関係間違ってるのに…でも、一緒に居たくて…」

 

「絵里さんはこの関係を終わらせたいと思ってるかもしれません…どう思われても構いません…この関係でいいから続けさせて下さい!!」

 

 

彼は私がこの中途半端な関係を終わらせる為に私が今日話に来たと思ってたらしい…。

 

 

 

私は彼の言葉を聞いた瞬間涙が出てきた。

 

私が弱虫だったから今日まで彼を苦しめて、自分は弱虫なままで都合のいいように立ちまわって…。

 

そんな自分が情けなくて涙が止まらなかった。

 

 

 

「宏樹君…」

 

 

 

私は彼の腕を引っ張り私の方に身体を向ける。

 

 

「絵里さん?!」

 

 

引っ張られたことと泣いている私を見て彼は驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…ホントにごめんなさい…。」

 

 

 

 

 

 

 

私は彼の手を両手で握って謝った。

彼は困惑仕切りの顔で困っていた。

 

 

 

 

 

「私がずっと好きな人は…貴方なの!」

 

 

「貴方と出会った時からずっと好きで!」

 

 

「仲良くなったらもっと好きになって!」

 

 

「ずっと弱虫で勇気がなくて伝えられなくて!」

 

 

 

 

 

「ホントにごめんなさい!」

 

 

 

 

 

 

一度、口にしてしまえば今まで伝えることが出来なかった言葉は嘘のように彼に向けて話すことが出来た。

私の言葉を聞いて彼は固まっていた。

そして、暫しの沈黙の後…

 

 

 

 

______……許しません。

 

 

 

 

 

 

「…。」

 

 

 

やっぱりか…。こんな最低な弱虫はやっぱり許されない訳で…

 

 

 

___…ギュッ

 

 

 

「…えっ?」

 

 

私は彼に抱きしめれていた。許されないと言われてえーっとなんで?

 

 

 

 

 

「罰として絶対に離しません。」

 

 

 

 

少し涙が見えるいつもの眩しい笑顔で彼は私にそう告げた。

 

 

 

 

 

 

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ーー

 

 

 

 

「というわけで~わらしたちはお互いの愛を確かめ合ってその後は獣のように求め合ったのでしらぁ~♪」

 

「希、どう思います?」

 

「まぁ、例の日から宏樹も元気ですしホントみたいですね…。」

 

 

泥酔する絵里から事の一部始終の説明を受けた希と海未は顔を合わせて話す。

 

 

「海未~羨ましがっても宏樹君は渡さないわよぉ~んふふ♪」

 

 

「希、弓を下さい。こいつを的にします。」

 

「まぁまぁ、約10年越しの思いが叶ったんやし今日くらいは多めに見とこ。」

 

 

やれやれと溜息を付く海未。

 

 

「二人共すんません。なんか迷惑かけてるみたいで…。」

 

「ホンマやで…このポンコツ回収してや。」

 

 

謝罪の言葉とともに宏樹が居酒屋に入ってくる。

 

 

「あー宏樹君遅いぞー!」

 

「はいはい。帰りますよ。あんまり飲み過ぎないでくださいよ。俺迎えに行くの大変なんですから。」

 

「飲み過ぎても宏樹君が迎えに来るから大丈夫だしーえへへ♪」

 

 

既に砂糖を吐きそうなイチャつきの状態を見て希と海未は言葉を失う。

 

 

「すみません。回収していきます。」

 

 

溜息を付きながら絵里をおぶってる宏樹は笑顔で詫びを入れつつその場を去ろうとする。

 

 

「伊達君…。」

「宏樹…。」

 

「ん?…どうしました?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「末永く爆発しろ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後までご覧頂き本当にありがとうございます!


このシリーズの振り返りはまた後日活動日誌にて書きますね。


取り敢えず、次回どのキャラにするか現在活動日誌にて
意見募集中ですのでよろしくお願いします。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=110411&uid=70374

さー無事旅行までに終わった!安心して旅行いけるぞ!!

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