何でもしません!
だらしないアラサー絵里はどうなっていくのか。
「男を作れだ、さっさと未経験済ませろ…なんて言われてもねぇ…」
「私だって好きでこの歳まで未通女をやってるわけじゃないのよ…」
「…は、はぁ…。」
「暇は無いし職場は冴えないオッサン、思春期真っ盛りの中学生のガキンチョ…いい男との出会いなんてあるわけ無いんだから仕方ないのよ。」
絵里は公園のベンチに腰掛けグビグビとビールを飲みながら愚痴を吐いている。
「大体何よ、『積極的に男を探せ』って…」
「…。」
腰掛けている絵里の横にはうなだれているマスクとメガネをつけた青年が居た。
「貞操守って非難される筋合いは無いでしょう!」
「私は心に決めた人が居てその人の為に守ってるんだから別に良いじゃない!」
「そ、そうなんですね…。」
「そもそも……ん?」
絵里はヘッドロックにも近い状態で青年の肩を抱いていることに気がつく。
「…貴方、誰?」
「…ええっ!?」
「人の胸に顔を埋めて…痴漢?」
「いやいや!貴方に無理矢理この体制にされたんですよ!」
「覚えてないんですか?!ここまで引きずって来といて!」
青年はいい男を探して未経験を卒業する!と意気込んで飛び出して
居酒屋の外で獣のように男を探す絵里に遭遇し、
『どうかしたんですか?』と心配で声を掛けた所、無理矢理この
公園まで連れてこられたのであった。
「…ん~?」
「つまり君はアレね!ナンパ君だ!」
「……違います。」
酩酊して見当違いの返答をする絵里に青年は溜息を吐きながら否定をする。
「いやー私もついにナンパされちゃたかぁ~♪」
「…違いますから。」
「恥ずかしがらなくてもいいわ!昔はスクールアイドルで結構人気あったのよ私♪」
「…。」
何か言いたげな青年は無言になる。
「…君さえ良ければー♪私の未経験貰ってくれない?♪」
キリッとしたキメ顔でとんでもない事を話してくる
「何を決め顔で言ってるんですか…」
青年は絶句して頭を抱える。
「貴方は紳士のようだし、目元の感じは私の好みよ♪」
「はぁ…ありがとうございます…。」
「未通を終わらすには文句無しだわ!」
「…。」
青年は何度目かの無言になる。
「そうねぇ…目元だけだとよくわからないからマスクを外してもらえるかしら?」
「…良いですよ。」
そう言って青年はメガネとマスクを外す。
「…お久しぶりです…というか2週間ぶり?ですか?絵里さん。」
「…えっ」
青年の顔を見て絵里はみるみるうちに自分の血の気が引いいていくことが分かった。
マスクとメガネを外した青年は絵里が思い続けている相手…
伊達宏樹だった。
「ひ、宏樹君!??どうしてここに!?」
「…たまたまこの辺で海未達と飲んでまして…」
「そ、そうだったんだ!」
先程の堂々と下品な話をしていた人物とは思えないアタフタ具合の絵里。
「ま、マスクとメガネ姿だったから全然誰だかわからなかったわぁ…アハハ」
「花粉がこの時期キツくてマスクとメガネが手放せないんですよ…。」
滝汗まみれの絵里を他所に宏樹は淡々と絵里の質問に答える。
「こ、この前遊んだ時は平気だったの?」
「あの時は薬飲んでましたし、マスクでメガネの不審者姿で遊ぶのは失礼ですし…」
「た、確かにそうね…」
溢れ出る気まずい雰囲気を誤魔化すように絵里は手に持っていたビールを飲もうとする。
「おブッ…」
「…絵里さん?」
宏樹は絵里の顔色が悪くなったことに気がつき声を掛けた瞬間…
「わぁーーーーーーー!!!!!」
絵里は勢い良く吐瀉してしまい、公園には宏樹の叫び声が響いた。
最後までご覧頂きありがとうございます!
アラサー絵里の受難はまだまだ続きます。。。